どのように送受信している?メールサーバの仕組み
メールはビジネスにおいて必要不可欠な存在となっていますが、その仕組みを理解せずに使っていることが大半でしょう。メールの仕組みを知らないと、メール配信システムの仕組みを理解するのは難しいです。メールの送受信はメールサーバによって行われるため、ここからはメールサーバの仕組みを解説します。
メールサーバとDNSサーバによって送受信が可能に
メールサーバは、送信用サーバである「SMTPサーバ」と受信用サーバである「POP3サーバ」で構築されます。
加えて、「DNSサーバ」もメールの送受信に必要です。各メールサーバにはインターネット上の住所である「IPアドレス」が割り振られていて、DNSサーバを使用することでドメイン(@マーク以降の文字列)からIPアドレスを割り出せます。ドメインだけではIPアドレスがわからず、どこにメールを送信すべきか特定できないため、DNSサーバが必要なのです。
メール送受信の大まかな流れは以下のようになります。
- 1.送信元の端末内のメールソフトからSMTPサーバへメールが転送される
- 2.DNSサーバで送信先のIPアドレスを割り出す
- 3.送信元のSMTPサーバから送信先のSMTPサーバへメールが転送される
- 4.送信先のSMTPサーバから送信先のPOP3サーバへメールが転送される
- 5.送信先のPOP3サーバに送信先の端末がアクセスしてメールを受け取る
受信サーバにIMAPサーバが使われることも
最近はパソコンよりも容量の小さいスマートフォンやタブレットでメールを確認することが増えました。そのため受信サーバには、サーバ上でメールを閲覧・管理できる「IMAPサーバ」が使われるようになっています。
POP3サーバだとメールを端末に保存することになりますが、IMAPサーバは端末にメールを保存しません。端末の容量を気にせず、メールの受信が可能で、ネット環境があればどこでもメールを閲覧できます。
大量のメールを配信すると遅延や不達のおそれ
通常のメール送受信は1対1ですが、メルマガ配信などは1対複数となり、大量にメールを配信することになります。実は大量のメールを一斉配信して、送信先へ確実に届けることは非常に難しいことです。
大量配信を行うとSMTPサーバに負荷がかかり、サーバがダウンするおそれがあります。そうなればメールの送信処理が追い付かず、配信遅延が生じるでしょう。
さらに大量配信によって、ISP事業者からスパムや迷惑メールと認識されてしまうかもしれません。ISP事業者とは、インターネットの接続サービスを提供する事業者のことを指します。安全なサービスを提供するため、迷惑メールの典型例をもとに該当するならメールサーバをブロックしていると考えられています。迷惑メールの典型例を一部、ご紹介します。
- ■単一IPアドレスから大量配信されている
- ■突発的に大量配信されている
- ■不達となるメールが多い
これに該当する場合は、たとえ悪意がなくても迷惑メールを配信したと見なされてしまいます。一度メール配信をブロックされてしまうと、メールサーバのIPアドレスは使い物にならなくなってしまうので注意しましょう。大量配信を行う場合は、メール配信システムを利用するのがベターです。
なぜ大量配信が可能?メール配信システムの仕組み
メール配信システムは、「大量配信」「高速配信」「高い到達率」を実現するシステムですが、それを可能にしているのが高性能な「MTA(メール転送エージェント)」というプログラムです。
MTAはSMTPサーバ内のプログラムの1つで、送信元から転送されたメールを正しい宛先に仕分ける役目があります。送信先にメールを届けるのはMTAではなく、MDAというプログラムが担いますが、最近はMDAがMTAと一体化しているケースが多いです。
MTAの性能が高いと、大量配信してもSMTPサーバが耐えられるうえ、MTAの処理速度が上がります。さらに、ISP事業者からの信頼を得られるよう、複数のIPアドレスを取得し、メールの配信数を調整したり定期的にエラーメールアドレスを管理したり対策を打っています。その結果、メール配信システムは「大量配信」「高速配信」「高い到達率」が実現するのです。
ほかにもメリットが!メール配信システムの主要機能
メール配信システムには、大量のメール一斉配信を可能にするだけではありません。メールマーケティングを効果的に行うための機能を搭載しています。代表的な機能は以下のとおりです。
- ■ステップメール配信機能
- ■セグメント配信機能
- ■HTMLメール作成機能
- ■メールアドレス、リスト管理機能
- ■効果測定機能
メール配信システムは配信日時予約を設定できるため、それを応用してステップメールやセグメント配信ができます。顧客1人1人に合った内容・タイミングでメール配信することで、メールマーケティングの効果が高まるでしょう。
また、知識がなくても直感的な操作でHTMLメールを作成できたり、メールの開封率やクリック率などを測定できたり、メールマーケティングの効率化を図れる機能が搭載されています。メール配信を行う企業では、メール配信システムは欠かせないでしょう。
システムを選ぶ前に確認!メール配信システムの種類
メール配信システムは提供形態で「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類に分けられます。どちらが適しているのかは企業によって異なるため、双方の特徴を押さえておきましょう。
クラウド型メール配信システム:サーバ保守管理の負担が少ない
クラウド型メール配信システムは、インターネット上にすでに構築されているシステムを利用するタイプです。ベンダーが管理するメールサーバを利用する形になり、自社でサーバを構築・管理する必要はありません。
サーバを自社で用意しないため、初期費用を抑え、短期間でシステム導入が完了します。また、サーバ保守管理にかける人件費や業務負担を削減できます。
手軽に利用できるメリットがありますが、月額料金が発生し、機能拡張したい場合はオプションとなります。場合によっては運用コストが大きくなるため、年間コストを考慮して導入を検討しましょう。
オンプレミス型メール配信システム:機能拡張やシステム連携がしやすい
オンプレミス型メール配信システムは、自社でメールサーバを設置してシステムを構築するタイプです。メールサーバの用意や保守管理など、すべて自社で行う必要がありますが、自社の環境に最適な形のシステムを構築できます。
特に、基幹システムやCRMなど連携させたいシステムが多い場合は、オンプレミス型は最適でしょう。また、個人情報となるメールアドレスを大量に扱うため、外部サービスの利用に抵抗がある場合にも有効です。ただし、オンプレミス型は導入・運用にコストと手間がかかりますので、注意しましょう。
メール配信システムで確実にメールを届けよう
負荷に耐えられるメールサーバで構築されたメール配信システムは、スピーディーな大量配信はもちろん、到達率が安定します。複数のIPアドレスで配信し、エラーメールアドレスを管理しているためです。
企業がメール配信を行うにはメール配信システムが不可欠でしょう。なお、メール配信システムはクラウド型・オンプレミス型に分けられるので、十分に検討して最適なシステムを導入しましょう。