RFIDとは
始めに、RFIDの概要を見ていきましょう。
近距離無線通信を利用した自動認識技術のこと
RFIDとは「Radio Frequency Identification」の略で、「近距離無線通信を利用した自動認識技術」という意味です。主に商品や食品に、電子情報を登録したRFタグを貼り、専用のリーダーで内容を読み込んで使います。
RFタグとは、情報を読み書きできる記録媒体で、接触することなく使えるのが特徴です。電子タグや無線タグ、ICタグ、RFIDタグなどと呼ばれることもあります。従来のバーコードよりも読み取りにかかる手間が少ないため、ピッキング作業などを大幅に効率化できる方法として注目されています。
一口にRFタグと言っても、その種類はカード型やシール型などさまざまです。商品や状況に合わせて使い分けます。
ちなみに、NFCはRFIDの1種です。電子マネーなどに使われています。
磁界や電波を利用して通信する仕組み
RFIDでは専用のリーダーとRFタグを用います。両者が通信を行い、情報を読み書きする流れを簡単に見ていきましょう。
- 1.リーダーから情報を発信
- リーダーが情報を電波または磁界に乗せ、RFタグに送信します。
- 2.RFタグが情報を受信
- RFタグがアンテナで電波または磁界を受信し、そこに乗せられた情報を取得します。
- 3.電気の発生
- RFタグが電波または磁界を受信すると、アンテナに電力が発生します。この電力による給電を受けてRFタグは機能します。
- 4.RFタグ内での処理
- 制御回路やメモリが動作し、必要な処理が行われます。
- 5.RFタグから情報を送信
- RFタグ内部のデータを、電波または磁界に乗せてリーダーに送信します。
- 6.リーダー側で受信
- RFタグから送られた電波あるいは磁界を受信し、そこに乗せられた情報を取得します。
RFIDの種類
RFIDは電波の周波数帯によって以下の4種類に分けられます。
- LF帯(Low Frequency)
- 自動車のキーレスエントリーなどに利用されています。通信範囲が狭く、小型化が困難です。
- HF帯(High Frequency)
- 基本的な仕組みはLF帯と同じですが、小型化が容易です。交通系ICカードなどに使われています。
- UHF帯(Ultra High Frequency)
- 通信範囲が広いため、在庫管理など多くのRFタグを一括読み取りする場面で活用されています。
- マイクロ波帯
- 電波干渉を受けやすく、通信範囲も狭いため、やや扱いづらい種類です。
これらの具体的な周波数、通信範囲は以下のとおりです。
|
LF帯 |
HF帯 |
UHF帯 |
マイクロ波帯 |
周波数 |
~135KHz |
13.56MHz |
860~960MHz |
2.45GHz |
通信範囲 |
~10cm |
~10cm |
~20m |
~3m |
RFIDの特徴
続いて、RFIDの特徴を紹介します。
複数のタグを一括で読み取れる
従来のバーコードやICタグの場合、リーダーで1つずつかざして情報を読み取る必要がありました。そのため、手作業でカウントするよりも効率は良いものの、商品数が多いと大きな負担になっていました。
しかし、RFIDであれば一度に複数のタグ情報を読み取れます。したがって、従来の方法と比較するとピッキングや棚卸業務にかかる時間を大幅に短縮可能です。従来のバーコードによる運用と比較すると、1/10ほどの時間で業務が完了した事例もあります。
また、1つずつカウントしていた場合であれば、どうしても数え漏れなどのミスが発生してしまいます。一方、一定範囲のRFタグを一括で読み取れれば、カウント漏れなどのミスも削減可能です。担当者の業務負担も大幅に減るため、人材不足が課題の企業にもおすすめです。
タグとの距離が遠くても読み取れる
従来のバーコードは通信距離が非常に短いため、リーダーで読み取るには商品に近づく必要がありました。このような作業の場合、高所の商品を検品するときには落下などのリスクが発生します。
しかし、RFIDの通信距離は数メートルから数十メートルまでにも及ぶため、脚立を使わずに読み取ることが可能です。担当者が高所で作業する必要がなく、安全を確保できます。また、担当者が移動したり商品を手元に引き寄せたりする手間もないため、作業効率が向上します。
タグが箱の中に入っていても読み取れる
商品のタグやバーコードが外側にあるとは限りません。種類によってはタグが箱の中に入っているケースもあります。従来の方法であれば、1つひとつ箱を開けてバーコードを読み取らなければなりません。商品や納品形態によっては非常に手間がかかるでしょう。
