適正在庫とは
適正在庫とは、欠品を出さない最小限の在庫数のことです。在庫数は少なすぎると欠品して販売機会を損失する恐れがあり、欠品が生じなくても、商品棚に商品が少ないと消費者の購入意欲が削がれる可能性があります。
一方で、在庫数を増やしすぎても管理コストがかかり、不良在庫や滞留在庫、廃棄する在庫が発生します。在庫は資産だからといって現金化せずにいると、黒字倒産するケースもあるでしょう。
適正在庫を保つメリットは、保管する在庫を減らせるので、保管スペースやコストを削減できることです。また、資産である在庫を現金化できるためキャッシュフローが改善され、安定して利益を出せるようになります。
適正在庫維持の目的:企業の利益を最大化すること
欠品を出さないことだけを考えていては、在庫数が過剰になる恐れがあります。在庫の過剰には以下のようなリスクがあります。
- ■商品の品質劣化
- ■不良在庫の発生
- ■保管にかかる倉庫費や人件費の増大
- ■滞留在庫による値引き商品の増加
- ■商品回転率の低下
そのため、欠品しないと同時に、コストを最小限に抑えた在庫量に調節する必要があります。出荷量の平均やばらつき、在庫補充の頻度、需要変動などを考慮し、常に過不足のない状態に保つことが理想的です。
適正在庫を維持することで、販売機会を増やしつつコストを減らし、その結果、企業の利益を最大化できるのです。
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適正在庫の計算方法
自社の在庫が適正であるかを判断するには、どうすればよいのでしょうか。適正在庫を算出するための5つの計算方法を解説します。
- ・適正在庫は「安全在庫+サイクル在庫」で算出
- ・「回転率+回転期間」で適正在庫を算出
- ・「回転率+回転日数」で適正在庫を算出
- ・「安全在庫+需要数」で適正在庫を算出
- ・「交叉比率」で適正在庫金額を算出
適正在庫は「安全在庫+サイクル在庫」で算出
適正在庫の基本的な考え方は、「安全在庫+サイクル在庫」です。
安全在庫とは、需要やリードタイムに多少の変動があっても対応できるように備える量のことです。欠品を防ぐための最低限の余剰在庫ともいえます。安全在庫の計算式は以下のとおりです。なお、安全係数とは欠品許容率を指し、一般的に使用されている値は欠品許容量の5%で係数1.65とされています。
安全在庫=安全係数(1.65)×使用量の標準偏差×√(発注リードタイム+発注間隔)
サイクル在庫とは、発注してから次に発注するまでの間に消費される在庫量の半分のことです。例えば、毎月1日に発注するのであれば、約15日間に消費される在庫量がサイクル在庫にあたります。
いずれの数値も、市場の状態やこれまでの経験からケース別に予測する必要があります。
「在庫回転率+在庫回転期間」で適正在庫を算出
次に挙げるのは、在庫回転率と在庫回転期間による方法です。自社が適正在庫数を保てているかを判断する際にも有効です。それぞれ、以下の計算式で算出できます。
- 在庫回転率=年間売上高÷平均在庫金額
- 在庫回転期間=棚卸資産合計÷年間売上高
在庫回転率とは、1年間に在庫が入れ替わった回数を示す数値です。平均在庫金額が1,000万円で年間売上高が3,000万円の場合、在庫は年に3回入れ替わったことになります。
在庫回転期間とは、倉庫資産が完全に入れ替わるまでに要した年数のことです。棚卸資産が2,000万円で年間売上高が1,000万円の場合、在庫が入れ替わるまでに2年を要したことになります。
つまり回転率の数値が大きく、回転期間の数値が小さいほど在庫が適正であるといえます。
在庫回転率について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
「在庫回転率÷在庫回転日数」で適正在庫を算出
回転期間だけでなく、回転日数からも適正在庫を算出できます。在庫回転日数の計算式は、以下のとおりです。
在庫回転日数=日数÷在庫回転率
在庫管理した日数が180日で在庫回転率が5%の場合、在庫が入れ替わるまでに36日を要したことがわかります。在庫回転期間と同様に、回転日数の数値が少ないほど在庫は適正であり、売上が向上します。
「安全在庫+需要数」で適正在庫を算出
顧客の需要数から、適正在庫を算出する方法もあります。計算式は以下のとおりです。
適正在庫数=一定期間の需要数+安全在庫数
1か月の需要数が100個、安全在庫数が50個の場合、適正在庫数は150個となります。この方法は、一定期間の需要数を把握・蓄積しておく必要があるため、需要数の安定した商材の予測に向いています。
「交叉比率」で適正在庫金額を算出
交叉比率とは、その在庫がどれだけ儲かっているのかをみる指標のことです。以下の計算式で算出できます。
交叉比率=在庫回転率×粗利益率
在庫回転率が4%、粗利益率が30%であれば交叉比率は120%です。また在庫回転率が3%、粗利益率が40%であっても交叉比率は120%となります。交叉比率は高いほうが効率がよい商品になるので、注意して確認しましょう。
この交叉比率を利用して、適正在庫金額を算出できます。計算式は以下のとおりです。
- 在庫回転率=交叉比率÷粗利益率
- 適正在庫金額=売上目標÷在庫回転率
交叉比率が200%で粗利益率が20%の場合、在庫回転率は10%となります。売上目標を5,000万円とすれば、適正在庫金額は500万円と算出できます。
適正在庫を考える際の注意点
