原価管理システムが導入される背景
活用場面を見る前に、どのような困りごとが起点になるのかを押さえておきましょう。課題が自社と重なるかどうかが、事例を参考にする際の目安になります。
原価の把握で生じやすい課題
表計算ソフトで集計している場合、材料費や外注費、作業時間の情報がそれぞれ別の担当者の手元にあることが少なくありません。集めて突き合わせる作業に時間がかかり、結果が出るころには次の案件が進んでいる状態になります。
その結果、進行中の案件で採算が悪化していても気づけません。見積の際も、過去の実績を参照できないため担当者の経験に頼ることになり、根拠を説明しにくくなります。どこに費用がかかっているかが見えないため、改善の手立ても定まりません。
システム化で変わる作業
原価管理システムでは、材料の使用、外注への発注、作業時間といった情報を発生の都度記録し、案件や製品ごとに集計します。締め処理を待たずに、現時点の状況を確認できる点が変わる部分です。
見積の段階で見込んだ原価と、実際に発生した原価を比べられる構成もあります。差が生じた要因を確認できれば、次の見積に反映できます。集計の手作業が減ることで、担当者は分析や改善の検討に時間を使いやすくなります。
業種から見た活用場面
事例で扱われる場面は、業種によって重点が異なります。三つに分けて確認します。
製造業での活用
製品ごとに材料費、労務費、経費を積み上げて原価を把握する場面です。部品表や生産の実績と結び付け、どの工程でどれだけ費用が発生したかを確認します。
受注ごとに仕様が異なる事業では、案件単位での集計が中心になります。同じ製品を繰り返し生産する事業では、標準として見込んだ原価と実際の差を確認する使い方が採られます。どちらの進め方が自社に合うかによって、必要な機能が変わります。
建設業や工事業での活用
工事の案件ごとに、材料費や外注費、現場の労務費を集計する場面です。工期が長く、複数の案件が並行して進むため、それぞれの進捗と費用の状況を分けて把握する必要があります。
進行中の案件で予算を超えそうな状況に早く気づけることが、この業種での主な利点として語られます。追加の工事や仕様変更が生じた際に、費用への影響を確認できる点も実務に関わります。現場からの日報や発注の情報をどう取り込むかが、運用の分かれ目になります。
プロジェクト型の事業での活用
システム開発や広告制作、コンサルティングのように、人の作業時間が費用の中心を占める事業での活用です。誰がどの案件にどれだけ時間を使ったかを記録し、案件ごとの採算を把握します。
勤怠管理や工数の入力と結び付ける構成が採られます。入力の粒度を細かくすると精度は上がりますが、現場の負担も増えます。どこまでの細かさが必要かを、活用する場面から逆算して決めることが求められます。
目的から見た活用場面
業種を問わず語られる目的もあります。二つに分けて確認します。
見積の精度を高める目的
過去の案件で実際にかかった原価を参照できれば、見積の根拠を示しやすくなります。担当者ごとに金額の考え方が異なる状態を、共通の基準に近づけられます。
ただし、参照できるのは過去の条件にもとづく実績です。材料の単価や外注の費用が変われば、そのまま当てはめることはできません。前提が変わる要素を確認しながら使う運用が求められます。差が生じた案件を振り返り、見積の考え方を見直す流れとあわせて機能します。
案件ごとの採算を把握する目的
どの案件で利益が出て、どこで想定を下回っているかを把握する目的です。全体の損益だけでは、個別の案件の状況が見えません。案件ごとに分けて集計することで、対応が必要な案件を早く見つけられます。
進行中に確認できる状態であれば、追加の費用が発生した段階で手を打つ判断もしやすくなります。集計の対象や区切り方は事業によって異なるため、どの単位で見たいかを先に整理しておきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)で原価管理の一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
導入事例を読み解く際の着眼点
公開されている事例をそのまま自社に当てはめると、想定と異なる結果になることがあります。読む際に確認したい点を二つ挙げます。
原価の集計方法と前提の確認
原価をどう捉えるかは事業によって異なります。材料費と外注費だけを対象にするのか、間接的な費用まで配賦するのかによって、算出される金額は変わります。
事例で採算が見えるようになったと語られていても、どの範囲を原価に含めているかは書かれていない場合があります。自社の経理方針と照らし合わせ、同じ考え方で集計しているかを確認しましょう。判断に迷う部分は、社内の経理担当や顧問の税理士に相談しながら進めることをおすすめします。
現場の入力負担と定着の工夫
原価の情報は、現場で発生した内容を記録しなければ集まりません。事例で効果が語られている場合、その裏では入力の仕組みや運用ルールが整えられていることが多くあります。
日報の様式を見直した、入力しやすい端末を用意した、入力の締め切りを決めたといった取り組みが同時に行われている場合もあります。何を変えた結果なのかを分けて読むと、自社で再現できる部分が見えてきます。入力が続かなければ集計も成り立たない点は、検討の段階から意識しておきましょう。
自社に当てはめる進め方
事例を踏まえて検討を進める際の手順を整理します。何をどの単位で見たいかを決めるところから始めましょう。
集計単位と原価要素の整理
最初に、どの単位で原価を把握したいのかを決めます。案件ごとなのか、製品ごとなのか、工程ごとなのかによって、必要な記録の細かさが変わります。
