給与計算業務の特徴
課題を見る前に、この業務がどのような性格を持つのかを押さえておきましょう。
給与計算で扱う情報の広がり
給与の計算には、基本となる支給額に加えて、勤怠の実績、各種の手当、控除される社会保険料や税金、通勤にかかる費用など、多くの情報が関わります。これらは人事、労務、経理といった複数の担当者が扱う情報にまたがります。
従業員ごとに条件が異なる項目も少なくありません。雇用形態、扶養の状況、加入している保険の種類によって計算の内容が変わります。情報が一か所に集まっていない状態では、確認と突き合わせに時間がかかります。誤りが見つかった場合も、どの情報にさかのぼって確認すべきかを特定しにくくなります。
締め日と支給日に伴う制約
給与計算には、締め日から支給日までという決まった期間があります。この間に集計、計算、確認、振込の手続きを終える必要があり、作業を後ろにずらすことができません。
そのため、担当者への負担が特定の時期に集中します。問題が見つかっても対処に使える時間が限られるため、確認の工程をどう組むかが実務上の課題になります。誤りが生じた場合、従業員への影響も直接的です。
導入前に表面化する課題
製品を選び、稼働に向けて準備を進める段階で生じやすい課題を三つ挙げます。
自社の給与規程との適合
手当の種類や計算の方法は企業ごとに異なります。長年の運用のなかで例外的な扱いが積み重なっている場合、標準的な設定では再現できない項目が出てきます。
すべてを再現しようとすると、設定の作り込みが増え、費用と期間が膨らみます。規程を見直して整理する部分と、どうしても必要な部分を分けて考えることが求められます。規程の変更を伴う場合は、労働条件に関わるため、社内の労務担当や社会保険労務士に確認しながら進めましょう。
既存データの移行と検証
従業員の基本情報、支給と控除の履歴、年間の累計額といったデータを移す作業が必要になります。年の途中で切り替える場合は、それまでの累計を正しく引き継げるかが重要な確認点です。
移行した後は、旧の仕組みと同じ結果になるかを確かめる工程が欠かせません。数か月分を並行して計算し、差異が生じた箇所を確認する進め方が一般的です。この検証には担当者の時間が必要になるため、通常業務との兼ね合いを踏まえた計画が求められます。
勤怠情報の取り込み
勤怠管理の仕組みから実績を取り込む構成では、項目の対応づけが課題になります。集計の単位や端数の扱いが両者で異なると、想定した結果になりません。
取り込みに失敗した際に気づける仕組みがあるか、修正の手順が用意されているかも確認が必要です。勤怠の締めが遅れると給与の計算も進められないため、両方の締めの時期をあわせて設計しておきましょう。
運用開始後に生じる課題
稼働した後に表面化しやすい課題を二つ挙げます。
制度改正への対応
社会保険や税に関わる制度は改正されることがあります。改正の内容が計算に反映されなければ、誤った金額を支給することになりかねません。
対応がどのような形で提供されるのか、反映の時期はいつごろか、追加費用が発生するのかを事前に確認しておきましょう。クラウド型では自動で反映される構成が多く、自社設置型では更新の作業が必要になる場合があります。具体的な要件の判断は、社会保険労務士や顧問の税理士に相談しながら進めることをおすすめします。
担当者への依存
給与計算は扱う情報が機微であるため、担当者が限られがちです。その結果、手順や例外的な処理の判断が特定の人の中にとどまり、休暇や異動の際に業務が滞る要因になります。
設定の内容と処理の手順を文書として残し、複数人が確認できる状態にしておくことが望まれます。閲覧できる範囲を役割に応じて分けられる製品であれば、必要な範囲だけを他の担当者に開くこともできます。引き継ぎの負担を抑える設計として検討しましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)で給与計算システムの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
課題への向き合い方
ここまでの課題に対して、どのような進め方が考えられるかを整理します。
業務の見直しと標準化
現在の手順をそのまま移すのではなく、この機会に整理する視野を持つと、設定の作り込みを抑えられます。例外的な手当や計算方法が、今も必要かを確認する作業です。
見直しには、規程の変更を伴う場合があります。従業員への影響が生じる部分は、労務の観点から慎重な検討が必要です。何を残し何を整理するかを、関係する部署と合意したうえで進めましょう。
確認の工程と検証の体制
計算した結果をそのまま支給せず、確認する工程を組み込むことが基本になります。前月との差が大きい従業員を抽出する、支給と控除の合計を突き合わせるといった方法があります。
確認を担当者一人が行う体制では、見落としに気づけません。複数人で分担するか、確認の観点を手順として明示しておきましょう。誤りが見つかった際の訂正の手順と、従業員への連絡の方法も決めておくことが望まれます。
給与計算システムの選び方
ここまでの内容を踏まえ、製品を選ぶ際の確認事項を整理します。
従業員数と雇用形態の整理
最初に、対象となる従業員数と雇用形態の種類を整理します。正社員のみか、契約社員やパート、アルバイトを含むか、日給や時給の計算が必要かによって、求められる機能が変わります。
