固定資産管理でつまずきやすい点
進め方を見る前に、どこで行き詰まりやすいのかを押さえておきましょう。原因が分かると、事例のどの部分を参考にすべきかも定まります。
台帳と現物のずれ
固定資産の台帳は、取得の際に登録されたまま更新されないことがあります。部署をまたいで移動した、使わなくなって倉庫に置かれている、すでに廃棄したのに記録が残っているといった状態が積み重なると、台帳と実際の状況が離れていきます。
この状態では、資産の一覧を出しても実態を表しません。除却の処理が漏れれば、存在しない資産に対する処理が続くことになります。使われていない資産を把握できず、新たな購入の判断にも支障が生じます。
部門間の役割の不明確さ
固定資産には、経理部門、資産を使う現場、購買や総務といった複数の部門が関わります。誰が取得の情報を登録し、誰が移動を届け出て、誰が現物を確認するのかが曖昧なままだと、更新が滞ります。
現場は経理が管理していると考え、経理は現場から連絡が来るものと考えているといった認識の食い違いも起こり得ます。担当者の異動を機に手順が途切れることもあります。役割を明文化しないまま仕組みだけを入れても、状況は変わりにくい領域です。
成功事例に共通する準備
うまく進んだ事例には、着手の順序に共通点があります。三つの段階に分けて確認します。
対象資産と管理単位の整理
最初に行われているのが、何をどこまで管理するのかを決める作業です。会計上の固定資産だけでなく、少額の資産やリース物件、備品まで対象に含めるかどうかを整理します。
あわせて、どの単位で管理するかも決めます。複数の機器をまとめて一つの資産として登録している場合、現物と対応させにくくなります。管理する単位と会計上の処理単位が異なる場合は、どう対応させるかを経理部門と確認しておく必要があります。
現物照合の実施と台帳の是正
次の段階が、実際に現物を確認して台帳を実態に合わせる作業です。ここを飛ばして仕組みだけを入れても、誤った情報を引き継ぐことになります。
照合の際は、資産にラベルを貼って識別できるようにする取り組みが並行して行われます。所在が確認できない資産や、台帳にない資産が見つかることもあり、その扱いを決める判断が必要です。除却の処理を伴う場合は、会計上の取り扱いについて経理部門や顧問の税理士に確認しながら進めましょう。
部門間の役割分担の明確化
台帳を整えた後に、それを保つための役割を決める段階です。取得、移動、除却のそれぞれについて、誰が起点となり誰が承認するのかを文書として定めます。
現場に負担が偏る設計は続きにくいため、届け出の方法をできるだけ簡単にする工夫も見られます。既存の稟議や購買の手続きと結び付け、別の作業を増やさない形にする進め方もあります。担当者一人に依存しないよう、複数人で扱える体制にしておくことが望まれます。
運用を定着させる進め方
整えた状態を保つには、日常の業務に確認の工程を組み込む必要があります。二つの観点から確認します。
取得から除却までの流れの標準化
資産が増えるとき、移動するとき、処分するときに、それぞれ何をするかを手順として定めておきます。購入の稟議が通った時点で登録の依頼が発生する、廃棄の申請と除却の処理が結び付くといった形です。
手順が定まっていれば、担当者が変わっても同じ流れで運用できます。システム上で申請と承認を扱える構成であれば、記録も残ります。処理の漏れに気づける仕組みがあるかどうかも、確認しておきたい要素です。
定期的な現物確認の仕組み
一度整えた台帳も、時間の経過とともにずれが生じます。定期的に現物を確認する機会を設けることが、状態を保つ手立てになります。
全社を一度に確認すると負担が集中するため、部署や区画ごとに時期を分ける進め方もあります。ラベルを読み取って確認する方式であれば、作業の時間を短縮できます。差異が見つかった際に、原因をたどって手順を見直す流れまで含めて仕組みにしておきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)で固定資産管理システムの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
成功事例を読み解く際の着眼点
公開されている事例をそのまま自社に当てはめると、想定と異なる結果になることがあります。読む際に確認したい点を二つ挙げます。
効果の前提と対象範囲の確認
棚卸しの時間が短くなった、除却の漏れがなくなったという記述は、導入前の状態を前提としています。台帳が長く更新されていなかった組織と、一定の運用ができていた組織では、改善の幅が異なります。
あわせて、対象とした資産の範囲も確認しましょう。少額の資産や備品まで含めているか、拠点をどこまで対象にしたかによって、必要な工数は大きく変わります。前提が大きく異なる事例は、参考にする範囲を限定して読むことが求められます。
制度対応との関係
事例のなかには、会計基準への対応や税務上の要請を機に着手したものもあります。この場合、必要とされた対応の内容によって求められる管理の細かさが異なります。
国際的な会計基準を適用する企業と、そうでない企業では、資産の捉え方や必要な情報が変わります。自社に適用される基準を前提に読むことが欠かせません。制度に関わる判断は、経理部門や顧問の会計士、税理士に確認しながら進めましょう。
固定資産管理システムの選び方
ここまでの進め方を踏まえ、システムを選ぶ際の確認事項を整理します。
対象資産と必要な機能の整理
最初に、管理したい資産の種類と件数を整理します。会計上の固定資産に加えて、リース物件、少額の資産、無形の資産まで対象にするかによって、必要な機能が変わります。
