給与計算ソフト導入前の課題(少人数・中小企業向け)
少人数企業や中小企業では、専任の給与担当者がいないケースが多く、経理や総務担当者が兼任することが一般的です。そのため、以下のような課題が発生しやすくなります。
| 課題 | 主な問題点 |
|---|---|
| 手作業によるミス | Excelや紙ベースの計算で入力・計算ミスが発生しやすく、確認作業の負担も増大する。 |
| 法改正対応の負担 | 頻繁な労働法改正に迅速な対応が必要で、知識不足による法令違反リスクがある。 |
| 勤怠管理との連携不足 | 別システムや手作業での管理が非効率となり、再入力の手間が発生しやすい。 |
| 専門知識の不足 | 総務や経理担当が兼任するため、専門知識が不足しやすく、担当者不在時に業務が滞る可能性がある。 |
| 社会保険や税金の手続き | 年末調整や社会保険手続きが複雑で、繁忙期に業務負担が増大しやすい。 |
| データ管理とセキュリティ | 機密情報の適切な管理が難しく、情報漏えいのリスクが高い。 |
給与計算ソフトとは
給与計算ソフトとは、従業員の勤怠データや雇用条件をもとに、給与額・社会保険料・税金などを自動計算するシステムです。従来はExcelや手作業で行っていた計算や集計を、専用のシステム上で一元管理できます。
ソフトには、給与計算に必要な項目の設定や社会保険料・税金の計算ロジックがあらかじめ備わっているため、誰でも同じ手順で処理を行えるのが特徴です。近年はクラウド型が主流となり、インストール不要でブラウザから利用できるタイプも増えています。
特に少人数企業や中小企業では、経理・総務担当が兼任で給与計算を行うケースも多いため、こうしたソフトを活用することで限られた人員でも標準化された手順で正確に処理できるようになります。
給与計算ソフトの主な機能
給与計算ソフトには主に以下のような機能が備わっています。
- ■給与・賞与の自動計算
- 基本給や各種手当、残業代、控除額などを自動計算し、毎月の給与・賞与計算にかかる時間と人的ミスを削減します。
- ■一括振込データの作成
- 金融機関向けの振込データを自動作成し、インターネットバンキングなどを使った一括振込をスムーズに行えます。
- ■給与明細書の発行・Web配信
- 紙の給与明細書だけでなく、従業員がPCやスマートフォンから閲覧できるWeb明細にも対応し、印刷・封入作業を削減します。
- ■勤怠データとの連携
- 勤怠管理システムやタイムカードのデータを取り込むことで、出勤日数・残業時間などを自動反映し、手入力の手間をなくします。
- ■社会保険・税金の自動計算・法改正対応
- 健康保険料や厚生年金保険料、所得税・住民税などの計算を自動化し、法改正にも対応することで、常に最新の料率で計算できます。
- ■年末調整・法定調書の作成
- 従業員から収集した扶養控除等申告書などの情報をもとに年末調整を行い、源泉徴収票や法定調書を自動作成できます。
- ■マイナンバー・従業員情報の一元管理
- 従業員の基本情報やマイナンバー、雇用形態、支給・控除条件などを一元管理し、必要な帳票類への転記を自動化します。
給与計算ソフト導入メリット(少人数・中小企業向け)
給与計算ソフトの導入により、少人数企業や中小企業でも給与業務を効率化し、人的ミスを削減できます。少人数・中小企業が給与計算ソフトを活用することで得られる主なメリットは以下のとおりです。
- ■業務効率化による生産性向上
- 勤怠データの自動取り込みや社会保険料・税金の自動計算が可能となり、担当者が手作業で行う煩雑な作業を削減。専任の給与担当がいない少人数企業でも、スムーズに業務を進められる。
- ■計算ミスや法令違反のリスク軽減
- 自動計算機能により人的ミスを防止し、給与の過不足支給や計算ミスによる従業員の不満やトラブルを回避。特に、総務や経理が給与計算を兼任している中小企業では、負担軽減に大きく貢献する。
- ■法改正対応の負担を軽減
- 最新の法改正に自動で対応する機能が備わっているため、専門の労務担当者がいない企業でも法令違反のリスクを回避しながら運用可能。税率変更や社会保険料の改定にも自動対応し、担当者の手間を大幅に削減できる。
- ■人事・労務管理の最適化
