賞味期限管理とは何かを整理する
賞味期限管理は、期限日を目で確かめる作業だけを指す言葉ではありません。入庫から保管、出庫までの各工程で期限情報を途切れさせずに引き継ぎ、期限切れを未然に防ぐ一連の管理を意味します。まずは用語の意味と、期限表示に関する基本的な決まりを確認しましょう。
賞味期限と消費期限は意味が異なる
賞味期限は、袋や容器を開けないまま定められた方法で保存した場合に、品質が十分に保たれ、おいしく食べられる期限を指します。一方の消費期限は、同じ条件のもとで安全に食べられる期限を意味します。いずれも食品表示法に基づく食品表示基準で定められており、品質の劣化が早い食品には消費期限、それ以外の食品には賞味期限を表示する決まりです。
実務で重要なのは、この違いが在庫の扱い方に直結する点です。消費期限を過ぎた食品は販売を厳に慎むべきとされており、期限が近づいた段階で確実に売場や在庫から引き上げる必要があります。賞味期限は過ぎた瞬間に食べられなくなるわけではないものの、小売の現場では独自の販売期限を設けて棚から下げる運用が広く見られます。どの時点で在庫を引き上げるのかを社内で明文化しておくと、担当者による判断のぶれを防げます。
期限表示のルールと年月表示の考え方
期限表示は原則として年月日で記載しますが、製造日から賞味期限までの期間が3か月を超える食品については、年月までの表示が認められています。缶詰や調味料など長期保存できる商品で年月表示が使われるのはこのためです。日付の粒度を粗くすることで、過剰な返品や廃棄を抑える狙いもあります。
在庫管理の現場では、この粒度の違いが混乱のもとになる場合があります。年月表示の商品を無理に日単位で管理すると、実態のない日付を入力することになり、データと現物がずれてしまいます。年月表示の商品はその月の末日として扱うなど、社内で統一した変換ルールを決めておくと運用が安定します。仕入先ごとに表示方法が異なるときは、受け入れ時点でどちらの粒度かを記録しておくと、後の照合が容易になります。
期限管理が重視されるようになった背景
期限管理への関心が高まっている理由の一つが、食品ロスの削減です。農林水産省と環境省が公表した令和5年度(2023年度)の推計では、国内の食品ロス量は約464万トンとされ、このうち事業活動から生じたものが約231万トンを占めました。期限切れによる廃棄は、原材料費と物流費をそのまま失う結果につながります。
衛生管理の水準も上がっています。改正食品衛生法により、2021年6月からは原則としてすべての食品等事業者に、HACCP(ハサップ/危害要因分析重要管理点)に沿った衛生管理が求められています。規模や業種により内容は異なります。温度や期限の記録を残す運用が前提となるため、期限情報を紙だけで抱える体制では現場の負担が重くなります。
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期限管理が不十分だと生じる問題
賞味期限の管理が担当者の経験に依存したままだと、損失は廃棄だけにとどまりません。値引き販売による粗利の目減りや、問題が起きたときの対応の遅れといった形でも表面化します。どのような損失が生じるのかを具体的に押さえておきましょう。
廃棄と値引きが利益を静かに削る
期限が迫った在庫に気づくのが遅れると、選べる手段は値引き販売か廃棄に限られます。廃棄は仕入原価と保管費用が丸ごと損失となり、値引きも本来得られたはずの粗利を失う点で影響は小さくありません。こうした損失は伝票上ばらばらに計上されるため、全体像がつかみにくいという特徴があります。
さらに、期限切れを恐れて発注を絞りすぎると、今度は欠品による販売機会の損失を招きます。過剰在庫と欠品のどちらも避けるには、残存期限ごとに在庫がどれだけあるかを把握し、消化のペースと突き合わせる必要があります。期限別の在庫数量を定期的に確認できる状態を作ることが、発注精度の改善にもつながります。
回収や問い合わせに素早く答えられない
品質に関する問い合わせや自主回収が発生したとき、対象となる製造ロットがどの取引先へ、どれだけ出荷されたかを短時間で示せるかどうかが対応の分かれ目です。記録が紙や個人の記憶に散らばっていると、対象範囲を特定できず、必要以上に広い範囲を回収せざるを得なくなります。
