「法人税」の種類
株式会社などの法人の所得にかかる税金のことを法人税といいます。実は、法人の所得にかかる税金は、法人税だけではありません。このため、法人税は、「法人税等」と表現されることが多くなっています。まずは、「法人税等」に含まれる税金の種類を確認しておきましょう。
法人税とは
法人格を持つ株式会社などについて、事業年度期間中に得られた所得にかかる税金のことです。法人税額を算出するための法人税率は、資本金や法人の種類によって異なります。法人税法上では、中小法人の定義は資本金1億円以下としており、中小法人は、法人税率以外にも様々な税的な優遇措置を受けることができることができるようになっています。なお、中小企業庁が定義する中小企業の定義は、法人税法上の定義と異なりますので、混同しないようにしてください。
参考:
No.5759 法人税の税率|国税庁
中小企業庁:「中小企業・小規模企業者の定義」
法人住民税とは
法人が事業をおこなう以上、各都道府県や市町村の公共サービスを利用していることは明らかです。こうした観点から、法人が地方公共団体に支払う税金を、法人住民税と呼びます。
法人住民税は、所得の額に関係なく法人の資本金などに応じて決まる均等割と、所得の額に応じて決まる法人割に大別されます。法人税の場合は、所得が赤字の場合は支払う必要はありませんが、法人住民税の場合、均等割については支払義務があるので注意してください。
法人事業税とは
法人事業税は、地方自治体によって課される地方税のことで、会社の所得に応じて課税されます。このため、所得が赤字の場合は支払う必要はりません。なお、資本金が1億円を超える法人の場合は、法人事業税に加えて外形標準課税が課されます。外形標準課税は、所得が赤字の場合でも支払い義務があるので注意してください。
法人税の計算の仕組み
法人税は、事業期間に得られた所得に対し、一定の税率を掛け合わせて算出します。ここで注意が必要なのが、得られた利益ではなく、所得に対して法人税が課されるということです。利益は、収益から費用を差し引くことで算出できますが、所得の場合は益金から損金を差し引くことで算出します。それでは、益金と損金とはそれぞれどのようなものなのでしょうか。
益金とは
収益の場合、その企業が事業を活動する中で認識できるものを、原則的にはすべて計上します。多くの場合、収益と益金は一致します。しかし、以下のような一部の収益は、益金とは認められないため、収益から控除して益金を算出することになります。
損金とは
法人税額を計算するうえでは、損金の概念は重要なものとなります。法人は、金融機関などとの友好な関係性を保つためにできる限り利益を出したほうがよいのですが、利益を出せば出した分だけ、税金の支払い額が大きくなってしまいます。このため、企業によっては、できる限り費用を計上して、税金の支払い額を抑えようとする場合があります。
このような背景から、費用としては認められても、損金としては認めらない項目が定められているのです。損金に認められない費用項目としては、以下のようなものがあります。法人税額を正しく納付するためにも、これらの費用項目は押さえておくとよいでしょう。
- ・減価償却費の上限超過額
- ・貸倒引当金の上限超過額
- ・交際費
- ・役員報酬(条件によって認められる場合もある)
- ・寄付金
上手に使いたい中小企業税制
中小企業は企業数の99%を占め、日本経済の基盤となっています。中小企業の発展が日本の経済の発展につながるという考え方のもと、中小企業に対してさまざまな税負担の軽減措置が取られているのです。
税制度ときくと、難しそうで敬遠する経営者も多いかもしれませんが、手元に資金を残すことができる中小企業税制は、企業の持続的な成長に直結します。ここでは、中小企業が積極的に活用したい中小企業税制について紹介します。
欠損金の繰越控除
法人が利益を出すことができずに赤字になった場合、法人住民税の均等割りを除いて法人税の支払い義務はありません。このときに発生した赤字額を、欠損金として翌期以降に繰り越して、将来利益が出た場合に、繰り越した欠損金の額だけ課税所得を減額することができるのです。繰り越すことができる欠損金の期間は、10年間となっています。
長期にわたり企業経営を続けていれば、利益が出ない苦しいときもあるはずです。処理できない不要な資産や不良債権化した売掛金なども出てくるかもしれません。このような場合には、思い切って大きな赤字を出しておき、将来黒字化した時に、税負担を軽減させるという選択肢も必要になるでしょう。
交際費の損金算入特例
交際費は、原則として損金として認識することが認められていません。しかし、中小法人の場合、以下の条件を満たす交際費を損金として計上することができます。
- ・800万円までの交際費などの全額
- ・接待飲食費の50%
中小企業経営強化税制
経営力向上計画の認定を受けた事業者が、特定の条件を満たす設備投資した場合、その全額を損金に算入するか、所得価額の10%の税控除を受けることができる制度です。経営力向上計画の認定を受けることができる事業者は、税法上の中小法人ではなく、中小企業庁が定めた中小企業に限定されているので注意して下さい。
参考:
中小企業税制パンフレット(PDF形式:6,802KB)
経営力向上計画とは、中小企業等経営強化法に基づく支援を受けるために必要な計画のこと。人材育成やコスト管理、IT活用による生産性向上といった中小企業の取り組みを記載します。経営力向上計画の認定を受ければ、税的な優遇措置以外にも、補助金における加点要素になったり、様々な金融支援を受けたりすることができるという特徴もあります。
中小企業投資促進税制
一定の条件を満たす機械装置やソフトウェアを取得した場合に、取得価額の30%の特別償却、もしくは7%の税額控除が選択適用できる制度です。中小企業投資促進税制も、中小企業庁が定めた中小企業が対象となります。
法人税を正しく納付して持続的な成長を果たすために
法人が事業活動をおこない所得を得る以上、所得に応じた法人税を納付しなければなりません。法人の場合、金融機関をはじめとしたステークホルダーからは、できる限り利益を出してほしいという期待があります。一方で、法人は所得に応じた法人税の支払い義務があるため、できる限り所得は抑えたほうがよいのです。利益を出しながら税負担を軽減させるために、法人税の基本的な知識が必要となります。
中小企業であれば、効果的に中小企業税を使うことも出来るでしょう。正しく利益をねん出して法人税を支払いながら、持続的な成長を果たすために法人税に対する理解が経営者に求められているといえるでしょう。