フルスクラッチ開発とは
システム開発の手法にはいくつかの種類がありますが、その中でも最も自由度が高いのがフルスクラッチ開発です。ここでは、その定義や他の開発手法との違いについて基本的な知識を整理します。
フルスクラッチ開発の定義
フルスクラッチ開発とは、既存のパッケージソフトやテンプレートを使用せず、システムやアプリケーションをゼロから設計・構築する開発手法です。「Scratch(最初から)」という言葉の通り、真っ白な状態からプログラムコードを書き上げるため、自社の業務フローや要件に完全に合致したシステムを構築できます。
近年では、効率化のために最初からフレームワーク(開発の土台となる枠組み)やライブラリを活用するのが一般的です。ただし、ビジネス要件にあわせて独自に設計・実装する点は変わらず、これらも広義のフルスクラッチ開発に含まれます。
パッケージ開発やSaaSとの違い
フルスクラッチ開発と比較される主な手法に「パッケージ開発」や「SaaS(Software as a Service)」があります。それぞれの違いを理解することは、適切な開発手法を選ぶ第一歩です。
- ■パッケージ開発
- すでに完成しているソフトウェア製品(パッケージ)を導入し、必要に応じて一部をカスタマイズする手法です。導入までの期間が短く、コストも抑えやすい反面、機能の自由度は制限されます。
- ■SaaS
- クラウド経由で提供されるソフトウェアを利用する形態です。開発不要ですぐに利用開始でき、初期費用も安価ですが、自社業務にあわせたカスタマイズはほとんどできません。業務フローをシステムにあわせる必要があります。
フルスクラッチ開発のメリット
なぜ多くの企業が、コストや時間がかかってもフルスクラッチ開発を選択するのでしょうか。それは、ビジネスの成長に直結する大きなメリットがあるからです。
業務に完全にフィットしたシステムが構築できる
最大のメリットは、何といっても自由度の高さです。既存のシステムに業務をあわせる必要がなく、自社独自の業務フローや商習慣に沿ったシステムを構築できます。使い勝手の悪い画面や不要な機能に悩まされにくく、現場の生産性向上につながります。
他システムとの連携が柔軟に行える
企業内には、会計システムや顧客管理システム、生産管理システムなど多くのシステムが存在します。パッケージ製品ではAPI制限により、システム連携が難しい場合もあります。
一方、フルスクラッチ開発であれば、既存の社内システムや外部サービスとの連携を前提とした設計が可能です。データの一元管理や業務の自動化を進めやすく、DX推進の基盤を構築できます。
長期的な資産となり、競争優位性を生む
独自に開発したシステムは、企業にとって重要な知的財産です。競合他社が利用できない独自のアルゴリズムや機能を提供することで、市場での差別化につながります。また、SaaSのようなサービス終了リスクがなく、自社の判断でメンテナンスを行いながら長期的に利用できます。
拡張性が高く、変更にも柔軟に対応できる
ビジネス環境は常に変化します。新規事業の立ち上げや法改正への対応においても、フルスクラッチ開発ならシステム改修や機能追加を柔軟に行えます。将来的な事業拡大を見据えてスケーラビリティを初期設計に組み込めば、システムの寿命を延ばすことも可能です。
フルスクラッチ開発のデメリット
メリットが多い一方で、フルスクラッチ開発には無視できないリスクやデメリットも存在します。これらを事前に把握し、対策を講じることがプロジェクト成功の鍵です。
初期費用が高額になりやすい
ゼロから設計・開発を行うため、エンジニアの人件費や設備費などのイニシャルコスト(初期費用)が大きくなります。パッケージ製品のように、開発費を多数のユーザーで按分するモデルではないため、すべてのコストを自社で負担する必要があります。開発規模によっては、数千万円から数億円単位の投資も珍しくありません。
開発期間が長期化する
フルスクラッチ開発では、要件定義をはじめ、基本設計・詳細設計、プログラミング、テストなど多くの工程を経る必要があります。そのため、リリースまでの期間(リードタイム)は長くなりがちです。一般的には半年から1年以上を要するケースも多く、急激な市場変化への対応スピードが課題となる場合があります。