なお、食品全般に一律のトレーサビリティ義務はありませんが、米や米加工品には取引記録の作成・保存と産地情報の伝達が、牛肉には個体識別番号の表示や帳簿の備付けが、個別の法律で義務づけられています。輸入品では、通関や原産地に関する書類と在庫のロットを結びつけて保管しておくと、照会に迅速に回答できます。
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先入先出とロット管理という基本
賞味期限管理の土台となるのは、古い在庫から先に出すという原則と、ロット単位で在庫を追跡できる状態です。この二つが崩れると、どれだけ丁寧に期限を記録しても現物との整合が取れなくなります。それぞれの考え方と注意点を見ていきます。
先に入庫したものから出す先入先出
先入先出とは、先に入庫した在庫から順に出庫していく方法です。英語の頭文字を取ってFIFOとも呼ばれます。倉庫では、補充は棚の奥から、ピッキングは手前から行う配置にする、通路の反対側から補充できる流動棚を使うなど、自然に古い在庫から手が伸びる動線を作ることが効果的です。入庫時に期限を大きく印字したラベルを貼る運用も、取り違えを防ぎます。
ただし、入庫順と期限順は必ずしも一致しません。仕入先や製造条件が変われば、後から入った在庫のほうが期限が早いこともあります。そのため食品では、入庫順ではなく期限の近いものから出す考え方が重視されます。先入先出を原則としつつ、期限が逆転している場合は期限順を優先すると決めておくと、現場が迷わずに判断できます。
ロット番号と期限を結びつけて追跡する
ロット管理とは、同じ条件で製造・仕入れた一群の在庫にロット番号を割り当て、数量や保管場所、期限を紐づけて管理する方法です。同じ商品でもロットが違えば期限が異なるため、商品コード単位の在庫数だけでは期限を正しく扱えません。入庫の時点でロットと期限をセットで登録することが出発点となります。
入力の手間を減らすには、バーコードの活用が有効です。GS1-128などの規格では、商品コードに加えて、賞味期限や消費期限、ロット番号を識別子付きで一つのバーコードに含められます。読み取るだけで期限とロットが登録されるため、手入力による誤りを抑えられます。取引先の表示状況を確認したうえで、読み取り運用を検討するとよいでしょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)で在庫管理の一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
賞味期限の管理方法と課題
期限管理の進め方は、紙と目視による確認、表計算ソフトによる一覧管理、システムによる自動管理へと段階的に発展します。自社がどの段階にあり、どこで限界を迎えているのかを見極めることが、次の一手を決める材料になります。
紙と目視による確認から始める方法
取扱品目が少なく、保管場所も一か所であれば、棚の在庫を目で確認し、チェックシートに記入する方法でも運用は成り立ちます。導入費用がかからず、その日から始められる点が利点です。期限が近い商品にシールを貼る、棚札に最も古い期限を書き出すといった工夫を重ねれば、精度もある程度は保てます。
一方で、この方法は担当者の注意力に依存します。品目数が増えたり、店舗や倉庫が複数に分かれたりすると、確認漏れが起きやすくなります。棚卸のたびに全数を見て回る負担も無視できません。確認作業に時間がかかり、記録が後回しになっていると感じたら、管理方法を見直す時期と考えられます。
表計算ソフトで管理するときの限界
次の段階として広く使われているのが表計算ソフトです。商品名、ロット、期限、数量を一覧にすれば、期限順の並べ替えや条件付き書式による警告表示ができ、費用をかけずに可視化を進められます。小規模な拠点であれば、これで十分に機能する場面もあります。
課題となるのは、入出庫のたびに人が手で更新する前提である点です。更新が滞れば数字は現物と合わなくなり、複数人で同時に編集すると版が分かれてしまいます。通信販売や店舗など複数の販路を持つ場合は、それぞれの在庫と期限を一つの表で追い続けること自体が難しくなります。転記の回数が増えてきたら、システム化を検討する段階です。
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在庫管理システム選びで確認したい点
期限管理を目的にシステムを検討する場合、在庫数を数えられるだけでは要件を満たせません。期限やロットをどこまで細かく扱えるか、現場の作業に無理なく組み込めるかという視点で候補を絞り込みましょう。
