給与明細とは?役割や基本的な見方
給与明細とは、給与の支払額や控除額がまとめて記載された通知書のことです。支払われる給与や手当のほかに、健康保険料や所得税など控除の金額と勤怠情報が記載されています。
給与の金額と、実際に支給される金額とでは上記に挙げた控除金額などの関係で変動があります。控除金額なども詳細に記載することで、企業と従業員の間に発生する認識のミスマッチを防止できるのが給与明細の効果です。
所得税法において、企業が従業員に対する給与明細の発行は、義務付けられていることがわかります。そのため、給与明細に対する認識が低いと認識している企業は、本記事の内容をふまえたうえで改めて重要性について再認識しましょう。
参考:労働条件・職場環境に関するルール|厚生労働省
給与明細の基本項目とは?
給与明細の項目は、以下3つに分けられています。手元の給与明細と見比べてみましょう。
参考:テーマ①給与明細から労働条件について考える|厚生労働省
1.支給
支給の項目は「額面」とも呼ばれ、基本給とそのほかの割増賃金や手当などが、企業から支払われる金額として記載されています。
- ●基本給
- 年齢や勤続年数に応じた給与の基本となる賃金(基本給を基準としてボーナスの金額も算出される)
- ●残業代
- 時間外労働・休日出勤などで支給される賃金
- ●手当
- 役職手当・家族手当・住宅手当・通勤手当・扶養手当・出張手当など
2.控除
控除は、給与から差し引かれる保険料や税金のことです。具体的には以下のものが挙げられます。なお、控除されている内容は企業側で計算された金額になっています。
- ●健康保険料
- ●介護保険料(40歳以上)
- ●雇用保険料
- ●厚生年金保険料
- ●所得税
- ●住民税
また健康保険の保険料は、全国健康保険協会の都道府県ごとの保険料額表で確認できます。厚生年金保険料は、日本年金機構の厚生年金保険料額表で確認してください。雇用保険料に関しては、厚生労働省の雇用保険料率を確認してみましょう。
参考:令和3年度の雇用保険料率について|厚生労働省
3.勤怠
勤怠に記載されている項目には、以下のものがあります。
- ●勤務日数
- ●欠勤日数
- ●残業時間
- ●有給消化日数
- ●有給残日数
上記の中で給与に大きく関係してくるのが「残業時間」です。時間外手当の支給額と残業時間は、必ず確認しておきましょう。
「控除」の重要項目とは
先述した給与明細の基本項目「支給」「控除」「勤怠」の中で、とくに注目すべきは「控除」の項目です。手取り金額が少ないと思ったら控除額が高かった、ということは少なくありません。何がどのくらい控除されているか、必ず理解しておきましょう。
健康保険料
健康保険料とは、病気・ケガ・死亡・出産などに際して支給される保険のことです。入社すると、必ず自社が加入している健康保険組合に入らなければなりません。自社の健康保険組合に入る場合には、保険料は企業と折半して払うことになります。この個人負担分が、給与明細に書かれてある健康保険料に該当します。
ただし、企業によっては健康保険組合に入っていない場合もあるでしょう。その場合には国民健康保険に加入することになります。
所得税
所得税は所得に応じて国に納める税金のことで、1年間の収入額によって計算され納付額が決定されます。ただし会社勤務のサラリーマンの場合には、給料から概算で計算して毎月給与支払者が納めることになっています。
所得税における源泉徴収とは?
源泉徴収とは、企業が給料を支払うときにその額に応じて所得税を天引きすることです。本来であれば1年間の収入によって計算されるので、概算額との差額があることになります。この過不足は、年末に最終的に調整されます。
住民税
住民税とは、自身が居住する地域の自治体に納める税金です。前年度の所得をもとにして金額が決まります。そのため、社会人1年目は住民税を支払う義務はありません。住民税の金額は各自治体のホームページに計算方法の説明があります。または、自治体の税務処理担当部署に問い合わせてみてもよいでしょう。
その他の控除
企業によっては、積立金・組合費・財形貯蓄などが控除されます。また雇用保険料・厚生年金保険料・介護保険料に関しては、企業と分担して支払う金額です。
以下の記事では、経理担当が知っておくべき、給与の計算方法についてより詳しく解説しているので、参考にしてください。
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給与明細を見るときに注意すべき点とは?
給与明細が発行されたら、最低限確認すべき項目はどこでしょうか。以下に3つのポイントをまとめました。
総支給額や課税対象額は適正か
給与明細の支給額に対して、基本給・時間外手当・役職手当等の金額が正しく反映されているかチェックしましょう。また通勤手当は課税対象外です。課税対象となっていないことを確認してください。
出勤日数や残業時間などに問題はないか
勤務実績をもとに、出勤日数や残業時間が正しく計算されているかをチェックしましょう。残業時間に関しては、給与で大きな部分を占めるケースもあります。休日出勤をした実績や、深夜の残業の実績が記載されているか確認してください。
また、自分自身で勤務実績を付けておき、給与明細が発行された際に照らし合わせてみてもよいでしょう。万が一記録していたものと違いがある場合には、早急に問い合わせる必要があります。
給与明細は最低でも2年間は保管しておこう
勤務実績や給与額を確認するためにも、給与明細はすべて保管することが望ましいでしょう。破棄する場合も、最低でも過去2年分の給与明細は保管しておきましょう。失業給付を確認するためや、未払いの給与を請求できるのが2年間であることが理由です。
さらに確定申告を行う場合は、過去5年分の源泉徴収票の提示を求められるほか、住宅ローンの申請などでも必要となる場合があります。
給与明細電子化システムを導入していれば紙の保管が不要であり、かつ過去分もすぐに閲覧できるため非常に便利です。
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給与明細の見方を理解し確認する習慣をつけよう
給与明細とは、大きくわけて「支給」「控除」「勤怠」の3項目を記載し、支払われる賃金の根拠となる通知書です。各項目が示す内容を理解し、勤怠実績や課税対象額に注意して作成されているかを確認するひつようがあります。
給与明細を作成する場合は、システムによる作成がミス防止や業務効率化などの点で便利です。システムを詳しく知りたい方は、以下より資料請求をして比較検討してみましょう。