データ連携とは
データ連携とは、企業内外のさまざまなシステムやアプリケーションのデータをつないで、有効活用するための仕組みやプロセスのことです。
ビッグデータの活用やクラウドサービスの利用が進む現代では、セルフサービスBIを使ってデータを分析し、経営判断に役立てるなどさまざまな場面でデータが活躍します。しかし、それぞれのシステムが独立してデータが分散している状態、つまりサイロ化した状態ではデータを有効活用できません。
通常営業部ならSFA、商品部ならMAなど、部署ごとに異なるシステムを使用するなかで、システム間のデータ連携がされていないと、同じデータを別々のシステムに複数回入力しなければなりません。また、必要なデータの所在が不明になるなどの問題も生じます。
そこで必要となるのがデータ連携です。データ連携の目的は、システム同士をつないで、業務内の無駄を省き、全体の流れを可視化して有効活用することにあります。
例えばMAで見込みの高いリード情報を抽出し、SFAにデータを渡せば営業効率が上がります。また、会計・販売管理・生産管理など基幹システムのデータを連携させることで、業務全体の状況は可視化され、パフォーマンスの向上につながるでしょう。
データ連携されていないと発生する問題
データ連携が不足すると、ビジネス全体に複数の問題が生じる可能性があります。データの整合性や活用、業務効率の低下など、企業の成長と競争力に重大な影響を与えかねません。
システム間の整合性がとれない
異なるシステム間でデータが連携されていない場合、データの整合性がとれず、誤った情報にもとづく意思決定を引き起こす可能性があります。例えば、在庫管理システムと販売システムが連携していない場合、在庫不足に気づかず過剰な販売を行ってしまう可能性が挙げられます。
データの組み合わせによる活用が難しい
システム間でデータが連携されていないと、異なるデータ源からの情報を組み合わせて分析することが困難になります。例えば、顧客データと販売データの組み合わせによる市場分析が難しくなり、販売戦略の最適化が妨げられるでしょう。
欲しいデータがどこにあるのか探しづらい
複数のシステムに分散したデータを検索するのは時間がかかり、効率が悪いです。例えば、顧客関連の情報が複数のシステムにまたがっている場合、全体像を把握するためには各システムを個別に調べる必要があります。
手作業による業務効率の低下を招く
データ連携の不足は、手作業に依存する業務プロセスを増やし、効率性を大幅に低下させます。例えば、売上データを手動で会計システムに転記する作業は、時間と労力を要し、ミスのリスクも伴うでしょう。
情報の活用が推進しない
データが連携されていないと、組織全体での情報の活用が推進されません。重要なビジネスにおけるインサイトが見落とされ、組織の成長機会の損失につながることがあります。
データ連携が進まない理由
データ連携の必要性を感じていても、実際にはうまくできないという企業も多いのではないでしょうか。ここでは、データ連携における課題を整理してみましょう。
データ連携における課題は、以下の3つが挙げられます。
- ●データの形式が揃っておらず加工に手間がかかる
- ●システム同士の連携に対応できない
- ●手作業でも業務をこなせてしまっている
それぞれの課題について詳しく解説します。
データの形式が揃っておらず加工に手間がかかる
クラウドサービスが主流となった今でも、エクセルを使用して業務管理をする企業は多いでしょう。手作業でデータ登録やメンテナンスをするがゆえ、データの整合性がとれないこともあります。また、データの形式がバラバラで、統一性がないケースもあるでしょう。統一性のないデータを連携させるには、加工してまとめ直さなければならず手間がかかります。
システム同士の連携に対応できない
先述したとおり、各部署で異なるシステムを運用している場合もあります。企業内では、オンプレミス型のシステムやクラウドサービスが混在し、データが分散している状態です。最近は、他システムと連携できる仕様の製品やサービスが多いものの、連携プログラムを開発しなければならないケースも出てきます。連携先が増えるほど開発にはコストや時間がかかり複雑化するので、手軽にデータ連携ができるとはいえないでしょう。
手作業でも業務をこなせてしまっている