期限とロットを在庫単位で保持できるか
最初に確認したいのは、在庫を商品コードだけでなく、ロットや期限の単位で分けて保持できるかどうかです。同じ商品を期限別に区別できなければ、期限順の引き当ても、残存期限ごとの在庫把握もできません。倉庫や店舗が複数ある場合は、拠点別かつロット別に数量を持てるかもあわせて確かめます。
加えて、期限が近づいた在庫を知らせる警告の仕組みと、出庫時に期限の古い在庫から自動で引き当てる機能があるかを確認しましょう。警告を出すまでの日数を商品ごとに変えられると、回転の速い商品と遅い商品を同じ基準で扱わずに済みます。通知の届け先や頻度を調整できるかも、運用の定着を左右する要素です。
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現場の作業と業種の要件に合うか
機能が豊富でも、現場で使われなければ数字は正確になりません。倉庫や店舗ではハンディ端末やスマートフォンでバーコードを読み取り、その場で登録できるかどうかが定着を大きく左右します。手袋をしたまま操作できるか、冷蔵・冷凍環境で使えるかといった条件も、食品を扱う現場では確認しておきたい点です。
また、期限管理が必要な在庫は食品に限りません。医薬品や医療材料では使用期限とロットの管理が欠かせず、化粧品や一部の資材でも同様の要件があります。自社の業種で求められる帳票や記録の形式に対応しているか、既存の販売管理や生産管理の仕組みと連携できるかを、導入前に具体的な業務の流れに沿って確認しておきましょう。
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期限とロットを在庫単位で扱える製品
ここでは、消費期限やロットを在庫の単位で保持し、トレーサビリティにも対応する在庫管理システムを取り上げます。食品や医薬品など、期限管理が欠かせない現場を想定した製品です。
アラジンオフィス for foods
- 食品業界に特化した販売・在庫・生産管理パッケージシステム
- 5000社を超える導入実績
- ユーザーリピート率は驚異の98.3%
株式会社アイルが提供する「アラジンオフィス for foods」は、食品業界に特化した販売・在庫・生産管理システムです。消費期限管理やロット管理、トレーサビリティに対応しており、同じ商品でもロットごとに期限を分けて把握できます。購買・調達や棚卸処理などの機能も備えています。食品の卸売や製造の現場で、期限切れによる廃棄を抑えたい場合や、回収時に出荷先をたどれる体制を整えたい場合に適します。
スマートF
- 在庫管理や工程管理など、必要な機能からスモールスタート可能
- 導入コンサルつきのトライアル可能、既存システムにも柔軟に連携
- バーコード管理やタブレット活用でペーパーレスIoTを実現
株式会社ネクスタが提供する「スマートF」は、製造業向けの生産・在庫管理システムです。消費期限管理やロット管理、トレーサビリティに対応し、食品や医薬品、化粧品など期限管理が求められる業界を対象に挙げています。バーコード管理やタブレットの活用によるペーパーレスな運用を想定し、ハンディ端末での照合検品により目視確認の手間を減らせます。在庫管理や工程管理などの機能から必要な範囲を選んで導入できる構成です。
NDDの医薬品在庫管理システム (株式会社エヌデーデー)
- VAN発注機能と電子発注で仕入処理を省力化。
- 期限・ロット管理で在庫適正化と廃棄リスク低減
- 他システム連携で在庫・使用実績を集約し、経営分析に活用。
WelThingsR (ウェルコムデザイン株式会社)
- 入出庫、棚卸し、発注、引当を同一画面で処理。
- バーコード連携で現場入力を効率化
- 複数部署で在庫データをリアルタイム共有。
まとめ
賞味期限管理は、期限とロットを在庫の単位として扱い、期限の古いものから確実に出していく仕組みづくりです。まずは賞味期限と消費期限の違いや年月表示の扱いを社内で統一し、先入先出と期限順出荷の原則を現場の動線に落とし込むところから始めましょう。品目数や拠点が増えて紙や表計算ソフトでの管理が追いつかなくなったら、期限別の在庫保持や自動引き当てに対応した在庫管理システムの導入が有力な選択肢となります。廃棄削減と品質保証の両立に向けて、自社の段階に合った方法を選んでください。