プロジェクト管理と品質担保の難易度が高い
「何でもできる」という自由度の高さは、裏を返せば「決めるべきことが多い」ことを意味します。要件定義が曖昧なまま進むと、手戻りが発生したり、完成したものが意図と異なったりするリスクがあります。
また、既存製品のように動作が保証されているわけではありません。バグの発生リスクやセキュリティ対策など、品質管理に対する高い意識と体制が必要です。
フルスクラッチ開発が向いているケース・向いていないケース
すべてのシステム開発において、フルスクラッチが正解というわけではありません。自社の状況や目的に照らし合わせて判断しましょう。
向いているケース
以下のような要件がある場合は、フルスクラッチ開発が適しています。
- ■独自性の高いビジネスモデルである
- 既存のパッケージにはない独自のサービスや機能を提供したい場合。
- ■基幹システムのリプレイス
- 長年運用してきた複雑な自社ルールを維持しつつ、最新技術で刷新したい場合。
- ■他社との差別化を図りたい
- システムそのものがサービスのコアであり、競合優位性の源泉となる場合。
- ■長期的な運用を前提としている
- 5年、10年といったスパンで改修しながら使い続けたい場合。
向いていないケース
逆に、以下のような場合はパッケージやSaaSの利用を検討すべきです。
- ■一般的な業務である
- 経理、給与計算、一般的なチャットツールなど、差別化が不要な定型業務の場合。
- ■予算と期間が限られている
- 低コストで導入し、1~2か月以内に稼働させたい場合。
- ■「とりあえず」試してみたい
- 新規事業のテストマーケティングなど、失敗のリスクを最小限に抑えたい場合。
外部に開発を依頼する際には「受託開発」という契約形態が一般的です。受託開発の詳細は、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
フルスクラッチ開発の選び方
フルスクラッチ開発を成功させるための最大の要因は、「誰に頼むか」です。自社内での開発(内製)が難しい場合、外部のパートナー企業を選定することになりますが、その選定基準は非常に重要です。ここでは、失敗しない開発会社の選び方を5つの観点で解説します。
類似システムや同業界での開発実績
技術力があるだけでなく、「自社の業界や業務を理解しているか」が重要です。同業種での開発実績があれば、専門用語や特有の商習慣への理解が早く、要件定義がスムーズに進みます。さらに、類似システムの開発経験がある場合は、過去の知見を踏まえた提案が期待でき、開発リスクの抑制にもつながります。
技術力と提案力のバランス
「いわれた通りに作る」だけの会社ではなく、ビジネスの目的を達成するための「よりよい方法」を提案してくれる会社を選びましょう。最新の技術トレンド(クラウドネイティブやコンテナ技術、AI活用など)に対応できる技術力を持っていることは前提として、それをビジネス価値にどう結びつけるかを提案できるパートナーが理想です。
コミュニケーション体制とプロジェクト管理能力
フルスクラッチ開発は長期間にわたるプロジェクトです。そのため、担当者との相性やコミュニケーションの頻度、透明性が非常に重要です。以下の点を確認しましょう。
- ●プロジェクトマネージャー(PM)の経験値は十分か。
- ●進捗報告の頻度や方法は明確か(週次定例、チャットツールの活用など)。
- ●リスク発生時の報告フローが確立されているか。
コストと品質のバランス
見積もり金額の安さだけで選ぶのは危険です。極端に安い見積もりは、必要な工程が省かれていたり、経験の浅いエンジニアがアサインされていたりする可能性があります。「なぜその金額なのか」という根拠を確認し、品質担保のためのテスト工程やセキュリティ対策が十分に含まれているかを見極めましょう。
保守・運用サポートの充実度