それに対し、RFIDであればRFタグが箱の中にあっても情報を読み取れます。箱の中に入っている商品の数も同時にカウントできるため、作業効率の大幅な改善が可能です。箱を開けて取り出す作業がなくなることにより、紛失や破損のリスクも軽減するでしょう。
タグが汚れていても読み取れる
基本的にバーコードは、バーとスペースの間隔を読み取ることで情報を取得します。したがって、読み取り面が汚れているとリーダーで読み取れません。この場合、表記されている数字を手入力する必要があります。
一方、RFIDはアンテナを用いて情報の送受信を行うため、タグの表面が汚れていても関係ありません。したがって、作業環境が悪いケースなど、タグが汚れる可能性がある場合におすすめです。
RFIDが抱える課題
RFIDにあるのはメリットばかりではありません。次は課題を見ていきましょう。
初期コストがかかる
RFIDを導入するためには、専用のリーダーとRFタグを用意しなければなりません。特に、用意すべきタグの数は管理したい商品数に比例するため、倉庫の規模によっては膨大な数を購入する必要が生じます。
そこで注意しなければならないのがコストパフォーマンスです。一般的に、RFタグの価格は1枚あたり10円程度です。このコストに見合うメリットが得られないのであれば、RFIDの導入はおすすめできません。
したがって、RFIDを導入した場合、業務負担がどれほど減少するのか試算してみましょう。たとえば、時給1,000円の従業員5人で行う棚卸の所要時間が、RFIDにより3時間短縮するのなら、「1,000×5×3=15,000円」が削減されます。
読み取れない場合もある
RFIDは完璧ではなく、リーダーでRFタグの情報を読み取れない場合があります。たとえば、アルミで覆われた商品などは電波を弾いてしまうケースがあります。また、商品が重なっていて、タグ同士が非常に近い場合も読み取れない可能性がゼロではありません。
前者の場合は、事前にアルミを使った製品かどうか確認することが大切です。後者の場合は、何回か読み取り動作を行うことで情報を取得できます。1度で読み取り率100%を実現するのは難しいため、数回読み取って100%を目指すという運用を心がけましょう。
RFIDの活用方法
続いて、RFIDの活用方法を見ていきましょう。
賞味期限や消費期限の管理
RFタグには賞味期限や消費期限を登録することが可能です。そのため、陳列されている商品や倉庫に保管している商品の鮮度を簡単に確認できます。
たとえば、棚の奥に並んだ商品も逃さず確認できるため、賞味期限が近い商品を漏れなくピックアップすることが可能です。適切な品質管理が実現するでしょう。
生産から販売までの一括管理
RFIDを活用すれば、生産から販売までのプロセスを一元管理できるため、トラブル時に容易に追跡可能です。
近年では商品の安全性が重視されており、何かイレギュラーが発生したときの対応が求められています。従来の方法では追跡に時間がかかることもありましたが、RFIDであれば短時間で追跡可能です。
原因を追究して対処を行うだけでなく、改善までのスパンも短縮できるため、自社商品の品質向上が実現します。
レジ業務の効率化
レジ業務において、顧客が購入する商品の数が多いと、1つひとつスキャンするのに時間がかかります。これでは業務の効率が悪く、時間当たりに得られる利益が低くなります。また、レジでの待ち時間が顧客の不満につながり、利益が減少する可能性も否めません。
しかし、RFIDを活用すれば大量の商品を1度で読み取れます。業務が効率化するとともに、顧客満足度を高められます。
RFIDの導入事例
最後に、RFIDの導入事例を1つ紹介します。
衣料品の生産販売を手掛けるある企業は、自社で販売する大量のアパレル製品を効率的に管理できていないことに、問題意識を抱いていました。サプライチェーンの多くの工程に無駄が生じていたと言います。
そこで、サプライチェーン全体の改善に乗り出します。その一環として着手したのがRFIDの導入です。
同社は、生産段階で全商品の下げ札に使い捨てRFIDタグを埋め込みました。結果として、物流工程で業務が効率化しコストカットが実現。どこにどの商品がいくつあるのか、常に把握できる環境を構築できたと言います。
そして、もちろん店舗業務も効率化しました。検品や棚卸だけでなく、レジの待ち時間も大幅に削減したと言います。
RFIDの導入で業務を効率化しよう!
RFIDは電波や磁界を利用した自動認識技術です。これまで広く使われてきたバーコードと異なり以下のことが可能です。
- ■複数タグの一括読み取り
- ■数メートル離れた距離での読み取り
- ■箱の中に入れた商品の読み取り
- ■タグが汚れた状態での読み取り
また、RFIDは以下の場面で活用されています。
- ■賞味・消費期限管理
- ■サプライチェーン全体の管理
- ■レジ業務の効率化
この機会にRFIDの導入を検討してはいかがでしょうか。