SaaS型データベースの位置づけ
使い分けを見る前に、クラウドで提供されるデータベースにどのような種類があるかを押さえておきましょう。
クラウドで提供されるデータベースの種類
クラウド上のデータベースは、提供される範囲によって性格が分かれます。サーバや基盤の部分を借りて自分たちで構築する形、データベースの機能そのものが用意されていて設定して使う形、業務で使う画面まで含めて提供される形があります。
このうち、利用者が画面から設定して使える形をSaaS型と呼ぶことが一般的です。導入にあたって機器を用意する必要がなく、契約すればすぐに使い始められます。一方、細かな設定や独自の処理を組み込む余地は、基盤から構築する形に比べて限られます。
自社構築との違い
自社でサーバを用意してデータベースを構築する形では、設定を自由に決められ、データも社内に置けます。一方、機器の購入と更新、障害への対応、更新プログラムの適用を自社で担う必要があります。
SaaS型では、これらの作業を事業者が担います。人員を確保しにくい組織では負担を抑えやすい構成です。ただし、提供される機能の範囲内で運用することが前提になります。実現したい要件が範囲を超える場合は、別の形態を検討することになります。
提供形態から見た使い分け
SaaSとして提供されるものの中でも、担う範囲によって使い分けが分かれます。三つに整理して確認します。
業務の仕組みを自分たちで組み立てられる形
項目を定義して入力画面を作り、一覧や集計の表示まで設定できる形です。案件の管理、問い合わせの記録、備品の台帳といった用途で、表計算ソフトからの置き換えとして使われます。
プログラムを書かずに設定できる製品が多く、業務を担う部署が自分たちで作れる点が特徴です。一方、作った仕組みが増えると全体を把握しにくくなります。誰が何を作ったかを記録し、不要になったものを整理する運用をあわせて決めておきましょう。
データベースの機能だけを利用する形
画面や業務の処理は自社で用意し、データを保管する部分だけをクラウドで利用する形です。自社で開発したシステムの基盤として使われます。
機器の調達や保守の負担を抑えながら、処理の内容は自由に設計できます。ただし、接続の方法や設定には技術的な知識が求められます。開発を担える体制があるか、外部に委託するかを踏まえて検討しましょう。利用量に応じた課金となる場合が多く、費用の見込みも確認が必要です。
業務システムに組み込まれた形
販売管理や顧客管理といった業務システムの中に、データベースが含まれている形です。利用者がデータベースそのものを意識する場面は少なくなります。
業務に必要な項目や処理があらかじめ用意されているため、設計の手間がかかりません。一方、独自の項目を追加したい、別の切り口で集計したいといった要望への対応は製品によって差があります。どこまで拡張できるかを、導入前に確認しておきましょう。
導入によって変わる運用
クラウドで利用する形に変えると、日々の運用にどのような変化が生じるかを確認します。
構築と保守の負担
機器の調達、設置、初期設定にかかる期間を省けるため、着手から利用開始までを短くできます。障害への対応や更新プログラムの適用も事業者が担うため、担当者の作業は減ります。
一方、事業者側で障害が発生した際は復旧を待つことになります。過去の稼働状況が公開されているか、障害時の連絡手段が用意されているかを確認しておきましょう。定期的な保守作業で一時的に利用できない時間が生じる場合もあるため、通知の方法もあわせて確かめておくと安心です。
拡張と変更への対応
利用者や扱うデータが増えた際に、契約の変更で対応できる構成が多くあります。機器の増設を計画する必要がないため、事業の変化にあわせやすくなります。
ただし、増えた分だけ費用も上がります。利用量に応じた課金では、想定を超えた際に費用が膨らむ可能性があります。上限を設けられるか、使用量を確認できる画面があるかを確かめておきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でデータベースソフトの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
導入前に確認したい注意点
手軽に始められる分、後から課題として表面化する点もあります。二つ挙げます。
データの保管場所と持ち出し
データが事業者の環境に保管されるため、保管される国や地域、暗号化の方式、第三者による認証の取得状況を確認しておく必要があります。取引先との契約で保管場所に条件が付いている場合もあります。
あわせて、契約を終える際にデータを取り出せるかも確認しておきましょう。取り出せる形式と範囲、対応にかかる期間を事前に確かめておけば、後から選択肢を狭めずに済みます。判断に迷う部分は、社内の法務部門や情報システム部門に相談しながら進めましょう。
利用が広がった際の管理
各部署が自分たちで仕組みを作れる形では、いつの間にか数が増え、全体を把握できなくなることがあります。似た内容の仕組みが並存する、退職者が作ったものが放置されるといった状態が生じます。
作成の届け出や、定期的な棚卸しの仕組みを用意しておきましょう。扱う情報の重要度に応じて、作成できる範囲を制限する方法もあります。管理を厳しくしすぎると活用が進まないため、利便性との兼ね合いを見ながら設計することが望まれます。
SaaS型データベースの選び方
ここまでの内容を踏まえ、選ぶ際の確認事項を整理します。
用途とデータ量の整理
