販売管理で扱う情報
設計を見る前に、何を扱うのかを押さえておきましょう。情報の性質を分けて捉えると、構造も理解しやすくなります。
販売管理システムが扱う情報の種類
販売管理システムは、商品を販売する一連の流れで生じる情報を扱います。見積、受注、出荷、売上、請求、入金といった段階ごとに記録が生まれ、それぞれが結び付いています。
これらの記録は、得意先や商品といった土台の情報を参照して作られます。得意先の名称や取引の条件、商品の単価といった情報が登録されていることで、取引のたびに一から入力する必要がなくなります。この土台の情報と、日々積み上がる取引の記録を分けて考えることが、構造を理解する出発点です。
表計算ソフトでの管理との違い
受注の一覧や売上の集計を表計算ソフトで管理している企業も少なくありません。件数が限られ、担当者も少ない段階では対応できます。
違いが表れるのは、同じ情報を複数の表に持つ必要が生じたときです。得意先の情報を受注表と請求表の両方に書いていると、住所が変わった際に両方を直す必要があります。片方だけ更新されれば食い違いが生じます。土台の情報を一か所に持ち、取引の記録から参照する構造にすることで、こうした食い違いを防ぎやすくなります。
データの構造から見た設計の要素
販売管理のデータベースを整える際に決めておきたい要素を、三つに分けて確認します。
土台となる情報の整備
得意先、仕入先、商品、担当者といった、繰り返し参照される情報を整える作業です。取引のたびに変わるものではないため、まとめて登録し、必要に応じて更新する扱いになります。
ここで重要なのが、識別するための番号の付け方です。同じ得意先が複数の番号で登録されていると、集計した際に別々の相手として扱われます。既存の資料を移す前に、重複や表記の揺れを整理しておく必要があります。番号の付け方の基準も、あらかじめ決めておきましょう。
取引の記録の設計
受注、出荷、売上、請求、入金といった日々の記録をどう残すかを決める作業です。それぞれが独立した記録として残りつつ、前の段階の記録と結び付く構造が基本になります。
この結び付きがあることで、受注のうちどこまで出荷が済んでいるか、売上のうちどこまで入金されたかを追えます。分割して納品する取引や、複数の受注をまとめて請求する取引がある場合は、その扱いも設計に含める必要があります。自社の取引の形を洗い出してから決めましょう。
在庫や入出金との結び付き
出荷の記録が在庫の数量に反映される、入金の記録が売掛金の残高に反映されるといった連動の設計です。連動していなければ、それぞれを別に管理することになり、突き合わせの作業が生じます。
どこまでを一つのシステムで扱い、どこから別のシステムに任せるかも判断が必要です。在庫管理や会計を別のシステムで行う場合は、連携の方式を確認しておきましょう。連携できない部分がどれだけ残るかを把握したうえで、構成を決めることが求められます。
一元管理によって変わる業務
情報を一か所にまとめることで、日々の業務にどのような変化が生じるかを確認します。
二重入力の削減
受注の内容がそのまま出荷、売上、請求へ引き継がれる構造であれば、同じ情報を段階ごとに入力し直す作業がなくなります。入力の回数が減れば、それに伴う誤りの可能性も下がります。
担当者ごとに管理していた表を統合すれば、状況を確認するために複数の資料を突き合わせる手間も減ります。問い合わせを受けた際に、その場で進捗を確認できる状態になります。ただし、入力の担当と時期を定めておかなければ、記録が最新にならない点は変わりません。
集計と分析の進めやすさ
取引の記録が同じ構造で蓄積されていれば、期間や得意先、商品ごとの集計を条件で取り出せます。月次の報告資料を作成する作業も短縮できます。
売れ行きの傾向や、取引先ごとの推移を確認できれば、営業の計画にも活用できます。ただし、集計の結果は入力された記録にもとづきます。記録が漏れていたり、区分の付け方が担当者によって異なったりすると、結果も実態から離れます。入力の基準をそろえる取り決めが前提になります。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)で販売管理システムの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
構築を進める前に確認したい点
仕組みを導入する前に、社内で整理しておきたい事項を二つ挙げます。
コードの付け方と既存データの整理
得意先や商品を識別する番号の体系は、後から変更しにくい部分です。事業所や部門を含める、種類ごとに桁を分けるといった考え方がありますが、複雑にしすぎると運用しにくくなります。
既存の資料を移す前に、重複した登録、使われていない項目、表記の揺れを整理しておきましょう。この作業には、営業部門と経理部門の双方の知識が必要になります。移行の対象を現在も取引のある相手に絞る進め方も、作業量を抑える手立てになります。
業務の流れとの整合
システムの標準的な流れと、自社の業務の進め方が合わない場合があります。受注の前に承認を挟む、出荷の指示を別の部署が行うといった運用があるなら、それを再現できるかを確認する必要があります。
合わない部分は、業務の進め方を見直すか、システム側を調整するかの判断になります。すべてを再現しようとすると費用も期間も膨らむため、譲れない部分とそうでない部分を分けて整理しておきましょう。関係する部署を検討の段階から交えることが望まれます。
販売管理システムの選び方
ここまでの内容を踏まえ、システムを選ぶ際の確認事項を整理します。
