業種によってEAIの課題が分かれる背景
EAIそのものの仕組みは業種を問わず共通です。それでも課題が分かれるのは、つなぐ相手のシステムの世代や、業務で求められる正確さと速さの水準が業種ごとに違うためです。まずはこの2つの背景を押さえておきましょう。
つなぐシステムの世代の違い
連携の難しさは、接続先が提供している接続方式によって大きく変わります。近年のクラウドサービスでは、外部から呼び出せるインターフェースが用意されている場合があります。一方、長く使われてきた社内システムでは、ファイルの受け渡しやデータベースへの直接参照しか手段がない場合があります。
この違いは、設定の手間だけでなく費用にも影響します。標準のコネクタで接続できる相手は短時間で設定できますが、独自形式のデータを扱う相手では、変換処理を個別に作り込む工程が加わることがあります。自社の連携先がどちらに当てはまるかを、候補製品を絞る前に確かめておきましょう。
求められる正確さと速さの水準
もう1つの背景が、業務上どこまでの正確さと速さが必要かという水準の違いです。金額を扱う処理では1件の欠落も許されず、記録を残す仕組みが求められます。一方、在庫のように短い間隔での更新が重要な処理では、反映までの時間が業務に直結します。
この水準は、必要な機能や運用の設計を左右します。処理の記録をどこまで残せるか、失敗した処理をやり直せるか、どの程度の間隔で実行できるかは製品ごとに違います。自社の業務でどの水準が必要かを言語化してから比較すると、判断の基準がぶれにくくなります。
製造業のEAIで起きる連携の不一致
製造業では、長年使ってきた生産管理システムや設備の制御装置が現役で稼働している場合があります。新しく導入した販売管理や原価管理の仕組みとつなごうとしたときに、想定と違う状況が見つかることがあります。
古い生産管理システムとの接続方式
製造現場の生産管理システムには、外部から呼び出せるインターフェースが用意されていないものもあります。その場合、決まった形式のファイルを共有フォルダへ出力し、それをEAIが読み取る方式などで対応します。この方式を採るには、出力の間隔や文字コード、ファイル名の付け方を事前にそろえる必要があります。
接続できるかどうかは、製品側の対応範囲だけで決まるものではありません。生産管理システム側がどのような出力手段を備えているか、改修が可能かどうかも関係します。情報システム部門と生産管理システムの提供元、EAIのベンダーの三者で確認したうえで、対応方針を決めましょう。
工場ごとに異なるコード体系の統一
複数の拠点を持つ製造業では、品目コードや工程の区分が工場ごとに独自の付け方になっている場合があります。この状態のまま連携を始めると、同じ製品が別のものとして集計されるといったずれが生じることがあります。まずは、どの項目にどれだけの違いがあるのかを一覧にしましょう。
対応の方法としては、EAI側に対応表を持たせて変換する進め方と、システム側のコードそのものを統一する進め方があります。前者は着手しやすい一方で、対応表の維持が必要です。どちらを選ぶかは、拠点数や今後の統廃合の見込みも踏まえて、関係部門で決めておきましょう。
設備データを扱うときの更新頻度
設備の稼働状況を収集して分析につなげる用途では、データが発生する間隔が短くなります。数秒ごとに記録される情報をそのまま業務システムへ流すと、件数が膨らんで処理が追いつかない場合があります。どの粒度で渡すのかを決めておく必要があります。
実務では、一定時間ごとに集計してから渡す、しきい値を超えた記録だけを対象にするといった絞り込みを行う方法があります。こうした集計や絞り込みをEAIの設定画面で組めるのか、別の仕組みが必要なのかは製品によって異なるため、想定する件数を伝えて確認しておきましょう。
金融機関のEAI導入でつまずくケース
金融機関では、取り扱うデータの性質から、処理の正確さと記録の残し方に高い水準が求められます。機能面では条件を満たしていても、運用や体制の要件を満たせずに検討が止まることがあります。
記録の保存と監査への対応
金融分野では、いつ誰がどのデータを扱ったのかを説明できる状態が求められる場面があります。EAIを介してデータが動く場合も同様で、処理の実行日時、対象件数、成否、設定の変更履歴を後から確認できるかが論点です。ログをどの期間保存でき、必要な形式で出力できるかを確かめましょう。
