棚卸とは
棚卸とは、月末や年末などの決算日に在庫の数量をチェックすることです。帳簿やシステム上の理論在庫数との差異が無いか確認し、過不足があれば原因を突き止める必要があります。倉庫内の全在庫の数量をカウントする必要があるため、通常業務を止めて作業員総出で実施することが多く、どの企業でも多大な時間や労力が必要となる業務です。
普段の在庫管理が適切に実施できていれば、棚卸作業も大きな問題なく済むことがほとんどでしょう。しかし入出荷や返品による在庫の変動を正しく追跡できていないと、数が合わなくなり棚卸作業完了までの時間が伸びていくことになります。
棚卸しの目的:企業としての利益を確認するため
棚卸は何のために行うのでしょうか。棚卸を行えば自社の現在の在庫状況を知ることができ、同時に売上に対する商品原価を計算することもできます。原則、在庫を仕入れた際にかかる仕入れ費用は、商品として売り上げた分のみを原価として計上することができます。つまり期首(前期末)と期末の棚卸の差額を原価として、総売上から差し引いた残りが利益となるのです。
また、何の商品がどのくらい売れ残っているかを改めて確認したり、食品など販売期限が設けられている商品をチェックすることで、今後の販売戦略の指針を決める手助けにもなるでしょう。
棚卸の方法
では棚卸はどのような手順、方法で実施すれば良いのでしょうか。一般的に、棚卸は実地棚卸と帳簿棚卸という2つの手法を組み合わせて行います。
実地棚卸とは、実際に倉庫にある商品を数えていく方法です。棚卸以外の業務を止めるか止めないかで、一斉棚卸と循環棚卸の2つに分けられます。帳簿棚卸は帳簿やソフトウェア上で在庫をカウントすることです。帳簿には日々の入出荷を記録してあるため、その差から現時点での在庫を求めるのです。
棚卸は正確な作業が求められるため、実地棚卸と帳簿棚卸を組み合わせて実施する企業が多いようです。棚卸の詳細な手法についてはこちらの記事をご覧ください。
在庫差異が起きる4つの原因
棚卸は実在庫と理論在庫の差異が無いか確認する作業です。作業の結果、実在庫と理論在庫とで差異(過不足)があることが発覚した場合、その原因は何なのでしょうか。ここからは在庫差異が起こる原因を紹介していきます。
棚卸中のカウント漏れ・重複カウント
在庫差異が発生したら、まずはカウントミスを疑いましょう。自社の倉庫は整理整頓が行き届いているでしょうか。倉庫業務では3S(整理・整頓・清潔)を意識することが大切です。
空のダンボールなどが積み上がり、本来カウントすべき商品が隠れてしまっていると、あるはずの商品が無いなどの在庫差異の原因となります。また複数人でカウントしている場合は重複してカウントしてしまう場合もあります。
自社のミスによる在庫減の記録漏れ
出荷以外で在庫が減る原因として、サンプルとしてお客様に渡したり、庫内作業で誤って破損させた場合が考えられます。自社ではこれらを想定したルールは決まっているでしょうか。
特に商品を破損させた場合、作業員が報告せずに自己判断で廃棄している場合もあるため、改めてルールを徹底する必要があります。出荷以外で在庫が減った場合も必ず記録に残しましょう。
商品の取り置きによるデータ差異
データ上は商品を出荷し売上が発生しているが、実際はお客様の要望で来月納品するまで倉庫に保管されているケースはないでしょうか。いわゆる「取り置き」状態です。
一番望ましいのは現場の混乱を避けるために、取り置きの運用を止めることですが、企業によっては難しいこともあるでしょう。その場合はシステム側を改修し、棚卸時に在庫差異とならないような工夫が必要です。
入荷元の納品ミス
可能性は低いですが、入荷元の納品ミスということもあり得ます。100個納品するはずが99個しか納品されていなければ、きちんと出庫記録をつけていても棚卸で数が合わなくなります。
入荷の際は数量に間違いがないか確認し、正しい数を記録するようにしましょう。
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棚卸を効率的に行う方法とツール
倉庫業務は煩雑になりがちで、それゆえに大小さまざまなミスも起きやすいものです。前述したような原因で棚卸時に在庫差異が起こることもあります。課題を解決し棚卸を効率的に行うためには、一体どのような手法を用いればよいのでしょうか。ここでは、棚卸を効率的に行う方法をご紹介します。
