カテゴリー別:BCP策定率
BCP策定率を、業界別・企業規模別・地域別に見ていきましょう。
業界別:金融業界で高い傾向にある
内閣府が発表したデータによると、もっともBCP策定率が高いのは金融・保険業で、2017年度では66.0%となっています。2017年度におけるそのほかの業種でのBCP策定率は以下のとおりです。
業界 |
BCP策定率 |
情報通信業 |
55.9% |
運輸・郵便業 |
50.1% |
製造業 |
45.0% |
建設業 |
42.3% |
サービス業 |
37.1% |
卸売業 |
36.6% |
不動産・物品賃貸業 |
25.9% |
小売業 |
17.6% |
宿泊・飲食サービス業 |
15.0% |
また、独立行政法人経済産業研究所の調査データによると、教育や医療・福祉関係の企業でもBCP策定率は低くなっています。それに対し、金融業や情報通信業では同調査結果でも策定率は高くなっています。
企業規模別:大企業で高い傾向にある
国は2020年までに大企業のBCP策定率が100%、中小企業では50%に到達することを目標として掲げています。それに対し、内閣府が発表する近年のBCP策定率の推移は以下のとおりです。(カッコ内は「策定中」の企業も含めた数値です)
年度 |
大企業 |
中小企業 |
2007年度 |
19%(35%) |
12%(16%) |
2009年度 |
28%(58%) |
13%(27%) |
2011年度 |
46%(72%) |
21%(36%) |
2013年度 |
54%(73%) |
25%(37%) |
2015年度 |
60%(75%) |
30%(42%) |
国が掲げる目標に向けて順調に推移しているといえるでしょう。
地域別:四国で高い傾向にある
株式会社帝国データバンクの発表によると、地域別のBCP策定率は以下のとおりです。(カッコ内は「策定中」を含めた数値)
地域 |
BCP策定率 |
全国 |
14.7%(22.1%) |
北海道 |
11.7%(17.5%) |
東北 |
13.2%(18.9%) |
北関東 |
16.6%(26.2%) |
南関東 |
17.8%(25.0%) |
北陸 |
11.2%(17.7%) |
東海 |
14.5%(24.1%) |
近畿 |
13.1%(20.6%) |
中国 |
13.9%(19.0%) |
四国 |
16.0%(26.5%) |
九州 |
8.6%(15.8%) |
四国は、策定率では北関東や南関東に劣るものの、策定中の企業を含めた数値ではトップです。このデータでは、全国でもっともBCP策定への意識が高い地域と言えるでしょう。
そのほか、東海や近畿では策定済み・策定中の企業の割合が高いのに対して、九州や北海道では低い数値に留まっています。
BCPの必要性・重要性とは
BCPを策定していなければ、被災時に事業を復旧・継続することが困難になります。
実際に、東日本大震災では多くの企業が倒産しました。企業が直接被災するだけでなく、関連企業の被災によって倒産した企業も少なくありません。特に地震や台風が多い日本では、自社の存続のためにBCP策定は欠かせないでしょう。
また、取引先からBCP策定を求められることもあります。上述したような、関連企業の被災による二次被害を取引先が危惧する場合です。その取引先とビジネスを続けたいのであれば、BCP策定は避けられません。
逆に、BCPを策定すれば大きなメリットを受けられます。被災時に適切に対応できるだけでなく、関連企業や顧客からの信頼性が向上します。BCP策定を単なる防災方法ではなく、経営戦略の1つとして捉えることが大切です。
BCP策定における課題
BCPを策定している、あるいは策定を検討している企業が多い中、なかなか踏み切れない企業も少なくありません。その理由を見ていきましょう。
BCP策定のスキルやノウハウがない
株式会社帝国データバンクが発表した2019年のデータによると、BCPを策定していない理由は以下のとおりです。
BCPを策定しない理由 |
回答率 |
BCP策定に必要なスキル・ノウハウがない |
43.9% |
人材確保が難しい |
33.7% |
書類作りで終わってしまう |
27.9% |
時間が足りない |
26.6% |
必要性を感じない |
24.0% |
自社だけ策定しても仕方がない |
23.2% |
費用が足りない |
13.3% |
ガイドラインなどに自社の業種における例示がない |
5.7% |
公的機関の相談窓口が分からない |
4.3% |
コンサルティング会社の相談窓口が分からない |
3.3% |
このように、スキル・ノウハウ不足を挙げる企業が4割を超えており、もっとも深刻な課題であるといえます。
外部インフラに関するBCP策定が難しい
BCPを策定する際には外部インフラの情報を集めなければなりません。災害時にそれらのインフラにどのような被害を受け、その結果自社にどのような影響を及ぼすのか想定する必要があります。
しかし、実際にどのような被害が生じるかは無数のケースが考えられます。停電や断水がそれぞれどの程度の範囲・期間に及ぶのか、あらかじめ予想するのは困難です。
実際に、内閣府の発表によると30.6%の企業が外部インフラに関するBCP策定に課題を感じています。大企業と中小企業に分けて見ても、ともに外部インフラについての策定が課題のトップに上がっています。
BCP策定の課題に対する対策
では、BCP策定に関する課題にはどのような対策をすればよいのでしょうか。
BCPの全体像を理解してから作成する
初めから完璧なBCPを策定しようとすると頓挫する可能性があります。特にスキルやノウハウの不足を感じている企業は、まず全体像の理解から始めましょう。BCPの流れは以下のとおりです。
- 1.方針の策定
- 2.BCP運用体制の確立
- 3.事業の理解
- 4.準備・事前対策
- 5.BCP内容の作成
- 6.BCPの定着
- 7.テスト・更新
1と2で災害対策の目標設定と運用体制を整え、3~7はサイクルとして繰り返します。
この中で特に注意すべきなのは7です。ノウハウがないうちは3~6の段階で適切な検討が難しいかもしれませんが、その問題点を7で洗い出します。策定したBCPに従って実際に訓練を行い、不備や不明点を見つけてBCPを改善していくのです。
積極的にこのサイクルを回し、徐々にノウハウを蓄積していきましょう。
政府や企業の公開データを参考にする
2003年3月に「企業内容等の開示に関する内閣府令」が改正され、企業には事業のリスクについて情報開示することが義務付けられました。また、経済産業省がBCPのガイドラインを発表しています。
このように、現在多くのBCP情報が公開されており、この流れは今後も続くと予想されます。そのため、BCPを策定する際にはそれらの公開情報を参考にすることができます。企業の公開データや関係省庁の情報を調べてみましょう。
BCPの策定率や重要性を知り、自社でも実施しよう!
BCPは自社の事業を存続させるほか、関連企業と良好な関係を築くために必要な対策です。カテゴリー別のBCP策定率は以下のようになっています。
- 業界別
- 金融業界が高い
- 企業規模別
- 大企業が高い
- 地域別
- 四国が高い
ノウハウの不足や外部インフラについての想定の難しさから、BCP策定に踏み切れない企業も少なくないでしょう。そのような場合は、全体像の理解や公開データの参照から始めて見てはいかがでしょうか。
参照:「事業継続計画(BCP)に関する企業意識調査」の結果と考察|独立行政法人経済産業研究所
「事業継続計画(BCP)に関する企業意識調査」の結果と考察|帝国データバンク
四国地区 事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2018 年)|株式会社帝国データバンク
事業継続計画における課題と対応策|大和総研