システム開発の外注と内製の違い
システム開発を進める際、まず検討すべきは「外注(アウトソーシング)」するか「内製(インハウス)」するかという点です。それぞれの特徴を正しく理解し、プロジェクトの性質に合わせて選択してください。
外注(アウトソーシング)とは
外注とは、システムの設計や開発、テストといった業務の一部または全部を、外部のシステム開発会社(SIer)やベンダー、フリーランスなどに委託することです。自社にエンジニアがいなくても高度なシステムを構築できるため、多くの日本企業で採用されています。
内製(インハウス)とは
内製とは、自社の社員(エンジニア)が中心となってシステム開発を行うことです。近年では、変化の激しいビジネス環境に対応するため、アジャイル開発などを取り入れて内製化を進める企業も増えています。
外注と内製の比較
システム開発は、「外注(アウトソーシング)」と「内製(インハウス)」で特徴や向いているケースが異なります。ここでは、専門性やスピード、コスト面などの観点から両者を比較します。
| 項目 | 外注(アウトソーシング) | 内製(インハウス) |
|---|---|---|
| 専門性・技術力 | 最新技術や特定分野の専門家を活用しやすい | 社内育成や採用が必要でコストがかかる |
| 開発スピード | リソース投入により短期間での開発が可能 | 人材確保に時間がかかる場合がある |
| ノウハウ蓄積 | 社内に知見が残りにくく、ブラックボックス化の懸念 | 社内にノウハウが蓄積され、継続的な改善が可能 |
| コスト | プロジェクト単位で一時的に高額になりやすい | 人件費などの固定費が継続的に発生 |
システム開発を外注するメリット
システム開発を外注することで、企業はコア業務への集中や技術力不足の解消など、多くの恩恵を受けられます。ここでは代表的な3つのメリットを解説します。
高度な専門技術とリソースを即座に活用できる
AIやブロックチェーン、IoTなど、日進月歩のIT技術をすべて社内でカバーするのは現実的ではありません。外注を利用すれば、その分野に精通したプロフェッショナルの技術力を即座に活用できます。必要な時期に必要なだけのリソースを確保できるため、プロジェクトの立ち上げもスムーズです。
社内リソースをコア業務に集中できる
システム開発には膨大な工数がかかります。これらをすべて社内で行おうとすると、本来注力すべき企画業務やマーケティング、経営戦略などのコア業務がおろそかになりかねません。開発実務を外注することで、社員はより付加価値の高い「上流工程」や「ビジネス活用」に専念できます。
開発品質とスケジュールの担保
実績のある開発会社は、品質管理(テスト体制)やプロジェクト管理のノウハウを持っています。社内で経験の浅いメンバーが手探りで進めるよりも、プロに任せることでバグの少ない高品質なシステムを、計画通りのスケジュールで完成させられる可能性が高まります。
システム開発を外注するデメリット・よくある失敗例
外注には多くのメリットがある一方で、構造的なリスクも存在します。ここで事前に把握しておくことで、トラブル回避の参考にしてください。
丸投げによるブラックボックス化のリスク
開発をすべて任せきりにしてしまうと、システムの仕様や設計思想が社内に残りません。「どのようなロジックで動いているか分からない」状態になると、将来的な改修やトラブル対応の際に、特定のベンダーに依存せざるを得なくなります。
認識のズレを招くコミュニケーション不足
「伝えたつもりだったが、でき上がったものが違った」というのは、システム開発の外注で最も多いトラブルの一つです。自社の業務フローや業界用語を外部のエンジニアが完全に理解しているとは限りません。密なコミュニケーションを取らなければ、意図しない仕様で実装されてしまうリスクがあります。
システム開発の外注でよくある失敗例
システム開発を外注する際は、進め方や契約内容次第で大きなトラブルにつながるケースも少なくありません。情報システム担当者が特に注意したい代表的な失敗例は、以下のとおりです。
