物流の効率化が必要な背景
まずは、物流の効率化が必要とされる背景を見ていきましょう。現状の課題がわかると、自社がどのように対応すべきか見えてくるはずです。
ドライバーの高齢化と人材不足
物流業界の最大の課題はドライバーの高齢化と人材不足であり、特に若手人材の確保がうまくできていません。
国土交通省の発表によると、トラックドライバーの年齢構成比において29歳以下が占める割合は、普通・小型で20.8%、大型はわずか3.5%です。国の年齢階級別労働力人口の変化に比べても29才以下の比率が少ないとされ、全産業平均以上のペースで高齢化が進んでいます。
少子高齢化の影響による人口減少に加え、若い世代にとって物流業界は肉体労働・激務といったイメージが根強くあり、人が集まりにくい一因です。また全業種と比較しても、低賃金の傾向がある点も見逃せません。
今後は、多くの中高年層のドライバーが定年になり退職を迎えるので、人手不足はより加速するでしょう。物流業務を効率化して、人手不足に対応できる体制の整備が求められます。
参考:物流を取り巻く動向について|国土交通省
EC市場の成長による配達量の増加
現在の物流業界ではEC市場の成長に伴って配達量が増加しています。ネットショッピングが普及し、個人宅への小口配送も増える一方です。大口配送と比べて多くの人手が必要になるため、人材不足と業務負担増加に拍車をかけています。
特に、ネット通販企業は送料無料など、運送に関するメリットで顧客を集めようとします。その結果、負担が増えるのは物流業です。安いコストで多くの荷物を配送しなければなりません。また、個人宅への配送では休日や夜間の稼働を求められるケースも少なくないでしょう。顧客から過剰なサービスを求められドライバーの負担が増える一方、賃金は上がりにくい労働条件のため、人材確保がより難しくなっています。
このような悪循環によって物流業界の課題は深刻化し、効率化により人手不足を解消する必要があります。
積載率減少・再配達の増加
個人宅への配送は、届ける荷物が少なくてもトラックを出さなければならないため、積載率が低く無駄な燃料費や人件費がかかります。しかし、物流に迅速性が求められる現在では、効率よりも速さを追求せざる得ません。現状、多くのトラックが積載可能容量の半分しか乗せていない状況で稼働しているといわれています。
さらに、不在配送も問題視されています。荷物を運んでも受取人がいなければ再配送しなければなりません。ネット通販商品の配送ではこのようなことが多く、実際の配送件数以上にドライバーに負担がかかっています。
国土交通省で推奨されている効率化
つづいて、国土交通省推奨の、物流を効率化する取り組みについて見ていきましょう。
モーダルシフトの推奨
モーダルシフトとは、トラックによる長距離輸送の幹線部分を鉄道や船を使って輸送することです。トラックだけで長距離輸送するよりも、多くの荷物を運べるため人材不足解消に効果的です。また燃料費や排気ガスの削減にもつながり、自然環境への負担軽減・エネルギー効率向上などのメリットがあります。物流業界の課題を解決する有効な方法として注目されています。
ただし、トラックに比べて小回りが利きません。輸送手段をうまく組み合わせる必要があり、そのためには企業だけでなく業界全体で取り組まなくてはなりません。
共同配送の取り組み
共同配送では、2社以上が連携して共通の保管庫や輸送手段を使います。例えば、倉庫や物流センターを共同施設として利用することで効率化を図れます。
今までは同じ配送先でも各業者がトラックで輸送していました。複数の業者が共同倉庫で商品を保管すれば、同じ配送先に1台のトラックで輸送できます。共同配送はドライバー不足に対応するだけでなく、積載率を向上できるためコストカットにもつながるでしょう。国はこのような取り組みに対し、税制特例などの支援を行っています。
輸送網の集約
輸送網の集約とは、今まで散在していた輸送ルートを集約して効率化する方法です。この方法では、輸送ルートの中央に輸送連携型倉庫を設置し、一度物品を集めてから輸送します。
従来では複数の荷主から預かった荷物を、複数の倉庫に保管後、複数の納品先に納める必要がありました。この場合、「或る荷主から複数の倉庫まで」と「複数の倉庫から或る納品先まで」を輸送するので複数台トラックが必要でした。
