登壇者プロフィール
Sansan株式会社
Sansan Unit Product Marketing Manager
久永 航 氏
大学卒業後、IT業界で10年強、SI、海外プロダクトマーケティング、クラウドサービス立上げなどを経験した後、2009年Sansanへ入社。ソリューション営業、カスタマーサクセス 部長を経て、2015年にCIOとして社内のDXを推進。 2018年から新規DX事業立上げに従事するとともに、顧客のDX推進を支援。2021年6月より現職。
ユーソナー株式会社
営業本部 DXグループ 執行役員
湯浅 将史 氏
2005年、ユーソナー株式会社入社。 10年以上にわたり大手ITベンダーや人材会社をおもな顧客として担当し、多様なビジネス課題の解決に従事。2018年10月より、DXグループ執行役員をつとめる。
働き方の大きな変化で営業はどう変わったか?
ユーソナー株式会社 湯浅 将史 氏(以下、湯浅):
コロナ禍になり、営業の仕方が変わらなかった企業の方が少ないのではないかと思っています。実際にわれわれも営業の仕方が非常に大きく変わりました。弊社は展示会で大勢の方と名刺交換し、そこから精査をして受注につなげていくことが売上構成比率の結構な割合を占めていたのですが、2020年の2月の時点で展示会が全てキャンセルになってしまいました。
「さあ、どうしよう」ということで「やっぱりデータベースを活用して顧客開拓を進めないといけないよね」と、データベース会社のわれわれ自身も考え直す良いきっかけになりました。トライすることによって得られた成果や試してみてダメだったことなど、分かってきたこともあります。
今までのやり方ではダメなんだろうと思っていらっしゃる企業様もいらっしゃるのと思いますので、このセッションでは私どもが持っている事例などもご紹介したいと考えております。
Sansan株式会社 久永 航 氏(以下、久永):
弊社は、実は2020年2月に1万人規模のプライベートカンファレンスを予定していましたが、コロナ禍で開催できませんでした。
手法としてオンラインを使うこと自体は従来から取り組んでいましたが、コロナ禍当初はお客様の環境がまだ追いついていなかったということもありました。その後テレワークが浸透したためオンライン環境を整える企業が増え、一度、商談もイベントもオンライン化に急速に振れたのかなと思っています。
ただ、オンラインならではの難しさや伝わり辛さもありますので、これからはオンラインだけでなく、ハイブリッドな環境になるという前提でどう活用していくのかに向き合う必要があると思っております。
営業はどう対応していくのが良いのか?
湯浅:
まずは現状把握をしっかり行うことが必要だと思っています。弊社では2020年に現状を把握し直そうと動いた結果、成果が出ました。
ほかの企業様のお話を伺うと、社内で発言力の強い営業トップの方や実績が上がっているチームなどの、「ここが今狙い目なんだ」「ターゲットなんだ」という意見からターゲットが選定されるというケースが多かったんですね。
それはそれで実績につながっているので間違いではないと思うのですが、狙う先はそこだけではないはずなんですね。実は大多数の顧客の中には自分たちの市場と認識されていなくとも、「今、新規開拓で伸びている業界だよね」「伸びている企業群だよね」というところが結構あります。
市場としてどれくらい企業数や顧客数があるのか、その中で自社がどれくらい接点を持てていないのか。その辺りの現状把握をしたうえで、ターゲットに合わせたアプローチ方法やコンテンツ展開、セミナー企画などを行うと、まだまだ開拓できる伸びしろはあるのではないかと思っています。
久永:
今のお話は共感するところが多いですね。その裏側では数字で判断したりデータを活用したりしていくという軸が、非常に大切なのかなと思います。
実際に数字で分析したり、自社の中にある情報をきちんと精査したりすることによって、現状の把握もしっかりできますし、本来アプローチできるエリアがどこにあるかや、お客様の顕在化されていないニーズを把握していくこともできるのではないかと感じています。
データに基づいたアプローチが重要
湯浅:
経験や勘、度胸を否定しているわけではなく、法人営業などでの重要なポイントだと思っていますが、それだけでは抜けや漏れが出てしまうことがあります。若手社員など経験がないため勘が働かない方が新規受注を得る経験を積み重ねていく取り組みも大切です。
データに基づいたターゲット選定やアプローチが非常に重要で、さらに経験と勘、度胸が乗っかるとより成果が上がるのではないかと思っています。お客様からもそのような話を伺うことは多く、データの活用はプラスαの強い武器という感じですね。
コロナ禍でも新規受注件数を増やされた企業様の事例をご紹介します。工場をターゲットに製造派遣をされている企業様で、コロナ禍で工場は操業停止になったり、燃油高騰などで結構厳しい状況であったりしますが、大きく2つのことを意識して取り組まれました。
