固定資産とは
固定資産とは、流通や販売を目的とせず企業が長期間にわたり保有するものや、1年を越えて現金化・費用化される資産のことです。ここでは固定資産の概要を解説します。
1年以上保有する資産のこと
固定資産とは1年以上保有する資産のことです。以下の条件を満たすものが固定資産に該当します。
- ●自社で使う目的で保有するもの(販売目的で保有する在庫は含まない)
- ●1年以上保有するもの(1年未満に使いきるものは消耗品費として処理)
- ●一定以上の金額であること(ボーダーは企業が決める)
具体的には、土地・車両やオフィスのデスク・椅子、パソコンやサーバなどのIT資産のほか、営業権利や施設権利など形のないものも固定資産になります。
固定資産を経費処理する際は、減価償却を採用します。これは購入した年に一括で経費として処理するのではなく、毎年少しずつ資産の価値が減少していくという考えにもとづく処理方法です。
流動資産との違い:現金化しやすいか
企業がもつ資産は固定資産と流動資産に分類され、現金化のしやすさが両者の違いとなります。
基本的に、流動資産は1年以内に現金化できるものを指します。代表例は銀行預金や在庫、売掛金などです。ただし、1年以内というのは絶対的な決まりではありません。
例えば、在庫のなかには販売から代金の回収までに1年以上かかるものもありますが、それが通常の状態なのであれば流動資産に含みます。販売目的で保有している以上、固定資産には当てはまらないからです。
固定資産の種類
固定資産は以下の3種類に分類されます。
- ●有形固定資産
- ●無形固定資産
- ●投資その他の資産
それぞれの種類について詳しく解説します。
有形固定資産:土地や建物など形があるもの
有形固定資産は具体的な形をもつ資産のことです。以下のものが当てはまります。
- ■土地
- オフィス・工場・駐車場などに用いる土地。販売目的で保有するものは除く。
- ■建物
- オフィス・工場・倉庫など事業に利用する建築物。
- ■機械設備
- 主に工場で製品を製造するために活用する機械。
- ■車両
- 事業に用いる通常の自動車やトラック・バス・フォークリフトなど。
無形固定資産:ソフトウェアなど形がないもの
無形固定資産は形をもたない固定資産のことです。具体的には以下のものが当てはまります。
- ■法的権利
- 特許権、営業権(のれん)、商標権など。
- ■ソフトウェア
- 業務に用いるコンピュータプログラム。
投資その他の資産:出資金など経営維持を目的とするもの
上記2つに分類されない固定資産は「投資その他の資産」に含まれます。これは、経営支配や取引関係の維持を目的として保有される資産です。具体的には以下のものが当てはまります。
- ■出資金
- 合同会社や合名会社、合資会社、協同組合などに対する出資。
- ■敷金保証金
- 建物を借りる際に支払うお金。
- ■長期貸付金
- 従業員などに対する貸付金のうち、返済期間が1年以上にわたるもの。
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固定資産には減価償却が必要なものがある
固定資産のうち「減価償却資産」は、原則として毎年決算期に減価償却を行う必要があります。
固定資産は高額なものも該当するため、通常の資産と同じように計上してしまうと購入した年のみ大赤字になり、翌年からは黒字になる傾向があります。これでは正確な経営状況の把握が難しくなるため、固定資産を耐用年数に応じて案分して計上するのが減価償却です。
固定資産の金額基準は2つ
固定資産には「一括償却資産」と「少額減価償却資産」の2つの金額基準があります。
取得価額が10万円以上20万円未満のものは「一括償却資産」にでき、通常の減価償却は行わず3年間で均等額を償却することが可能です。取得価額が10万円未満のものは「少額減価償却資産」にできますが、その全額を支出した年度の経費として計上はできません。固定資産の取得価額は固定資産本体の金額のみではなく、不随する費用も含めるため注意が必要です。
以下の記事では、一括償却資産について詳しく解説しています。気になる方はあわせてご覧ください。
減価償却資産の例
償却資産の例としては、具体的に以下のものが挙げられます。
- ■建築物
- 舗装路面、庭園、門・塀・緑化施設等の外構工事、看板、予備電源設備など
- ■機械および装置
- 各種製造設備等の機械および装置、クレーン等建設機械、機械式駐車設備など
- ■船舶
- ボート、釣船、漁船、遊覧船など
- ■航空機
- 飛行機、ヘリコプター、グライダーなど
- ■車両および運搬具
- 大型特殊自動車など
- ■工具、器具および備品
- 陳列ケース、看板(ネオンサイン等)、医療機器、測定工具、金型、理容および美容機器、衝立など
参考:固定資産税(償却資産) | 税金の種類 | 東京都主税局
以下の記事では、パソコンの取得価額別の処理方法について詳しく解説しています。所有する固定資産の処理の仕方がわからない場合にも、参考にしてください。
減価償却の方法
減価償却の計算方法は、主に「定額法」「定率法」の2つが挙げられます。計算方法は減価償却資産の種類によって選定が可能です。
「定額法」は毎年一定の償却費を計上していく方法で、基本的に毎年同じ額を償却費として計上します。「取得価格×償却率」の計算式で算出され、償却率は耐用年数ごとに法令で定められています。
