IVRで扱う情報とセキュリティリスク
IVRは音声入力を通じて顧客の個人情報が集まる仕組みです。そのため、情報漏えいや改ざんにつながるリスクをあらかじめ把握しておくことが重要です。ここでは、どのような情報が扱われ、どのような経路で脅威が生じるのかを整理し、自社が直面し得るリスクのイメージを持てるように説明します。
通話内容・録音データの管理
IVRでは顧客の名前や住所、問い合わせ内容などが通話を通じて収集されます。録音データが保存される場合、そこには個人を特定できる情報が含まれるため、管理が不十分だと第三者に不正に閲覧・取得されるおそれがあります。また、録音データが暗号化されていないまま保存されていると、万が一侵害が起きた際に内容をそのまま閲覧されるリスクが高まります。
さらに、録音データの保存先が国内外のどこにあるかによって、適用される法規制や求められる保護レベルが変わる場合があります。保存期間が無制限に延びてしまうと、不要になった情報が残り続け、漏えい時の影響範囲も広がります。こうした点を踏まえ、録音データは保存場所・保存期間も含めて適切な管理体制のもとで取り扱う必要があります。
不正アクセス・なりすましリスク
IVRは外部からのアクセスを受け付ける仕組みであるため、不正アクセスによる情報取得のリスクがあります。代表的な例として、攻撃者が正規ユーザーになりすまし、パスフレーズや個人情報を聞き出そうとする手口が挙げられます。このような攻撃が成立すると、本人の知らないところで取引が行われるなど、重大な被害につながる可能性があります。
また、IVRに接続するネットワーク回線が暗号化されていない場合、通信内容を盗聴されるリスクが高まります。アクセスログが取得されていない、もしくは適切に確認されていない環境では、不正な番号からの大量発信や連続した不自然な操作が行われても異常に気づきにくくなります。こうした状況が長期間放置されると、被害が拡大しやすくなる点にも注意が必要です。
IVR導入時のセキュリティ要件
IVRを導入する前には、自社が許容できるリスクと照らし合わせながら、どのようなセキュリティ機能を備えたサービスかを確認することが大切です。暗号化の方式やアクセス権の設定、ログや監査機能の有無などをチェックしておくと、自社のポリシーに合ったサービスを選びやすくなります。この段階で要件を整理しておくことで、導入後の追加対応や運用負荷を抑えやすくなります。
暗号化通信とアクセス制御
IVRで扱う情報を保護するには、通信経路と保存データの両方を暗号化できることが重要です。導入を検討する際は、IVRと社内システム・クラウド基盤との通信が暗号化されているか、どのレベルの暗号化方式に対応しているかを確認しておくとよいでしょう。また、録音データについても、暗号化された状態で保存できるか、保存先(データセンターの所在地やクラウドリージョンなど)が明示されているかをチェックしておくと、自社の規程や法令要件との整合性を判断しやすくなります。
アクセス制御の仕組みも重要な要件です。IVRの設定画面や録音データに誰でもアクセスできる状態では、内部不正が発生しやすくなります。役割に応じて閲覧・変更できる範囲を分けられるか、不要な操作を制限できるかといった観点で、権限管理機能を確認しておくとよいでしょう。さらに、管理画面へのログインに多要素認証を利用できるかどうかは、不正ログインを防ぐうえで有効なポイントです。
ログ管理・監査機能の有無
IVRを安全に運用するうえでは、誰がいつどの情報にアクセスし、どのような操作を行ったかを記録するログ機能が欠かせません。導入時には、通話や録音データへのアクセス履歴、設定変更履歴などをどこまで記録できるのか、不正と疑われる操作を抽出しやすい形で出力できるのかを確認しておくと、運用設計が行いやすくなります。また、ログが後から改ざんされにくい仕組みを備えているかどうかも、信頼性を判断する材料になります。
さらに、設定変更やデータ閲覧の履歴をまとめて確認できる監査機能があるかどうかもチェックポイントです。こうした機能は、内部統制を強化し、情報漏えいリスクを継続的に管理していくうえで役立ちます。国際的な基準であるISO/IEC 27001やSOC 2でも、ログや監査記録の管理が重要な要素とされています。サービス選定の際には、これらの基準の考え方も参考にしながら、自社の求めるレベルを満たしているかを確認すると、セキュリティ面のリスクを抑えた導入につながります。
以下の記事ではIVRの価格や機能、サポート体制などを、具体的に比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
IVR運用段階でのセキュリティ注意点
IVRのセキュリティは、導入直後よりも「日々の運用」によって左右されます。担当者の権限管理や記録の確認、設定の見直しといった運用ルールを継続して実施することで、想定外のリスクを抑えやすくなります。ここでは、導入後の運用フェーズで押さえておくべきポイントを整理します。
権限管理と操作履歴の確認
運用段階では、担当者が正しい範囲で情報にアクセスできているかを定期的に見直すことが重要です。役割変更や異動があった際に権限の更新が行われないと、不要なアクセス権が残ってしまい、内部からの情報漏えいリスクが高まります。不要な権限を放置しないためにも、定期的な棚卸しを行うことが効果的です。
また、IVRシステムの操作履歴の確認も欠かせません。不自然な時間帯のアクセス、大量のデータ閲覧、短時間での連続操作などは、不正アクセスや設定ミスの兆候になる場合があります。操作履歴を定期確認する体制を用意しておくと、異常を早期に発見し、影響範囲の把握や対応を迅速に進めやすくなります。
設定の定期点検とアカウント管理
長期間運用を続けると、設定内容が当初の想定から徐々にズレてしまうことがあります。不要なアナウンスフローが残っている、アクセス制限の設定が古いまま維持されているといった例は、誤操作や情報流出の原因につながる可能性があります。定期的にシステム設定を点検し、現行の運用ルールに合っているか確認することが大切です。
また、利用しなくなったアカウントをそのまま残しておくと、不正利用の温床になります。退職者や担当外の利用者アカウントがないか、定期的にチェックし、不要なアカウントは速やかに削除する運用を徹底しましょう。
セキュリティ基準への継続的な対応
IVRのセキュリティを維持するには、システムが最新の基準に基づいて運用されているかを継続的に確認することも必要です。暗号化方式や通信プロトコルが古いまま放置されていないか、運用環境全体が最新のセキュリティ更新に追従しているかといった点を定期的に見直すと、脆弱性の放置を防ぎやすくなります。
さらに、ISO/IEC 27001やSOC 2に代表される情報管理の基準では、ログの確認・記録保持・設定変更の管理など、継続的な運用プロセスの整備が重視されています。これらの枠組みを参考にしながら、組織として改善サイクルを回していくことで、IVRのセキュリティレベルを長期的に維持しやすくなります。
まとめ
IVRは顧客と企業をつなぐ重要な仕組みであり、個人情報を扱う以上、セキュリティ対策が欠かせません。導入前の要件確認と運用時の管理体制を整えることで、安全に活用できます。
暗号化やアクセス制御、監査機能の有無を確認し、運用段階では権限管理と点検を定期的に実施すると安心です。安全性が確保されたIVRなら、顧客対応の質を保ちながら効率化も期待できます。自社に合ったIVRを比較したい方は、気になる製品の資料請求を検討すると検討の幅が広がります。


