電子請求書とは?
ここでは電子請求書の基本情報について、近年の法改正のポイントとあわせて解説します。
電子請求書の種類と特徴
電子請求書とは、メールやオンライン上でやり取りできるように請求書を電子データ化したものです。大きく3種類に分類され、それぞれ特徴が異なります。
- ■メールに添付して送付
- データをメールに添付して相手に配信する。システムを使用する必要がないので手軽な反面、誤送信の可能性やセキュリティリスクが課題。
- ■クラウド上でダウンロードしてもらう
- 作成したデータをクラウド上にアップロードして、相手にダウンロードしてもらう。やりとりしたデータを一定期間保存できたり、相手がダウンロードしたかどうか把握できたりと、さまざまなサービスがある。
- ■クラウド上で電子データをやりとり
- 請求書の作成・発行・受け取りが一つのシステムで一貫して行える。請求書を保存でき、再発行や修正依頼時にデータを探しやすい。
請求書の電子化は法的に可能
従来の請求書は、紙でのやり取りが当たり前でした。さまざまなビジネス文書の電子化が進む中で「電子化した請求書は法的に問題ないか」という疑問が生まれました。
まず、請求書をPDFなどの電子データで送付することは法的に問題はありません。メールの履歴や請求書のクラウド保存など、請求の意思表示を証明できるものがあれば税務調査でも認められる場合があります。なお、請求書には押印がなくても有効です。ただし、企業ごとにルールが異なるため、クライアントに確認してから送付しましょう。
受け取った請求書は1988年施行の電子帳簿保存法により、帳簿書類の一部を電子データにより保存できるようになりました。紙の原本は電子化が認められず、紙の状態のまま保存するよう義務付けられていました。しかし、2005年施行の「e-文書法」により、請求書をはじめ、保管が義務付けられた文書の電子保存が認められます。すでに紙で保管していた請求書も、税務署長の承認を受ければ、スキャンデータでの保存が可能になりました。
参考:民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律│e-Govポータル
請求書を電子化するには
企業会計に関わる書類を改ざんされないために、請求書の電子保存にはさまざまな要件があります。「税務署長への事前の申請・承認」のほか、「真実性」「可視性」の確保が必須です。また、電子データをそのまま保存する場合と請求書をスキャンして保存する場合でも、具体的な要件は変化するでしょう。
たとえば、電子化した請求書のファイルを表示したときに見やすい状態で保存しなければなりません。そのため、検索機能が備わっていることや訂正・加筆の履歴が残るシステムを利用する必要があります。また、データの作成時点を証明するタイムスタンプ付与の義務化など、社内環境の整備リスクや顧客への負担懸念が大きくなっています。近年では既存の請求書は紙のまま保管し、新しくデータで受領した請求書のみ電子化する動きが一般的になっていました。
「脱ハンコ」の加速化で電子請求書がさらに普及
新型コロナウイルスの影響により、国内におけるテレワークの推進が強化されました。あわせて、行政手続きに伴う書面や押印のデジタル化への取り組みが加速しています。
また、同年10月に電子帳簿保存法が改正されたのも注目すべきポイントです。今までは、電子請求書を受け取った際にタイムスタンプを付与するか、改ざん防止の事務処理規定の作成・運用が必要でした。
しかし、今回の改正によりこれらの要件が緩和されたため、受領者側の負担が大きく減りました。具体的には、以下の方法が追加されたのです。
- ■発行者のタイムスタンプがある場合、受領側は不要
- ■データ改変できないシステムやクラウドサービスでの保存が可能
これらの方法で電子請求書が保存されていれば、スキャンの必要がなくなったことは経理事務業務において大きなメリットとなるでしょう。
参考:令和2年 規制改革実施計画|内閣府
参考:電子帳簿保存法Q&A(一問一答)|国税庁
2022年1月における電子請求書の法改正内容
2022年1月に電子帳簿保存法が改正されました。過去に行われた法改正に比べて、変更点が多くあるため、よく確認しましょう。
事前手続きの廃止
これまで電子帳簿保存やスキャナ保存を行う際に、税務署長から承認を得る必要がありました。
しかし令和4年1月1日以後の保存する国税関係の帳簿やスキャナ保存については、事前承認が廃止されました。電子取引は手続き不要ですが、適用が義務化されました。
タイムスタンプの要件が緩和
スキャナ保存時に行う電子データへのタイムスタンプは、最長約2か月に統一されました。電子取引についても同様です。
検索項目の要件緩和
電子データ保存およびスキャナ保存は、必要とされる検索項目が削減され、日付、取引、棋院額、取引先の3項目になりました。
適正事務処理要件の廃止
スキャナ保存は、相互けん制、定期的な検査などの「適正事務処理」の要件が廃止され、コストを削減できるようになりました。また、事務処理が2名以上必要でしたが、1名で行うことが可能になりました。
電子取引における電子データ保存の義務化
電子データでやり取りをしていた国税関係書類は、紙での保存が認められていましたが、現在は認められていません。
電子帳簿保存に対応しきれていない事業者には、2年間の移行準備期間が設けられています。2023年12月31日までの電子取引に限って、税務調査時に提出できる状態であれば、紙媒体での保存が許可されています。
罰則の強化
電子取引データやスキャナ保存の際に、隠ぺいなどの事実が発覚した場合は、重加算税が10%加重されます。この罰則規定は、令和4年1月1日以降に申告する国税に適用されます。
