SDGsとは
ちまたで騒がれるようになったSDGsですが、実際にSDGsとはなんなのか、理解している方は少ないかもしれません。まずは、最低限押さえておきたいSDGsについて確認していきましょう。
SDGsの概要
SDGsは、以下の三つの用語の頭文字をとった用語です。
- -Sustainable
- 持続可能な
- -Development
- 開発
- -Goals
- 目標
このため、SDGsは、しばしば「持続可能な開発目標」と呼ばれます。SDGsは、社会、環境、経済の課題を解決した未来像を実現するために、2015年9月に国連が定めたものなのです。
SDGsでは具体的に、健康や教育、エネルギーといった分野ごとに17のグローバル目標と169の達成基準が設定されました。
- <17のグローバル目標>
-
- 1.貧困をなくそう
- 2.飢餓をゼロに
- 3.すべての人に健康と福祉を
- 4.質の高い教育をみんなに
- 5.ジェンダー平等を実現しよう
- 6.安全な水とトイレを世界中に
- 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 8.働きがいも経済成長も
- 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
- 10.人や国の不平等をなくそう
- 11.住み続けられる まちづくりを
- 12.つくる責任 つかう責任
- 13.気候変動に 具体的な対策を
- 14.海の豊かさを守ろう
- 15.陸の豊かさも守ろう
- 16.平和と公正をすべての人に
- 17.パートナーシップで目標を達成しよう
その取り組みは、国連の枠を飛び越え、企業が経営に積極的に導入するようになったり、自治体が未来都市を実現するためにSDGsの考え方を取り入れたりしています。
SDGsが注目される背景
SDGsの考え方の根底には、持続可能でよりよい世界を実現することがあります。逆にいうと、<このままでは明るい未来を築くことが難しいという危機感があるともいえるでしょう。
実は、SDGsの考え方が注目されるようになったのは、今に始まったことではありません。戦後、世界的な高度成長が巻き起こる中、1970年ごろから人口増加や環境汚染が懸念されるようになりました。さらに、世界的な貧富の差も拡大します。こうして、国連で持続可能性が議論されるようになったのです。
しかし、2000年に入っても、環境汚染や貧富の差は、収まるどころか状況は悪化するばかりです。特に近年では、ストローが刺さったウミガメに代表されるように、海洋プラスチック汚染が深刻化。環境活動家グレタさんなどの若者の発言力も高まっています。
こうしてSDGsは、世界に広がり、企業や自治体、そして各個人が取り組むべき目標へと認知されるようになっているのです。
ESGとの違い
SDGsと似た概念としてESGが挙げられます。ESGは、以下の頭文字をとった用語です。
- -Environment
- 環境
- -Social
- 社会
- -Governance
- ガバナンス
ESGは、国連から始まり世界中に広がった概念ではありません。株主が投資対象を選定する際、ESGそれぞれの取り組みが重視されるようになりました。ESGへの取り組みが十分な企業は、将来にわたって存続し、成長できる可能性が高いからです。ESGを重視して投資先を選定することを、ESG投資と呼びます。
このように、ESGとSDGsは、企業が目指すべき方向性は似通っているものの、その概念は根本的に異なります。特に、中小企業の場合は、SDGsの考え方を重視し、株主だけではなく広くステークホルダーに訴求するという考え方が重要になります。
中小企業のSDGsの実践事例
大企業を中心に普及しているSDGsへの取り組みですが、中小企業でも広がりを見せつつあります。たとえ規模の小さな中小企業でも、持続可能な未来を創るためにできることは少なくないのです。それでは、中小企業が実践しているSDGsの取り組みには、どのようなものがあるのでしょうか。
廃棄していた食材で弁当販売をする飲食店
地域の小さな居酒屋を経営していたある飲食店は、キャベツの芯や、硬い牛スジ、タン先など、毎日大量の食材を廃棄していました。しかし、これらの食材は、薄くスライスしたり、じっくり煮込んだりすることで美味しく食べることができます。そこで、この飲食店では、従来は廃棄していた食材を使って、弁当販売を始めたのです。
弁当は、居酒屋営業で余った食材を使っているため、ほとんど材料費がかかりません。しかし、ホイコーローや牛スジ煮込みに姿を変えた弁当は評判を呼び、毎日30個ほどが売れる安定収入源になりました。食品ロスを減らしながら、収益強化につながる取り組みとなったのです。
