近年の小売業界の動向
小売業は流通のもっとも川下に位置し、仕入れた商品を顧客に販売する事業です。ホームセンター、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、家電量販店、各種の小売店などがその例です。業界規模が大きく、日本の中核産業の一つといえるでしょう。
2023年10月に経済産業省が発表した資料によると、同年上期の商業全体における販売額は、前年同期比1.9%増加の約290兆円となっています。そのうち約3割を占める小売業の販売額は、5.9%増加の79兆2,530億円でした。なかでも、百貨店やドラッグストア、コンビニエンスストア、スーパーなどでは、5類移行後の外出機会増加やインバウンドの回復により、前年同期より販売額が増加しています。
一方、アフターコロナになり外出の機会が増えたことで「巣ごもり需要」が終息しつつあり、家電大型専門店やホームセンターの商品販売数は減少しています。
参考:2023年上期小売業販売を振り返る;活動回復による消費動向をみていきます|経済解析室ニュース(METI/経済産業省)
小売業で在庫管理を効率化する方法
ネットショッピングの需要拡大やオムニチャネル化、競争の激化にともない、従来の手作業によるアナログな在庫管理は難しくなっています。管理する商品が膨大な場合や在庫管理に十分な人員を割けない場合は、コンピュータによるシステム化が有効な手段となるでしょう。
そこで、在庫の入出庫状況や過不足を正確に把握し、管理を効率化する方法の一つとして、在庫管理システムが多くの企業で活用されています。特に小売業の場合は、POSシステムで蓄積した購買データをもとに需給予測を立て、商品ごとに適した発注方式で発注し、システムで在庫を管理するという流れが定着しつつあるでしょう。
一般的に、小売業の発注は定量発注方式で行いますが、ほかにもさまざまな発注方式があります。定量発注方式の概要やその他の発注方式に関しては、以下の記事を参考にしてください。
小売業において在庫管理システムで実現できること
小売業で導入が当たり前になりつつある在庫管理システムは、在庫の入出庫状況や過不足がリアルタイムに把握できるのが特徴です。システム活用により、得られるメリットについて以下で詳しく解説します。
適正在庫をキープできる
一般に小売店は利益率が低く、ギリギリの在庫による販売が求められる場合も多いでしょう。しかし、品切れが発生すれば販売チャンスを失うため、適正な在庫維持が課題となっています。一方、品揃えの充実を強調するために、あえて過剰在庫で棚を演出することもあるでしょう。
このような現実を踏まえ、必要とする在庫を計画的かつ柔軟に仕入れる仕組みづくりが必要となります。在庫管理システムは、過去の入出荷や在庫のデータから需要予測を行い、過不足のない在庫管理を支援します。
適正在庫について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
在庫を見える化できる
在庫管理システムでは、POSシステムや店舗用ハンディシステムなどと連携が可能です。各種システムとの連携により、在庫管理業務を効率化するだけでなく在庫の変動をリアルタイムに見える化でき、商品の過不足や回転率の悪い在庫が判明します。扱う製品分野によっては売れ筋・死筋の分析や、ABC分析などが可能な場合もあるでしょう。
在庫回転率やABC分析について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
実在庫と理論在庫の差異を最小限に抑えられる
在庫を見える化したつもりでも、実在庫と理論在庫が一致していなければ意味がありません。実在庫と理論在庫の不一致は、個人個人の作業手順の微妙な違いに起因する場合もあります。
この不一致を防止するには、試供品や返品の扱いを手順に取り込み、ルール化する必要があります。在庫管理システムでは返品時の対応についてもカバーした製品が多いため、実在庫とデータ上の在庫が合わないといったトラブルが起きにくいでしょう。
棚卸業務を効率化できる
在庫管理システムのなかには、棚卸機能が搭載されている製品が多くあります。また、ハンディターミナルを利用すれば棚卸作業を効率化でき、入出庫業務における正確性も向上します。
以下の記事では棚卸業務の概要から在庫差異が起きる理由、効率化する方法まで解説しているので、あわせてご覧ください。
在庫ロスを削減できる
食品分野では賞味期限の到来により、販売できないまま廃棄処分となるケースもあるでしょう。在庫ロスをなくすには賞味期限管理、過剰在庫管理などの機能が必要です。在庫管理システムでは、ロット管理により賞味期限が近い商品をまとめて管理できたり、期限管理機能によりアラート通知ができたりします。賞味期限切れによる廃棄や無駄なコストを減らせるでしょう。
カスタマイズで取引慣行への対応もできる
返品や売上時に商品の仕入れが発生する(消化仕入れ)などの慣行がある場合は、その制度への対応機能があるとよいでしょう。多くの在庫管理システムでは、自社の業務にあわせて機能を開発するなどのカスタマイズが可能なため、より在庫管理の精度を高められます。
以下の記事では、おすすめの在庫管理システムを紹介しています。比較表も掲載しているので、導入を検討する際の参考にしてください。
小売業の在庫管理システム導入例
在庫管理システムの導入によって、どのような効果が得られるのでしょうか。ここでは、ITトレンドでランキング上位の在庫管理システムにおいて、卸売・小売業・商業(商社を含む)から寄せられた口コミをピックアップし、活用事例を紹介します。
アラジンオフィスの導入事例
アラジンオフィスを導入した企業からは、以下のような活用例や導入効果が寄せられています。
卸・店舗の一元管理ができ効率化につながった
卸・店舗の一元管理が可能になり、作業別(仕入れ・マーケティング・営業・受注・出荷・経理)、ブランド別、取引先別などの詳細な設定でデータを閲覧できるようになりました。エクセルを活用していた頃は手作業で集計していましたが、現在ではほぼ自動化され15分ほどで作業が終了しています。
在庫確認や商品手配が効率化、データ活用もしやすい
各店舗における在庫状況の確認が容易になり、商品手配も効率化されました。汎用集計では、さまざまな形式でデータ抽出が行え、資料作成に役立っています。また、使いこなせるようになるまでは、サポート体制が充実しているので安心です。
参考:アラジンオフィス:評判・口コミ|ITトレンド
SMILE V 2nd Editionの導入事例
SMILE V 2nd Editionを導入した企業からは、以下のような活用例や導入効果が寄せられています。
海外貿易でも活用しやすい
在庫管理や棚卸で主に活用しています。また、得意先別売上状況確認のために使用しており、 データをエクセルで保存可能な点が便利です。海外貿易を行っており、入出荷データをスムーズに確認できるのもメリットです。
在庫状況から支払い状況まで見える化された
見積書作成から受注・発注業務、売上・仕入業務、在庫管理までの基幹業務を一括して管理できるため、効率よく業務が遂行できます。また、業務の進捗状況も把握しやすくチーム全体の状況が可視化されています。
参考:SMILE V 2nd Edition 販売:評判・口コミ|ITトレンド
在庫管理のシステム化で競合に差をつけよう
収益率を向上し、競争力を強化するには在庫管理システムの存在が欠かせないでしょう。在庫リスクは低減させるべきですが、売り切れによる機会損失も避けなければなりません。適正在庫を把握し、コントロールするためには、業界特性も考慮する必要があります。さっそく在庫管理システムの資料を取り寄せ、自社に最適な製品の比較をしてみてはいかがでしょうか。