BCPの策定率は?最新データ
BCPの策定率は、調査によって数字が大きく異なります。帝国データバンクの調査(2026年6月発表)では、BCPを策定している企業は全体の21.4%で、前年より1.0ポイント増えて過去最高となりました。大企業は39.9%、中小企業は18.3%で、策定していない企業は40.7%と、いまだ4割を超えています。
一方、内閣府の調査(2025年度)では、大企業が75.8%で、前回より0.6ポイント下がりました。中堅企業は54.8%で前回より9.3ポイント伸び、その他企業は52.1%でした。
| 調査 | BCP策定率 |
|---|---|
| 帝国データバンク(2026年6月発表) | 全体 21.4%/大企業 39.9%/中小企業 18.3% |
| 内閣府(2025年度、2026年3月公表) | 大企業 75.8%/中堅企業 54.8%/その他企業 52.1% |
数字が違うのは、調査の対象と企業の分け方が違うためです。帝国データバンクは企業を「大企業」と「中小企業」に分けています。2026年5月18日~31日に調査し、2万2,749社のうち1万521社が回答しました。
内閣府は、資本金と常用雇用者数で「大企業」「中堅企業」「その他企業」に分けています。5,052社のうち1,759社が回答し、回収率は34.8%でした。区分が違うため、両者の数字を並べて高い・低いと比べることはできません。自社の規模に近い区分の数字を、同じ調査の中で読むと判断しやすくなります。
カテゴリー別:BCP策定率
BCP策定率を、業界別・企業規模別・地域別に見ていきましょう。
業界別:金融・保険業で高い傾向にある
内閣府の調査(2025年度)によると、もっともBCP策定率が高いのは金融・保険業で、82.2%です。建設業が75.7%、製造業が66.3%と続きます。一方で、運輸・郵便業、サービス業、不動産・物品賃貸業などは、策定率が50%を下回っています。小売業と宿泊・飲食サービス業は、前回調査からそれぞれ10ポイント以上伸びました。業種別の策定率は以下のとおりです。
| 業界 | BCP策定率 |
|---|---|
| 金融・保険業 | 82.2% |
| 建設業 | 75.7% |
| 製造業 | 66.3% |
| 情報通信業 | 57.9% |
| 卸売業 | 50.0% |
| サービス業 | 49.6% |
| 運輸・郵便業 | 48.8% |
| 小売業 | 47.9% |
| 宿泊・飲食サービス業 | 41.0% |
| 不動産・物品賃貸業 | 36.9% |
企業規模別:大企業で高い傾向にある
国は、大企業のBCP策定率を100%に近づけ、中堅企業では50%以上にすることを目標に掲げています。内閣府が発表する近年のBCP策定率の推移は以下のとおりです。
| 年度 | 大企業 | 中堅企業 |
|---|---|---|
| 2021年度 | 70.8% | 40.2% |
| 2023年度 | 76.4% | 45.5% |
| 2025年度 | 75.8% | 54.8% |
2025年度は、中堅企業が前回から9.3ポイント伸びて目標の50%を超えた一方、大企業は前回とほぼ横ばいです。大企業は目標の100%との差が残っています。
なお、帝国データバンクの調査でも、大企業の策定率(39.9%)は中小企業(18.3%)を大きく上回っています。規模による格差は、どちらの調査でも見られる傾向です。
地域別:富山・高知などで策定への意向が高い
帝国データバンクの調査(2026年)では、BCPを「策定している」「策定中」「策定を予定・検討中」のいずれかと答えた企業を『策定意向あり』としています。その割合は、全国では50.5%です。
都道府県別では、富山県(62.5%)と高知県(61.7%)が高く、香川県(59.5%)、静岡県(58.3%)が続きます。この数字は『策定している企業』の割合ではなく、策定している企業と、策定中・検討中の企業を合わせたものです。策定への意識の高さを示す指標として読みましょう。
BCPの必要性・重要性とは
BCPを策定していなければ、被災時に事業を復旧・継続することが困難になります。
実際に、東日本大震災では多くの企業が倒産しました。帝国データバンクの調査によると、震災被害が直接・間接の要因となった倒産は、2011年3月から2022年2月末までの累計で2,085件にのぼります。企業が直接被災するだけでなく、関連企業の被災によって倒産した企業も少なくありません。特に地震や台風が多い日本では、自社の存続のためにBCP策定は欠かせないでしょう。
