国際物流とは
国際物流とは国際間のモノの流れを指します。国際物流には、輸出入を伴うことから以下のような固有の業務があるのが特徴です。
- ●船や飛行機による輸送
- ●通関資料の作成
- ●保税倉庫の利用
- ●輸出梱包
- ●保税地域の荷役や港湾荷役
※保税倉庫・保税地域:空港や港の近くに設置され、通関や関税が通るまでの間、貨物を保管する倉庫や地域のこと
国内物流ではトラックや鉄道での輸送がメインになりますが、国際物流では船舶や航空機を利用することが多くなります。さらに、輸送の時間や費用も大きくなるため、国際物流の経験がない場合は注意が必要です。
課題1.物流過程のブラックボックス化
国際物流でよくある課題が、物流過程がわかりづらくなることです。国際物流では、他国との輸出・輸入を行います。輸出・輸入には多くの企業や組織が関わるので手続きが増え、やり取りの細部までを把握するのは難しくなります。
海外(現地)の企業とのやり取りが複雑
例えば、パソコンを輸入するときを簡単に想像してみましょう。海外でパソコンを製造し、パソコンを輸入する場合について考えてみます。現地でパソコンを作るとなると、まず部品を工場で作るか、他の企業から仕入れます。輸送会社や倉庫保管会社に委託して、必要な分の部品だけを運びます。
このとき関わる企業は、たいてい現地の企業です。書類の言語や通貨、費用の計算方法など、日本国内とは異なる点が多いでしょう。パソコンは製造された後、税関を抜け、船舶で運ばれてきます。税関に提出する書類や輸送会社とやり取りする書類などが必要であり、ここでも煩雑な手続きが必要です。
輸送管理・倉庫管理においては、課金形態が違う場合もあります。重さ単位で商品の輸送料金が決まることもあれば、商品が占める面積で課金されることもあります。
物流コストの分析が困難
では、海外工場から国内倉庫までのさまざまな手続きも含めて、パソコン1台あたりの物流コストをどのように算出すればよいでしょうか。
各取引時の為替レートはどうだったか、人件費の配賦はどうするかなども考慮しなければなりません。国際物流では多くの企業が関わっているために工程が増え、一つひとつを整理してどのくらいの物流コストがかかったのかを算出するのは難しいでしょう。
このように、物流過程がブラックボックス化しているために、コスト分析がなかなか進まず、どの工程のコストを削減していいのかわかりにくくなってしまいます。これが第1の課題です。
課題2.在庫の余剰化
国際物流では在庫管理が難しいでしょう。リードタイムが長く、輸送中のアクシデントなども想定して余剰在庫を抱えてしまいがちです。
リードタイムが長い
国際物流では、商品が国内または海外に届くまでに時間がかかり、船舶の定期便はおおよそ週に1、2回しか出ません。また、北米から日本に船舶輸送するには、数週間かかります。これにより、商品を発注してから国内に届くまでに通常1ヶ月以上かかってしまうこともあるため、発注は1ヶ月先の状態を見越して行わなければなりません。
アクシデント発生による損失
国際物流では、輸送期間が長いために国内物流に比べてアクシデントが起こる可能性が高いです。天候やエンジントラブルのほか、通関申告・許可の遅延などの書類トラブル、さらには地域によっては政治的問題や海賊に襲来される恐れもあります。
貨物到着の遅延はリードタイムの変動を招き、生産ラインや販売工程に影響を及ぼすでしょう。また、アクシデントに見舞われ、在庫がなくなってしまうと損失が増えてしまいます。
欠品のリスクを回避するための在庫
国際物流では物流の導線が長いこと・アクシデントが発生する可能性が高いことから、欠品リスクを回避するために多くの企業は安全在庫を設定してこの課題をカバーしようとするでしょう。
しかし、在庫を余分に抱えれば在庫負担は増します。過剰在庫を防ぎ、最適在庫を維持するのは難しく、現場担当者の属人化の原因にもなるのです。こうした在庫管理の難しさが第2の課題です。
情報の可視化が課題解決の糸口
国際物流では、物流過程がブラックボックス化していること、余剰在庫を抱えてしまうことが課題です。これらを解決するために役立つのが、生産や流通のプロセスを一元管理し、サプライチェーン全体での情報共有を行うSCMとCPFRです。
SCM
SCMとは、サプライチェーン・マネジメント(Supply Chain Management)の略語で、生産や流通のプロセスを一元的に管理する経営管理手法です。原材料の調達をする企業、製品を作る企業、販売をする企業などで販売・在庫・発注などの情報を共有することで、効率的な物流を行います。
情報共有により、各企業はそれぞれの状況を可視化できます。将来の状況を予測しやすく、余分な在庫を生みづらくなります。また、情報が一元管理されるので、各ステップでのコスト管理が容易になります。
ただしSCMは小売店での販売状況やメーカーでの製造状況などの情報を共有し、各自で製造目標を作るだけなので、情報が一方通行になりやすい点に注意しましょう。
CPFR
CPFRとは、協力(collaborative)・計画(planning)・予測(forecasting)・補充(replenishment)の頭文字をとった略語で、製販両者の協力により欠品防止と在庫削減を目指す手法を指します。
CPFRはSCMの進化したものといわれ、基本機能はほとんど同じです。販売・在庫・発注の情報を管理し共有することで、商品や部品の製造状況を可視化できます。
ただ、CPFRは、SCMのように情報共有するだけではありません。現在の情報に加えて将来の需要予測や必要部品予測、必要製品予測を小売店、メーカー、サプライヤー間で共有し設定します。つまり、全体が"協力"して製造"計画"を"予測"するものなのです。
SCMは情報の共有が一方的になりやすいのに対して、CPFRでは双方向の情報共有を行えます。これにより、製造上の問題が発生した際にサプライヤー・メーカー両者合意の上で、目標を変更できます。
システム導入やアウトソースで課題を解決!
国際物流における課題は、売上にも関わってくる問題になるため、早急な解決が必要になります。解決策として、業務のアウトソースや物流管理システムの導入という手段もあります。
特にシステムを導入する場合は、ある程度フローが整備されるため、SCMやCPFRという手法を用いながら、コストを抑えて適正在庫を確保できます。国際物流の課題である「物流工程のブラックボックス化」や「在庫の余剰化」をシステムによって解決しませんか。