1.個人事業主の給与
最初に、個人事業主の給与について解説します。
個人事業主に給与はない
法人の場合、給与を経費として処理できますが、個人事業主は利益を報酬として費用計上できません。個人事業主は事業と生活が直結するため、利益に比例して自由に使えるお金が変動します。
利益をすべて生活費として使えますが、経費支払いのための運転資金として確保する必要があるでしょう。そのため、状況に応じた適切な資金管理が大切です。たとえば、運転資金に余裕がある場合は生活費に多めに充て、資金繰りが難しい場合は生活費を少なめにするなどです。
個人事業主の報酬は生活費として処理
個人事業主が収益を生活費に充てる場合、「事業主貸」と「事業主借」と呼ばれる勘定科目を使用します。たとえば、事業のお金100,000円を現金で生活費に使う場合は以下の仕訳です。
(事業主貸)100,000/(現金)100,000
また、生活費現金100,000円を事業に充てる仕訳は以下のとおり。
(現金)100,000/(事業主借)100,000
個人事業主は、事業と生活を分けて管理すべきです。しかし税金の計算上、生活と事業を一体化して考える必要があるため、以上のような記帳を行います。
2.個人事業主の経理業務
個人事業主の経理業務を解説します。
開業に伴う業務
個人事業の開業に伴い、税務署と都道府県に書類を提出します。開業の際に提出する書類は以下のとおりです。
- ・開廃業等届出書
- 事業を開始・廃止したときや事業用の事務所を新設・移転・増設・廃止したときに行う手続き。
開業から1ヶ月以内に行います。税務署に届け出ます。
- ・青色申告承認申請書
- 確定申告の青色申告の承認を受けるための手続き。青色申告をしようとする年の3月15日までに行います。税務署に届け出ます。
- ・事業開始等申告書
- 所轄の都道府県に事業の開始を申告する手続き。提出期限は地域によって異なるため、市役所・区役所で確認が必要です。
開業届は義務付けられてはいませんが、届け出ることで「屋号」が持てます。屋号で屋号名義の銀行口座を開設できたり、社会的信用を得ることが可能です。
日常的な業務
個人事業の日常的な経理業務には、毎日の現金管理や記帳などがあります。主な業務は以下のとおりです。
- 【日常的に行う業務】
-
- 【随時行う業務】
- ・請求書や納品書整理
発生時に会計ソフトへ入力します。日々の入力や通帳記帳が業務の最適化につながるので、面倒でも毎日行うことが大切です。
月次の業務
月次の業務は「貸借対照表」と「損益計算書」の作成などがあります。
- 【従業員雇用時】
貸借対照表は、現金や売掛金などの「資産」、借入金や買掛金などの「負債」から純利益・損失を算出します。一方、損益計算書は、売上などの「収益」、仕入れなどの「費用」から純利益・損失を算出します。これらの試算表の活用で経営状態を把握でき、的確な経営判断をサポートします。
年次の業務
年次の業務は、決算や確定申告などがあります。従業員を雇用している場合、年末調整は個人事業主の大切な義務です。個人事業主の事業年度は、1月1日~12月31日と決まっています。1年間の事業活動を集計することを「決算」と呼び、貸借対照表と損益計算書を作成。貸借対照表からは決算時の財政状況が、損益計算書からは利益もしくは損失の把握が可能です。
確定申告は、貸借対照表・損益計算書を青色決算申告書に転記。さらに確定申告書を作成し、税務署へ提出します。また従業員を雇用している場合、年末調整に関する諸手続きを行い、所得税の差額分を還付もしくは徴収しましょう。
専従者の給与は経費計上できる
親族や配偶者への給与は経費計上できませんが、専従者の給与は経費として計上できます。
専従者の給与を経費として計上するには、青色申告で「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することで経費計上が可能です。また、勘定科目は「専従者給与」となります。
届出書ある項目に沿って、記入をおこなわないと経費として計上出来ませんので、給与を支払いする場合は、届出書通りに支払いをおこなうようにしましょう。
経理業務まで手が回らない…という方は、経理アウトソーシングサービスもおすすめです。以下のページで詳しく解説していますのでぜひ参考にしてください。
3.個人事業主の経理作業の方法
個人事業主の経理作業の方法を解説します。
エクセルの利用
エクセルは使い慣れた方も多く、経理作業を行う手段として検討する方も多いでしょう。表計算ソフトであるため、関数を入力するだけで集計業務を簡単に行えます。入力して、集計を行い、合計値を確認業務するのみであればエクセルで十分でしょう。
しかし、経理業務には「連動性」が必要です。1つの帳簿に入力する項目をさまざまな帳簿に入力しなければいけません。エクセルには連動性がないため、複数のファイルを作成して入力する必要があります。エクセルでの経理業務は、想定以上に手間がかかるといえるでしょう。
会計ソフトの利用
会計ソフトを利用すると効率的に経理業務を行えます。エクセルのようにいくつものファイルに入力する必要がなく、仕訳入力をするだけで十分です。入力したデータは、総勘定元帳などのさまざまな帳簿に自動転記されます。
また、適切なフォーマットにデータが自動変換されるため、専門的知識は不要です。数字の入力ミスさえ気をつければ、自動で決算や確定申告に必要な書類が作成できます。
アウトソーシングの利用
経理業務は自社の経営状況の判断にも必要ですが、売上に直結するものではありません。一方で、煩雑な作業が多く、業務に時間を取られ、本業に専念できない個人事業主も多いのではないでしょうか。そこで、アウトソーシングの利用を検討がおすすめです。
正確性と作業の速さを兼ね備えた経理のプロが業務に臨むため、経理業務に時間を割くことなく本業に専念可能になります。確定申告の際もスムーズな手続きが実現します。
3つのポイントを理解してスムーズに経理作業を行おう!
個人事業主に給与はなく、生活費として処理します。開業の際は諸手続きを行い、決算に向けて必要な業務を行いましょう。
また、業務は日次・月次・年次業務の3つに分けられます。作業効率化のためにも、会計ソフトやアウトソーシングの利用をおすすめします。
個人事業主の給与・業務内容・業務方法のポイントを踏まえ、スムーズな作業を心がけましょう。