- 給与計算ソフトは、勤怠管理システムや人事データと連携可能なものも多く、給与計算と同時に労務管理全体の効率化が可能。紙ベースの管理から脱却し、ペーパーレス化にも貢献。
より詳しいメリットは以下の記事で解説しています。
給与計算ソフトの選び方(少人数・中小企業向け)
給与計算ソフトを選ぶ際、少人数企業や中小企業が特に着目すべき3つのポイントを解説します。
会社の規模や従業員数に適しているか
給与計算ソフトは、自社の規模や従業員数に適した機能や料金プランを備えているかを確認することが重要です。例えば、無料プランや少人数向けの低価格プランがある給与計算ソフトは、従業員数が少ない企業やスタートアップに適しています。5名まで無料、10名まで定額といった条件が設定されていることが多いため、自社の規模と合致するか事前に確認しましょう。
一方、従業員数が増えて給与体系が複雑になっている企業では、勤怠管理や人事労務システムと連携できるソフトを選ぶと、運用効率が高まります。将来的な拡張性や上位プランへの移行のしやすさもチェックポイントです。
クラウド型かオンプレミス型か
給与計算ソフトにはクラウド型とオンプレミス型の2種類があり、それぞれの特性を理解して選ぶことが重要です。
クラウド型は、インターネット環境があればどこでもアクセス可能で、初期費用が抑えられるため少人数企業に最適です。法改正対応が自動で行われ、給与計算の知識が少ない担当者でも安心して運用できます。
一方、オンプレミス型は自社サーバで運用するため、セキュリティ性が高く、独自のカスタマイズが可能です。ただし、導入コストが高く、システムの保守管理が必要になるため、情報管理を重視する中小企業に向いています。
セキュリティ対策や法改正への対応ができるか
給与情報は、企業のなかで最も機密性の高いデータの一つであり、適切なセキュリティ対策が必須です。
特に少人数企業では、専任のIT担当者がいないことが多いため、セキュリティ機能が充実したソフトを選ぶことが重要です。データの暗号化、アクセス権限管理、不正アクセス防止機能が備わっているかを確認しましょう。
また、給与計算は法改正の影響を受けやすいため、自動アップデート機能があるソフトを選ぶことで、法令違反のリスクを軽減できます。
企業規模に関係なく利用できる給与計算ソフトを比較したい方は、以下の一覧をご活用ください。
【比較表】少人数・中小企業向け給与計算ソフトと無料プラン情報
小規模企業や中小企業におすすめの給与計算ソフトを比較表にまとめました。レビュー評価や搭載機能に加え、無料プランや無料トライアルの有無についても一目でわかります。
ITトレンド2025年上半期ランキング「給与計算システム」の上位製品を、左から順に掲載しています。
▶おすすめの給与計算ソフト【少人数企業向け】
ここからは、少人数企業におすすめの製品を厳選して紹介します。少人数企業では、操作のシンプルさ、コストの低さ、業務効率化が重要なポイントです。
ジョブカン給与計算
株式会社DONUTSが提供する「ジョブカン給与計算」は、複雑な給与計算を自動化し、法改正にも自動対応できるクラウドサービスです。勤怠情報や各種手当を柔軟に設定でき、複数の給与規定にも対応可能。従業員ごとの通知メモ機能で管理も効率化できます。5名まで利用できる無料プランも用意されています。
参考価格:ベンダーへお問い合わせください ※無料プランあり
KING OF TIME 給与
株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供する「KING OF TIME 給与」は、低コストで利用できる給与計算システムです。勤怠管理システム「KING OF TIME」との連携機能が充実しており、勤怠データを自動で取り込むことで給与計算の手間を削減できます。勤怠管理と給与計算を一元化して、業務を効率化したい少人数企業におすすめです。
参考価格:初期費用無料、月額300円/ユーザー
フリーウェイ給与計算 (株式会社フリーウェイジャパン)
株式会社フリーウェイジャパン提供の「フリーウェイ給与計算」は、無料で使えるクラウド型給与計算ソフトです。低コストでありながら、給与・賞与の自動計算や社会保険料・税金の自動計算、年末調整対応などの基本的な給与計算機能を搭載。少人数企業のコスト削減と業務効率化に最適です。