集約後は、倉庫が1つになったため、必要なトラックの台数が減らせました。共同配送と同様、複数社で提携して大型の倉庫を利用すれば、より効率化を実現できるでしょう。
参考:物流総合効率化法について|国土交通省
物流業界が取り組む効率化
つづいて、課題解決に向け物流業界が取り組む効率化について見ていきましょう。
AIを使った物流業務の効率化
物流業務は属人化している部分が少なくありません。例えば、ピッキングでは何がどこにあるのか、従業員自身の把握が必要です。また、積載や配車も、従業員の経験と勘にもとづいて行われることが珍しくありません。
AIを導入すれば、属人性の排除が可能です。トラックの稼働状況や交通状況、倉庫の空き具合などを把握し、そのデータを基に最適な案を出してくれます。経験の少ない従業員も力を発揮しやすくなり、人手不足解消が期待できます。
効率化につながる便利な「物流管理システム」もご参考ください。倉庫・配送・在庫管理など一連の物流工程を一元的に管理できます。
ドローンを使った配達の実用化
現在、さまざまな企業がドローン配達の実用化に向けて試験をはじめています。まずは山間部などで導入し、次第に都市部での導入も進めていくようです。国もこの活動を後押ししており、2020年以降の本格的な実用化が目指されています。実現すれば、トラックドライバーの業務負担も大幅に軽減されることが期待できます。
ただし、ドローン導入に伴う課題も少なくありません。空中で物資を運ぶという特性上、新たに発生する安全性やプライバシー保護に関する問題があります。そのほか、ドローンの商業利用における法規制なども必要です。
宅配ボックスによる再配達削減
ネット通販商品の配送を中心に、再配達が問題化しています。解消方法として導入が進められているのが、宅配ボックスです。
宅配ボックスに荷物を入れられれば、受取人が不在でも再配達の必要がありません。受取人も在宅で荷物を待つ必要がなく、配達員と顧客の双方にとって有益なシステムです。ただし自宅に設置するにはお金がかかるため、一軒家ではまだ普及が十分ではありません。したがって、再配達しなかった場合にはポイントを付与するなど、宅配ボックス設置を促すサービスも増えています。
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物流現場の業務を効率化する方法
最後に、自社だけでも可能な物流業務の効率化について見ていきましょう。
現場作業を単純にする
人材不足の企業であればドライバーが倉庫内業務を兼任することも少なくありません。このような場合は、現場作業の効率化を考えましょう。
例えば、ピッキング作業はミスが起きやすく、非効率な業務の代名詞です。ピッキング作業で箱に入れた商品を、梱包担当に引き継ぐ際に別の箱に入れ替えるなど不要な工程を踏んでいる場合があるため、作業を見直し単純化しましょう。
現場の動線管理を最適化する
倉庫内のレイアウトを改善し、動線を最適化することも有効です。現場の動線を改善し、無駄がない最短ルートを選択できるようになれば、作業時間を短縮できます。
また、倉庫内におけるロケーション管理の徹底により、どこに何があるか明確になるでしょう。倉庫内移動の時間を短縮できれば、少ない人数でも対応できます。
WMSなどのシステムを導入する
費用は発生しますが、WMS(倉庫管理システム)など、IT技術の活用もおすすめです。
ハンディスキャナと連動したシステムを利用すれば、商品コードをスキャンするだけでピッキングできます。各商品の状態もリアルタイムで反映され、在庫を把握しやすいでしょう。
ほかにも、トラックに積む荷物の組み合わせや配送ルートも自動で最適化できるので、トラック輸送の無駄を削減できます。
なお以下の記事では、ITトレンドおすすめの「物流管理システム」を比較して紹介しています。取引業者・生産拠点・倉庫・物流拠点・顧客納入場所などを一括管理できるため、物流業務の効率化にも大いに役立つでしょう。ぜひ一読ください。
物流業務を効率化して負担を軽減しよう
現在、多くの物流企業で人手不足が課題で、業務の効率化が求められています。EC市場発展による配送量の増加や、ドライバーの高齢化が進み、人手不足の加速化が一因です。
国土交通省が推奨する効率化の施策を実施できるよう、他社との連携なども検討しましょう。また、倉庫内業務の単純化や、動線の最適化も必要です。物流業務を効率化して人手不足に対応しましょう。