RFIDとは
RFIDは「Radio Frequency Identification(無線周波数識別)」の略で、無線周波数を用いてアイテムを識別する技術を指します。アイテムに取り付けられたRFIDタグ(またはICタグとも呼ばれる)をスキャンすることで、そのアイテムの情報を瞬時に取得することが可能です。身近なところでは電子マネーや在庫管理などに使われている技術であり、アイテムを動かさずとも一括して商品の識別や管理を効率的に行えるのが大きな特徴です。
現在では、在庫管理で有効活用されており、バーコードよりも業務の効率化ができる技術として注目を集め、自動化に向けて幅広い適用が期待されています。
RFIDの種類
RFIDには、電池の有無や周波数の異なるものなど、複数種類存在します。それぞれの特徴をみていきましょう。
電池の有無による違い:パッシブタグとアクティブタグ
電池を持たないものを「パッシブタグ」、持つものを「アクティブタグ」と呼びます。それぞれの特徴に合わせた使い分けが必要です。
- ■パッシブタグ
- 電池を持たないため、スキャナの電波から電力を受け取って電波を発信します。通信距離は短くなりますが、価格は安く長期間使用できます。
- ■アクティブタグ
- 自身で電池を持つため、パッシブタグよりも遠くまで電波を発信できます。しかし、電池が消耗することで使用できる期間が短くなり、RFID自体のサイズも大きくなるデメリットがあります。また、パッシブタグよりも価格が高くなることも注意が必要です。
周波数による違い:HF帯とUHF帯
RFIDは電池の有無以外にも周波数によって種類が分かれます。周波数には「HF帯(短波帯13.56MHz)」と「UHF帯(極超短波帯900MHz)」の大きく分けて2種類があります。
- ■HF帯
- エネルギー効率はよいですが、通信距離が短い特徴があります。交通系ICカードや運転免許証、マイナンバーカードなどに活用されています。
- ■UHF帯
- 指向性を持つアンテナを搭載しており、データを受信する方向は限られますが、通信距離が長い特徴があります。在庫管理や検品、携帯電話などに活用されています。
そのほか、周波数帯に応じてキーレスエントリーに用いられるLF帯や、電子レンジや無線LANに使われるマイクロ波などがあります。
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バーコードやQRコードとの違い
従来、コストの安いバーコードやQRコードによる在庫管理が行われてきました。これらの方法は、ラベルに印刷されたコードをスキャナやハンディターミナルで読み取ります。そのため、商品の入った箱を並び替えたり取り出したりして、スキャナとコードを近距離まで近づけないといけません。
対して、RFIDの場合は電波を発信しているため、一定の距離であれば離れていてもデータを読み取ることが可能です。そのため高所に保管してある商品であっても、RFIDで管理されていれば脚立を使わずに読み取ることができ、従業員の作業時の安全を確保しやすくなります。
また、バーコードやQRコードでは一度登録した情報を変更できませんが、RFIDはリアルタイムで情報の変更が可能なため、より正確な情報を収集・管理できます。
RFIDのメリット
在庫管理に効果的なRFIDには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
高速スキャンで作業効率が向上する
RFIDは物理的な読み取りを必要としないため、一度に複数のタグを読み取ることができ、商品やタグを直接スキャンする手間を省きます。在庫のチェックやデータ収集などのプロセスが高速化し、作業効率が大幅に向上します。また、作業効率が向上することによって作業時間が削減され、結果的に人件費の削減にもつながります。
リアルタイムでデータ管理ができる
RFIDはリアルタイムでデータを収集し、在庫情報を即座に更新可能です。在庫の不整合や欠品、過剰在庫などのリスクを減少させ、効果的な在庫管理が実現します。RFIDは、販売計画や経理的な側面でも強い味方となるでしょう。
ヒューマンエラーの防止につながる
自動化されたスキャンとデータ入力により、人間が行う手作業によるヒューマンエラーが防止されます。データの整合性が保たれるようになり、業務効率が改善されるでしょう。また、誤った出荷や在庫不足による顧客の不満を防ぐことができ、顧客満足度の向上にも寄与します。
防犯・セキュリティ対策が強化される
RFIDは、防犯およびセキュリティ対策を強化する上でも効果的なツールとなります。商品やRFIDタグを取り付けることで、不正な移動や盗難があった際に、リアルタイムで警告を発することが可能です。特に小売業界では、高価な商品の盗難防止にRFIDが活用されています。店舗でのセキュリティタグとしての役割を超え、商品が店舗を不正に出た瞬間に警報を鳴らして知らせます。
タグに書き込める情報量が多い
RFIDタグには、バーコードやQRコードと比較して格段に多くの情報量を書き込めます。これにより、商品の詳細な情報や製造日、有効期限、配送情報など多岐にわたるデータを一つのタグに書き込み、リアルタイムでの情報共有が可能になります。また、情報は必要に応じて更新や追記ができるため、商品情報の変更にも対応しています。
RFIDのデメリット
多くのメリットがある反面、RFID技術には考慮すべきいくつかのデメリットも存在します。
費用が高額になりがち
