注文書および発注書の保管期間は?
まずは、法的に定められた注文書や発注書の保管期間を見ていきましょう。保存期間については、法人と個人事業主で異なるほか、条件によっては期間が変わることもあるため注意が必要です。
法人:保管期間は7年
注文書や発注書は「帳簿」とともに取引に関連して作成された「書類」に該当するため、法律で定められた期間、保管しなければなりません。税法では法人の場合、帳簿書類の保管期間は7年と定められています。帳簿書類とは、「帳簿」と、帳簿に記録されている取引とともに作成された「書類」をあわせたものです。
また、平成27年度及び平成28年度の税制改正により、平成30年4月1日以降、欠損金の発生する事業年度においては帳簿書類の保管期間が10年に延長されたため、どの帳簿書類も10年間保管すれば確実です。
保管期間の起算日:いつから数える?
保管期間は、書類の作成日・受領日からではなく、確定申告書類の提出期限の翌日からカウントされます。たとえば3月決算法人であれば、当期の申告期限(通常5月末)の翌日から7年(欠損金のある年度は10年)保存します。
参考:No.5930 帳簿書類等の保存期間及び保存方法| 国税庁
参考:法人税法施行規則
個人事業主:保管期間は5年
青色申告をしている個人事業主の場合、注文書や発注書の保存期間は5年間と定められています。見積書や請求書、契約書なども同様です。一方、帳簿や決算関係書類、現金預金取引等関係書類に関しては7年間の保管が必要です。
なお白色申告の場合であっても、注文書や発注書の保管期間は変わりません。
保管しなかった場合のペナルティ
帳簿書類を保管せずに捨ててしまうと、いざ税務署による税務調査があったときに、たとえ経費で購入していたとしても、商品を購入した証拠書類が不十分であるとして税金の追加徴収を受ける可能性もあります。注文書や発注書を法律に則って管理することが大切です。
注文書・発注書の違いとは?フローについても解説
そもそも注文書と発注書とでは何が違うのでしょうか。また企業間取引において扱う書類の流れについても解説します。
注文書・発注書の違いとは?
企業取引において注文書や発注書は、どちらも購入する側が作成する帳票ですが、法的な違いは定められていません。しかし、注文書と発注書を使い分ける企業もあるので、その一例を紹介します。
- ■注文書
- 原材料など形あるもので加工が不要なものに使う(例:木材)
- ■発注書
- 加工や作業を伴うときに使う(例:椅子)
以下の記事では、注文書と発注書を使い分けるポイントについて詳しく解説しています。
発注側・受注側別:書類取引のフローとは
企業間取引では、発注側・受注側別にどのような書類取引があるのかフローを確認しましょう。
- ■発注側
- 1.見積依頼書【商品やサービスの代金算出を依頼する】
- 2.注文書【見積書に合意し正式に注文する】
- 3.受領書【商品を受け取った際に発行する】
- ■受注側
- 1.見積書【商品の金額・量・納期などを提示する】
- 2.注文請書【注文を受け契約が成立した際に発行する】
- 3.納品書【商品を納品した際に発行する】
- 4.請求書【商品の代金を請求する】
- 5.領収書【代金を支払ったことを証明する】
受発注業務の流れを把握したい方や、各段階でやるべきことについて詳しく知りたい方には、以下の記事がおすすめです。わかりやすく図解で説明しているため、すぐに理解できます。
注文書および発注書の保管方法
つづいて、注文書・発注書をどのように保管すればよいのか、適切な保管方法について解説します。
紙で保管するのが原則
注文書・発注書といった帳簿書類は原則として紙(原本)で保管する必要があります。
注文書や発注書を保管する目的は税務調査に対応するためであり、日付や帳票の種類、取引先ごとに整理しなければなりません。紙の状態だと管理が複雑になりやすいため、書類の命名方法や保管場所、廃棄の方法などルールを決めて整理する必要があります。
電子取引の場合は電子データでの保管が義務
電子取引で受け取った注文書・発注書は、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存することが必須です。これは電子帳簿保存法の改正(令和4年1月施行)により義務化された対応です。
当初は宥恕期間(猶予措置)が設けられていましたが、令和6年1月1日からは完全に義務化され、紙への出力保存は認められていません。そのため、PDF形式の注文書や、メール本文に記載された発注内容などは、電子データとして保存・管理が必要です。
電子データで保存すると、原本と違い改ざんされるリスクもあるため、しっかりとしたセキュリティ対策が必要です。受発注システムには注文書などの扱いに際し、不正ログイン防止やなりすまし防止などのセキュリティ対策が施された製品もあります。興味のある方はぜひ以下の記事も確認してください。
特に電子データの場合はシステムでの管理が便利です。受発注書類の適切な管理を実現するために、各社の受発注システムを比較して、自社に最適なツールを見つけましょう。
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電子取引データの保存を行うためには?
