給与明細電子化に同意書が必要な法的根拠
所得税法231条によると、企業には給与明細の交付義務があり、従業員の承諾を得れば電子化されたデータにより提供できると明記されています。ただし、従業員から請求があった場合は、紙による給与明細書を交付しなくてはなりません。
この法律によれば、社内で給与明細の電子化を実施するには事前に従業員へ説明し、同意を得ることで導入できます。
参考:所得税法|e-Gov法令検索
給与明細電子化を導入する前に知っておきたい4つのポイント
給与明細を電子化するうえで、準備しておくべきポイントを紹介します。
1.給与明細へのアクセス方法を決定
給与明細を電子化すると、自社の従業員へ明細を一斉に配布できます。ただし、専用のパソコンがない社員や、スマートフォンを所有していない従業員の現状を調べておく必要があります。そのうえで、状況に適した電子データへのアクセス方法を確保する必要があるのです。
給与明細電子化の手法には大きく分けて、メールによる配信と、ログイン画面の発行による配布の2つの方法があります。従業員への聞き取りを行ったうえで、どのような形態で電子化を導入することが可能なのか、アクセス手法の確保のための端末の導入、アクセス方法に関する情報提供などを検討しましょう。
2.従業員から同意書を取得する
給与明細電子化の導入の成否を大きく分けるのが、従業員の合意です。先述したとおり所得税法では、給与明細や源泉徴収票を電子交付する場合、従業員からの同意を得なくてはならないとされています。同意をとれない社員に対しては、従来通り紙での発行をする必要があるのです。明細発行のルールを一元化できるよう、従業員全員から同意書を取得する手立てを考えましょう。
給与明細を電子化するために必要な同意書は、給与明細電子化システムから簡単に取得することも可能です。その場合には、明細発行画面の初回のログイン時に承諾書を表示し、従業員に「同意する」を選択してもらい意思確認ができる機能などがあります。そのため、給与明細電子化に先駆けて給与明細システムを検討するのもおすすめです。
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従業員から同意を得るためのポイント
従業員から同意書を取得するのに手間取る企業も少なくありません。このプロセスでは、事前に社員への情報提供を行い、社員にとっての利便性について理解を得ておくことが成功のカギとなります。
- 同意書の取得手順
- 1.システムの内容、発行方法などを明記した同意書を用意
- 2.受給者にシステムや制度を説明する
- 3.従業員(被雇用者)に意思確認を行い同意書を得る
- 交付者が受給者に提示すべき内容
- ●電子交付する書類の名称
- ●電磁的方法の種類やその具体的な方法(Eメール、社内LANの選択など)
- ●受信者ファイルへの記録方法
- ●交付予定日
- ●交付開始日
- 同意書の内容
-
- 承諾を得るための法的な記載事項や書式等は存在しません。交付者が提示した情報に受給者が同意し、「電子交付について承諾する旨、承諾日、受給者氏名」を得ることで承諾したとされます。
参考:1. 基本的な事項及び2.事前承諾|国税庁
3.セキュリティの確保
給与明細の電子化には、誤配付や紛失の防止など、セキュリティ面でのメリットがあります。その利点をさらに高めるためには、電子化特有の情報流出経路を塞いでおくことも必要です。
総務・経理担当者は、給与明細に限らず、従業員のセンシティブな個人情報を管理しているので、担当者のパソコンのウイルスやスパイウェア対策は当然行っているでしょう。
それに加え、システムへの入力ミス、メールのご送信防止のためのチェック体制の整備、これらのトラブルを防止するための各製品の機能を、各ベンダーに確認しておきましょう。
また、従業員に対しても、いわゆる「なりすまし」防止のための、定期的なパスワード変更の推奨などの啓発を行うことも重要です。
4.給与計算・会計システムとの連携
給与明細電子化は、それ自体にも大きな業務削減効果がありますが、給与関連の情報を連携することでさらに効果が増します。例えば、勤怠管理ソフト、給与計算ソフトの情報から、直接明細作成を行ったり、会計・税務申告ソフトと連携し、源泉徴収票や年末調整業務も一貫して行う体制にしたりと、さまざまなソフトとの連携が可能です。
導入の際は、既存のシステムとデータ連携ができるかを必ず確認しておく必要があります。給与明細電子化システムと他システムとの同時導入、システム全体の入れ替えによって得られるメリットも検討し、全社的なシステム構築を視野に入れましょう。
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給与明細電子化に従業員が同意しない場合の対応
給与明細の電子化において、所得税法により従業員本人が請求した場合は、紙での給与明細交付が必須とされています。
給与明細を紙で発行しなければならない
給与明細の電子化において、所得税法の取り決めにより従業員本人が請求した場合は、紙での給与明細交付が必須とされています。給与明細を発行せざるを得ないです。こういった従業員が多数いる場合は、給与明細を電子化するメリットが小さくなるでしょう。
1対1でのコミュニケーションを
給与明細の電子化を反対する従業員の数が少ない場合は、1対1でのコミュニケーションをとり、同意を得ることを目指すとよいかもしれません。なぜ紙での発行を望むのかを聞き取って解決策を検討したり、電子化による従業員側へのメリットを整理して伝えたりするとよいでしょう。
給料明細電子化に同意しない従業員の対応について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
給与明細電子化における従業員側のメリット
給与明細の電子化に反対する従業員に最低限伝えておくべき、電子化のメリットを紹介します。
過去の明細を素早く確認できる
給与明細がデータで発行されることで、過去に遡って確認したい月の給与明細を確認できます。紙で発行される場合だと管理が煩雑になりやすく、必要な給与明細を探すのも時間がかかるでしょう。
時間や場所に囚われず明細を確認できる
給与明細の電子化により、従業員はシステムから送られてくる明細URLやファイルを開くだけで、給与明細を確認できます。また、スマホやタブレット端末に対応した製品も数多くあるので、外出先などPCがない状況でも給与明細を見ることが可能です。
給与明細電子化のメリット・デメリットについて詳しく知りたい方はこちらもご覧ください
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受給者から同意を得て給料明細電子化を導入しよう
給与明細の電子化の導入過程では、従業員の状況、そして業務システムなど、会社や業務の全体をあらためて見直す取り組みが必要です。そのプロセスを経ることで、給与明細の作成・配付業務効率化にとどまらない、自社に合ったシステムが整備されるのです。
もし、給与明細電子化に同意書を提出しない従業員がいる場合は、電子化のメリットを丁寧に説明してみてください。従業員の同意を得たうえで、給与明細電子化システムの導入準備をしましょう。