最初に、何に使うのかを具体化します。部署内での情報共有が中心なのか、全社の業務を支える基盤として使うのか、既存システムの土台にするのかによって、適する形態が変わります。
あわせて、扱うデータの件数と増加の見込みも整理しましょう。件数や容量に応じた料金体系を採る製品が多く、規模の想定は費用の試算に直結します。上限が設けられている場合は、その範囲で足りるかも確認が必要です。
権限管理と連携範囲
誰がどのデータを閲覧、編集できるかを細かく設定できるかを確認します。部署単位、項目単位でどこまで分けられるかは製品によって差があります。操作の履歴が残るかも、確認したい要素です。
既存のシステムとの連携も見ておきましょう。データを取り込む方法、外部から参照する方法が用意されているかによって、活用の幅が変わります。認証の仕組みと連携できれば、利用者の管理も一か所で行えます。
費用とサポート範囲の確認
料金は、利用人数に応じた月額制、扱うデータ量に応じた従量制、機能ごとのプラン分けなど、製品によって考え方が異なります。従量制の場合は、想定を超えた際の見込みも試算しておきましょう。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、設計の相談に応じてもらえるのかは製品ごとに差があります。基盤として使う場合は、障害時の連絡手段と対応時間帯も確認しておきましょう。
SaaS型で利用できるデータベース製品
提供形態や運用のしやすさにあわせて検討できる、データベース製品を紹介します。
キントーン
- AIとノーコードで業務アプリをシュシュッとつくれる
- 「アプリ」同士はデータで紐付けて連携できる
- プラグイン・連携サービスと組み合わせてデータ活用を促進
サイボウズ株式会社が提供する「キントーン」は、業務アプリケーションを作成しながらデータを蓄積できるSaaS型のプラットフォームです。プログラミングの知識がなくても入力フォームや一覧画面を作成できる構成になっており、部署ごとの業務データベースとして活用されています。
楽々Webデータベース
- 活エクセル|Excelを活用したままExcel業務の課題解決
- かんたん構築|ノーコードでだれもがIT人材に
- つなげて活用|貯めたデータも人もつなげて新たな価値を
住友電工情報システム株式会社が提供する「楽々Webデータベース」は、業務システムを内製できるノーコード開発基盤です。既存のデータベース設計の知識を活かしながら、自社の業務にあわせたシステムを構築できる構成になっています。SaaS型と自社運用型の双方に対応します。
Dr.Sum
- 導入実績7,700社超!顧客満足度No.1・サポート品質ランク★★★
- 散在したデータを一元化、10億件のデータも1秒台で◆高速集計◆
- 直感的な操作で誰でも簡単にデータ分析が可能
ウイングアーク1st株式会社が提供する「Dr.Sum」は、大量のデータを高速に集計できるデータベース製品です。複数のシステムに分かれたデータを取り込み、分析用の基盤として整える機能を備えており、SaaS型の分析基盤を構築したい企業で活用されています。
MicrosoftSQLServer (日本マイクロソフト株式会社)
- 地上・クラウド対応のAIエンタープライズDB
- LangChain等統合でアプリ開発加速
- Azure Arcでオンプレ・マルチクラウドのSQL Server統合管理
Cloud Datastore (グーグル・クラウド・ジャパン合同会社)
- 自動スケーリングと高可用性
- トランザクションと強力な整合性
- GCPの他サービスと容易に連携
SaaS型データベースに関するよくある質問
導入を検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: 自社構築とクラウドはどちらを選ぶべきですか?
- 運用と障害対応を担える体制があるか、実現したい要件が提供される機能の範囲に収まるかが判断の目安になります。データの保管場所に条件がある場合は、その要件も踏まえて検討しましょう。両方を用途で使い分ける構成も選べます。
- Q2: 表計算ソフトから切り替える目安はありますか?
- 同時に編集できず作業が待たされる、最新のファイルが分からなくなる、件数が増えて動作が重いといった状況が続く場合は検討の時期といえます。複数人で同じ情報を扱う場面が増えているかも判断の材料になります。
- Q3: 専門的な知識がなくても使えますか?
- 画面から設定して使える形であれば、プログラムを書かずに始められる製品もあります。ただし、項目の設計や権限の設定には業務の理解が必要です。試用の機会があれば、実際に使う担当者に操作してもらって確かめましょう。
- Q4: 契約を終える際にデータは取り出せますか?
- 取り出しに対応する製品が多くありますが、形式や範囲、対応にかかる期間には差があります。契約前に確認しておくと、後から選択肢を狭めずに済みます。定期的に手元へ複製を取得できるかも、あわせて確かめておきましょう。
まとめ
クラウドで提供されるデータベースには、業務の仕組みを自分たちで組み立てられる形、機能だけを利用する形、業務システムに組み込まれた形があります。いずれも構築と保守の負担を抑えやすい一方、提供される機能の範囲で運用する前提になります。データの保管場所と取り出しの可否、利用が広がった際の管理は事前に確認しておきましょう。用途とデータ量を整理したうえで、権限管理や連携範囲、費用を比べて選ぶことをおすすめします。