既存の手作業によるプロセスが固定化されている場合、データ連携の必要性を感じにくくなります。例えば、データの手動入力やエクセルでの管理が日常化している状況では、データ連携のメリットを実感しにくい可能性があります。また、担当者自身が課題として認識していない可能性も考えられるでしょう。
次の項目では、これらの課題を解決するデータ連携の手法を解説します。
データ連携の手法
データ連携の課題を解決するために登場したのが、ETLとEAIツールです。データ連携の基盤を作るためには、スクラッチ開発やハイブリッド開発という手法も考えられます。しかし、コストやスキルが必要となるためツールの利用がおすすめです。
さらにETL・EAI以外にも、データ連携を可能とするツールの一つとしてRPAもあります。それぞれの違いについて説明します。
ETLツール
ETLは、Extract・Transform・Loadといった各工程の頭文字をとった言葉です。システム内のデータを抽出し、扱いやすい形式に変換・加工してデータウェアハウスにまとめるツールです。
システムごとにデータ形式が異なると、データが連携しにくくなります。しかし、ETLツールはフォーマットを適宜変換して一つにまとめるので、データを活用しやすくなります。ビッグデータなど膨大な量のデータを扱うことが可能で、バッチ処理を得意としているのも特徴です。
ETLについては、以下の記事で最新のおすすめ製品や導入における注意点の観点で紹介しています。
EAIツール
EAI(Enterprise Application Integration)は、「企業アプリケーション統合」という意味で、部署や業務ごとに異なるシステムのデータを連携させるツールです。
EAIの強みは「多種多様なシステムを連携させられること」です。社内システムはもちろん、社外のクラウドシステムなどとデータ連携も可能で、企業合併の際にも大いに役立つでしょう。
ETLとの違いは、扱えるデータ量と処理のスピードです。EAIの場合、扱えるデータ量はそれほど多くありませんが、スピーディーなデータ連携が可能です。対してETLは扱えるデータ量こそ多いものの、リアルタイムでのデータ連携ができません。
ETLは「データを1か所に集約して活用する」ことを目的としています。「データ連携をスムーズにして活用したい」のであれば、EAIが最適です。
こちらの記事では、EAIとETLの違いや使用目的などを詳しく解説しています。データ連携ツールの導入を検討している方は、あわせてご覧ください。
RPA
RPA(Robotic Process Automation)とは、単純作業をロボットで自動化することです。メールやスプレッドシート、各種サイト・システムなどさまざまなアプリケーションと連携し、情報収集・給与計算・売上データ集計などを自動化します。
RPAを導入することで単純な連携作業に対応でき、業務効率化が図れます。一方で、複雑なデータ処理や変換などには対応できないケースもあるため、注意が必要です。
こちらの記事では、RPAについてより詳しく解説しています。おすすめのツールも紹介しているので、気になる方はご覧ください。
EAIツールの機能からわかる!データ連携の仕組み
EAIツールには「アダプタ機能」「フォーマット変換機能」「ルーティング機能」「プロセス制御機能」が搭載され、データ連携を可能にしています。ここからは、EAIの各機能を解説します。
アダプタ機能
EAIツールの「アダプタ機能」は、システム同士の接続口の役割を果たします。通常は異なるシステム同士でデータを連携するのは困難です。しかし、アダプタを介することで相互接続が可能になり、データ連携が容易になります。
なおアダプタの種類はツールによって異なるため、多くのシステムに対応させたいのであれば、種類豊富なアダプタを備えたEAIツールがよいでしょう。
フォーマット変換機能
アダプタによってシステム間をつなげますが、それだけではデータを連携できません。システムにはそれぞれ独自のフォーマットやプロトコルが使われているため、それらを統一して連携しやすくする必要があります。
異なるデータ形式を統一させるのが、EAIツールに搭載されている「フォーマット変換機能」です。どのようなフォーマットに対応しているかはツールによって異なるため、アダプタ同様導入前に確認しましょう。「導入したものの、自社のシステムは対象外だった」とならないよう注意してください。
ルーティング(フロープロセッサ)機能