参考:電子帳簿保存法関係
参考:電子帳簿等保存制度特設サイト
電子請求書を利用する注意点
電子請求書は有効活用すると大変便利になりますが、必ずしも万能というわけではありません。ここでは、電子請求書を利用する際の注意点を説明します。
1.取引先企業が紙の請求書を必要とする場合に備える
電子請求書は便利なツールですが、電子請求書に消極的な企業もあります。また、URLをクリックして、請求書をダウンロードするようなシステムの導入に、抵抗を覚えるという場合もあるでしょう。相手企業のルールによっては、電子請求書を送信した後に紙の請求書を求められることも珍しくありません。
電子請求書に対応していない企業には、個別での対応が必要です。請求書は紙で保存する企業もいまだ多いため、相手企業の社内ルールなどを確認してから請求書の送付方法を検討するとよいでしょう。
2.フォーマット変更への対応を可能にする
Web請求書システムを使った場合、請求書のフォーマットは一つに統一されます。しかし、請求先の中には独自のフォーマットを指定してくるケースもあるでしょう。このようなイレギュラーなケースが見込まれる場合は、フォーマット変更が可能なシステムを導入することが重要です。
3.情報漏えいの不安を解消する
メール添付で電子請求書を送る場合やWeb請求書システムを使用する場合、セキュリティリスクが発生する可能性を忘れてはいけません。セキュリティ対策を万全にし、情報漏えいの不安を解消する必要があります。
電子請求書を活用する際の基本的な情報漏えい対策には、大きく分けて3種類の方法があります。
一つ目は、セキュリティ強度が高いデータセンターを使用することです。Web請求書システムを活用する場合、請求書データはサービスを提供しているデータセンター内のサーバに保管されます。そのため、サイバー攻撃に耐えうるセキュリティレベルのデータセンターをもつサービスの選定が必要です。
二つは、通信データの暗号化です。電子請求書はデータでやり取りするため、インターネットを介します。情報が盗まれないように請求書のやり取りは暗号化された通信を使用するなど、受送信時の対策が重要です。
最後に挙げられるのは、データのバックアップです。Web請求書システムのサーバは比較的セキュリティが高いものの、不正アクセスがあれば、すべてのデータが盗まれることも考えられます。システムを活用する場合は、バックアップの体制を確認・強化する必要があります。
上記で紹介したセキュリティ対策を実行し、情報漏えいを防ぐことが大切です。
電子請求書を利用するメリット
請求書のやり取りは毎月発生する業務です。企業規模が大きく取引先の多い企業であれば、請求書を作成して相手へ送る業務も非常に負担が大きくなります。請求書を電子化することで業務負担が軽減され、効率化につながります。ここからは電子請求書の利用による主なメリットについて説明します。
1.請求書発行・郵送コストの削減
紙の請求書を発行し郵送するためには送料がかかるため、請求書を発行する件数に比例してコストは大きくなっていきます。送料以外にも請求書を印刷し、封筒に入れる工程が発生するため、さまざまなコストと人件費がかかります。
取引数が多く、毎月1,000件の請求書を発行すれば、紙・インク・封筒を急激に消耗してしまうでしょう。1,000件近い請求書を郵送することで毎月10万円近くのコストがかかり、年間でのコストは100万円近くにもなるでしょう。
2.Web上での作成・発行による業務プロセスの効率化
請求書を印刷し封筒に入れ、郵送を手配するのに1通5分かかるとしましょう。、1,000件送ることを想定すると、およそ5,000分(約84時間)必要なことになります。
電子請求書の中においても、Web請求書であればオンライン上で作業が完結します。そのため業務時間の短縮や、請求書を送付するために発生する紙・インク・封筒・郵送にかかる費用の削減につながるでしょう。また、1,000件近くの請求書をメールで自動送信できるため、業務を大きく改善できます。
3.セキュリティ対策
請求書を送付する際は、紙とメール添付のどちらでも、誤送信の危険性があります。請求書には重要な情報が多く記載されているため、誤って送ってしまうと情報漏えいにつながります。
また電子請求書をメール添付で送信する場合は、データを傍受される可能性があるため、万全なセキュリティ対策が必要です。そこで有効なのが、Web請求書システムです。
Web請求書システムでは、オンライン上で請求書を作成しクラウド上の専用サーバに保管します。保管された請求書は該当するURLにアクセスすることで、閲覧・ダウンロードが可能です。URLを貼り付けたメールを請求先に送り、請求書の送付が完了します。
この方法であれば、メールを誤送信したとしてもサーバに保管している請求書を削除するだけで、手遅れになる前に対応できます。
また、請求書を保管しているサーバは、メールシステムよりもセキュリティが強固なデータセンターに設置されています。そのため、情報が漏れる可能性は極めて低いといえるでしょう。
関連記事
電子請求書を利用し、効率的にビジネスを加速させよう!
今では会議の資料や重要な契約書類なども電子化されてきています。書類を電子化すればコスト削減になるだけでなく、紙の使用を抑えることにつながるため環境配慮にもなります。電子化できる書類の中においても、請求書は定期的に発行する機会が多いため、電子化にメリットのある場合が大半です。
時間のかかる請求書作成業務を改善でき、セキュリティも強化できるため、Web請求書システムの活用がおすすめです。電子請求書を利用して、ビジネスの効率化を図りましょう。