女性が働きやすい環境を作って成長するタクシー会社
あるタクシー会社では、深刻な人手不足に悩んでいました。また、横ならびのタクシーサービスに対し、競争優位を築くのが難しいという現実もありました。そこで、同社では女性の活用へと舵を切ります。無料の保育所を事業所内に設置したり、収入を安定化させるための固定給制度を導入したりしました。
こうした取り組みにより、人手不足を解消するだけではなく、子育て支援タクシー、陣痛タクシーといった女性ならでは視点でさまざまな新しいサービスを生み出すことができました。同社は、競合が追随できない全く新しいタクシーサービスで収益力を強化することができました。
このような、女性の力を利用する取り組みは、SDGsが掲げる「ジェンダー平等を実現しよう」と合致したものとなっています。
フェアトレードで付加価値の高いタオルを販売するメーカー
明治に遡る歴史を持つある製造業者は、製造から販売まで一貫した体制をもつ老舗のタオルメーカーとして知られていました。
同社では、従来にはない、自然にやさしく、吸水力に優れたタオルを開発します。このときに採用した考え方が、まさにSDGs。人や国の不平等をなくし、持続可能な消費と生産のパターンを確保するために、中小企業では珍しいフェアトレードのセネガル製コットンを原材料に選んだのです。
同社の取り組みは、直営店の店頭や、地元の学校への工場見学、メディアを通じて広く発信しています。こうして、同社のブランド力は向上、強固な固定客も確保することができました。同社では、工場排出ゴミの固形燃料化やCO2排出量削減などを通じて、環境配慮型の経営にも力を入れています。
中小企業がSDGsに取り組むメリット
SDGsと聞くと、コスト負担が大きく、中小企業が実践していくためにはハードルが高いと思われるかもしれません。しかし、SDGsの取り組みは、中小企業に多くのメリットをもたらします。持続可能な社会を目指す取り組みが、自社が長期にわたり成長するためのきっかけとなるのです。
企業イメージ、信頼性の向上
この社会を将来にわたって持続させるために、さまざまな問題が顕在化しています。環境問題に、気候変動、ジェンダーフリーなど、解決しなければならない課題への注目度は高まっているといえるでしょう。
これらの課題に向き合い、これを解決するための取り組みは、好感度を得やすく、企業イメージは向上します。中小企業ならではの、地域に密着した取り組みでも、十分に消費者の支持を得ることができるのです。
企業イメージや、企業の信頼性が向上すれば、ロイヤリティが高まり、固定客との関係性を強めることができます。SDGsに取り込む企業に共感する顧客は、容易に自社から離れることはありません。クチコミにより、新たな顧客を獲得することにも期待が持てます。
従業員のモチベーションの向上
企業の取り組みに共感し、ロイヤリティを高めるのは、顧客だけではありません。自社で働く従業員も、働くことに誇りを持ち、モチベーションを高めて仕事を遂行してくれるでしょう。このような状態で勤務する従業員であれば、仕事の質を高めることはもちろん、新たなアイデアや方法を生み出しくれる可能性が高いです。
深刻な人手不足がおそう中小企業において、ただ手をこまねいているだけでは人は集まりません。SDGsの取り組みにより、企業自体の魅力を高めるという考え方も重要になるのです。
コスト削減
特に環境対策などでは、中小企業では負担が大きく、コストがかかると考える経営者もいるでしょう。
しかし、SDGsの取り組みは、なにもコスト負担が前提となるものだけではありません。先の事例で紹介したように、従来は廃棄していた食材を利用するといった少しのアイデアと発想の転換で、中小企業ならではの取り組みはできるはずです。環境対策の場合であれば、原材料や水道光熱費の削減を実現しやすく、コスト削減に直結しやすいのです。
場合によっては、そのままでは難しい値上げも、付加価値を高めて消費者の共感を呼び、値上げも実現できるかもしれません。SDGsの取り組みは、中小企業の収益力を向上させる可能性を秘めているといえるでしょう。
中小企業だからこそできるSDGsを
大きな市場でダイナミックな企業活動を進める大企業は、SDGsの取り組みに対し、ときに巨額の費用を投じて派手な活動をすることもあるかもしれません。場合によっては、ESG投資も視野に入れ、投資家からの賛同を得る目論見もあるでしょう。だからといって、中小企業も同じような取り組みをする必要があるわけではありません。
規模が小さいながらも、地域に愛され、なくてはならない中小企業は少なくないでしょう。規模が小さいからできる、中小企業らしいSDGsはなんなのか。きっと、そうした小さな取り組みが、企業を発展させ、ひいては社会全体の持続可能性を高めてくれるはずです。