1点目は、日本国内の自社営業エリアにターゲットは何件あるのかを正確に把握するということです。弊社のデータベースを使い、母数を把握してすでに取引がある企業、接点はあるが取引ができていない企業、接点すら持てていない企業の3つに区分けする。そうすると、それぞれの営業ステータスごとに企業へのアプローチの仕方を変えることが可能になります。自社の市場と顧客数、アプローチができていないところを明確にすることで、次の一手が打てるようになります。
2点目は、効率を上げるということです。例えば、ある企業のA工場ですでにお取引いただいている場合、その企業に紐づくほかの工場も同じニーズがあるはずです。しかし、業界にテリトリー制が引かれていて地域ごとに営業担当が分けられているため、関東地方でお取引いただいている企業の関西の工場には、アプローチすらできていないというもったいない状況がありました。
ここを弊社のデータベースを使って可視化することで優先順位づけに取り組んでいただき、新規開拓の件数を1.5倍に伸ばすことができました。この事例は、ほかの企業様でも同じような再現ができるのではないかと思っています。
顧客データを整備してお客様獲得の機会ロスを減らす
久永:
私からは、取り組みによってコロナ禍における業績に差が出た事例をご紹介します。ある人材会社様2社がありまして、どちらも200名規模の企業様なのですが、コロナ禍の3年間で15万件の顧客データの差が生まれた事例です。
もともと両社ともSansanのユーザー様ですので、いわゆる紙の名刺をきちんとデータ化し、従来の顧客データベースを作り、顧客データ数を増やしていらっしゃいました。しかしコロナ禍で、どうしても紙の名刺の流通自体が減ってしまいました。
上手くいった1社様は、オンライン名刺などいろいろなデジタル接点からの情報を、顧客データとして上手に活用されていました。それを元に継続的にアプローチをした結果、非常に大きな成果を上げられました。
リードや見込み客を見つけることが大変な状況において、実は会えているお客様のことをきちんと把握できていないというのは、お客様獲得の機会をロスしてしまっていると思います。顧客データをきちんと整備し、お客様候補の情報をきちんと捕捉しておくことは非常に重要だと思っています。
湯浅:
データ化するってすごく重要ですよね。営業さんは現場でお客様と会っているはずなんです。ただ、商談しても案件化しなかった場合、企業情報や接点情報を登録しない企業様って意外と多いですよね。
そのときはそれでいいかもしれませんが、情報のリサイクルを考えた場合、案件に至らなかったとしても、企業の資産としてデータベースに貯めることで後々活用のタイミングが出てくるはずです。情報をいかにデータ化して企業の資産にしていくか、ということが重要なポイントだと考えています。
具体的に何から取り組むのが良いのか?
ーー具体的な施策について、両社のソリューションを紹介しながら教えていただきました。
データドリブン営業を実現
久永:
顧客データを持っていない企業様はないと思いますので、やはり営業として使えるプラットフォームや、今あるデータを上手く活用できる基盤を作るということがまずは非常に重要だと思っています。
弊社もその基盤作りに貢献していきたいと思っています。皆さまの中には、どちらかと言うと「Sansanって、名刺管理サービスの会社ですよね」と思っていただいている方も多いと思います。もちろん名刺管理自体を否定するものではないのですが、弊社では名刺管理の領域から営業DXの領域により幅を広げてお客様の顧客開拓に貢献できるように、2022年から大きくサービスなどを進化させました。
コロナ以前は、営業は、勘とは言いませんが経験など結構個人スキルに比重が置かれ、依存しているところが多かったように思います。しかし現在は、組織やチーム、営業シーンでどれだけデータを活用できるかということが営業強化につながる要素になってきています。
2021年に弊社で実施した「働き方に関する意識・実態調査」では、実際に企業データベースを営業活動に活用している企業様の中で増収増益になった企業様は、減収減益になった企業様の約2倍にのぼるという結果が出ています。データを活用していくこと自体が事業の成長につながっているんですね。
弊社では、データを基に個人や組織のアクションを実行することをデータドリブン営業と呼んでいます。この手法によって企業のやり方や営業の在り方を変えていく、変革していくことが営業DXであり、非常に重要なことだと考えています。
データドリブン営業を行っていく場合、企業を理解するための企業情報が必須です。ただ、企業情報を使って営業戦略を立てることはできるのですが、それだけでは行えるアクションが限定的になってしまいます。
そこで必要になるのが接点情報です。つまり過去にどれだけどういう人とお会いしているのかなど、ビジネス上の接点の履歴と顧客の最新情報のことです。データは生き物で、いずれは陳腐化してしまいますので情報をアップデートすることで、効率的な顧客アプローチが可能になります。企業情報に接点情報を加えることで営業戦略の立案から効率的なアプローチまで、データを基にしたさまざまなアクション、つまりデータドリブン営業が可能になります。
