農業における物流の仕組み
まずは、農業における物流の仕組みについて見ていきましょう。
卸売市場経由の流通
野菜やくだものなどの農産物は、生産者(農家)から集荷業者や農協などに一旦集められます。その後、卸売市場を経由して小売店などに届けることで効率化を図っています。
卸売市場を活用することで、多くの小売店に販売する機会に恵まれるので、価格も崩れにくい仕組みになっています。基本的に小売店は各地域に根付いている卸売市場に出向き、品物を値定めて入札することで仕入れます。
卸売市場外経由の流通
近年では、技術革新などによって卸売市場を経由しない流通も伸びてきています。特に大手企業であれば、卸売市場を経由せずに生産者と直接やり取りを行う契約栽培も増えているでしょう。
このように、従来の卸売市場を経由しないことによって、企業はコスト削減を実現できます。また、法人ではなく個人を対象とした流通の成長割合も大きいです。
今ではインターネット販売を活用して、生産者が直接顧客に販売することも増えています。地域の自治体が運営している「道の駅」では地産地消を推進するために、地元の農家から直接仕入れていることが多いです。
このように、ビジネスモデルの変化に対応し、卸売市場を経由しないことで効率化を図れる場合もあります。
農業における物流の課題・問題点
つづいて、農業における物流の課題や問題点を見ていきましょう。
燃油価格の変動
農作物を生産地から各流通経路を介して消費者の元へ運ぶために、主にトラックが用いられており、現在の農業物流基盤は、全国的な道路整備によって作られました。しかし、燃油価格の高騰で、農作物をトラックで輸送した際の採算が取りにくくなっています。輸送コストの上昇が、小売店での野菜価格高騰の要因にもつながっています。
ドライバー不足
燃油価格の上昇と同時に進んでいる課題は、物流業界共通の問題でもあるドライバー不足です。少子高齢化と労働環境の悪化により、物流業界は慢性的な人材不足になっています。
さらに、インターネットショッピングの成長に伴い、輸送量が増えたことで、ドライバー1人当たりの負担は増えています。この課題は農業物流にも影響を与えており、輸送コスト上昇の要因の一つです。実際にトラックの確保が難しくなるといった問題にも発展しており、問題が深刻化しています。
農業における物流の課題を解決するポイント
最後に、農業における物流の課題を解決するポイントを見ていきましょう。
共同配送によるコスト削減
農業物流の課題は深刻化しており、多くの企業や行政が協力して解決に取り組んでいます。
その代表的な施策が「共同配送」です。今までは各業者や個人が農作物をトラックで運んでいましが、この配送方法だと小ロットの配送になり、積載率が低く手間がかかります。
そこで、共同配送の仕組みを取り入れることで、複数の生産者の農作物を一台のトラックで集荷できるようになります。物流を集約することで、トラックの台数も少なくなるので、ドライバー不足の解消やコスト削減も可能です。
車以外の配送手段の検討
車以外の配送方法としては「モーダルシフト」があります。これは長距離輸送手段をトラックだけにするのではなく、幹線部分の輸送を船や鉄道に任せるという方法で、トラックと違って排気ガスが少なく一度に大量輸送を行えます。
しかし、今までは鉄道で輸送する際には冷凍コンテナをを利用する必要がありましたが、農作物を冷凍することで、品質が劣化するデメリットがありました。
近年では冷凍せず農作物の鮮度を一定に保てるコンテナが開発され、鉄道での輸送を行いやすくなったため、トラック以外の配送手段として活用され始めました。
農業の物流の仕組み・課題を理解して、解決策を模索しよう
今までの農業の物流には卸売市場が欠かせない存在でした。新しいビジネスモデルの登場によって農業物流は大きく変化しています。卸売市場を経由しない物流方式も多くあります。
物流業界は燃油価格の変動やドライバー不足などの課題を抱えており、農業にも影響を与えています。このような課題を解決するためには、共同配送やモーダルシフトなど、新しい配送方法の検討が必要です。農業の物流の仕組みと課題を理解し解決策を模索しましょう。