物流コストとは
物流コストとは、物流業務で発生するコストのことです。有形・無形問わず、供給者と需要者の間にモノの流れがあれば、それに要したコストが対象となります。機能・支払形態・物流プロセスの3種類に大別されるのが特徴です。支払形態別・物流プロセス別の内訳は以下のとおりです。
- 【支払形態別】
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- ■支払い物流コスト:輸配送や事務の外注費、倉庫のレンタル料など
- ■社内物流コスト:社内のシステム運用費や人件費など
- 【物流プロセス別】
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- ■調達物流費:原材料を調達する時のコスト
- ■社内物流費:社内業務における物流コスト
- ■販売物流費:製品を販売する時のコスト
機能別の分類の内訳については次項で解説します。
物流コストの内訳
ここでは、機能別に分類した場合の物流コストの内訳を見ていきます。
1.運送費
モノを運ぶ方法はいくつかあります。それぞれにかかる費用を紹介します。
- チャーター機の運賃
- 専属運輸を活用して自社の商品のみを輸送する時にかかる運賃。仕様・最大積載量・輸送距離などによって決められる。
- 宅配事業者による運賃
- 各社が国土交通省に届出した運賃表を基に決定される。
- その他運賃
- 他社と提携を結ぶ共同配送便、複数の宛先に配送可能なルート便などを指す。
- 自社便の運賃
- 自社が運用する輸送機にかかる運賃。自社で自由に決められる。
- 航空便の運賃
- 国内外に配送する時の航空便の運賃。
- 上輸送の運賃
- 船で海外に輸送するときの運賃。ドル建てが一般的だが、別建のケースもある。
2.保管費
モノを倉庫などに保管するコストです。一般的に以下のような項目で発生します。
- 賃借料
- 保管する場所を借りる際にかかる費用。
- 保管料
- 保管した商品の管理にかかる費用。
- 入出庫料
- 在庫管理や荷物の出し入れにかかる費用。
営業倉庫の保管料には、寄託保管料と坪貸し保管料があります。寄託保管は、保管する荷物の重量によってコストが変動する契約です。保管料は「サイズや重量などの計量トン」と「保管日数」によって算出されます。数量によって支払いコストが決まります。
坪貸し保管は、保管スペースによってコストが変動する契約です。保管料は「契約坪数」と「契約坪単価」で算出されます。保管スペースごとに月額料金を支払います。
3.荷役費
倉庫や物流センターなどから、荷物を入荷・出荷するときに発生するコストです。荷役費の内訳は、以下のとおりです。
- 入庫費
- 倉庫や物流センターなどに入庫するときの費用。1ケースあたりの単価に数量をかけることで算出される。
- 出庫費
- 倉庫・物流センターなどから出庫されるときの費用。ピッキング料とも呼ばれる。算出方法は入庫費と同様。
- 梱包費
- 倉庫・物流センターにおける梱包にかかる費用。
- 流通加工費
- 商品を流通させるために必要なコスト。シール付け、タグ付け、プレス加工などが含まれる。
- 輸出にかかる諸経費
- 輸出時にかかるコスト。通関料、ドレージ料、取扱手数料、港湾施設利用料、関税などが含まれる。
4.物流管理人件費
物流を管理するための人件費です。入出荷や伝票発行業務などを指し、戦略・企画・分析といった、物流を行うための業務とは区別されます。社内物流費と調達物流費に分けられるのが一般的です。
- 社内物流費
- 製品として移送される前段階での物流コスト。製品化した後の、輸送費・諸経費・保管費なども含まれる。
- 調達物流費
- 原材料を調達する時の物流コスト。物流プロセスを統合管理する観点から、他の原価項目と明確に区別して分類するのがよいとされる。
物流コストの削減方法
ここでは、物流コストを削減する方法を紹介します。一般的に、作業効率を上げて人件費を減らしたり、適正在庫を維持して保管費を減らしたりしますが、具体的に何をすればよいのでしょうか。
拠点の集約
全国に配置した拠点を数箇所に集約することで、倉庫の賃借料や保管費、諸経費などを削減できます。拠点数を少なくすると輸送費が増大しますが、全体で考えればコスト削減につながるでしょう。
商品カテゴリー別に荷物の入出荷量を把握できるため、在庫調整や拠点間の横持ち移動の効率化にも有効です。
倉庫内作業ルールの策定
物流コストを削減するには、倉庫内作業ルールを策定することが大切です。ルールがないと倉庫内の商品が乱立し、その場しのぎの管理になりかねません。ルールを決めることによって、作業担当者や工程・納品要件などを、可視化できます。
倉庫内作業ルールを策定するには、5S活動がおすすめです。5S活動とは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」からなる、製造業における工場改善の基本の考え方です。この活動を軸とした倉庫内作業のルールを決め、無駄をなくすことで物流コストを削減していきます。
- 【5S活動】
- 整理:必要なものとそうでないものを区別する
- 整頓:必要なものを必要な時に取り出せるようにする
- 清掃:職場からゴミや汚れを排除する
- 清潔:上の3つを行い清潔な状態を保つ
- しつけ:従業員に対し上の4つのことを実践させる
物流管理システムの導入
物流コストを削減するには、物流管理システムの導入も効果的です。物流管理システムでは、輸送や保管、荷役、包装、流通加工などの工程を一元管理し、検品や配車管理などの業務が自動化されます。システム導入によって得られるメリットは以下のとおりです。
- ■物流に関わる人的コストを削減できる
- ■人的ミスが減り、作業効率が上がる
- ■配送情報を一括管理できる
- ■詳細な運賃分析ができる
- ■倉庫回転率の向上
なお、物流管理システムを導入するときは、システムの保守管理費なども考慮しましょう。大規模なシステムになると、定期的な点検や各部品の交換などの専門業務も発生します。保守管理費は、稼働年数が長くなるほど増大するのが特徴です。
これらの費用を考慮したうえで、高い費用対効果が見込めるのであれば、導入を検討してみましょう。
業務のアウトソーシング
自社内で対応するのが難しい場合は、業務自体をアウトソーシングするのも良いでしょう。アウトソーシングするメリットは、以下のとおりです。
- ■専門知識がなくても物流コストを削減できる
- ■より重要な業務に集中できるようになる
- ■物流トラブルも専門業者が解決してくれる
サービス提供会社によって提供できるサービスの幅が異なるため、自社と同じ業種や業態の企業を担当していたかを確認しましょう。
自社の物流コストを把握し、対策の実施を!
物流コストは物流業務で発生するコストです。これを削減できれば、利益の確保にもつながります。輸送拠点の集約化、作業ルールの策定、物流管理システムの導入などを通して、物流業務を効率化させましょう。自社内で対応できないときは、アウトソーシングがおすすめです。
システムもアウトソーシングもメリットデメリットがあるため、自社内の物流コストを把握し、最適なサービスを選びましょう。