
在庫引当とは

在庫引当とは、受注した段階で発注者のために在庫を確保しておくことです。実際の在庫の動きは伴いませんが、将来販売される予定なため、別の発注者に販売できません。
たとえば、ある商品Xの在庫が80個あるとしましょう。Aさんから50個の注文を受けた際、実際にまだ発送していなくても、その50個は取り置きする必要があります。
そして、別のBさんから注文された際は、その50個を除いた在庫から販売します。Aさんに50個を発送していなくても、それらはAさん用に確保されているため、残りの30個から販売しなければなりません。
このように、手元にある在庫数から在庫引当分を差し引いた在庫数を有効在庫数といいます。
在庫引当を行う重要性
在庫引当の管理を行うのは、自社がどのくらいの商品を販売可能かを把握するためです。
たとえば、上述の例でBさんから商品Xを40個注文されたとしましょう。手元にある在庫は80個であるため、一見受注可能のように思われます。ところが、実際にはそのうち50個はAさん用に取り置かれているため、有効在庫数は30個です。
つまり、Bさんからの発注を受けてしまうと、存在しない在庫の販売を約束することになり、トラブルにつながります。
小規模な小売店であれば、受注した量を経営者が個人的に覚えておけば事足りるでしょう。しかし、商品の数が多いとどの商品の有効在庫数がどのくらい残っているのかを把握するのは大変です。
また、複数の従業員が販売に関与する現場でも注意が必要です。従業員間で有効在庫数を共有しておかないと、有効在庫数以上の注文を受けてしまうおそれがあります。
在庫引当の考え方
在庫引当はどのように計算すればよいのでしょうか。以下の例で考えてみましょう。
- 7月1日
- 有効在庫数=50個
- 7月5日
- 受注数=10個
- 7月10日
- 受注数=30個
- 7月11日
- 発注数=50個
- 7月13日
- 受注数=20個
- 7月15日
- 有効在庫数=?個
7月1~15日の間に、上記の取引のみがあったとします。では、7月15日時点での有効在庫数はいくらになるでしょうか。
まず、7月1日の時点で50個ある有効在庫数は、5日と10日の受注により40個減少し、残り10個となります。続いて、7月11日に発注し、有効在庫数が50個増加しました。そこから、13日の受注で20個減少しています。
つまり、15日時点での有効在庫数は以下の計算式で算出されます。
- 50-10-30+50-20=40個
商品が少数であれば、このように手計算で考えることも可能です。しかし、商品数が多い場合は在庫管理システムを使うと管理が効率化します。
システムにおける在庫引当の考え方
在庫管理システムを使うと、実在庫数と有効在庫数の両方を管理できます。実在庫数とは、物理的に手元にある在庫数のことです。たとえば、以下の例で考えてみましょう。
- 7月1日
- 実在庫数=50個、有効在庫数=50個
- 7月2日
- 受注数=30個(実在庫数=50個、有効在庫数=20個)
- 7月3日
- 7月2日分の発送=30個(実在庫数=20個、有効在庫数=20個)
- 7月5日
- 発注数=50個(実在庫数=20個、有効在庫数=70個)
- 7月6日
- 7月5日分の仕入=50個(実在庫数=70個、有効在庫数=70個)
有効在庫数は受注や発注をしたタイミングで変動します。しかし、実在庫数が変動するのは実際に商品が動いたタイミングです。在庫管理システムでは、受発注の入力時に有効在庫数、売上・仕入の入力時に実在庫数が変動し、両方を個別に管理できます。
在庫引当を行う際のポイント
在庫引当は目視でも行えます。しかし、顧客から受注するたびに倉庫に向かうのは大変です。特に、倉庫が地理的に離れている場合は目視で確認するのは困難です。
そのため、事業の規模が大きく、目視での確認が大変だと感じられる場合は在庫管理システムを使いましょう。システム上ですべての商品の実在庫数や有効在庫数を一目で確認できるようになります。
ただし、システム上の数値と実際の数値が合致していなければ意味がありません。したがって、何がどこにどのくらいあるのか、商品が動くたびにシステムに反映させる必要があります。具体的には以下のことに気をつけましょう。
- 入力ミス
- 桁数の間違いなど
- 伝票処理洩れ
- システム上への入力自体の漏れ
- 管理ミス
- 棚卸方法が不適切など
在庫引当を正しく行い、管理効率を向上させよう!
在庫引当とは、受発注が行われた段階で有効在庫数を変動させることです。物理的に手元にある在庫数とは異なるため、別途管理しなければなりません。
有効在庫数を把握していなければ、存在しない在庫の販売を約束することになり、トラブルの原因となります。小規模な小売店なら目視での管理も可能ですが、それが難しい場合は在庫管理システムを使いましょう。