フォーマット変換機能によって統一されたデータを、どのシステムに振り分けるかを決めるのが「ルーティング(フロープロセッサ)機能」です。簡単な操作で振り分け先を設定できるEAIツールが多いものの、まずはデモで操作性を試してみることをおすすめします。
プロセス制御(ワークフロー)機能
「アダプタ機能」「フォーマット変換機能」「ルーティング機能」を組み合わせて一連の流れを作るのが「プロセス制御(ワークフロー)機能」です。例えば、「AシステムのデータをBシステムへ」といったシンプルな流れから、「AシステムのデータをBシステムとCシステムに送り、CシステムのデータをさらにDシステムに送る」といった複雑な流れまで構築できます。
こちらの記事では、EAIの仕組みや機能についてより詳しく解説しています。EAIへの理解を深めたい方はあわせてご覧ください。
データ連携を進める際のステップや方針
実際にデータ連携を進める際は、次のような流れで行いましょう。
目的と範囲の定義
データ連携を進める際には、目的と範囲を明確に定義することが重要です。どのデータが必要で、何を達成したいのかを決定し、関連するステークホルダーに共有しましょう。
現状分析とニーズの特定
既存のシステムやデータフローを分析し、連携すべきデータやシステムのギャップを特定します。このプロセスは、連携の範囲と方法を決定する基礎となります。
連携戦略の策定
特定されたニーズにもとづいて、具体的なデータ連携の戦略を策定しましょう。どのようなツールや技術を取り入れるか、プロセスはどうするかといった内容も、あわせて決定しましょう。
技術的実装
戦略にもとづいて、必要なデータ連携ツールやAPIの実装を行います。この段階では、セキュリティやデータプライバシーにも特に注意が必要です。
試験運用と評価
実装後は、試験運用を行い、データ連携の有効性を評価しましょう。問題点の特定と改善策の実施を通じて、システムを最適化します。
継続的な見直しと改善
データ連携は一度の取り組みで完了するものではありません。継続的な見直しと改善を通じて、変化するビジネスニーズに対応しましょう。
EAIツールのメリット・導入効果
EAIツールを導入するメリットは、以下の3つが挙げられます。
- ●専門知識不要で運用できる
- ●信頼度の高い正確なデータを連携させられる
- ●データ連携の効率化によりコストを削減できる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
専門知識不要で運用できる
通常、異なるシステム間のデータ連携を行うには、プログラミングや通信に関する専門知識が必要です。しかし、EAIツールを活用すれば、専門知識不要で各システムのデータ連携を容易に行えます。
多くのEAIツールでは、マウスや指で直感的な操作ができるGUIを活用し、簡単な操作性を実現しています。「どのシステムとどのシステムを連携させるか」などの操作をドラッグ&ドロップで指定でき、はじめてツールにさわる人でも問題なく扱えるでしょう。
信頼度の高い正確なデータを連携させられる
連携するデータは正確かつ最新の状態でなければなりません。古いデータが連携されると、そのデータをもとにした判断は誤っている可能性もあります。
従来はシステムの仕様変更があると、更新されたデータを転記するといった作業が必要でした。しかしEAIツールであれば、正確かつ信頼度の高いリアルタイムでのデータ連携が可能です。
データ連携の効率化によりコストを削減できる
システムがそれぞれ独立している場合は、保守管理のため各所に管理者を設置しなければなりませんでした。これはリソースに余裕のない企業では難しいうえ、企業全体でシステムの稼働状況を把握できません。
EAIツールを導入してデータ連携を行えば、連携したシステムを一目で把握可能なため管理運用が楽になります。保守管理コストの削減や、リソースの有効活用が期待できるでしょう。
以下の記事では、これらのメリットを最大限活用できるEAIツールの選び方を解説しています。気になる方はあわせてご覧ください。
EAIツールの導入事例
実際にEAIツールを導入してどのような効果が得られたのか、事例を紹介します。
データ活用と業務負担軽減を実現、30人日以上の工数削減
幅広い研磨材を提供している総合研磨メーカーMipox様は、基幹システムのSAP ERPと各種クラウドサービスを、データ連携クラウドサービス「Magic xpi Cloud Gateway」を利用し内製開発で連携することにより、データ活用と業務負担の軽減を実現しました。