要件は組織ごとに異なるため、社内の管理部門や監査部門に確認したうえで、必要な項目をベンダーへ提示する進め方が確実です。製品が備える機能で満たせない部分がある場合は、運用手順で補うのか、別の仕組みを併用するのかを導入前に決めておきましょう。
既存の勘定系システムとの責任分界
金融機関の基幹となるシステムは、外部との接続に制約が設けられている場合があります。接続の可否や条件は、システムを提供している事業者との契約や、社内の運用規程にも関わります。EAI側で技術的に接続できることと、実際に接続してよいことは別に扱う必要があります。
連携で問題が起きたときに、どちらの側で調査と対応を行うのかも事前に整理しておきましょう。処理が止まった原因が連携基盤にあるのか、接続先の応答にあるのかを切り分けられるよう、両者のログを突き合わせられる状態にしておくと、対応にかかる時間を短縮できます。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でEAIの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
小売業のEAI運用で起きるトラブル
小売業では、店舗のレジや在庫管理、本部の発注システムなど複数の仕組みが日々動いています。これらをつなぐ場面では、更新の間隔と処理が集中する時間帯が課題になりやすいといえます。
店舗とECの在庫データのずれ
実店舗とオンライン販売の両方を運営している場合、在庫の数を双方で共有する必要があります。連携の間隔が長いと、実際には売り切れている商品が販売可能と表示される状況が起こりえます。どの程度の間隔で更新できるかを、業務側の要望とあわせて決めておきましょう。
ずれの原因は更新間隔だけとは限りません。返品や取り置きの扱いが仕組みごとに違う場合や、連携が一時的に止まっていた場合にも生じます。数が合わないときに、どの時点のデータで差が出たのかを追える記録が残っているかどうかを、製品選びの段階で確認しておきましょう。
繁忙期に集中する処理の負荷
セールや年末年始のように取引が増える時期には、連携するデータの件数も普段の数倍になることがあります。通常時に問題なく動いていた処理でも、件数が増えたときに完了までの時間が延びる場合があります。想定される最大の件数で確認しておくと安心です。
備え方としては、処理を分割して実行する、実行の時間帯を分散する、あらかじめ繁忙期の見込みをベンダーへ伝えて必要な条件を確認する、といった方法があります。あわせて、処理が遅れたときに管理者へ通知が届く設定があるかも見ておくと、業務部門からの指摘より前に気づけます。
EC通販のEAIで起きるデータ連携の不具合
EC通販では、複数のモールや自社サイト、決済サービス、配送手配の仕組みが関わります。接続先が多いぶん、データの形式や制約の違いから不具合が表面化しやすい領域です。
受注データの重複や欠落
受注情報を取り込む処理では、同じ注文が二重に登録される、あるいは一部が取り込まれないといった状態が起こりえます。通信が途中で切れて再実行されたときや、取得する期間の指定が重なったときに生じることがあります。注文番号などを使って重複を判定できる設定があるかを確認しましょう。
欠落に気づく仕組みも重要です。取り込んだ件数と、モール側の管理画面に表示される件数を突き合わせられるようにしておくと、差分を早期に把握できます。差が出たときに対象の期間だけをやり直せるか、未処理のデータを一覧で確認できるかも見ておきましょう。
外部サービスの呼び出し回数の上限
モールや決済サービスの多くは、外部からの呼び出し回数や1回あたりの取得件数に上限を設けています。上限に達すると、その時間帯は取得できず処理が止まる場合があります。連携の間隔を短く設定しすぎると、上限に近づきやすくなる点に注意が必要です。
対応としては、取得の間隔を業務に必要な範囲まで広げる、複数の処理が同時に呼び出さないよう時刻をずらすといった調整があります。上限に達したときに自動で待機して再試行する仕組みを備えた製品もあるため、対応の有無を確認しておくと運用の負担を抑えられます。
商品情報の項目のずれ
