給与明細の作成における3つの課題
給与明細電子化を検討する前に給与明細作成にはどのような課題があるのか確認しておきましょう。
課題1. 紙による給与明細作成のコスト増と業務負荷
給与明細を作成する際の紙代、印刷代、切手代といったコスト問題や、従業員への配付や発送業務など、給与担当者に大きな負担がかかっています。
課題2. 給与明細確認の遅れ
給与明細を手渡しする場合、従業員が内容を確認するのは当日遅くや翌日などの場合が多くなります。そのため、もしミスがあっても指摘や発見が遅れがちになります。
ミスの発見が遅れるほど、修正作業や対応が遅れてしまい、従業員と会社側の双方の手間や負担が増えることになります。
課題3. 個人情報などセキュリティの緩さ
給与明細は重要な個人情報ですが、紙での配布の場合、配付先を間違えることや、盗難、紛失のリスクがあります。
給与明細をペーパーレス化することの4つのメリット
紙の給与明細から、電子交付に変更することによって業務効率の改善だけでなく様々なメリットを享受できます。
コスト削減
2007年1月1日以降、電子化された給与明細を交付することが可能になりました。電子化によるペーパーレス化機能を推進することで、紙、印刷、切手などの実費コストを削減できます。
用紙にかかる消耗品の費用は短期的に見ると負担は感じられないかもしれませんが、長期的に見ると大きなコストになります。コスト削減は利益を生み出すのと同じことです。給与明細を電子化し、固定費であるコストを削減しましょう。
毎月生じていたコストが削減されることは、従業員規模によっては企業経営に大きな好影響をもたらすでしょう。
参照:1. 基本的な事項|国税庁
給与業務を一元化できる
従業員への手渡しや発送などの業務が不要となることで、給与担当者の業務コストも大幅に削減されます。また、給与計算、人件費の仕訳データ生成、源泉徴収、年末調整に至るまで、給与業務の一元化の実現も可能です。さらにネットバンキングとの連携が可能な製品を利用すれば、振込業務まで含めた給与関連業務が電子データに集約され、総務・経理業務全体を通じた効率化できます。
給与明細を電子化すれば、PCがあれば業務を行えるので、印字ずれ、印刷機の不具合、個人情報の取り扱いで業務の時間帯や場所が指定されるなどの問題に直面しなくなります。電子化することで、給与担当の従業員の心理的な負担まで軽減できるでしょう。
時間や場所を選ばず給与明細を確認できる
電子化された給与明細は、従業員がメールに添付されたファイルを開くか、各自でシステムにログインするなど多様な方法で確認できます。社内のパソコンからだけでなく、自宅や外出先のパソコン、スマートフォンやタブレットからの確認が可能になるので、外出の多い従業員や在宅勤務を行っている従業員でも各自のタイミングで給与明細を確認できます。
なお、多くの製品は紙に印刷された給与明細が必要な場合に備え、Web上やPDFファイルからのプリントアウトにも対応しています。
保存性が高い
給与明細を電子化することで、給与明細を過去にさかのぼって確認することが容易になります。また、紙の給与明細のようにうっかり廃棄してしまう心配もなく、再発行などの手続も不要になるメリットもあります。なお、明細の保存期間は法律に基づいて企業・組織が決定できます。
例えば、確定申告を個人で行う従業員がいた場合、人事部や経理に給与額や諸費用開示の問い合わせが来るかもしれません。その際、データで管理しておけば、社員の情報に紐づいた給与情報の検索が容易にできます。
また、紙でない分、保管場所の確保も不要のため、そのぶん空いたスペースを有効に活用できます。
個人情報の流出リスクの低減
給与明細電子化システムによって、給与明細情報を本人に安全に配信できるようになり、紛失・盗難のリスクが低減できます。
システム化せず担当者や管理者が独自の管理を行うことは危険があります。もし情報漏えいが起これば、企業の社会的信用に関わる問題に発展します。さらに、ライバル企業に自社の給与体系の情報を盗まれてしまうリスクもあります。給与明細電子化はこうしたリスクの回避にも役立つでしょう。
もし給与明細をペーパーレス化し、電子交付の際に他人に誤送信してしまっても「個人が設定しているパスワード」がない限り、その給与明細を閲覧することはできないので安心です。
▼以下の記事では、給与明細電子化のメリットとデメリットを詳しく解説しています。▼
給与明細を電子化する上での注意点
給与明細をペーパーレス化することには、多くのメリットがあると理解できたと思います。しかし、給与明細を電子化する際には注意も必要です。ここでは知っておくべき給与明細電子化の注意点を解説していきます。
同意書が必要
給与明細の電子化は、法律で認められています。ただ、従業員が電子化に同意していることが前提に必要になります。つまり従業員の過半数が電子化に反対していた場合は、給与明細の電子化移行は不可能になります。また、同意がとれ、電子化されても紙の給与明細を求める従業員には紙での発行が義務付けられています。
給与明細の電子化について、所得税法には次のように規定されています。「支払を受ける者の承諾を得て…中略…支払明細書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる」(所得税法231条)。つまり、電子交付するために事前に受給者の同意を得る必要があるということです。
出典: 2. 事前承諾|国税庁
▼同意書については、以下の記事で詳しく解説しています。▼
充分なセキュリティ対策が必要
企業の情報漏えいは、今日においてはどの企業でも起こりうる問題となっています。当然、給与明細を電子化した際にもパスワードの漏えいやウイルス感染によるデータ流出などのリスクが発生します。電子化することで会社外の個人パソコンやスマホからの閲覧が可能になり、情報漏えいのリスクは高まります。そのため、電子化という利便性にとらわれず、会社が行う対策はもちろんですが、個人のセキュリティ意識を高める必要があります。
給与明細電子化について知り、自社への導入を検討しよう
給与明細を作成する際の課題を解決する給与明細を電子化することのメリットを紹介しました。給与明細電子化を導入する際は、従業員への丁寧なメリット解説を行う必要があります。また、従業員に反対者が多い場合は、なぜ反対しているのかを従業員に寄り添い理解、そして最善策を模索することが重要になるでしょう。従業員から同意が取れましたら、ぜひ自社に合う給与明細電子化システムを検討してみてください。