人材ポートフォリオとは
人材ポートフォリオは、人事の仕事をするうえで基本的な概念です。具体的にはどのような考え方なのでしょうか。
ポートフォリオとは
まずポートフォリオという言葉の意味を考えてみましょう。ポートフォリオとは元々、書類を整理するカバンのことを指していました。それが金融用語として、複数の資産を分散して保有することを意味するようになりました。また、クリエイティブ業界では自分の作品実績をポートフォリオと呼んでいます。クリエイターにとってはまさに資産だからです。
つまりポートフォリオは、自分の資産を複数の分野の異なる軸に整理することを意味しています。
人材ポートフォリオの定義
人材ポートフォリオは、主に人事用語として使われる言葉です。人材ポートフォリオとは、企業が事業計画を達成するために、どういった種類の人材がどれくらい必要かを分析したものです。
事業に必要な人材のタイプを2つ以上の軸で分け、それぞれの軸で区切られたゾーンの人材の人数を人件費と照らし合わせて調整し、全体最適化した人員数を求めることができます。
人材ポートフォリオの検討手順
では実際に、人材ポートフォリオの検討手順を考えてみましょう。
1.自社にあった「軸」を決める
まずは自社に合った軸を決めましょう。もっとも一般的な軸は、専門性と業務の難易度です。
他の軸の例としては、汎用性があります。汎用性が高い業務の人材は、社外から獲得することができます。一方で汎用性が低い業務では、社内で人材を育成するしか人材調達方法がありません。このように、何を検討したいかによって自社に合った軸を考えましょう。
2.社内の人材タイプを定義する
先ほどの専門性と難易度の軸の例で考えてみましょう。専門性が高く、難易度が高い業務は社内でも最も重要な業務と言えるでしょう。一方で専門性が低く、難易度も低い業務は誰でもできる業務です。
専門性・難易度が高い業務に必要な人材を重要人材、反対に両者が低い人材を汎用人材というように、人材のタイプを定義していきます。
3.タイプごとの人員数を検討する
タイプを定義したら、現状のタイプごとの人員数をカウントします。また、事業計画を達成するための人材ポートフォリオであれば、各タイプの人材が何名必要なのかを検討しましょう。
4.当てはめた結果から分析を行う
人材ポートフォリオづくりの結果、例えば汎用人材が社内に多いのに対し、重要人材がほとんどいないことがわかったとします。そのような企業では、組織全体の生産性が低下していると考えられます。こうした分析をすることで、いま取り組むべき人事課題が見えてくるのです。
人材ポートフォリオをつくる際の注意点
人材ポートフォリオづくり自体はそんなに難しいことではありません。しかしいくつか注意すべき点があります。
目的を考える
まずは何よりも人材ポートフォリオをつくる目的が必要です。事業計画達成のためなのか、人員整理を行うためなのか、目的によって人材ポートフォリオは大きく異なります。
バランスがよければいいわけではない
人材ポートフォリオのシミュレーションで、よく勘違いしがちなのが各タイプの人材をバランスよく確保することです。一般的に企画する人材よりも、実行する人材の方が多く必要です。仮に企画と実行の人員数を同じにしてしまった場合、実行力が低下する可能性もあります。
バランスよりも、何を達成したいか、どうすれば達成できるのかを目的として人材ポートフォリオを考えましょう。
人材ポートフォリオと適正配置
人材ポートフォリオをつくることができたら、最後に人材ポートフォリオの最適化を行います。
例えば事業計画達成に必要な企画人材が少ないのであれば、社外から採用により補充する、あるいは社員を異動させて育成することで全体のバランスを整えていきましょう。反対に実行する人員が多すぎる場合は人員整理を行う、あるいは他の業務に転換するといった措置が必要です。
また、こうした人材ポートフォリオによる適正配置にはシミュレーションが不可欠です。シミュレーションには、タレントマネジメントシステムなど最新のシステムを使用すれば簡単に行うことができます。システムの利用も含めて、人材ポートフォリオづくりを検討していきましょう。
まとめ
人材ポートフォリオは一見、難解な概念に見えます。しかし実際には軸を決めて人材を分類するという極めて単純な方法です。単純な方法ではあるものの、分析ツールとしては非常に役立ちます。事業計画達成や人員整理など、人事の業務に不可欠な考え方といえるでしょう。ぜひあなたも人材ポートフォリオ分析をやってみてください。