また、取引先からBCP策定を求められることもあります。上述したような、関連企業の被災による二次被害を取引先が危惧する場合です。その取引先とビジネスを続けたいのであれば、BCP策定は避けられません。
逆に、BCPを策定すれば大きなメリットを受けられます。被災時に適切に対応できるだけでなく、関連企業や顧客からの信頼性が向上します。BCP策定を単なる防災方法ではなく、経営戦略の1つとして捉えることが大切です。
業種によっては、BCPの策定が法令で求められています。例えば介護サービス事業者は、感染症や非常災害の発生時に、サービスの提供を継続するための計画を省令によって策定することが求められています(例:訪問介護)。こうした業種では、BCPの策定は任意の取り組みではなく、事業を続けるための前提になっています。
BCP策定における課題
BCPを策定している、あるいは策定を検討している企業が多い中、なかなか踏み切れない企業も少なくありません。その理由を見ていきましょう。
BCP策定のスキルやノウハウがない
帝国データバンクが発表した2026年のデータによると、BCPを策定していない理由は以下のとおりです(上位4項目)。
| BCPを策定しない理由 | 回答率 |
|---|---|
| BCP策定に必要なスキル・ノウハウがない | 42.2% |
| 人材確保が難しい | 33.5% |
| 時間が足りない | 28.1% |
| 実践的に使える計画にするのが難しい | 25.4% |
このように、スキル・ノウハウ不足を挙げる企業が4割を超えており、もっとも深刻な課題であるといえます。
外部インフラに関するBCP策定が難しい
BCPを策定する際には外部インフラの情報を集めなければなりません。災害時にそれらのインフラにどのような被害を受け、その結果自社にどのような影響を及ぼすのか想定する必要があります。
しかし、実際にどのような被害が生じるかは無数のケースが考えられます。停電や断水がそれぞれどの程度の範囲・期間に及ぶのか、あらかじめ予想するのは困難です。
内閣府の調査(2025年度)では、リスクを想定した経営をしている、または検討中の企業に、想定しているリスクを尋ねています。「通信(インターネット・電話)の途絶」を挙げた企業は47.4%でした。「インフラ(水道、ガス等)の途絶」が27.6%、「インフラ(道路等の交通インフラ)の途絶」が27.5%と続きます。
このリスクへの対応を進める上での課題としては、「自社従業員への取組の浸透」が86.2%、「取組時間・人員の確保」が48.4%となっています。インフラの停止を想定するだけでなく、想定を社内に共有し、訓練に落とし込む時間と人を確保することも、同じように重要な課題です。
BCP策定の課題に対する対策
では、BCP策定に関する課題にはどのような対策をすればよいのでしょうか。
BCPの全体像を理解してから作成する
初めから完璧なBCPを策定しようとすると頓挫する可能性があります。特にスキルやノウハウの不足を感じている企業は、まず全体像の理解から始めましょう。内閣府の「事業継続ガイドライン」(2023年3月)は、「方針の策定」「事前対策及び教育・訓練の実施」「見直し・改善」を柱にしています。
まずは、経営層が災害対策の目標と基本方針を決め、運用する体制を整えましょう。その後は、事前対策と訓練を進め、訓練で見つかった不備や不明点を見直しと改善につなげるサイクルを繰り返すことが重要です。このサイクルを積極的に回して、徐々にノウハウを蓄積していきましょう。
政府や企業の公開データを参考にする
有価証券報告書を提出する会社は、「企業内容等の開示に関する内閣府令」により、「事業等のリスク」を記載することが求められています。また、内閣府が「事業継続ガイドライン」を公表しています。
このように、現在多くのBCP情報が公開されており、この流れは今後も続くと予想されます。そのため、BCPを策定する際にはそれらの公開情報を参考にできます。企業の公開データや関係省庁の情報を調べてみましょう。帝国データバンクと内閣府の最新の調査も、あわせて参考にしてください。
BCP(事業継続計画)対策ソリューションに関するFAQ
BCPは策定率の数字だけを見ても、自社が何から着手すべきかは判断しにくいものです。ここでは、策定を検討する担当者から質問の多い点をQ&A形式で整理しました。
- Q1:BCP策定率が高いのはどの業界ですか?
