近年の小売業界の動向
小売業は流通のもっとも川下に位置し、仕入れた商品をお客様に販売する事業です。DIY、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、家電量販店、各種の小売店などがその例です。業界規模が大きく、日本の中核産業の一つといえるでしょう。
小売店は国内情勢の影響を受けやすいのが特徴です。近年では新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、業態により販売額の前年比伸び率に差が出ました。例えば経済解析室の記事によると、2020年における百貨店の全国販売額は前年比-25.5%と、全国的に大幅減となりました。これは緊急事態宣言下での営業時間短縮や休業、外出自粛などの影響によるものと考えられます。しかしスーパーでは全国販売額が前年比3.4%増でした。コロナ禍での巣ごもり需要が後押しした結果と考えられるでしょう。
またこのような国内情勢や生活様式の変化、IT化の促進などで急速に普及が進んだものがあります。インターネットを利用したネットショッピングです。総務省統計局の資料によると、2017年1月~2020年3月までのネットショッピング利用世帯の割合(2人以上の世帯、月ごとの推移)は緩やかな上昇、もしくは横ばいで頭打ち感がありました。しかし緊急事態宣言が出された2020年4月以降は再度上昇し、5月には50.5%を記録。宣言解除後の6月も50.8%の高水準となりました。コロナ禍を契機として、ネットショッピングの普及が急速に進んだといえます。
スマートフォンが身近になったことも大きな影響といえるでしょう。大手スーパーもECサイトを立ち上げるようになり、複数の接点でお客様に販売するオムニチャネル化が潮流となりつつあります。
参考:2020年小売業販売を振り返る(後編)|経済産業省 経済解析室
参考:統計Today No.162 新型コロナウイルス感染症で変わるネットショッピング-家計消費状況調査の結果から-|総務省統計局
小売業における在庫管理とは
ネットショッピングの需要拡大やオムニチャネル化、競争の激化にともない、従来の人の手による在庫管理は難しくなっています。管理する商品が膨大な数になる、あるいは限られた人数で在庫管理をしなくてはならないようなケースでは、コンピュータによるシステム化が有効な手段となるでしょう。
特に小売業の場合は、POSシステムで蓄積した購買データをもとに需給予測を立て、商品ごとに適した発注方式で発注し、在庫管理システムで在庫を管理するという流れが定着しつつあります。
小売業の発注は定量発注方式で行うのが一般的ですが、他にもさまざまな発注方式があります。定量発注方式の方法やその他の発注方式に関しては、以下の記事を参考にしてください。
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小売業において在庫管理システムが実現できること
小売業で導入が当たり前になりつつある在庫管理システムは、在庫の入出庫状況や過不足がリアルタイムに把握できるのが特徴です。それでは実際に、システムの利用でどのような課題を解決できるのでしょうか。
適正在庫をキープできる
一般に小売店は利益率が低く、ギリギリの在庫による販売が求められることも多いでしょう。しかし、品切れが発生すれば販売チャンスを失うため、適正な在庫を維持しなければなりません。一方、品揃えの充実を強調するために、あえて過剰在庫で棚を演出することもあるでしょう。
このような現実を踏まえ、必要とする在庫を計画的かつ柔軟に仕入れる仕組みづくりが必要となります。在庫管理システムはこの仕入れを自動化し、業務を効率化します。
適正在庫について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
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在庫を見える化できる
適正在庫を明確にできたら、在庫の見える化を実施しましょう。在庫の見える化には既存POSシステムとの連動や、ハンディターミナルの活用が求められます。見える化により在庫の過不足や回転率の悪い在庫が判明します。扱う製品分野によっては売れ筋・死筋の分析や、ABC分析などが可能な場合もあるでしょう。
在庫回転率やABC分析について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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実在庫と理論在庫の差異を最小限に抑えられる
在庫を見える化したつもりでも、実在庫と理論在庫が一致していなければ意味がありません。実在庫と理論在庫の不一致は、個人個人の作業手順の微妙な違いに起因することもあります。
この不一致を防止するには、試供品や返品の扱いを手順に取り込み、ルール化する必要があります。在庫管理システムでは返品時の対応についてもカバーした製品が多いため、これらを実現しやすいでしょう。
棚卸業務を効率化できる
在庫管理システムの中には、棚卸機能も搭載されている製品が多くあります。ハンディターミナルを利用すれば棚卸作業を効率化でき、また正確な入出庫業務も可能となります。
以下の記事では棚卸業務の概要から在庫差異が起きる理由、効率化する方法まで解説していますので、あわせてご覧ください。
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在庫ロスを削減できる
食品分野では賞味期限があるために、販売できないまま廃棄処分となってしまうこともあるでしょう。在庫ロスをなくすには賞味期限管理、過剰在庫管理などの機能が必要になります。期限管理については、期限切れが近づくとシステムからアラートを出すことも可能です。
カスタマイズで取引慣行への対応もできる
返品や売上時に商品の仕入れが発生する(消化仕入れ)などの慣行がある場合は、その制度への対応機能があるとよいでしょう。多くの在庫管理システムでは、自社の業務にあわせて機能を開発するなどのカスタマイズも行えるため、より在庫管理の精度を高めることが可能です。
以下の記事では、おすすめの在庫管理システムを紹介しています。比較表もありますので、導入を検討する際の参考にしてください。
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小売業の在庫管理システム導入例
ここでは多くの事例の中から小売業の代表的な成功パターンを想定し、モデルケースとして紹介します。
導入前:在庫管理と発注業務の負担が大きい
東北地方に集中して20店舗を展開しているDIYショップの導入例です。
ナショナルブランドの大型DIYが攻勢をかけてくるものの、同社では限られたエリアに地域密着型の店舗を出店することで大型店舗に対抗し、売上を落とすことなくビジネスを継続させています。各店舗の規模は小さいものの、扱っている製品は10万点ほどになり、その在庫管理と発注が店舗スタッフの大きな負担となっていました。
導入後:正確性と効率性が向上し、モチベーションも向上
そこで導入したのが在庫管理システムです。ハンディターミナルを利用して入出庫や棚卸ができるため、正確性と効率性が大幅に向上しました。また本部一括管理ではなく、店舗ごとに天候などの条件によって担当者の経験を活かした独自発注をさせることで、モチベーションを下げることなく、適正在庫と売上向上を実現しています。
在庫管理のシステム化で競合に差をつけよう
収益率を向上し、競争力を強化するには在庫管理システムの存在が欠かせないでしょう。在庫リスクは低減させるべきですが、売り切れによる機会損失も避けなければなりません。適正在庫を把握し、コントロールするためには、業界特性も考慮する必要があります。自社にあった在庫管理システムで、業務を効率化させましょう。