「ストレスチェックは意味ない」となりがちな運用
なぜ「ストレスチェックは意味ない」と思ってしまうのか、その原因について詳しく説明します。
結果を一読して終わり、職場環境の改善に活かされない
ストレスチェックで効果が得られない場合は、従業員のストレス度合いを把握したり集団分析を行ったりすることに満足し、一番重要な職場改善に着手していない可能性が高いです。実際、令和2年度の労働安全衛生調査によると、集団分析を職場環境の改善に活用している企業は、66.9%と低い水準になっています。
ストレスチェック後は、集団分析を行い従業員や職場に合わせたメンタルヘルス対策を実施しましょう。専用のサポートダイヤルを設置したり、従業員向けのメンタルケアセミナーを開催したりするなどして、働きやすい環境をつくることが大切です。
高ストレス者からの面談申込みが少ない
高ストレス者からの面談申込みが少なく、必要な人にメンタルケアが行われないことで、ストレスチェックの効果が薄くなるケースもあります。平成 29 年7月に実施された厚生労働省労働衛生課の調査によると、ストレスチェックによる面接指導を受けた労働者は0.6%といわれています。
高ストレス者の中には、周囲への気恥ずかしさなどによって、ストレスチェック後の面接指導を受けるのに抵抗がある人も多いです。そのためストレスチェックを実施する際は、メンタルサポートが受けやすい雰囲気・環境をつくりましょう。
例えば、面接指導の必要性や、面談を行うことで従業員に不利益が生じないことをしっかりと説明することが有効です。また、社会に相談窓口を設置したり、インターネット上で音声のみの相談を受け付けたりするなどして、従業員のプライバシーに配慮することも大切です。
受検者数が少なく分析の精度が低い
ストレスチェックを受ける人の数自体が少ないと、集団分析の精度が落ち、職場環境の改善効果も低くなります。受検者の母数が少ないことでストレスチェックに意味がないと感じている企業は、多言語や点字に対応した質問表を作成するなどして、誰でも簡単に受検できる仕組みをつくりましょう。
未受検者にストレスチェックの有効性が解説されたメッセージを送付したり、在宅受検できるようインターネットを活用したりすることも有効です。

ストレスチェックを有効活用する方法
ストレスチェックをより意味のあるものにするために必要な考え方やポイントについて解説します。
部署ごとの特徴や傾向をつかみ、従業員へ適切な支援を行う
企業全体・部署ごとのストレス傾向・特徴を把握することで、どこに業務上の負担・健康上のリスクが集中しているのかがわかります。ストレス度合いの点数が高い傾向のある部署を分析すると、長時間残業や過剰なノルマなどのストレス要因を発見することも可能です。
ストレスチェック後は、得られた結果をもとに必要な施策を考え、従業員が適切なセルフケアを行えるようサポートしましょう。効果的なメンタルヘルスケアについての教育研修や、専門家による相談窓口を設置するなどして、受検者が自発的に悩みを解決できるようにすることが大切です。
従業員参加型の職場環境改善を行う
ストレスチェックの結果を通知するだけで何の施策も行わないと、「やっぱりストレスチェックは意味ない」と考える従業員も多くなります。そのためストレスチェック後は、それぞれの部署で働く従業員にも積極的に職場環境の改善に協力してもらいましょう。
従業員の多くはストレスチェックの集団分析などに関する知識が浅いです。そのため、最初のうちは事業者側が実施者と従業員の間に立ち、適切な方向に議論を促すことをおすすめします。従業員同士で職場の改善点について話し合うことで、チーム内でのコミュニケーションも活発化するでしょう。
ストレスチェック活用の好事例
ストレスチェックを活用して職場環境改善に取り組んだ企業の実例を紹介します。
従業員はアンケート調査で職場環境改善に参加
ある事業所では業務の都合で検査に参加できない受検者に対し、複数回のアンケート調査を実施することで、従業員参加型のストレスチェックを可能にしました。
従業員参加型の職場改善は意見交換会に参加する必要があるため、多忙の部署だと従業員の負担が大きいというデメリットがあります。アンケート調査は、誰でも気軽に参加しやすく意見を反映しやすいという点で、ストレスチェックよりも優秀です。
ストレスチェックへの理解を深めるための漫画を併用
ある事業所では、ストレスチェックの必要性や制度についてわかりづらいという意見が多くありました。そこで1~2ページの漫画にストレスチェックの方法や職場改善効果などについてまとめたところ、職場全体に情報を周知できるようになったそうです。ストレスチェックの参加者が思うように集まらないという企業は、ぜひ参考にしてください。
ストレスチェックを活用し職場環境改善につなげよう
従業員が「ストレスチェックは意味ない」と感じるのは、実施者側の問題であるケースが多いです。ストレスチェック後は、部署ごとのストレス傾向や特徴をつかみ、従業員へ適切な支援を行いましょう。従業員が積極的に集団分析をもとにしたメンタルケア対策に参加できることが大切です。ストレスチェックをしっかりと活用して、職場環境の改善につなげてください。
