主な発注方式
適切な在庫管理を行うために知っておくべき、主な発注方式は「定期発注方式」と「定量発注方式」に大別できます。それぞれ見ていきましょう。
定期発注方式
定期発注方式はその名のとおり、定期的に発注を行う方式です。例えば「毎月1日になったら発注業務を行う」といった形です。どのくらいの期間ごとにどれくらいの量を発注すればよいのか、過去の需要量や生産量から導く必要があります。
弱点としては、過去のデータの分析結果によって毎回の発注数が大きく変動することが挙げられます。
定量発注方式
定量発注方式は、在庫がある一定量以下になったら発注する方式です。あらかじめ発注するタイミングの在庫量を決めておく必要があります。発注した品が届くまで困らないような値を設定しましょう。発注量を一定量に決められるのが利点です。
ただし、時期によって変動の大きな商品には適用できません。よく売れる時期であれば、在庫があらかじめ設定した在庫量になってから発注したのでは遅いでしょう。
紹介した定期発注方式と定量発注方式のほかにも発注方式があります。以下の記事で解説していますので、最適な発注方式を選んで適正在庫を確保しましょう。
発注点とは
発注点とは、定量発注方式において発注を行うタイミングのことです。在庫が一定量以下になったら発注するわけですが、その一定量のことを発注点と呼びます。発注点の管理が十分でないと定量発注方式の利点を生かすことができません。
発注点は以下の式で算出することができます。
「発注点=1日の平均出荷量×調達期間+安全在庫」
「1日の使用量」に「調達期間」を掛けた数値は、発注してから手元に届くまでの期間に使われる量のことです。その量が残っている状態で発注しないと、発注したものが届くまでに在庫が尽きてしまいます。安全在庫とは、一言で言えば余裕です。在庫がなくなると損失につながるため、予備として注文します。
ちなみに「1日の平均出荷量」は、平均よりも最大値や中央値を用いたほうが適切なことがあります。特に在庫の消費速度の変動が大きい場合には、余裕をもって多めに見積もることが多いです。
発注数・発注量の決め方
それでは在庫数が発注点を切ったとき、商品をいくつ発注すれば良いのでしょうか。発注数・発注量を考えるときは、個数ではなく日数で考えるのがポイントです。
まずは出荷担当者の経験やカンで、何日分を発注すれば良いか当たりをつけます。例えば「500個発注する」ではなく「10日分発注する」と考えるのです。個数より日数で考えた方が、より具体的に予想がつきやすいからです。
次に、システムやエクセルで最新の出荷実績から1日分の平均出荷量を算出し、当たりをつけた日数にかけるという計算を行い、算出された個数を発注するのです。試行錯誤を繰り返してその商品に最適な日数が分かったら、システム上で日数を固定します。
この方法であれば、その時々の在庫状況に合わせて毎回最適な発注数をシステムで決定できるようになるでしょう。
発注業務を効率よく行うためのポイント
発注業務を効率的に行うためには、どのようなポイントに注意すればよいのでしょうか。
1.在庫管理業務のマニュアル化を行う
まず在庫を正しく把握しなければなりません。スタッフ間で在庫管理の方法に差異が生じないように、マニュアル化することが大切です。特に不良品や返品などに対する対処方法はマニュアルで統一しておかないと、スタッフ間でズレが生じやすいため気を付ける必要があります。
2.ABC分析で優先度を決める
ABC分析とは、商品をA・B・Cの3段階にランク付けして扱う手法です。以下のようにランク分けします。
- A:売上全体の7割を占める売れ筋商品
- B:売上全体の2~3割を占める商品
- C:売上全体の1割未満の商品
限られたスタッフと時間で在庫を管理する場合は、優先度を決めるのが有効です。上のようにランク分けしてA商品の在庫管理を徹底し、ほかは最低限の管理を行うことで効率が上がるでしょう。
ABC分析について詳しくはこちらをご覧ください。
3.需要予測で適切な在庫数を保つ
需要が予測できれば、それに応じた量だけ発注すれば在庫数を適切に保つことができます。過去のデータを参考にして需要を予測しましょう。
とはいえ、予測を正確に当てるのは容易ではありません。そのため、予測誤差の把握も大切です。予測した数値と実際の数値にはどのくらいの差が出るのかを知ることで、その誤差を踏まえたうえでの発注量を決められます。
需要予測の手法やツールについては以下の記事を参考にしてください。
4・生産リードタイムの短縮で無駄な在庫を作らない
生産リードタイムとは、原料を投入してから実際に製品が完成するまでの期間のことです。このリードタイムが長い場合、仕掛品を長期間保有しておかなければなりません。結果として在庫が膨らむことになります。逆にいえば、生産リードタイムを短縮することで無駄な在庫を減らせるでしょう。
リードタイム短縮のポイントについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
5.日次棚卸を行う
棚卸をすると在庫の正確な数を把握できます。しかし一定期間ごとにまとめて行うと、丸1日費やしてしまいかねません。小売店であれば営業時間外に行うことが多く、従業員の大きな負担になります。そこで便利なのが日次棚卸です。毎日少しずつ行うことで負担を軽減できます。
発注業務と在庫管理においてよくある課題
在庫管理は企業にとって重要ですが、簡単ではありません。発注などにより在庫数に変動があったときには、その数を正確に記録する必要があります。しかし、人の手が介在する場合、ミスが発生しやすくなるでしょう。
例えば、以下のようなケースでは実際の在庫数とデータの間にズレが生じやすくなります。
注文した数と届いた数が違うことがあります。例えば10個注文したのに9個しか届いていないと、実際には1つ少ないけれどデータ上では10個届いたことになっているため、ズレが生じます。
不具合品も数がそろわない原因となります。数としては足りていても、その中に使えない品が混ざっていると、その分を差し引くので実際の在庫数は少なくなります。また、返品が発生した際は、出荷データと在庫データを修正しなければなりません。
発注および在庫管理を正確に行う方法
では、発注管理や在庫管理を正確に行うにはどうすべきでしょうか。2つの手法を紹介します。
エクセルで在庫管理表を作成する
エクセルでの管理方法には次のようなものがあります。
- ・エクセルのテンプレートを利用する
- ・エクセル関数を利用する
- ・エクセルマクロを利用する
しかし、エクセルよりも人為的ミスが少なくて済む方法があります。それが、在庫管理システムの導入です。
在庫管理システムを導入する
在庫管理システムがあればバーコード1つで商品を管理したり、簡単に帳票を作ったりできます。またそれらの情報のシェアも簡単です。タブレット端末があれば場所を選ばず確認できるため、手間を削減できるでしょう。
さらに在庫管理だけでなく、検品や返品作業などをサポートする機能もついているため、発注の効率化にもつながります。無料プランから始められるシステムもあるので、ぜひ試してみましょう。
以下の記事では受発注機能と連携した在庫管理システムなど、さまざまな製品を紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。
適切な発注業務で無駄のない在庫管理をしよう
発注業務がうまくできれば、在庫管理自体をもっと効率的に行えるようになります。エクセルで発注管理や在庫管理をするケースもありますが、人為ミスを減らすことが目的なら在庫管理システムの導入も検討してみましょう。在庫管理システムの機能は製品によってさまざまなので、資料請求をして比較してみてください。適切な発注を行い、無駄のない在庫管理を目指しましょう。