拠点が複数ある場合や、勤務形態が部署によって異なる場合は、その扱いも確認しておきましょう。人数に応じた料金体系を採る製品が多く、規模の想定は費用の試算に直結します。
既存システムとの連携範囲
勤怠管理システムや人事システム、会計システムとの連携は、二重入力を避けるために確認しておきたい要素です。従業員情報をそれぞれに登録し直す運用では、異動のたびに作業が発生します。
連携の方式に加えて、どの項目をどちらの方向へ同期するかも確認しておきましょう。取り込みに失敗した際に気づける仕組みや、修正の手順があるかもあわせて確かめておくと安心です。判断が難しい部分は情報システム部門に相談しながら進めましょう。
費用とサポート範囲の確認
料金は、従業員数に応じた月額制、機能ごとのプラン分け、初期費用と保守費の組み合わせなど、製品によって考え方が異なります。制度改正への対応が保守契約に含まれるかも、総額に関わる部分です。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、初期設定やデータ移行、並行稼働の検証を支援してもらえるのかは製品ごとに差があります。年末調整の時期は問い合わせが集中しやすいため、その時期の対応体制も確認しておきましょう。
課題の解消に役立つ給与計算システム
導入前後で生じやすい課題にあわせて検討できるシステムを紹介します。
マネーフォワード クラウド給与
- とにかく使いやすい画面設計が好評です
- web明細にも対応。スマートフォンでも給与明細の確認が可能です
- テレワーク・在宅勤務も簡単に実現
株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワード クラウド給与」は、クラウド型の給与計算システムです。勤怠システムとの連携に対応しており、勤怠データを取り込んでからの計算作業にかかる時間を抑えやすくなります。法改正への対応もあわせて行われる構成です。
SmartHR
- 従業員データと連携し、「データ入力レス」な給与計算を実現
- 給与計算の情報をもとに給与明細や源泉徴収票を簡単に作成
- 労務管理からタレントマネジメントまで人事・労務を効率化
株式会社SmartHRが提供する「SmartHR」は、人事労務手続きと給与計算をあわせて扱えるクラウド型のシステムです。従業員自身が情報を入力する運用に対応しており、給与計算のもとになる情報収集にかかる手間を抑えられます。労務手続きとの連携が特徴です。
ジョブカン給与計算
- かんたん勤怠連携・計測自動化で作業時間を大幅に削減!
- Web給与/賞与明細・源泉徴収票の自動交付!
- 年末調整もジョブカンで完結!計算後の帳票作成まで完備!
株式会社DONUTSが提供する「ジョブカン給与計算」は、クラウド型の給与計算システムです。同社が提供する勤怠管理サービスとの連携に対応しており、複数のサービスを個別に導入する場合に生じやすいデータ連携の課題を抑えやすくなっています。
TimePro-NX (アマノ株式会社)
- 就業・給与・人事・セキュリティを一元管理
- 労務リスクを自動検知・アラート表示
- 必要なライセンスを選び、無駄な費用を抑制。
円簿給与 (株式会社円簿インターネットサービス)
- 給与計算と年末調整が無料
- 法改正や税制、保険料率の変更に自動で対応
- 給与明細の共有と印刷・配布の手間削減
給与計算システムに関するよくある質問
導入を検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: 切り替えの時期はいつが適していますか?
- 年度や年の区切りにあわせる進め方が採られることが多くあります。年の途中で切り替える場合は、それまでの累計額を正しく引き継ぐ必要があります。年末調整の時期を避け、並行して検証する期間を確保できる計画を立てましょう。
- Q2: 自社の手当が再現できるか不安です。
- 手当の一覧と計算の方法を整理したうえで、実現の可否をベンダーに確認しましょう。標準の設定で対応できない項目については、規程の見直しを含めて検討する余地があります。労働条件に関わる部分は労務の担当と相談しながら進めましょう。
- Q3: 制度改正にはどう対応されますか?
- クラウド型では提供元が反映する構成が多く、自社設置型では更新の作業が必要になる場合があります。反映の時期と追加費用の有無を事前に確認しておきましょう。適用の判断が必要な部分は、社会保険労務士や税理士に相談することをおすすめします。
- Q4: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 従業員数や手当の種類、既存データの移行量、連携の範囲によって幅があります。並行して計算し結果を検証する期間も見込む必要があります。繁忙期を避け、余裕を持った計画を立てることが望まれます。
まとめ
給与計算システムでは、自社の規程との適合、既存データの移行と検証、勤怠情報の取り込みが導入前の課題として表面化しやすくなります。運用が始まった後は、制度改正への対応と担当者への依存が続く課題です。業務を見直して整理する視野を持ち、確認の工程を複数人で担える体制にしておくことが対処の基本になります。従業員数と雇用形態を整理したうえで、連携範囲やサポートを比べて選びましょう。