弊社の製品である「Sansan」は、データドリブン営業をキーワードに、営業DXを推進するサービスを大きく進化させました。ポイントだけご紹介しますと、企業情報として、100万社を超える日本の主要企業の情報、大手企業の役職者の情報、年間300万人を超える人事異動情報、さらには企業に関する最新ニュースをデータベースとして有しています。
あわせて接点情報では、名刺情報はもちろん、メール履歴をきちんと顧客情報として蓄積することもできます。いろいろなお問い合わせやセミナーへの来場など、さまざまなチャネルでのビジネス接点を蓄積して活用できるようなプラットフォームにSansanを進化させています。
営業DX自体にはいろいろな解釈があると思いますが、弊社の一つの解釈としてはデータを活用したデータドリブンな営業活動だと考えています。「効率化する」というよりは、「営業の成果を最大化させる」ことに資するものだと思っています。
企業様の顧客開拓や顧客単価を向上させるアップセル、BtoBマーケティングの戦略の一つであるABM(Account Based Marketing)など、さまざまな強化ポイントで貢献していきたいと考えております。
Sansanの公式サイトはこちら
https://jp.sansan.com/
法人データベースを活用してクレンジングする
湯浅:
商談をすると「うちの営業はちょっと入力が適当だからな」「うちのデータって言ってみればゴミなんだよね」とおっしゃる企業様がたまにいらっしゃいます。しかしゴミではないですよね。少なくとも何かしら営業接点を持っているデータですから、有効活用しない手は絶対に無いはずなんです。課題は、データ整備やクレンジングを行っていないため、使えるデータを活用できていないことではないかと思います。
もう1つ、お客様候補になりうる企業が全国に何社あるのかを可視化したうえで、接点を持てていないところに、相手先に合ったアプローチを行っていくことが重要と思っています。
弊社は685万社820万件という日本で最大のデータベースを自社で構築し、データのクレンジング、一元管理、営業やマーケティングに活用いただける企業属性の付与などを行っています。
われわれがご支援するのは、最終的には成果の最大化です。1つはお客様が保有されている情報を最大限に有効活用できるようにデータ整備する。もう1つは、弊社の持つ日本全国の法人を網羅したデータベースから、お客様がアプローチできていない抜け漏れをあぶり出す。この2つの軸を組み合わせて成果の最大化を図っていきます。
法人データベースは本社情報だけでなく、支店や工場などの情報も蓄積しており、何々グループといったように、資本系列での紐づけもできています。また、企業によっては社名変更や社名の表記を変更されている場合もあり、お客様によってはこれを正しく蓄積できていないケースもあります。弊社とお客様が持っているデータベースを照合させて、データをクレンジングしていくことも可能です。
弊社では、お客様が接点を持てていない重要アプローチ企業群をホワイトスペースと呼んでいるのですが、日本全国の企業を分母としてホワイトスペースをあぶり出し、可視化する。
そしてさまざまな角度でお客様を捉え、アプローチのフックを見つけていきます。例えば、BtoBの場合、決算スケジュールに合わせてサービスを導入することがあるため、決算月を情報として蓄積しています。あるいは弊社ではストーリーと呼んでいるのですが、「DXを推進している」「コロナ禍でも業績が伸びた」など、企業概要には出てこないような情報や企業識別コードのLBCコードといった情報も提供できます。
データベースを活用していくことで、それぞれの企業にはまだまだ伸びる幅があることを感じています。ご紹介したような取り組みを行った結果、企業様それぞれに新規開拓や営業工数の削減などの実績を出されており、弊社のホームページなどでいろいろと事例を公開しておりますので、ご興味があればぜひご覧いただければと思っています。
ユーソナーの公式サイトはこちら
https://usonar.co.jp/
おわりに
湯浅:
データは新規顧客開拓を進めるための燃料と位置づけられます。「データ・イズ・パワー」です。お客様の成果を最大化していくための課題解決を、ぜひ皆さまと一緒に進められればと思っております。ありがとうございます。
久永:
私どもは、営業DXを推進していくときのカギは、データドリブンの営業組織として取り組んでいくことだと考えております。データを有効活用した科学的なアプローチの取り組みを弊社としてもご支援したいと思っております。
ITトレンドEXPO次回もお楽しみに!
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