原価管理システムの基本機能一覧
原価管理システムには主に以下のような機能があります。
システムによってはできない機能があったり、製造業向けや建設業向けなどの業種に特化した機能が搭載されていたりします。ではここから、これら機能の特徴を解説していきます。
機能1:原価計算 - 原価計算を自動で算出
原価管理システムでは必要な項目を入力するだけで自動で原価計算をして、原価管理を適切に行うことが可能です。原価計算には以下の種類があります。
- 個別原価計算
- 個々の製品に関する原価を計算すること。特に受注生産を行っている場合は、個別原価計算をすることが多いです。
- 総合原価計算
- 特定の期間内に発生した原価を計算すること。全ての費用と製造した製品の数で計算をおこない、大量生産の場合は総合原価計算を使います。
- 全部原価計算
- 製品の製造にかかった費用を全て原価として計算することです。
- 部分原価計算
- 部分原価計算は全ての費用ではなく、部分的な費用を原価として計算します。
- 実際原価計算
- 実際に発生した原価をもとに計算する原価計算方法です。
- 標準原価計算
- 製品に対する費用の金額を目安に設定する計算方法です。
適切な方法で原価計算することで、原価に関する情報や、その変化を可視化できます。
機能2:原価差異分析 - 標準原価と実際原価の算出
原価管理システムを使えば、想定していた標準原価・予算と実際原価(実績)を比較する差異分析を行えます。原価の差異を計算・分析することで、原価が高くなっている原因を追究・改善できるでしょう。
原価の差異には大きく分けて「有利差異」と「不利差異」の2種類があります。有利差異とは予定していた原価よりも低いことです。それに対して、不利差異とは予定していた原価よりも高いことを指します。この差異の原因を分析し、改善を繰り返していくことが重要です。
機能3:損益計算 - 製品別の収益性判断
原価管理システムは生産後の原価低減が重要視されてきたため、競争力のある価格帯を実現して利益を上げるためのシステムという見方はされていませんでした。
しかし、これから発生する可能性のあるコストを予め減らし原価を考える仕組みとして原価管理システムの機能の一環に収益性判断という機能があります。通常の原価計算機能に加えて、製品別のプロダクトライフサイクルコスト(調達・製造・使用・廃棄の段階をトータルしたもの)を把握することが可能で、これにより限界利益が判断でき、収益性や機会損失などの分析が可能です。
この機能により、製品の企画・設計段階で、利益計画に基づいて製品の目標利益と目標原価を決定します。もちろん収益性判断は一長一短に行かない部分もありますが、製造変動費だけでなく販売変動費なども製品に加えることで正確なCVP分析(原価・営業量・利益の相関関係分析)を行い、製品別の収益性判断を正しく行うことができます。
機能4:原価シミュレーション - リスク管理や経営戦略の立案
原価シミュレーションによって、原価変動が把握できるようになります。価格を抑えるためには原価をしっかりと把握する必要があるので、少しの原価の変動も企業にとっては命取りになる場合があります。そのため、原価の変動を予測し対応策を考える必要があるのです。
さらに、原価管理システムは蓄積した原価データから中長期の経営シミュレーションを立てられます。ERP(統合業務パッケージ)のように、ERPの原価情報を活用して経営情報に活かすことができるのです。
他にも利益目標を重視した方法や現状の状態をベースにした方法など、企業や業種による様々な条件をクリアし、理想と現実が乖離しないシミュレーションを実現する機能を持っています。製品の多くは、標準原価や予算原価シミュレーション、期中の予算修正シミュレーションにも柔軟に対応できるでしょう。
機能5:配賦 - 多段階の配賦が可能
配賦は企業によって異なるものですが、部門別配賦から製品別配賦の順で計算する場合やその逆もあります。配賦は費用を配分処理するものなので、より原価の精度をあげようとしても、配分処理する以上の精度には限界があるので配賦基準が重要になってきます。1つの部門が1つの製品を管理する訳ではないので、より複雑な配賦に対応する必要があります。
そこで配賦対象となる費用に対して予め配賦パターンを定義することができる機能があります。例えば部門や場所、工程や取引先ごとに配賦方法を設定することです。労務費の配賦は工数計算できない部署は製造原価で配賦し、科目設定を変えずに計算する事ができるようになっています。
原価計算システムの多くは一般的な部門別・製品別配賦だけでなく、部門や品群ごとに配賦方法を設定する機能があります。
機能6:システム連携 - スムーズなデータ共有
原価管理システムは単体で利用するのではなく、既存のシステムと柔軟に連携できます。そのため、販売管理システムや在庫管理システム、会計システムと連携することで、ERPのような経営情報の一元管理を実現することも可能です。
ERPの一部として利用する方法もありますが、他社のERPと連携できる製品も近年登場してきています。「販売管理システムに搭載されているから」や「他社製品と連携できないから」と諦める必要はなく、自社に必要な機能を持つ原価管理システムを導入も可能になっています。
機能7:セキュリティ対策 - 内部統制対応
今や内部統制はどの企業にとっても重要な課題です。原価管理システムはそれ自体が持つ数字が企業の財産になるからです。最近の製品の多くは様々な管理や承認機能を搭載しています。
アクセスに関するコントロールを中心に、パスワード管理、部門別や業務レベル別のアクセス管理などが可能になっています。また外部出力に関する設定や操作履歴・データ更新履歴などの監査証跡機能やデータ改ざん防止機能など、内部統制に対応した機能を持っています。
効率的なPDCAサイクルを実現するための原価管理システム
原価低減を実現するためには、原価管理部門や経理部だけでなく、実際の現場を知る製造や購買、設計部門などの会社全体の連携が非常に重要です。原価管理システムは各部門別の用途別のアウトプットを出す事が可能です。多くの製品はこの利用者視点に立ったものが特長です。
ここでは基本的な原価管理の機能を紹介しましたが、製造業や建設業(建築資材/工事原価)などの業界特有の原価管理の方法があります。土木工事などでも材料費や外注費、労務費を原価として工事台帳などで管理します。このように各業界の慣習に合わせた原価管理システムが用意されています。
業種、業界に関わらず、原価低減は従業員から会社全体までを俯瞰した「全体最適」の視点で原価計算を行う必要があります。一部の部門や業務だけで「部分最適」をしても全体のコスト削減にはつながりません。原価管理システムを導入すれば、効率良くPDCAサイクルをまわすことができますので、導入をご検討ください。