参考価格:月額1,980円 ※無料プランあり
▶おすすめの給与計算ソフト【中小企業向け】
次に、中小企業に適した給与計算ソフトを厳選して紹介します。中小企業では、成長性への対応、複雑な人事労務管理、法改正対応のしやすさが重要です。
人事労務freee
フリー株式会社が提供する「人事労務freee」は、給与計算・勤怠管理・社会保険手続きを一元管理できるクラウドサービスです。労務管理全般を効率化でき、年末調整や入退社手続きの自動化機能も充実しています。直感的な操作性で、ITに詳しくない担当者でもスムーズに導入可能です。
参考価格:ベンダーへお問い合わせください
ジンジャー給与
jinjer株式会社の「ジンジャー給与」は、給与計算だけでなく、勤怠管理や人事管理システムとスムーズに連携できるクラウド型ソフトです。法改正にも自動対応し、担当者の負担を軽減。導入しやすく、コストを抑えながら給与業務を効率化したい少人数企業に適しています。
参考価格:月額500円~/ユーザー
マネーフォワード クラウド給与
株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワード クラウド給与」は、成長企業向けのクラウド型ERPシステムです。勤怠管理や会計ソフトとスムーズに連携し、給与計算を効率化できます。また、法改正対応が自動で行われるため、担当者の負担が軽減。従業員数が増えても柔軟に対応でき、拡大を目指す中小企業に最適です。
参考価格:月額300円/ユーザー(従業員数31名以上)
MJSLINK DX 給与大将
株式会社ミロク情報サービスが提供する「MJSLINK DX 給与大将」は、中堅・中小企業向けの給与計算クラウドシステムです。給与・賞与計算に加え、昇給差額や一時金計算など効率化機能を搭載。勤怠管理や年末調整と連携しDXを推進します。人材情報の活用や法改正対応も可能で、人事・総務業務を幅広く支援します。
参考価格:ベンダーへお問い合わせください
PCAクラウド 給与
ピー・シー・エー株式会社が提供する「PCAクラウド 給与」は、高度なセキュリティと最新の法改正にも迅速に対応できる給与計算ソフトです。従業員や給与関連の重要データは、自社内バックアップに加えデータセンターにも保管されるため、セキュリティを重視する企業に最適です。
参考価格:月額17,820円~/ユーザー(税込み)
レコル
中央システム株式会社が提供する「レコル」は、勤怠管理・給与計算・Web給与明細・年末調整を一元化できるクラウドサービスです。直感的に操作でき、従業員マスタの共有で従業員情報の二重管理を防止。自動計算や法改正対応の無償アップデートにより担当者の負担を軽減し、月額ひとり300円から利用できる導入しやすい価格が魅力です。
参考価格:月額300円/ユーザー
複数の製品を比較検討したい場合には、一括資料請求が便利です。資料請求した製品は、価格・機能・特徴・口コミをまとめた比較表をエクセルで作成できます。稟議資料や社内検討時の資料としてぜひ活用ください。
給与計算ソフト導入時の注意点(少人数・中小企業向け)
給与計算ソフトをスムーズに運用するためには、事前準備が重要です。特に少人数企業や中小企業では、専任のシステム担当者がいないケースが多いため、以下のポイントを押さえて導入を進めましょう。
- ■現状の課題の把握
- 導入前に業務フローを確認し、課題を明確にすることが重要です。「手作業による計算ミス」「法改正対応の負担」「勤怠管理との連携不足」などを洗い出し、解決できる機能を備えたソフトかを確認しましょう。
- ■社内教育と運用体制の整備
- 導入後すぐに運用を開始するため、事前に従業員への操作教育を行い、基本操作を誰でもできる環境を整えましょう。少人数企業では担当者が限られるため、マニュアル作成や属人化防止の工夫が重要です。クラウド型ならリモートワーク対応やアクセス管理も確認しておきましょう。
- ■ベンダーのサポート体制の確認
- 少人数企業や中小企業では、社内にIT担当者がいない場合が多いため、トラブル発生時のサポート体制を事前に確認することが重要です。サポートが充実しているソフトを選べば、トラブル発生時も迅速な対応が可能で、業務の停滞を防げます。サポート窓口(電話・チャット)の対応時間をはじめ、初期設定やデータ移行のサポートの有無、操作マニュアルやFAQの充実度などを確認しましょう。