あわせて、何を原価に含めるのかを整理します。材料費、外注費、労務費、経費のどこまでを対象とし、間接費をどう扱うかを決めておきましょう。経理上の処理との整合も必要になるため、経理部門と現場の双方を交えて検討することが望まれます。
既存システムとの連携範囲
会計システム、販売管理システム、勤怠管理システムとの連携は、入力の負担を左右する要素です。発注や仕入の情報を手作業で移し替える運用では、件数が増えるほど手間が積み上がります。
連携の方式に加えて、どの項目をどちらの方向へ同期するかも確認しておきましょう。取り込みに失敗した際に気づける仕組みや、修正の手順があるかもあわせて確かめておくと安心です。判断が難しい部分は情報システム部門に相談しながら進めましょう。
費用とサポート範囲の確認
料金は、利用人数に応じた月額制、機能ごとのプラン分け、初期費用と月額の組み合わせなど、製品によって考え方が異なります。自社の集計方法にあわせた設定が別料金となる場合もあるため、総額で比べることが必要です。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、原価の集計方法の設計を支援してもらえるのかは製品ごとに差があります。自社の考え方を反映する作業が伴うため、この支援の有無が立ち上げの期間を左右します。
業種・目的別に選べる原価管理システム
業種や把握したい原価の種類にあわせて検討できるシステムを紹介します。
クラウドERP ZAC
- プロジェクト単位で仕入や経費などの複数原価を一元管理
- 配賦を含めた個別原価計算の自動化とプロジェクト利益の見える化
- 豊富なアウトプット機能とBIツール連携でデータ活用を最大化
株式会社オロが提供する「クラウドERP ZAC」は、プロジェクト単位の原価管理を扱うクラウド型のERPです。工数や経費をプロジェクトごとに集計する機能を備えており、システム開発や広告制作など案件ごとに採算を把握したい業種での利用が想定されています。見積から請求までの一連の流れにも対応します。
マネーフォワード クラウド個別原価
- 工数管理~原価計算~仕訳生成までワンストップで対応が可能に
- 複雑な配賦計算も配賦ロジックで柔軟に対応
- プロジェクト毎に、月別のコスト推移を可視化
株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワード クラウド個別原価」は、案件ごとの原価を把握できるクラウド型のシステムです。同社の会計サービスと連携させる構成に対応しており、原価の集計から会計処理までの手間を抑えやすくなります。従業員数や売上規模が一定以上の企業での導入を想定した機能がまとまっています。
アラジンオフィス
- 基本パッケージにカスタマイズ可能なイージーオーダーパッケージ
- 案件No.をキーにすべての状況が確認可能
- 案件単位で収支が出せ、会社の事業全体が見渡せる
株式会社アイルが提供する「アラジンオフィス」は、在庫管理や販売管理とあわせて原価の把握を進められる基幹業務システムです。仕入から販売までの一連の情報から原価を算出する構成になっており、業種にあわせた機能の組み合わせに対応しています。
MCFrameXA原価管理 (ビジネスエンジニアリング株式会社)
- 多通貨対応でグローバル原価を一元管理。
- 4種の原価計算で戦略的な原価管理を支援。
- 既存システム連携可、単独導入も柔軟に対応。
経営格差工事クラウド (アクティブシステム株式会社)
- 建設業の経営事項審査対策に特化。
- 専門家による個別コンサルティング
- 最新の建設業法改正に対応した情報を提供
原価管理システムに関するよくある質問
導入を検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: 会計システムがあれば別に導入する必要はありませんか?
- 会計システムは決算に向けた処理を主な目的とし、原価管理システムは案件や製品ごとの採算を把握することを主な目的とします。案件単位での確認や進行中の状況把握が必要であれば、別に検討する価値があります。現在のシステムで対応できる範囲を確認しましょう。
- Q2: 小規模な企業でも導入する意味はありますか?
- 案件数が少なくても、採算の把握に時間がかかっている場合は効果が見込めます。少人数向けのプランを用意する製品もあります。まずは現在の集計にかかっている時間と、把握したい単位を整理して検討するとよいでしょう。
- Q3: 現場の入力が続くか不安です。
- 入力の項目を絞る、既存の日報や勤怠の仕組みと結び付ける、入力しやすい端末を用意するといった工夫が有効です。集計した結果を現場にも共有し、何のための入力かが伝わる状態にしておくと定着しやすくなります。
- Q4: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 集計方法の設計や既存システムとの連携範囲によって幅があります。標準的な集計から始める場合は短期間で立ち上げられる一方、自社独自の配賦の考え方を反映する場合は数か月を要することもあります。段階的な計画を立てましょう。
まとめ
原価管理システムの導入事例では、製造業、建設業や工事業、プロジェクト型の事業といった業種ごとに使われ方が分かれます。見積の精度を高める目的と、案件ごとの採算を把握する目的は、業種を問わず語られます。事例を読む際は、何を原価に含めているかという前提と、現場の入力をどう定着させたかまで確認しましょう。集計単位と原価要素を整理したうえで、連携や費用、サポートを比べて選ぶことをおすすめします。