RFIDシステムの導入にはタグやリーダーだけでなく、インフラストラクチャーやシステム統合のための初期投資が必要です。特に大規模な導入では、これらのコストが高額になる可能性があります。さらに、RFIDシステムの維持にも継続的なコストが発生します。システムのアップデート、タグの交換、および維持管理作業は、運用コストを増加させる要因となります。
環境によっては使えない
特定の環境下では、RFIDタグの読取性能に影響を及ぼす要因が存在します。金属や液体の近くでは信号が干渉を受けやすく、システムの性能が低下する場合があります。
その結果、工場の床や壁が金属製の場合や、飲料水や化学薬品などの液体製品を取り扱う倉庫では、RFIDの効果を十分に発揮することが困難です。さらに、高温や極度の寒さ、湿度などの環境要因もタグの性能に影響を与える可能性があり、これらの特殊な状況下では、通常通りの読み取りができないことがあります。
タグの取り付けに手間がかかる
各商品にRFIDタグを一つずつ取り付ける必要があり、これには相当な時間と労力を要します。特に大量の在庫を抱える企業や、多種多様なアイテムを取り扱う事業者にとっては、導入初期のタグ付け作業は大きな負担となります。
さらに、商品の形状や材質によってはタグの取り付けが困難であったり、特定の環境条件下ではタグがうまく機能しなかったりするケースも存在します。このような特殊な状況を考慮に入れ、適切なタグの種類を選定したり、取り付け方を調整したりするなど、追加の対策が必要になるケースも少なくありません。
RFIDには多くのメリットとデメリットがありますが、在庫管理を効率化するためにはRFIDの導入が必要不可欠です。以下の記事では、どのような企業がRFIDやICタグを使うべきかを解説しているため、あわせて参考にしてください。
RFIDを利用した在庫管理システムとは
RFIDを使用することで、複数商品の在庫状況を一括で在庫管理システムに取り込めます。読み取った商品の情報はそのまま在庫管理システムで管理でき、現状の在庫数や入出荷の状況をリアルタイムに把握可能です。
従来の手作業の場合やバーコード・QRコードを活用した場合と比較しても現場担当者の負担を軽減でき、ミスを減らすことが可能です。
在庫管理システムについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。おすすめの在庫管理システムを業界別に比較して紹介しています。製品の選び方も解説しているので、自社にあう在庫管理システムを選定する参考にしてください。
さまざまな分野のRFID活用事例
在庫管理を行う業界は多く、業界に合わせた在庫管理システムを導入する必要があります。RFIDを使った在庫管理システムはあらゆる業界に対応できるため、自社の業務効率向上に貢献できるでしょう。
ここからはRFIDを活用した分野の事例を紹介していきます。
アパレルや小売業での事例
アパレルや小売業の場合、商品を管理している倉庫だけでなく、店舗でも管理すべき商品の数量が多いでしょう。また業界の特徴として商品の種類が非常に多様化していることもあげられます。そのため顧客から商品の有無やサイズの問い合わせを受けたときに、回答まで時間がかかりやすく、チャンスを逃してしまうことも多々あります。
しかしRFIDを使った在庫管理システムを活用することで、顧客が欲しい商品が店舗にあるのか、あるいはほかの店舗や倉庫にあるのかがすぐに分かります。このように正確な商品の情報を把握し顧客に回答することで、企業としてチャンスを掴むことになり、顧客の満足度も向上します。
また店舗の販売スタッフが行っている入荷した商品の在庫管理についても、RFIDを活用することで在庫管理にかかる時間が短縮されるため、スタッフは販売業務に専念できるでしょう。
レンタル品の事例
着物や専用の機材などのレンタル品を管理するときにもRFIDを使って管理を効率化できます。シール型のアクティブタグをレンタルする商品に貼り付け、遠隔で読み取ることで貸し出した商品情報の取得・変更・管理が行えます。
サイズや色、季節によって種類が多くなる小物類の管理を効果的に行うことで、問い合わせの対応や商品の管理を効率化できます。
また衣装や着物については、RFIDがあれば商品を箱に保管している状態のままで管理できるため、棚卸作業にかかる手間も少なくなります。
医療機器や介護用品の事例
医療機器や介護用品にもRFIDを有効活用できます。医療機器や介護用品では製品の管理をほかの業界と同様にバーコードやQRコードを使って管理することが主流となっています。バーコードを入庫時に製品に貼り付け、使った製品のバーコードを取り除き請求伝票に貼り付けるという流れで管理を行います。
しかし、この方法はすべて手作業になり、伝票の作成ミスによる未請求が発生する可能性があります。また、使用した製品の個数を把握することも難しいため、在庫不足や逆に過剰になってしまう事態も発生しやすいです。
そこでRFIDを使うことで在庫の正確な管理が可能になり、手作業で発生していたミスを防ぎ、在庫の数を適切に保てます。
自社にあったRFIDを導入し在庫管理を効率化しよう
RFIDを活用することによって、業務の負担を軽減できます。特に在庫数や商品の種類が多い場合であれば、RFIDの利用によって在庫管理を最適化できます。RFIDやシステムにはさまざまな種類があるため、自社にふさわしい方法を検討する必要があるでしょう。自社の課題を明確にし、適切な在庫管理システムを導入して効率化を図りましょう。