なお、給与計算ソフトの料金相場や課金形態などについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
給与計算ソフトの導入手順
少人数・中小企業では、担当者が限られているため「初期設定」「データ移行」「勤怠や会計との連携」をどれだけスムーズに行えるかが、導入後の業務効率化に大きく影響します。ここでは、給与計算ソフトを正しく使い始めるための導入手順をわかりやすく解説します。
- 1:現状の課題と運用フローを洗い出す
- まずは、現在の給与計算で発生している課題(時間がかかる、ミスが多い、法改正対応が不安など)や、 給与締め日・支給日・勤怠の集計方法などの運用フローを整理します。これにより、自社に必要な機能や導入目的が明確になります。
- 2:導入目的に合ったソフトを比較・選定する
- クラウド型かオンプレミス型か、従業員数や予算、必要な機能(勤怠連携・年末調整・マイナンバー管理など)を基準に複数製品を比較します。 無料トライアルやデモを活用し、実際の画面や操作感も確認しながら候補を絞り込みます。
- 3:初期設定(会社情報・就業規則・給与体系)の登録
- 選定した給与計算ソフトに、会社情報、締め日・支給日、就業規則、役職・雇用形態ごとの給与テーブル、 各種手当・控除のルールなどを設定します。ここでの設定内容がその後の自動計算の精度に直結するため、社労士や担当者で確認しながら進めます。
- 4:従業員情報や過去データの移行
- 従業員の基本情報、マイナンバー、口座情報、給与・賞与の履歴、年次有給残日数などを取り込みます。 既存の給与ソフトやExcelからCSV出力してインポートできるか、移行サポートがあるかもあわせて確認します。
- 5:勤怠システムや会計ソフトとの連携設定
- 勤怠管理システム、労務管理ツール、会計ソフト、ネットバンキングなどと連携設定を行い、 勤怠データの自動取り込みや仕訳データの自動連携、一括振込データの出力などがスムーズに行える状態にします。
- 6:テスト計算を行い、運用ルールを社内共有する
- 本番運用前に、直近数カ月分のデータを使ってテスト計算を実施し、手計算や旧システムの結果と差異がないか確認します。 問題がなければ、本番運用を開始するとともに、担当者向けに操作マニュアルや問い合わせ窓口を周知し、社内の運用ルールを整備します。
上記の手順のうち、特に「2:導入目的に合ったソフトを比較・選定する」で迷いやすいという方は、無料診断で自社に合う給与計算ソフトの方向性を整理できます。
ITトレンドで過去に給与計算システムを資料請求した方のお悩みや要望から作成した簡単な質問に答えるだけで、最適なシステムを案内します。
無料で今すぐ利用できますので、下のリンクから診断を開始してください。
▶給与計算システム おすすめ比較・無料診断
まとめ
給与計算ソフトの導入は、少人数企業や中小企業にとって業務効率化や人的ミスの削減、法令遵守の強化に大きく貢献します。企業規模や業務内容に応じて、シンプルで低コストなソフトから、多機能でカスタマイズ可能なソフトまで選択肢はさまざまです。導入時には社内の課題を明確にし、操作性やサポート体制の確認も必要です。
この記事で紹介した製品や選び方のポイントを参考に、自社に最適な給与計算ソフトを選び、給与業務の負担を軽減しましょう。以下のボタンより給与計算ソフトの一括資料請求が可能です。ぜひご利用ください。



人事労務業務は、社会保険や税金などの法改正が毎年のように行われるため、担当者には高度な知識と事務処理能力が求められます。しかし、こうした人材を確保するのは中小企業にとって容易ではありません。給与計算ソフトの活用は、業務負担を軽減する有効な手段となります。
特に小規模・中小企業には、自社サーバーが不要で初期費用を抑えられるクラウド型の給与計算ソフトがおすすめです。クラウド型ソフトは、法改正への自動対応機能を備えていることが多く、業務の効率化やミスの削減につながります。
ソフトによって、機能やサービスの範囲、基本料金内で登録できる人数、勤怠管理機能の有無などに違いがあります。導入前に、機能や使い勝手、料金を十分に確認し、自社に最適なソフトを選ぶことが重要です。