適正在庫を計算し決定するうえで、注意すべきことはあるのでしょうか。押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
1年間の平均在庫から計算する
在庫は1年の間でも大きく変動しています。季節商品であれば、需要がある時期とない時期とでは、保管される在庫数が大きく異なるでしょう。
適正在庫を検討する際には、1か月や1シーズンなどの短い期間ではなく、最低でも1年間の在庫の変動を追跡し、平均在庫を求めてから決めるようにしましょう。
定期的に最適化を行う
1度適正在庫の値を定めたら、しばらくはその値を基準として運用をしてみましょう。在庫の過不足が起こる頻度が減れば、そのまま運用を続けてよいと考えられます。
しかし、在庫過剰や欠品が減らない場合は原因を究明し、再度適切な値を定めるようにしましょう。また、うまく運用できている商品についても、1年後も同じ値でよいとは限りません。会社の方針転換で、あるカテゴリの商品の取り扱いが減ることもあるかもしれません。定期的に最適化し続けることを、意識する必要があります。
会社視点で適正在庫の方針を決める
在庫適正化を促進するためには、企業全体で考えを統一することが大切です。部門ごとに、適正在庫に対する考え方は異なるからです。例えば、「余剰在庫はなるべく減らすべきなのか、急な受注に備えて十分に確保すべきなのか」「在庫補充は一定間隔で行うべきなのか、在庫数が減少したときに発注すべきなのか」など、部門によって考え方に大きな差が生じる可能性があります。
まずは、さまざまな意見を集約・検討し、企業としての在庫管理の方針を決めましょう。そしてすべての部門で目標を共有・管理し、一丸となって在庫適正化に取り組むことが、企業利益の最大化につながるでしょう。
適正在庫を維持する方法
適正在庫数を定めた後は、それを維持することも重要です。そのためにはどうすればよいのでしょうか。適正在庫とは在庫を多すぎず少なすぎずの量を保つことですが、ほとんどの企業で課題に感じているのは、在庫が多すぎる=過剰在庫になってしまうことです。つまり、適正在庫を維持する=ムダな在庫数を減らすこと、ともいえるでしょう。ここからは、ムダな在庫数を減らす方法を解説します。
定期発注と定量発注を使い分ける
在庫補充の方法には、大きく分けて以下の二つの発注方式があります。発注方法を見直すことも、適正在庫数の維持につながります。
定期発注方式とは、「毎月1日に発注」といったように定期的に発注する方式です。発注時期が在庫量に左右されない分、発注量は毎回決めなくてはならないため手間がかかります。発注するたびに需要をしっかりと予測したい、重要商品に対して用いられる方式です。
定量発注方式とは、発注点(あらかじめ決めた発注のタイミングとなる在庫数量のこと)を、在庫量が下回ったときに発注する方式です。発注時期はその都度左右されますが、発注量は毎回同じになるのが特徴です。毎回需要予測をしないため、比較的需要が安定しているものに適用される方式です。
発注点については、以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方はあわせてご覧ください。
製造リードタイムを短縮させる
適正在庫数を維持するためには、製造リードタイムの短縮も欠かせません。製造中の商品も在庫として保管しなければならないため、製造リードタイムが長いほど、管理すべき在庫の量が増えます。逆に、製造リードタイムを短くできれば、発注から出荷までの時間が短縮し、抱える在庫の量は少なくなります。
製造リードタイム以外のリードタイムも、短いほうが望ましいのは間違いありません。しかし、調達リードタイム(部品などの調達に要する時間)や物流リードタイムは他社の手を介するため、自社の工夫だけで短縮するのは困難です。まずは、自社でコントロールしやすい製造リードタイムの短縮を試みましょう。
以下の記事では、製造リードタイムの改善方法を解説しています。発注リードタイムや納品リードタイムについても解説しているため、適正在庫数を維持する参考にしてください。
需要予測を立てる
商品を発注する際には、必要量を予測する必要があります。そのため、発注する商品の需要を予測することが欠かせません。需要の予測には以下のような方法があります。
- ■クライアントに聞く
- ■統計のデータを参照する
- ■市場の動向を見る
B to Bの取引であれば、直接クライアントに聞く方法があります。しかし、一般の消費者に向けて商品を販売する場合はそれができません。そのため、統計データなどから推測するしかないでしょう。
その際には、前年の同じ時期の需要や、過去数か月間の販売数の平均値を参考にするなどしましょう。季節要因の大きい商品は、平均値よりも時期のほうが重要になるなど、商品の特徴を踏まえて考えることも大切です。
需要予測の方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。需要予測のための計算式を紹介しています。
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在庫管理に欠かせない適正在庫の考え方について解説しました。どんなに計算しても、予測という要素が入る以上、確実に的中する保証はありません。しかし、闇雲に発注するよりは欠品や余剰のリスクは軽減するはずです。
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