対象業務と取引件数の整理
最初に、どこまでを対象にするのかを決めます。受注から請求までを扱うのか、在庫や仕入も含めるのか、原価の把握まで求めるのかによって、選ぶべき製品が変わります。
あわせて、月あたりの取引件数と利用する人数も整理しましょう。件数や人数に応じた料金体系を採る製品が多く、規模の想定は費用の試算に直結します。取引の形が特殊な部分があれば、その内容も伝えておくと提案を受けやすくなります。
既存システムとの連携範囲
会計システムや在庫管理システムとの連携は、二重入力を避けるために確認しておきたい要素です。売上の情報が仕訳につながる流れを組めれば、経理部門の作業も減らせます。
連携の方式に加えて、どの項目をどちらの方向へ同期するかも確認しておきましょう。取り込みに失敗した際に気づける仕組みや、修正の手順があるかもあわせて確かめておくと安心です。判断が難しい部分は情報システム部門に相談しながら進めましょう。
費用とサポート範囲の確認
料金は、利用人数に応じた月額制、機能ごとのプラン分け、初期費用と保守費の組み合わせなど、製品によって考え方が異なります。自社の運用にあわせた設定が別料金となる場合もあるため、総額で比べることが必要です。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、既存データの移行や初期設定を支援してもらえるのかは製品ごとに差があります。月末や期末は問い合わせが集中しやすいため、繁忙期の対応体制も確認しておきましょう。
販売情報の一元管理に対応したシステム
扱う情報の種類や業種にあわせて検討できる、販売管理システムを紹介します。
アラジンオフィス
- お客さまの声を反映した完成度の高いパッケージ
- 導入実績5000社以上!
- 販売・在庫管理だけでなく、豊富なオプション機能をご用意
株式会社アイルが提供する「アラジンオフィス」は、受注から在庫、出荷までの情報を一元管理できる販売管理システムです。業種ごとに特化した構成が用意されており、取り扱う商材にあわせたデータベース設計に対応しています。仕入から売上までの情報を一つの画面で確認できます。
「楽楽販売」
- 販売管理システム 売上シェアNo.1
- 見積もり~請求データの一元管理で、転記作業や請求ミスを削減
- 売上・原価の紐づけで、収支計算・集計の手間を削減
株式会社ラクスが提供する「楽楽販売」は、見積から受注、請求までの業務をクラウド上で扱えるシステムです。既存の帳票フォーマットを引き継いだ形での運用に対応しており、Excelでの管理から移行する際の負担を抑えやすくなります。ノーコードでの項目追加にも対応しています。
freee販売
- 転記作業いらずで、カンタンに一気通貫した案件管理
- 案件管理をカンタン可視化で次のステップへ
- freee販売×他プロダクト連携でさらなる効率化
フリー株式会社が提供する「freee販売」は、見積・請求業務と在庫管理をあわせて扱えるクラウド型の販売管理システムです。同社の会計サービスと連携させる構成に対応しており、販売情報を会計処理に反映させる手間を抑えられます。中小企業での導入を想定した機能がまとまっています。
RFQクラウド (A1A株式会社)
- 見積業務をクラウド上で一元管理。
- 共通フォーマットを活用し、見積取得を円滑に支援。
- 交渉履歴や依頼状況を集約・可視化
点検エース for EXCEL® (株式会社ビジー・ビー)
- 特許登録済み入力支援機能でExcel作業を効率化
- ビルメン協会認定製品
- 生成AIが課題を見抜き改善策を自動提案
販売管理に関するよくある質問
見直しを検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: 表計算ソフトから切り替える目安はありますか?
- 一律の基準はありませんが、同じ情報を複数の表に入力している、集計に時間がかかる、担当者ごとに資料の形式が異なるといった状況が続く場合は検討の時期といえます。現在の入力と集計にかかる時間を整理して判断しましょう。
- Q2: 会計システムがあれば別に導入する必要はありませんか?
- 会計システムは決算に向けた処理を主な目的とし、販売管理は受注から請求までの流れの管理を主な目的とします。取引の進捗管理や在庫との連動が必要であれば、別に検討する価値があります。現在のシステムで対応できる範囲を確認しましょう。
- Q3: 得意先コードはどのように決めればよいですか?
- 桁数と区分の考え方を先に決め、後から追加しやすい余地を残しておくことが望まれます。複雑にしすぎると運用しにくくなるため、必要な区分に絞りましょう。既存の番号を引き継ぐ場合は、重複や欠番の整理もあわせて行います。
- Q4: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 対象業務の範囲や既存データの整理状況、連携の有無によって幅があります。標準機能で受注と請求から始める場合は短期間で立ち上げられる一方、在庫や会計との連携を伴う場合は数か月を要することもあります。期末を避けた計画を立てましょう。
まとめ
販売管理のデータベースは、得意先や商品といった土台の情報と、受注や売上といった日々の記録を分けて設計することが基本です。両者が結び付いていれば、二重入力を減らし、集計や分析も進めやすくなります。構築の前には、コードの付け方と既存データの整理、業務の流れとの整合を確認しておきましょう。対象業務と取引件数を整理したうえで、連携範囲や費用、サポートを比べて選ぶことをおすすめします。