減価償却の計算、除却や売却の処理、現物確認の支援、移動履歴の管理といった機能のうち、どれが必要かを洗い出しましょう。現物確認をラベルの読み取りで行いたい場合は、対応する機器と媒体の費用もあわせて見込んでおく必要があります。
会計システムとの連携範囲
減価償却の結果を会計システムへ渡す流れは、多くの企業で必要になります。手作業で移し替える運用では、件数が増えるほど負担と誤りの可能性が積み上がります。
連携の方式に加えて、どの項目をどちらの方向へ同期するかも確認しておきましょう。決算の時期に処理が集中するため、その時期の対応も想定しておく必要があります。判断が難しい部分は、経理部門と情報システム部門の双方に相談しながら進めましょう。
費用とサポート範囲の確認
料金は、管理する資産の件数に応じたプラン分け、利用人数に応じた月額制、初期費用と月額の組み合わせなど、製品によって考え方が異なります。既存台帳の移行が別料金となる場合もあるため、総額で比べることが必要です。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、台帳の移行や現物照合を支援してもらえるのかは製品ごとに差があります。制度改正への対応がどのように提供されるかも、あわせて確認しておきましょう。
運用の定着を支える固定資産管理システム
現物照合の方法や既存システムとの連携にあわせて検討できるシステムを紹介します。
OBIC7固定資産管理システム
- 会計との一体運用で、固定資産管理を総合的に管理
- 建設仮勘定やリース資産管理、減損処理にも柔軟に対応
- 不動産や工事取引など関連業務ともスムーズなデータ連携を実現
株式会社オービックが提供する「OBIC7固定資産管理システム」は、固定資産の取得から除却までを管理できるシステムです。会計処理との連携に対応しており、税務上の減価償却計算を正確に進めやすくなっています。現物確認の記録を残す機能もあわせて備えています。
マネーフォワード クラウド固定資産
- 複数台帳管理で税務基準・会計基準の差異にも対応
- クラウドサービスで資産の見える化を実現
- 会計・税務・業務担当者全員が管理しやすい
株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワード クラウド固定資産」は、固定資産台帳の作成と管理を扱うクラウド型のシステムです。同社の会計サービスと連携させる構成に対応しており、固定資産の増減を会計処理に反映させる手間を抑えられます。中小企業での導入を想定した機能がまとまっています。
Assetment Neo for経理
- 固定資産管理システムと連携し、資産の管理状態を正確に把握
- ラベルの活用で、Excelや目視による棚卸から脱却
- 豊富な機能で固定資産の管理業務を強力にサポート
株式会社アセットメントが提供する「Assetment Neo for経理」は、固定資産の現物確認を支援するシステムです。バーコードやRFIDタグを使った実地棚卸しの機能を備えており、台帳の情報と現物の突き合わせにかかる作業を効率化できます。運用の定着を目的とした確認機能が特徴です。
HUEAsset (株式会社ワークスアプリケーションズ)
- オールインワンで資産情報を一元化
- 経理も現場も使いやすいUIでペーパーレス化促進
- 無償アプデで法改正にも長期間安心
ProPlus固定資産システム (株式会社プロシップ)
- 最適な固定資産管理で業務効率化を実現したい企業
- IFRS対応も見据え、多彩な事例をベースに再構築を検討中の企業
- グローバル固定資産管理基盤の構築を実現したい企業
固定資産管理に関するよくある質問
体制の見直しを検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: まず何から着手すべきですか?
- 対象とする資産の範囲を決め、現物を確認して台帳を実態に合わせる作業から始める進め方が一般的です。台帳が整っていない状態で仕組みだけを入れても、誤った情報を引き継ぐことになります。範囲を絞って着手する方法も検討できます。
- Q2: 所在が確認できない資産が見つかった場合はどうすればよいですか?
- 探す範囲と期限を決めたうえで、見つからない場合の扱いを社内で定めておく必要があります。会計上の処理を伴うため、経理部門や顧問の税理士に確認しながら進めましょう。同じ事態を防ぐため、移動の届け出の手順もあわせて見直すことが望まれます。
- Q3: 会計システムの機能だけでは足りませんか?
- 減価償却の計算までは会計システムで対応できる場合もあります。ただし現物の確認や移動履歴の管理まで扱えるかは製品によって異なります。現在使用しているシステムの機能を確認したうえで、不足する部分を見極めて判断しましょう。
- Q4: 現物確認はどのくらいの頻度で行うべきですか?
- 一律の目安はありませんが、年に一度を基本としつつ、部署や区画ごとに時期を分けて実施する方法もあります。資産の移動が多い組織ほど、ずれが生じやすくなります。負担と精度の兼ね合いを見ながら、続けられる頻度を決めましょう。
まとめ
固定資産管理の成功事例には、対象資産と管理単位を決め、現物照合で台帳を実態に合わせ、部門ごとの役割を明文化するという共通の進め方があります。整えた状態を保つには、取得から除却までの手順を標準化し、定期的な現物確認を仕組みとして組み込むことが欠かせません。事例を読む際は、効果の前提と適用される制度を確認しましょう。対象資産と必要な機能を整理したうえで、会計システムとの連携や費用を比べて選ぶことをおすすめします。