複数の販売先へ商品情報を配信する場合、項目の名称や使える文字数、必須とされる項目が販売先ごとに違います。自社の基幹システムで管理している内容をそのまま渡すと、一部が登録されない、または表示が崩れるといった状態が生じることがあります。
販売先ごとの仕様を一覧にまとめ、どの項目をどう変換するかを整理してから設定に入りましょう。文字数の制限に合わせて短縮する、区分値を販売先の分類へ置き換えるといった処理が必要になります。仕様は更新されることがあるため、変更の通知を受け取る手段も決めておくと安心です。
業種ごとの連携要件に向き合うEAI
古い基幹システムとの接続や、記録を残す運用など、業種によって求められる条件は異なります。対応の幅を確かめたい製品を紹介します。
Waha! Transformer
- 1,000億件のベンチマークが証明する大量データ高速処理性能
- ノーコードで簡単に構築できるシンプルな操作性
- 作り手が「欲しい!」と感じるデータ接続先とメンテナンス機能
株式会社ユニリタが提供する「Waha! Transformer」は、大量のデータを変換して受け渡すためのデータ連携ツールです。異なる形式のデータを扱う処理を定義でき、件数の多い基幹システムのデータを取り扱う用途を想定した作りになっています。長く稼働しているシステムのデータを分析や別システムへ渡したい場面で検討できます。扱いたいデータの形式を伝えて対応可否を確認しましょう。
Magic xpi Integration Platform
- ノーコードでシステム連携が可能
- 100種700機能以上の豊富なアダプター群によるリアルタイム連携
- インメモリー技術で拡張性と冗長性を実現
マジックソフトウェア・ジャパン株式会社が提供する「Magic xpi Integration Platform」は、複数のシステムをつなぐデータ連携基盤です。業務システムやクラウドサービスとの接続を設定で定義でき、処理の流れをまとめて管理できます。社内に複数の業務システムが稼働している環境で、つなぎ方を一つの基盤に集約したい場合の材料になります。
ASTERIA Warp
- 国内1万社以上の導入実績と18年連続国内シェアNo.1連携ツール
- ノーコード簡単連携で高速開発を実現
- 豊富な接続先で拡張性も抜群!クラウドとの連携機能も充実!
アステリア株式会社が提供する「ASTERIA Warp」は、システム間のデータ連携をノーコードで構築できるEAIです。画面上でアイコンをつなぐ操作により処理の流れを定義でき、接続先ごとの部品が用意されています。業種ごとに異なるシステム構成へ設定で対応したい場合の選択肢になります。
EDIAI Server (日本電気株式会社)
- 多くの業種・業態での導入実績あり
- 「EDIAI Server導入支援サービス」で円滑に導入
- 小規模利用向けの「EDIAI Server/Lite」も
業種別のEAI導入に関するFAQ
業種ごとのEAIの懸念点について、検討時によく挙がる質問と回答をまとめました。
- Q1:古い社内システムでもEAIで連携できますか?
- ファイルの受け渡しやデータベースへの参照など、システム側が提供する手段によっては連携できる場合があります。ただし対応可否は双方の仕様に左右されるため、接続先の提供元とEAIのベンダーの双方へ確認しましょう。
- Q2:業種に特化したEAIを選んだほうがよいですか?
- 特定業界向けのテンプレートを備えた製品もありますが、重要なのは自社がつなぎたいシステムに対応しているかです。業種名だけで絞り込まず、接続先の名称と方式を一覧にして対応可否を確認する進め方が確実です。
- Q3:連携でデータのずれが出たとき、どう調べればよいですか?
- まず、いつの時点で差が生じたのかを処理の実行記録から絞り込みます。連携基盤側と接続先側の双方に記録が残っていれば切り分けが進めやすいため、ログの保存期間と出力方法を導入時に確認しておきましょう。
まとめ
EAIで起きやすい課題は業種によって形を変えます。製造業では古いシステムの接続方式やコード体系の違い、金融機関では記録の保存と責任分界、小売では在庫のずれと繁忙期の負荷、EC通販では受注データの重複や外部サービスの制約が論点です。いずれも、つなぐ相手の仕様と自社の業務要件を一覧にして確認することが出発点になります。候補が固まったら資料請求して、対応範囲を具体的に確かめてみてください。