- ●要件定義の不足:「いい感じに作ってください」と曖昧な指示を出した結果、使い物にならないシステムが納品された。
- ●追加費用の発生:開発途中で要望を追加・変更したため、当初の見積もりから費用が倍増した。
- ●運用開始後の放置:開発後の保守契約を明確にしていなかったため、バグが発生してもすぐに対応してもらえなかった。
システム開発を外注すべきケース・内製化すべきケース
すべての開発案件が外注に適しているわけではありません。ここでは、プロジェクトの特性を見極め、外注すべきか判断する基準を紹介します。
外注すべきケース
外注は、専門性やスピードを重視したいプロジェクトに向いています。自社のリソース状況や開発目的を踏まえて判断しましょう。
- ●社内に技術的知見がない場合:新しい技術スタックが必要な場合や、専門性が高い分野。
- ●一時的なリソース不足:繁忙期や特定プロジェクトのみ人手が足りない場合。
- ●要件が明確な定型システム:会計システムや勤怠管理など、ある程度仕様が決まっているもの。
- ●スピード優先の場合:採用や育成の時間を待てず、すぐに開発をスタートしたい場合。
内製化すべきケース(外注すべきでないケース)
一方で、事業の中核に関わるシステムや柔軟な改善が求められる案件は、内製化の方が適している場合があります。
- ●企業の競争力の源泉となるコアシステム:独自のアルゴリズムやノウハウが詰まったシステム。
- ●仕様変更が頻繁に発生する新規事業:ユーザーの反応を見ながら、毎日改善を繰り返すようなWebサービスやアプリ(アジャイル開発が必要なもの)。
- ●機密性が極めて高い情報扱う場合:外部にデータを渡すリスクが許容できない場合。
システム開発外注先の種類と特徴
一口に「外注先」といっても、その形態はさまざまです。プロジェクトの規模や予算に合わせて最適なパートナーを選ぶ必要があります。
受託開発会社(SIer・システムベンダー)
最も一般的な依頼先です。要件定義から運用保守までを一貫して請け負うことが多く、品質やマネジメント体制が整っています。
- ●メリット:信頼性が高い、大規模開発に対応可能、サポートが手厚い。
- ●デメリット:費用が高め、小回りが利きにくい場合がある。
フリーランス(個人事業主)
特定のスキルを持った個人のエンジニアに依頼するケースです。
- ●メリット:費用が安い、直接コミュニケーションが取れるため柔軟。
- ●デメリット:個人の能力に依存する、病気などでプロジェクトが止まるリスク、大規模開発には不向き。
オフショア開発
ベトナムやフィリピンなど、海外の開発会社に委託する形態です。
- ●メリット:国内開発に比べてコストを大幅に抑えられる(人件費が安い)、大量のリソースを確保しやすい。
- ●デメリット:言語や文化の壁によるコミュニケーションロス、品質管理の難易度が高い。
失敗しないシステム開発外注先の選び方
外注先の選定は、プロジェクトの成功を左右する重要なプロセスです。「安さ」だけで選ぶと失敗の元になります。以下の4つのポイントを重視して比較検討しましょう。
自社と同業種のシステム開発実績
技術力だけでなく、「業務知識」を持っているかが重要です。同業種の開発実績があれば、業界特有の商習慣や悩みどころを理解しているため、要件定義がスムーズに進みます。過去の事例やポートフォリオを確認しましょう。
提案力とコミュニケーション能力
いわれたとおりに作るだけの会社ではなく、「なぜそのシステムが必要なのか」「どうすればビジネス課題を解決できるか」を一緒に考えてくれる会社を選びましょう。提案段階でのレスポンスの速さや、専門用語を分かりやすく説明してくれるかも判断基準になります。
開発体制と担当者のスキル
「誰が」担当するのかを確認します。営業担当者の印象がよくても、実際のプロジェクトマネージャー(PM)やエンジニアのスキルが不足しているとプロジェクトは破綻します。PMの経験年数や、どのような体制で開発を進めるのかを具体的に聞きましょう。
保守・運用サポートの充実度