システムは「作って終わり」ではありません。リリース後の運用保守体制が整っているかどうかも、重要な選定ポイントです。障害発生時の対応フローや、OS・ミドルウェアのアップデート対応、将来的な機能追加への対応可否などを事前に確認しておきましょう。開発会社と長く付き合える関係性を築けるかが、システムの寿命を左右します。
フルスクラッチ開発の進め方・プロセス
フルスクラッチ開発は、一般的に「ウォーターフォール型」または「アジャイル型」のプロセスで進行します。ここでは標準的な流れを解説します。
要件定義
「何を作るのか」「何を実現したいのか」を明確にする最も重要なフェーズです。現状の業務課題を洗い出し、システムに必要な機能や性能、セキュリティ要件などを定義します。ここでの詰めが甘いと、後の工程で大幅な手戻りが発生します。
設計(基本設計・詳細設計)
要件定義をもとに、システムの画面レイアウトやデータベース構造、処理の流れなどを設計します。ユーザーの目に触れる部分を決める「外部設計(基本設計)」と、プログラムの内部構造を決める「内部設計(詳細設計)」に分かれます。
開発(実装)・テスト
設計書に基づいて実際にプログラミングを行います。その後、単体テストや結合テスト、総合テストを行い、バグがないか、要件通りに動作するかを入念に確認します。
リリース・運用保守
完成したシステムを本番環境に移行し、利用を開始します。リリース後は、日々の監視やトラブル対応、機能改善などの運用保守フェーズに入ります。
フルスクラッチ開発の費用相場と予算計画
フルスクラッチ開発の費用は、開発規模や機能の複雑さによって大きく変動します。あくまで目安ですが、規模感ごとの相場は以下のとおりです。
- ■小規模システム(機能が限定的、利用人数が少ない):500万円~1,000万円
- 例:社内用の簡易な日報管理システム、特定の業務ツールなど
- ■中規模システム(複数機能の連携、Webサービス):1,000万円~5,000万円
- 例:顧客管理システム(CRM)、ECサイト、予約管理システムなど
- ■大規模システム(基幹システム、高度なセキュリティが必要):5,000万円~数億円
- 例:金融システム、全社統合ERP、大規模プラットフォームなど
これらの開発費に加え、サーバ費用などのインフラコストや、年間で開発費の10%~20%程度かかるとされる保守・運用費用も予算計画に含めておく必要があります。
フルスクラッチ開発を成功させるポイント
ここでは、プロジェクトを成功に導くための重要なポイントを整理します。
RFP(提案依頼書)を丁寧に作成する
RFPとは、発注側が開発会社に対して「どのようなシステムを作りたいか」を具体的に示した資料です。RFPの内容が具体的であればあるほど、開発会社からの提案の精度が上がり、見積もりのブレも少なくなります。曖昧な依頼は、後々のトラブルの元となります。
社内の協力体制(プロジェクトチーム)を構築する
システム開発はIT部門だけに任せるのではなく、実際にシステムを利用する現場部門や、決裁権を持つ経営層を巻き込んだプロジェクトチームを組成することが重要です。現場の声を吸い上げつつ、経営的な判断を迅速に行える体制を整えましょう。
スコープ(開発範囲)を適切に管理する
開発が進むにつれて「あれもこれも」と機能を追加したくなるものですが、機能の詰め込みすぎは納期の遅延や予算超過を招きます。「絶対にリリース時に必要な機能」と「後から追加すればよい機能」を明確に分け、優先順位をつけてスコープを管理しましょう。
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まとめ
フルスクラッチ開発は、自社の独自性を最大限に活かし、競争優位性を築くための有効な手段です。初期費用や開発期間といったハードルはあるものの、業務に適合したシステムによる生産性向上や高い拡張性は、長期的なビジネス成長を支える重要な資産となります。
プロジェクト成功の鍵を握るのは、自社の目的を明確にしたうえで、信頼できる開発パートナーを選定することです。この記事で紹介した選定ポイントを参考に、自社に最適な開発会社を見極め、フルスクラッチ開発を成功へとつなげてください。