「定率法」は経年劣化した資産に残っている価値に応じて、毎年決まった割合で償却費を計上する方法です。減価償却費は初年度に多めに計上し、その後徐々に減少していく計算方法です。「(取得原価ー減価償却累積額)×償却率」の計算式で算出され、償却率は耐用年数ごとに法令で定められています。
以下の記事では、減価償却の計算方法や法定耐用年数を過ぎた固定資産の「残存薄価」について解説しています。減価償却の計算方法についてより詳しく知りたい方は、あわせてご覧ください。
減価償却を行うタイミング
減価償却を開始するタイミングは、実際に事業で使用を開始した日を起点にします。付帯設備や会社設備などは取得してからすぐに使用が開始される場合が多いです。しかし、企業向けの賃貸テナントや複雑な機械設備などは、使用までに据付工事や試運転・調整が必要になるため、実際の供用開始日が減価償却を開始する日となります。
法令では業種や業態、資産構成、使用状況などからいつ事業に供用したかを総合的に判断し、耐用年数表に従って減価償却が行われます。
会計上と税法上の耐用年数は違う
減価償却において、会計上は固定資産ごとの耐用年数に定めはありませんが、税法上は減価償却資産の種類や構造、用途などによって一律の耐用年数が定められています。実際に税金の計算をする際に企業がそれぞれ違った耐用年数を設定していると、課税の公平性が崩れてしまうためです。
会計と税務で減価償却資産に耐用年数が異なると処理が煩雑になるため、会計上も税務上の償却方法にあわせ、国税庁の耐用年数表に従って減価償却を行うのが一般的です。
固定資産税の支払い方
固定資産税の支払いにおいて、土地や建物については自ら申告をせずとも市区町村から納税通知書が送付され支払いをします。
しかし、事業用の償却資産については「償却資産申告書」を提出する必要があります。「償却資産申告書」とは、個人や法人が所有する償却資産について地方自治体が適切に固定資産税を計算できるよう、所有者自らが償却資産を申告するための書類です。
土地や建物は登記により不動産の状況を把握できますが、償却資産に関しては登記がないため償却資産の所有を明らかにする必要があるために存在しています。
以下の記事では、法人の固定資産税の計算方法や節税対策についてわかりやすく解説しています。気になる方はあわせてご覧ください。
固定資産管理の必要性
固定資産は種類が多く複雑なため、管理は煩雑になりがちです。しかし、管理を疎かにするとさまざまなデメリットが生じます。では、資産管理の必要性を見ていきましょう。
正確に固定資産税を計算できる
固定資産には固定資産税が発生します。土地やオフィス、マンションなどの建物はもちろん、車両や機械設備も例外ではありません。
固定資産を正確に把握していないと、固定資産税で損をすることがあります。例えば、固定資産を処分したはずなのにそのことが記録に残っていないと、処分した分だけ過剰に固定資産税を払うことになりかねません。
また、処分してよいはずの固定資産をそのまま保有しておくのも損失です。自社に必要な資産は何なのかを把握し、余計な固定資産を手放すことで節税になります。
資産の保有状況を把握し盗難のリスクを避ける
固定資産はその名のとおり資産であるため、盗難に遭うリスクがあります。特に、いつ盗まれたのかわからない状態では危険です。気づいたときには何度も犯行が繰り返されており、とんでもない量の資産が被害に遭っていたという可能性も考えられます。また、第三者からの攻撃ではなく、従業員の過失による紛失などもあり得るでしょう。
このようなリスクを最小限に抑えるには、常日頃から固定資産管理を行わなければなりません。どこに何がいくつ置いてあるのかを把握し、それらを扱う際にはどうするのかといったルールを決めることで固定資産を守れます。仮に固定資産が失われたとしても、その原因を迅速に究明できるでしょう。
適切な固定資産管理にはシステムの活用がおすすめ
固定資産管理には台帳の作成や棚卸しのほか、減価償却費計算や納税など、手間がかかる作業が多くあります。また、グループ会社や支店など複数の拠点がある場合、すべての固定資産情報を把握し適切に管理するのは難しいでしょう。
そこで有効なのが固定資産管理システムの導入です。固定資産管理システムは企業内の固定資産情報を一元管理し、棚卸しや減価償却費計算、会計処理などを支援するシステムです。
固定資産管理に関わる業務をシステムで一括管理するため、業務負担を軽減しながら適切な固定資産管理を実現できるでしょう。また、クラウド型システムを活用すれば、システム上でグループ企業全体の固定資産を一元管理することも可能です。
ほかにも、関連システムとのデータ連携や監査ログによるセキュリティ対策など製品によって機能はさまざまです。自社に適した製品を導入することで、固定資産管理を効率化できるでしょう。
以下の記事では、固定資産管理システムの製品を比較し詳しく解説しています。固定資産管理システムについて興味をお持ちの方はあわせてご覧ください。
まとめ
固定資産管理は業務が煩雑になりがちなため、システムを活用して効率的に管理を実施するとよいでしょう。自社の固定資産管理業務を改善したいと考えている方は、この機会に固定資産管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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