- 内閣府のデータ(2025年度)では、もっとも高いのは金融・保険業の82.2%です。次いで建設業が75.7%、製造業が66.3%と続きます。一方、不動産・物品賃貸業は36.9%にとどまっています。
- Q2:中小企業でもBCPを策定する必要がありますか?
- 必要性は高まっています。帝国データバンクの調査(2026年)では、中小企業の策定率は18.3%と大企業(39.9%)を大きく下回っています。国は、中堅企業の策定率を50%以上にする目標を掲げています。取引先から策定を求められるケースもあります。関連企業の被災による二次被害を、取引先が懸念するためです。
- Q3:BCPを策定しない理由として最も多いのは何ですか?
- 帝国データバンクの2026年のデータでは、「BCP策定に必要なスキル・ノウハウがない」が42.2%で最多です。人材確保の難しさが33.5%、「時間が足りない」が28.1%と続きます。規模による策定率の差も大きく、大企業は39.9%、中小企業は18.3%です。
- Q4:ノウハウがない状態でも策定を始められますか?
- 始められます。初めから完璧を目指すと頓挫しやすいため、まず全体像を理解し、方針の策定と運用体制の確立から着手しましょう。訓練で不備を洗い出し、改善を重ねるほどノウハウが蓄積されます。
- Q5:外部インフラの被害はどう想定すればよいですか?
- 停電や断水の範囲や期間を事前に予測するのは難しいものです。内閣府の調査(2025年度)では、通信や水道・ガス、道路などの途絶を想定リスクに挙げる企業がありました。内閣府の「事業継続ガイドライン」や関係省庁の公開データを参考にすると、想定の精度を上げられます。
- Q6:BCPの策定は義務ですか?
- 業種によって異なります。例えば介護サービス事業者は、省令によって業務継続計画(BCP)の策定が求められています(例:訪問介護)。その他の企業については、自社の業種に関する法令や、官公庁のガイドをあわせて確認してください。取引先から策定を求められることもあります。
BCPの策定率や重要性を知り、自社でも実施しよう!
BCPは自社の事業を存続させるほか、関連企業と良好な関係を築くために必要な対策です。カテゴリー別のBCP策定率は以下のようになっています。
- 業界別
- 金融・保険業が高い(82.2%)
- 企業規模別
- 大企業が高い(帝国データバンクの調査で大企業39.9%、中小企業18.3%)
- 地域別
- 策定への意向は富山・高知などで高い(帝国データバンク・策定意向あり)
ノウハウの不足や外部インフラについての想定の難しさから、BCP策定に踏み切れない企業も少なくないでしょう。そのような場合は、全体像の理解や公開データの参照から始めて見てはいかがでしょうか。
参照:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)|帝国データバンク
参照:令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査|内閣府
参照:事業継続ガイドライン|内閣府
参照:【震災から11年】「東日本大震災関連倒産」動向調査(2022年)|帝国データバンク
参照:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準|e-Gov法令検索
参照:企業内容等の開示に関する内閣府令|e-Gov法令検索