SAP ERPの請求伝票データをSalesforceに自動連携することで、売上状況を見て今後の予測を立てることに活用できるように。さらに「Magic xpi Cloud Gateway」がSAPのデータを参照して納期回答用のPDFを作成し、クラウドのSharePointに保管するところまでを自動化。PDFをMagic xpiがメールでMicrosoft Teamsに投稿することで、納期回答の進捗チェックや送信エラーを営業全員で共有し対応できるようになりました。
この結果、今まで3人が半日かけて行っていた作業工数(1.5人日)がなくなり、ひと月あたりにすると、30人日以上の工数削減につながっています。
参考:Magic xpi Cloud Gatewayの導入事例【Mipox株式会社 様】|ITトレンド
重要なマスターデータの同期を自動化し人事異動の運用工数を削減
飲食点を展開するトリドールホールディングス様のデジタルトランスフォーメーション(DX)は、2019年の下期からデータ連携の自動化に取り組み始めました。
データセンターにあったレガシーシステムをすべてクラウド上に載せ、その後レガシーシステムをSaaSに移行。多くのサービスやシステムが導入されたことで、SaaS間のデータ連携が重要になり、相互のデータ連携プラットフォームが必要になりました。
「Magic xpi Cloud Gateway」を導入し、10以上のSaaS間のデータを連携。重要なマスターデータの同期を自動化し、下記のような効果を得ました。
- ●人事異動に伴うユーザーマスターの変更作業が1週間⇒1~2日に短縮
- ●会計処理のリードタイムを6営業日から3営業日に短縮
- ●ユーザープロビジョニングのAzure ADと連携してアクセス権限を一括変更(構築中)
今後は、Azure ADと各SaaSのユーザーアカウントを連携させる(構築中)ことで、人事異動に伴うアクセス権限変更の運用工数削減が期待されています。
参考:Magic xpi Cloud Gatewayの導入事例【株式会社トリドールホールディングス 様】|ITトレンド
最新のおすすめEAIツールを紹介
ITトレンドの2023年上半期ランキングで特に資料請求数の多かったEAIツールを紹介します。
Magic xpi Integration Platform
製品・サービスのPOINT
- ノン・コーディングでシステム連携が可能
- 66種・500機能以上の豊富なアダプター群によるリアルタイム連携
- インメモリー・データグリッド技術で拡張性と冗長性を実現
マジックソフトウェア・ジャパン株式会社が提供する「Magic xpi Integration Platform」は、66種・500機能以上のアダプタを搭載しています。アダプタを貼る、プロパティを選ぶ、マッピングで線を引くという単純作業でデータ連携フローが構築でき、初心者でも安心でしょう。
またトランザクション・メッセージの監視機能、モニタリング機能により、リアルタイムで安全なデータ連携が可能です。単一障害ポイントも排除するので、スムーズに運用できるでしょう。
対象企業規模 |
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提供形態 |
オンプレミス / パッケージソフト |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
いい点 情報処理、SI、ソフトウェア 50名以上 100名未満
改善してほしい点 放送・広告・出版・マスコミ 500名以上 750名未満
ほかにも、ITトレンドで人気のあるEAIツールをランキング形式で紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。
データ連携をスムーズにするにはEAIツールがおすすめ
企業内にあるシステムがそれぞれ独立していると、データを有効活用できません。データを活かすには、データ連携が必要です。データ連携には、ETLツールまたはEAIツールを活用するのが一般的ですが、データ連携をスムーズに行うことを目的とするならEAIツールが適しています。
専門知識がなくても簡単に操作でき、データを正確かつ効率的に連携できるので、ぜひEAIツールを利用しましょう。