生産管理の「QCD」とは
QCDとは「品質・コスト・納期」を指し、製造業の生産管理に欠かせない3要素であるといわれています。QCDの概要や、製造活動において求められていることは以下のとおりです。
- ■Quality:品質
- 顧客が求めている品質の商品を提供すること。より高い品質の商品を製造すること。
- ■Cost:費用
- 決められた予算内で製造を行うこと。顧客により安く商品を提供すること。
- ■Delivery:納期
- 納期を守って製造すること。必要なタイミングで商品を提供すること。
品質が低かったり、コストがかかって価格が高まったりすれば購入してもらえません。また、納期が遅くなれば販売スケジュールに大きな遅延が生じ、取引先の信用を失ってしまうこともあるでしょう。つまり、市場で競争に勝つにはQCDすべての数値を引き上げる必要があるのです。
QCDの優先順位や関係性とは
QCDのなかでも、製造業において一番重視されるのはやはり「品質」です。すぐ壊れるような商品は顧客に不快感を与えるほか、企業の信頼低下につながります。品質ファーストで製造を続ければ顧客満足度や信頼性が高まり購入者も増え、より多く生産できるようになるため、ゆくゆくはコストを下げることも可能でしょう。
しかしどれだけ品質を高めても、コストが高すぎたり納期を守れていなかったりすれば商品が売れません。また、コストを抑えようと設備投資や人件費を削れば、品質が悪くなるでしょう。さらに納期を優先させれば、工場の稼働費や人件費が増大するかもしれません。実はQCDはトレードオフの関係にあり、一つの要素を優先すればほかの要素が悪化してしまうのです。QCDを意識した生産活動を行う際には、品質の維持を意識しつつ、コストや納期とのバランスも考えなければなりません。
QCDの多様化が目立っている
QCDが広く浸透するなかで、近年では製品の安全性の確保や環境配慮など、企業の社会的責任である「CSR」が重要視されています。それに伴い、QCDに新たな要素を付加した派生語も生まれています。
- ■EQCD
- QCDに「Environment(環境)」を加えたもの。持続可能な社会の高まりを受け、生産過程における環境負荷を重視する動きがある。
- ■QCDS
- QCDに「Safety(安全性)」を加えたもの。製造業ではQCDと並んで重視されている。そのほか「Service(顧客対応)」や「Support(サポート)」を意味することもある。
- ■QCDF
- QCDに「Flexibility(柔軟性)」を加えたもの。製造業やサービス業の現場で使われる。
- ■QCDSM
- QCDに「Safety(安全性)」と「Moral(やる気)」を加えたもの。経営管理の手法として使われることが多い。
QCDを意識した生産管理の方法
QCDをバランスよく保ちながら生産管理を行うにはどのようにすればよいのでしょうか。ここからは、QCDを意識した具体的な管理方法とポイントを紹介します。
Q:合格ラインを設定し品質維持をする
Qでは合格基準を設け、一定の品質を維持します。「仕様書どおりになっているか」「お客さんは満足するか」など、明確な基準をつくりましょう。基準に合格した商品は、「品質チェック済み」として、市場に出します。仮に不良品が出た場合は、返品・交換対応などを迅速に行ってください。
C:予算を立てコストをコントロールする
Cでは一定の品質を保ちつつ、納期内に商品を完成させるための費用を見積もります。最初から低く設定するのではなく、品質と納期を考慮して最適な予算を組むことが大切です。いくら費用を抑えられても、品質が悪かったり納期が遅れたりするなら意味がありません。十分な品質を保ちかつ納期内に完成できる、余裕のある予算を組みましょう。
稼働中は予算内で製造できているかを確認します。
D:工数を計算しスケジュールコントロールを行う
Dでは、作業を終えるのに必要な工数と時間を見積もります。どのような工程が必要かをピックアップし、スケジュールとして一覧にまとめましょう。稼働中はスケジュールどおりに作業が進んでいるかを確認し、遅れが出た場合は柔軟に対応します。
予定より早く終わる分には問題ありませんが、早すぎるのは問題です。納品が早すぎると、クライアントから「品質に問題あるのではないか?」と不審がられます。
生産管理では、あくまでもスケジュールどおりに作業を進めましょう。
生産管理のQCDを改善するポイント
生産管理におけるQCDを改善するには、一つひとつの要素を見直すのではなく、生産開始から出荷までのプロセス全体を改善していく必要があります。製造業においては「作業の標準化・自動化」「進捗の可視化」「設備や資材の見直し」などがあげられるでしょう。製造工程におけるどのような課題もQCDの改善に関わるため、なるべく課題点を具体的にあげ、改善できるような施策の実行と効果の検証を行えばQCDは自然と向上します。
QCD改善のための具体的な手順は以下のとおりです。
- 1.現状の課題を把握する
- 現場でヒアリングをしたり、生産工程の連動状況から工数を計算したりして、課題を把握しましょう。これにより、客観的にはわかりづらかった課題点が見えてきます。
- 2.改善策を立案し実施する
- 問題点を把握したら、改善策を立案してください。改善案は、「研修でスキル向上を図る」「確認項目を増やして不良率を下げる」など、課題にあわせて設定します。実施の際は産業用ロボットを活用すると作業が効率化できるため、おすすめです。
- 3.改善策の効果を検証する
- 実施後は、改善案に効果があったか検証します。効果があった場合は、さらに改善できるところはないかを分析しましょう。うまくいかなかった場合は、根本的な問題点の把握からやり直してください。
生産管理のQCDを改善し、自社の利益向上につなげよう!
生産管理におけるQCDは、「品質」「コスト」「納期」を指します。製造業においてもっとも優先されるのは「品質」ですが、トレードオフの関係にあるためバランスをとりましょう。
生産管理のQCDはプロセスの改善がポイントとなります。QCDを意識した生産管理で自社の利益を向上させてください。
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