不動産テックとは
不動産テックとは不動産とテクノロジーを組み合わせた造語で、不動産分野におけるIT技術を応用した新しい技術やサービス、技術革新を総称します。
不動産テックの一例として、Webサイトの構築や賃貸情報を活用した顧客管理の一元化を実現するサービスが挙げられます。物件に紐づくすべての情報を一元的に管理し、業務の効率化を提供するサービスです。
ほかにも、AIやビッグデータ、VR/ARなどの技術を活用したサービスもあります。大手の不動産ポータルサイトに集積された顧客データを分析し、物件ごとの集客プランを提供するサービスや、VRやARを活用し、住戸ごとの部屋や設備の見せ方にもこだわれるサービス手法が注目を集めています。
日本における不動産テック導入の課題
不動産テックを導入するにあたり、日本にはどのような課題が存在するのでしょうか。3つの課題を紹介します。
デジタル化の遅れ
書面や対面でのやり取り、現地内覧など、不動産業務にはいまだアナログな商習慣が残っています。
総務省の調査(令和3年度)によると、不動産業界においてデジタル・トランスフォーメーションに取り組む企業は23.3%にとどまっています。また、株式会社NTTデータ経営研究所の調査では、不動産業界における不動産テックに対する認知度はわずか4.9%です。デジタル化が進んでいるとは言い難い状況でしょう。
しかし、不動産テックを知る人が所属する企業の約4割が不動産テックに取り組んでいることが明らかになりました。なかでも、Web化やAI、ビッグデータ、IoTなどのテクノロジー導入が目立ち、多くの企業が不動産データの収集・分析・共有へ取り組んでいることがわかります。
参考:「第3回 企業における不動産テックの取り組み動向調査」不動産テックの取り組みは、約3割が年間売上10億円以上、6割以上が黒字| 株式会社NTTデータ経営研究所
参考:(2)我が国におけるデジタル化の取組状況|総務省
情報の非対称性
情報の非対称性とは、売り手・買い手のいずれかに情報が偏ることを指します。不動産業界ではこの状態が多く見られ、物件の買い手や借り手である消費者に不利益が生じているのが現状です。
消費者は不動産業者専用データベースを見られないため、物件情報の収集を不動産会社のポータルサイトなどに頼らなければなりません。不動産業者は物件を買って(借りて)欲しいため、有益な情報は消費者に積極的に伝えますが、情報の開示が義務化されていない不利益な情報は伝えようとしません。
情報の非対称性により、おとり広告などさまざまな弊害が生じています。
データベースの整備遅れ
日本は米国と比べてデータベースの整備遅れが課題です。以下は課題とされる項目です。
- ・一般媒介契約物件の登録義務がなく、物件情報の網羅性に欠ける
- ・性能、リフォーム履歴などの登録項目はあるがインフラに関する項目がなく、登録される項目が少ない
- ・登録可能な項目数は多いものの、登録されていない項目が多い
- ・米国は契約後24~48時間以内に専用データベースへの登録を義務化しているのに対し、日本は1~2週間のため情報の鮮度に欠ける
- ・米国はエリアごとにデータベースが存在し、さまざまな関連業者へ不動産情報をリアルタイムで提供しているが、日本にはこのようなデータベースが存在しない
不動産情報を管理するデータベース整備の遅れが情報の非対称化に拍車をかけ、消費者にさまざまな不利益をもたらします。
不動産テックの具体例と導入メリット
近年、注目を集める不動産テックを4つ紹介します。期待できる効果についても、あわせて参考にしてください。
AIが賃料の適正化や空室改善を提案
AIを活用した不動産テックとして、空室対策があります。契約状況や築年数などの情報を収集・蓄積してAIで分析し、結果を基に住居設備の提案や適切な家賃提案をオーナーへ提案する取り組みです。
ほかにも、ビッグデータとAIを活用したサービスもはじまっています。不動産会社が保有する物件・周辺情報、家賃推移といった膨大な情報を活用し、AIでデータを分析します。
ビッグデータをAIに解析させることで、適正価格での提案や、不動産市場の状況によって変化する50年先の物件査定も可能になるでしょう。従来、不動産鑑定士へ依頼し時間を要していた不動産価格の査定も、AI査定により簡単かつ迅速に鑑定評価を得られます。
パノラマVRで内見業務効率化と物件回転率をUP
パノラマVRコンテンツを物件資料に添付すれば内見業務を効率化できます。
入居者が事前に気になる物件のVR内見を済ませておけば、物件に行く必要はありません。実際に内見しないとわからないコンセントの位置や設備情報をVRで提供することで、入居希望者からの問い合わせを減らせます。
また、退去予定物件の内見は通常であればできませんが、VRなら対応が可能です。退去予定物件をVR化しておくことで、入居状態でも部屋を内見できます。退去から契約が決まるまでの期間が短くなり、空室率の軽減が期待できるでしょう。
IoTでセキュリティ強化し、物件価値向上や内見業務の自動化
IoTによる不動産テックはさまざまなメリットをもたらします。
スマートロックの活用により、内見業務の自動化や効率化が実現します。スマートフォンがあれば解錠・施錠ができるため、仲介会社との鍵の受け渡しが不要です。ほかにも、入居希望者一人で内見を行えるため、スマートロックによる業務効率化の効果は大きいです。
ほかにも、共働き家庭で子どもの見守りに活用されるなど、防犯へのメリットも期待できます。入居者の生活の質を向上させるIoTは、物件価値の向上にもつなげられるでしょう。
ブロックチェーン導入で賃貸取引をまるごとスマート化
ブロックチェーンによる不動産テックを実現すると、物件案内から契約、契約の更新に至るまでの業務を最適化できます。ブロックチェーンとは、暗号化したデータをチェーンのようにつないでネットワーク上で分散管理する仕組みのことです。
最適化できる業務は以下のとおりです。
- 物件の契約業務
- 仲介会社不要で物件の契約が実現します。貸し手・借り手間で契約でき、双方のコスト削減が可能です。
- 内見業務
- ブロックチェーンにより物件・個人情報を安全に管理できるだけでなく、IoTを組み合わせられます。人を必要としない内見が実現可能です。
- 各種業務
- ブロックチェーンはデータを改ざんされる可能性が高くありません。そのため、ブロックチェーンを利用したスマートコントラクトにより、契約・履行・決裁が仲介者を介さず、プログラムで自動的に執行されます。結果として、賃貸取引に関わる不正防止や、決済期間・コストの削減につながります。
賃貸管理ソフトのなかには、Web接客・Web内見機能やマッチング機能などを搭載した製品もあります。不動産テックの導入や、業務効率化に興味のある方は、以下の記事も参考にしてください。
不動産テックを導入して賃貸管理業務の改善を図ろう
不動産テックには、情報の活用・AIやIoT、ビッグデータを活用するサービスなどが挙げられます。以下のような、長年に渡る不動産業界の課題も不動産テックで解決に向かうことが期待されています。
- デジタル化の遅れ
- 情報の非対称性
- データベース整備の遅れ
不動産テックを導入して、賃貸管理業務の業務効率化を実現させましょう。