システムは作って終わりではありません。リリース後のバグ対応やサーバ監視、OSアップデートへの対応など、保守運用のメニューが明確かどうかも確認が必要です。障害発生時の対応範囲も事前に把握しましょう。
システム開発の外注先選びに迷っている方は、以下の記事も参考にしてください。受託開発会社の特徴や選定時のポイント、よくある疑問までまとめて解説しています。
システム開発外注費用の相場と契約形態
費用感や契約の仕組みを知らないと、見積もりの妥当性を判断できません。ここでは、一般的な相場と契約形態について解説します。
開発費用の相場(目安)
システム開発の外注費用は、開発規模や機能の複雑さ、体制によって大きく異なります。ここでは一般的な目安を紹介します。
- ●小規模(簡易なツール、LPなど):100万円~500万円程度
- ●中規模(業務システム、ECサイトなど):300万円~1,000万円程度
- ●大規模(基幹システム、ERP連携など):1,000万円以上~億単位
費用は、「人月単価(エンジニア1人が1ヶ月働く費用)× 期間 × 人数」で算出されるのが一般的です。外注先選定の判断材料として、見積もりの考え方や費用構造を詳しく把握しておきたい方は、以下の記事も参考にしてください。
契約形態の違い:請負契約と準委任契約
システム開発を外注する際は、契約形態の違いを理解しておくことも重要です。契約内容によって、責任範囲や進め方が大きく異なるため、開発スタイルに合った契約を選びましょう。
| 契約形態 | 請負契約 | 準委任契約 |
|---|---|---|
| 契約の責任範囲 | 成果物の完成に対して責任を負う | 業務の遂行に対して責任を負う |
| 報酬発生の条件 | 成果物が完成・納品されてはじめて報酬が発生 | 業務を遂行した対価として報酬が発生 |
| 契約上の特徴 | 仕様変更に弱く、変更時は追加費用が発生しやすい | 善管注意義務のもと、柔軟な仕様変更が可能 |
| 向いているケース | 仕様が明確なウォーターフォール型開発 | アジャイル型開発、要件定義フェーズ、保守運用 |
システム開発を外注する際の進め方と成功のコツ
いいパートナーを選んだだけでは不十分です。発注者側が主体的に関わることが、プロジェクト成功の絶対条件です。特に重要な「要件定義」を中心にコツを紹介します。
要件定義を開発会社任せにしない
要件定義は、どんなシステムを作るかを決める最も重要な工程です。ここで「プロだからお任せします」としてしまうと、自社の業務実態に合わないシステムができ上がります。「何を実現したいのか」「絶対に譲れない機能は何か」を社内で徹底的に議論し、RFP(提案依頼書)として明文化することが大切です。
スモールスタートを心がける
最初から完璧なシステムを目指して機能を盛り込みすぎると、開発期間が延び、費用も増大し、リスクが高まります。まずは必要最低限の機能でリリースし、使いながら徐々に機能を拡張していくアプローチが、失敗を防ぐ現代的な方法です。
定期的な定例会議で認識を合わせる
開発が始まったら、1~2週間に1回は定例会議を行いましょう。進捗の確認だけでなく、実際の画面イメージ(モックアップ)を見ながら仕様の認識合わせを行うことで、手戻りを最小限に抑えられます。
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まとめ
システム開発の外注は、自社のDXを加速させる強力な手段ですが、同時にリスクも伴います。成功のためには、以下の3点が特に重要です。
- ●外注の目的を明確にし、自社に合った外注先(受託会社、フリーランス、オフショアなど)を選ぶ。
- ●「安さ」だけでなく、「実績」「提案力」「コミュニケーション」を重視してパートナーを選定する。
- ●すべてを丸投げせず、発注者側もプロジェクトの一員として要件定義や進捗管理にコミットする。
「どの開発会社が自社に合っているか分からない」「一から探す時間がない」という場合は、専門のエージェントや紹介サービスを利用するのも一つの手です。自社の要件にマッチした信頼できるパートナーを見つけ、プロジェクトを成功に導きましょう。


