法人の固定資産税とは
法人の固定資産税とは、事業の継続に使われる財産にかかる税金のことです。
毎年1月1日時点(賦課期日)で事業継続に使われる財産・設備にかかる税金です。
東京23区の場合は東京都、それ以外は市町村によって徴収されます。納期は、東京都が「6月・9月・12月・2月」、それ以外は原則として「4月・7月・12月・2月」の年4回です。納税日が近づくと、課税者から納税通知書が届きます。
なお、年度途中で固定資産の所有者が変わったとしても、納税義務者は変わりません。1月1日以降、固定資産課税台帳に記録されている人物が、所定の金額を支払います。
土地・建物・償却資産が対象となる
法人の固定資産税は、「土地」「建物」「償却資産」が課税対象です。以下で具体例を紹介します。
- 土地
- 畑・田んぼ・牧場・山林・宅地など
- 建物
- 持ち家・工場・店舗・倉庫など
- 償却資産
- エアコン・プリンター・陳列棚・看板など
償却資産は、所得税や法人税を計算するときに、減価償却をしている資産のことです。時間経過によって価値が目減りする資産を指します。耐用年数1年以上かつ取得価額10万円以上のものが課税対象です。
償却資産や償却資産税については以下の記事でも詳しく解説しています。
法人固定資産税の計算手順
固定資産税は、どのように計算するのでしょうか。
1.固定資産評価額を基準とする
固定資産評価額とは、東京都や市町村が個別に定めた評価額のことです。3年に1度、そのときの時価を目安にして見直されます。
土地であれば、時価の70%ほどが相場です。時価のほかに、場所・形状・道路との接し方なども考慮します。建物なら、構造・築年数などの条件も評価額に影響します。自社保有の固定資産評価額を確認したい場合は、役場で「固定資産評価証明書」か「納税通知書」を発行してもらいましょう。
2.標準税率をかけ合わせる
標準税率は基本的に1.4%ですが、中には独自に設定している自治体もあります。都市計画税がかかる場合もあるので、事前に正確な数値を確認しましょう。固定資産の用途や状況によっても変わるため、管轄の自治体に相談するのがおすすめです。ちなみに30万円以下の土地や、20万円以下の建物には、固定資産税がかかりません。
法人固定資産税の経理処理
法人固定資産税は「租税公課」として処理します。経理処理は納付書の交付日に行うのが一般的です。
たとえば5万円の納付書が1月に交付された場合は、借方に「租税公課・5万円」、貸方に「未払金・5万円」を記載します。納税し終わったら、借方を未払金、貸方を「現金や普通預金」にして経理処理しましょう。また、交付日ではなく、納付日に経理処理することも認められています。
建物は減価償却を行うため、土地とは別の会計処理が必要です。そのため土地と建物を一緒に購入した場合でも、借方で土地と建物を分ける必要があります。
また法人固定資産税の納付期限は自治体により異なりますが、原則的に年4回にわけて納めます。東京都の場合、令和4年の納付期限は下記の通りです。
- ■第1期
- 令和4(2022)年6月1日から6月30日まで(納期限6月30日)
- ■第2期
- 令和4(2022)年9月1日から9月30日まで(納期限9月30日)
- ■第3期
- 令和4(2022)年12月1日から12月27日まで(納期限12月27日)
- ■第4期
- 令和5(2023)年2月1日から2月28日まで(納期限2月28日)
参考:都税:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|東京都主税局
法人固定資産税の節税対策
法人固定資産を節税対策することはできるでしょうか。以下5つの方法を紹介します。
減額制度を確認する
法人固定資産税は、省エネやバリアフリーなどの条件を満たせば、減税措置を受けられます。減税となる条件は、自治体によって異なるので、事前に問い合わせを行い確認しましょう。
一般的に、公共性が高い土地や建物は減税されやすいです。そのため、土地の一部分を公園などにすれば、効果的な節税対策となります。リフォームが可能なら、建物をバリアフリー化するのもよいでしょう。
免税点を理解する
法人の固定資産には、課税標準額が一定金額未満の場合に免税となる、免税点が設定されています。課税標準額とは、固定資産税を計算する際に、基準となる金額のことです。基本的には固定資産税評価額と同じですが、住宅用の土地は特例として課税標準額の方が低くなります。免税となる具体的な金額は、以下の通りです。
- 土地
- 30万円
- 家屋
- 20万円
- 償却資産
- 150万円
同一地域内に保有する土地・建物・償却資産の金額が、上記未満の場合は、必ず免税措置を受けましょう。免税措置は、東京都や市町村ごとに適用されます。そのため、複数地域に所有する資産の合計が課税標準額を超えていても、同一地域内で基準以下なら免税措置の対象です。
分筆を行う
分筆とは、登記簿上の土地を区分けすることです。
土地は、すべて一様の価値をもつわけではありません。
たとえば広大な面積をもつ場合、大通りに面している部分は価値が高いですが、交通の便が悪い内部は価値が低いです。しかし、すべてひとまとめに評価すると、利便性の低い部分も、高い部分の評価額へと引っ張られ全体の評価額が高くなってしまいます。そのため、分筆によって別々の土地として評価し、価値の低い土地の評価額を下げることが重要になるのです。
これにより、支払う固定資産税が減少します。
不動産取得税・登録免許税を活用する
不動産取得税は、土地や建物を購入したときにかかる税金です。住宅以外の建物は4%・土地及び住宅は3%の税率で計算されます。ただし、条件を満たすと節税効果を得られる場合があります。
たとえば宅地などを取得した場合は、「1/2の特例」が適用され、課税標準額が半分まで減額されます。ただし2021年3月31日までに取得の不動産に限定した措置であるため注意してください。また、住宅または住宅用土地を取得した場合は「軽減制度」の対象です。いずれも要件が複雑なため、事前によく確認しましょう。
登録免許税は、土地や建物を登記するときに必要な税金です。不動産取得税と登録免許税は、原則として取得価額に組み込みますが、場合によっては経費として申告できます。ほとんどの場合、高額になるケースが多いため、状況によって処理方法を使い分けましょう。
たとえば黒字決算のときは経費として処理することで課税所得を抑えられますし、赤字決算のときは取得価額に組み込むことでマイナスを抑えられます。
固定資産管理システムを活用する
固定資産管理システムを使えば、固定資産の実態が把握でき、節税に繋がります。固定資産の実態が分からないと、減価償却費などに誤りが生じ、必要以上の税金を納めかねないからです。属人化が発生しずらいため、担当者の負担も軽減できるでしょう。
また、税金だけでなく、固定資産の取得から処分までの利益管理も可能です。情報共有機能も充実しており、本社・支社・営業所などの拠点間で、税務申告が複雑になることもありません。各拠点間で一定のルールのもと、迅速に固定資産を管理・処分できます。
人気の固定資産管理システムや選び方は、以下の記事で解説しています。
法人の固定資産税について理解し、適切な処理をしよう!
法人の固定資産税は、土地・建物・償却資産の固定資産評価額に、標準税率をかけて求めます。会計上では、「租税公課」として処理しましょう。工夫すれば節税できるので、税務申告の際は、以下の手法を実践してください。
- ■減額制度を確認する
- ■免税点を理解する
- ■分筆を行う
- ■不動産取得税、登録免許税を活用する
- ■固定資産管理システムを活用する
法人の固定資産税について理解し、適切な処理を行いましょう。