令和4年1月1日から電子帳簿保存法が改正され、さらに令和5年度改正により令和6年1月1日からは「電子取引データの保存」が完全に義務化されました。注文書や発注書などの電子データを保存する際には、以下要件を満たす必要があります。
真実性・可視化の確保
帳票類を電子保存するためには大きく分けて「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つの要件を満たす必要があります。特に「真実性の確保」は、データの信頼性を担保するための重要な項目です。
真実性の確保とは、電子化した帳票の内容が正しいことを証明する仕組みを整えることを指します。具体的には、次のいずれかの方法で対応します。
- ●訂正・削除の履歴が自動で残る、または訂正・削除ができないシステムを利用する
- ●タイムスタンプが付与されたデータを受け取る
- ●保存するデータにタイムスタンプを付す(最長2か月以内)
- ●不当な削除や改ざんを防ぐための事務処理規程を作成・運用する
取引年月日や金額、取引先で検索ができるようにしておきましょう。
一方、可視性の確保とは、保存したデータを容易に確認・検索できるようにしておくことです。次の要件をいずれも満たす必要があります。
- ●ディスプレイや操作マニュアルなどの備え付け
- ●取引年月日、取引金額、取引先で検索できる機能を備えること
ただし、小規模事業者(基準期間の売上高が1,000万円以下など)の場合は、検索機能を備えていなくても、税務調査時に電子データの出力・提示ができれば可とされています。
なお、法改正によりタイムスタンプの付与期間は2か月以内に延長され、運用上の負担が軽減されています。
所轄税務署長への承認は不要
従来、帳票類を電子化して保管するためには、要件を満たした後に所轄の税務署署長の承認を得る必要がありました。しかし、電子帳簿等保存制度の見直しにより、申請・承認の必要はなくなり、手続きは簡素化しています。
電子帳簿保存法改正の内容とは
令和3年に発表され、令和4年1月1日からの施行をはじめ、さらに令和5年度税制改正による見直しを経て、制度は以下のように変わっています。令和6年1月1日以降に行う電子取引等には、改正後の要件が適用されます。
令和4年施行の主な改正内容
- ■承認制度
- 改正前:所轄税務署長へ3か月前に申請・承認が必要
改正後:廃止 - ■タイムスタンプの付与期間
- 改正前:(電子取引)遅延なく(スキャナ保存)3営業日以内
改正後:最長2か月以内に緩和
※スキャナ保存において訂正・削除の記録が残るシステムを使用する場合は不要 - ■署名
- 改正前:領収書などにおいては受領者の署名をしてスキャンを行う
改正後:署名は不要 - ■適正事務処理要件(相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等)
- 改正前:スキャン済みの原本には検査を行い一定期間保存したうえで廃棄
改正後:検査や一定期間の保存をせずに原本廃棄が可能 - ■隠蔽・申告漏れなど適切に保存していない場合の罰則
- 改正前:スキャナ保存の取り消し
改正後:不正にかかわるものについて、重加算税が10%加算
令和5年度以降の追加改正・令和6年施行内容
- ■スキャナ保存要件の緩和(令和5年度改正)
- ●解像度・階調・用紙寸法情報などの保存要件を廃止
●入力者情報(入力者・監督者)確認要件を廃止
●一般書類(見積書・注文書など)は帳簿との相互関連性確保義務を外す(重要書類は従来どおり) - ■電子取引データ保存の義務化(令和6年1月1日~)
- ●電子取引データの保存が完全義務化(紙出力保存は不可)
●2年間の宥恕措置が終了
●検索要件(可視性要件)について、小規模事業者の範囲を拡大
●要件を満たせない場合でも、税務調査時に電子データを提示できれば猶予措置の対象となる
参考:電子帳簿保存法が改正されました|国税庁
参考:令和7年度税制改正の大綱(7/9)|財務省
注文書の保管期間に関する制度を知り、適切な受発注管理を
注文書や発注書は法律で定められた保管期間があるため、社内で適切に保管しなければなりません。最低でも税法で定められている7年間は保存しましょう。
注文書や発注書などの帳簿を紙で保存する場合、保管スペースの確保や管理の手間、紛失の恐れなどのデメリットも生じます。
保管期間の厳守や検索性、管理などを適切に行うためには、受発注システムを導入するのがおすすめです。まずは比較検討のため資料請求をし、自社に合うシステムを見つけましょう。