業務マニュアルを作成する
棚卸を行う際は、事前に業務マニュアルを作成しておきましょう。棚卸の規模が大きくなればなるほど携わる人員も増えるため、各人の勝手な判断に頼るとエラーの元になります。
それを防ぐために、「棚卸の重要性」「差異を防ぐ方法」「差異が発生した場合の対処方法」などを事前に共有しておくことが大切です。「迷った時はマニュアルを参照して下さい」とアナウンスすることで、現場リーダーの負担を軽減することもできるでしょう。
Excelで在庫管理表を作成する
ほとんどの企業で導入済みの表計算ソフトであるExcelで在庫管理を行えます。Excelにはさまざまな機能が搭載されているため、それらを上手く活用すれば在庫管理に適したフォーマットを作成することができるでしょう。
Excelで在庫管理を行うメリットとしては、下記のようなものが挙げられます。
- ●コストがかからず導入が容易
- ●システムにとっつきやすい
一方、Excelで在庫管理を行うデメリットとしては、下記のようなものが考えられるでしょう。
- ●データの個数に限りがある
- ●シートが複雑化する
- ●同時編集やリアルタイム化ができない
Excelで在庫管理を行うか、それとも専用のシステムを導入するかは業務形態や会社の規模によって選択することをおすすめします。システムを導入する際にもっとも大切なことは、自社に適したものを選ぶ、という点です。
エクセルでの在庫管理表作成について、詳しくはこちらの記事を参照してください。
バーコード、QRコードで管理する
在庫である商品にバーコードやQRコードをつけることで管理が容易になります。商品番号で管理する場合はどうしても番号の入力ミスが生じやすいものですが、バーコードやQRコードであればその心配はありません。
各商品につけられたバーコードやQRコードをハンディターミナルで読み込むことで、棚卸を含めたさまざまな業務に活用できます。
バーコードによる在庫管理の効率化については以下の記事をチェックしてみてください。
RFIDで管理する
在庫にバーコードやQRコードではなく、RFIDをつけるという方法もあります。RFIDとバーコード・QRコードの違いとしては、「データ量」と「複数識別の可否」が挙げられます。
バーコード・QRコード・RFIDの中ではRFIDにもっとも多くのデータを入れられ、また複数識別も可能なため商品が袋に入ったままでも個数を読み取ることができます。バーコードやQRコードも大変便利な存在ですが、複数識別はできないため、個数だけは手入力する必要がありました。
手入力する箇所があるということはそれだけヒューマンエラーの余地があることにも繋がるため、業務効率化・正確化の面では好ましいことではありません。その点RFIDであればシステムによっては目視で個数を数える必要がなくなるため、より正確な在庫管理に繋がるでしょう。
在庫管理におけるRFIDの活用事例についてはこちらの記事をご覧ください。
在庫管理システムを活用する
専用の在庫管理システムを導入する方法です。前述した通り、人の手を介して行われることはどうしてもミスが生じやすいため、いっそのこと全てシステムで管理してしまおうという考え方になるでしょう。
適切な在庫管理システムを導入すれば、簡単な操作で正確性の高い在庫管理を行えます。また、データを容易に全社員に共有することができたり、在庫管理における人員コスト削減にも繋がることが期待できます。
システムで在庫管理を行う方法としては、ハンディターミナルを使うやり方が一般的です。棚卸作業を例に挙げると、従来は在庫の商品名・番号と個数を紙に書いて後でパソコンに入力していたところを、ハンディターミナルで在庫のバーコードを読み取って数量を入力し、それをパソコンに転送するだけで事足ります。
在庫管理システムの基礎を知りたい方は以下を参照してください。
正確かつ効率のよい棚卸で適切な在庫管理を行おう
棚卸を行うことによって企業は自社が抱えている在庫数を知ることができ、同時に利益額やビジネスの回転率も計算することができます。在庫管理はビジネスの肝とも言うべき重要な業務ですが、そのためには棚卸作業を欠かすことはできません。
それだけに、棚卸の重要性についてしっかりと理解を深め、実務を行う際の課題や効率的な進め方を知っておくことが大切です。その辺りは会社によって大きく異なるため、自社に適した方法を選択し、正確さと素早さを兼ね備えた棚卸を行いましょう。