経理アウトソーシング導入までの準備
経理アウトソーシングを導入するには、まず何をどのようにアウトソーシングするのかを見極めていく必要があります。
目的を決める
経理のアウトソーシングを利用するにあたり何を目的にするのかということは非常に重要になります。目的が不明確なままアウトソーシングを利用しても運用が失敗する可能性が高くなります。主に社内の課題を解決するために利用されることが多いので、自社にどのような経理の課題があるのかを洗い出しましょう。
- 経理部門のコストを下げたい
- 経理部門の教育コストと教育レベルが安定しない
- 経理を行える人材が社内にいない
- 経理部門の業務がブラックボックスになっている
- 経理部門の人員の質が向上しない
- 月次決算の締めを早期化したい
上記が一般的に経理アウトソーシングを利用している企業が掲げる目的になります。自社の課題の優先度を決定し、それを経理アウトソーシング会社を利用することで解決できるのかを見極めましょう。
自社の分析をする
経理アウトソーシングを利用する目的が決定したら、どの業務をアウトソーシングするのかを決めましょう。経理アウトソーシングを利用するには、もちろんコストがかかりますので、社内のリソースで対応出来ないかなども含め、検討すると良いでしょう。
また、自社経理部門が抱えている弱みや強みをこの際に把握するようにすると今後経理部門でトラブルがあった際も対応しやすくなります。
これらの検討を踏まえ、経理アウトソーシングを利用する方向になったら、アウトソーシングを利用することによるメリットとデメリットを理解し、自社に当てはまりそうな部分を理解しましょう。
かんたんに経理アウトソーシングのメリット・デメリットをご紹介します。
- メリット
- 時間的余裕ができるのでコア業務に集中できる
- ミスや不正の防止ができる
- デメリット
- 社内にノウハウがたまらない
- 税務関係のことは依頼出来ない(アウトソーシング先に税理士が所属している場合は別です)
経理アウトソーシングのメリット・デメリットは以下の記事で詳しく解説しています。
トラブルを避けるための注意点
経理は会社のお金というセンシティブな情報を扱う業務のため、アウトソーシングによるトラブルを防ぐためには、事前の準備が必要です。
業務の切り出し
アウトソーシングする業務の範囲やどこで作業を行うかなどを検討します。
- 1.作業範囲
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- 記帳代行のみの依頼か、もしくは経理業務全体を依頼するか
- 経理会計だけでなく、税務や財務の業務も依頼か
- 2.経理アウトソーシングでどういった効果を期待するか
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- コスト削減
- 業務の標準化、作業の軽減
- 経理部門の業務改善や効率化
- 経理業務の見直し、部門の再構築などのコンサル業務
- 3.作業実施場所
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- アウトソーサーが社内に常駐する、もしく月の数日間来社して業務を行う
- 業務を外部に切り出して、アウトソーサーの社内で行う
既存の社員や部門に対して理解を求める
アウトソーシングの活用を検討する際、経営側は経理業務の見直しやコストの削減といったメリットばかりに目がいきがちです。しかし、社員の側からすれば、これまで自分が担当していた業務をとられたり、雇用を脅かされるといった懸念を感じるかもしれません。
また、これまでの自分の業務や貢献に不満があったのかと、経営側への不信感につながることもあります。経理アウトソーシングの活用にあたっては、一度社内の経理データやワークフローを見直す必要がありますので、円滑な移行のためには現在担当している社員の協力が欠かせません。
とくに、古参の社員が経理業務を一手に引き受けているような場合や経理部門がある程度しっかりとしている企業の場合、アウトソーシングの導入にあたっては、担当社員の意見をきちんと聞き取り、納得の上で導入を進めていく必要があります。「ルーティン業務は外部のアウトソーサーに任せ、社員はより高度な仕事をしてもらいたい」など、導入目的を共有しましょう。
アウトソーシング先の選定
経理部門のアウトソーシング導入に社内の理解が得られたら、代行業者を探します。 「アウトソーシングの活用=コストの削減」というイメージを強く持っている場合、作業費用にばかり注目しがちですが、その他にも注目しておくポイントがあります。
個人事業主や中小企業をメインにしている、もしくは、大企業や外資系企業の経理(IFRS対応)に強みがあるなど、外注先企業ごとにサービス内容や強みが異なります。自社の規模や依頼したい業務の内容、企業の成長ステージなどに合わせた業者を選定しないと、あとで齟齬が生じる可能性があります。
また、経理情報というセンシティブな情報を扱うため、信頼性も大切です。「会計、税務、社会保険等、高度な専門的スキルを持っている」「ISO27001などの国際認証を保有している」「担当者の定着率が高く、継続的な依頼が見込める」といった点に注目して、アウトソーサー選びを進めましょう。
実際に契約から運用開始まで
アウトソーサーが決定したら、業務の引き継ぎや運用に移ります。経理分野は、全ての企業がある程度業務を標準化している分野なので、経験や実績のあるアウトソーサーであれば、移行マニュアルがあることが多いでしょう。
スケジュールの管理
あまり無理なスケジュールを組んでしまうと、引き継ぎ業務に対する負担が大きく、社員の日常業務に支障をきたす可能性も出てきます。また、業務移行期に社員とアウトソーサーのどちらがどの業務を担当するのか、明確にしなければなりません。
期の途中で移行する場合もあれば、期首で行う場合もあるでしょう。いずれの場合でも、どちらが何をするのかを明確にしないと支払いが漏れて取引先の信頼を損ねる、といったことになりかねません。
システムの移行
経理業務をアウトソーシングすることで、これまで紙で申請していた経費や残業、出張の申請などをクラウド上のシステムに移行する、といったことがあります。
その場合は、給与計算システムや人事システムなどとの連携も必要になるので、総務や人事といった部署の協力も欠かせません。業務フローの変更を実施しなければならないケースもあるため、社内への説明を丁寧に行いましょう。
準備を行い、スムーズな導入を進めよう
業務を見直す、新たな体制を構築するというのは、想像以上に反発が強く、労力も必要になります。経理アウトソーシングの活用を検討する場合は、余裕をもったスケジュールを組むことをおすすめします。