プロジェクト管理の重要性
プロジェクト管理とは、期限や予算を守り計画をコントロールしてプロジェクトを成功させることです。各プロセスで目標を成し遂げられるように管理します。
近年、「AI失業」という言葉を耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか。AI(人工知能)が進化を続けビジネスへの活用が進むと、一般事務をはじめとする多くの仕事がAIで代替可能となるといわれています。しかしプロジェクト管理のような、指揮・監督能力や創造性を求められる仕事はAIに代替されにくいといわれています。
PMBOKとは
プロジェクト管理の技法として、代表的なPMBOKの概要を解説します。
プロジェクト管理の参考・基準になるもの
PMBOKは「Project Management Body Of Knowledge」の略で、プロジェクト管理の参考・基準になる知識体系です。「ピンボック」と読みます。
プロジェクト管理をするうえで、知っておくべき手法や知識を体系的にまとめたものです。プロジェクトを5つのプロセス、10の知識エリア、3つのパートに分類して考えます。あくまでも考え方や心構えをまとめたものなので、指南書より参考書に近いといえるでしょう。
現在では、プロジェクト管理の世界標準として知られ、4年ごとに内容が改定されます。アメリカで2021年7月に改定された第7版がありますが、日本では2017年6月に改定された第6版が最新です。
PMBOKの目的は「プロセス管理によるQCD達成」
PMBOKの目的は、プロセス管理によりQCDを達成することです。QCDとは、Quality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期)の略称で、プロジェクトで達成すべき3つのゴールを意味します。
従来はQCDのみを管理することでプロジェクトを進めていました。ところがこれではプロセスを管理できず、結果的にQCDも満足に達成できません。そのため、プロセスの段階からきちんと管理するという考えが広がりました。
そこで作られたのが、プロジェクトをプロセスから管理するための知識をまとめたPMBOKです。プロジェクトを5つのプロセスに分類し、そのすべてを管理して成功に導くノウハウがまとめられています。
PMBOKの知識管理体系
PMBOKの機能の枠組みについて解説します。
5つのプロセス
PMBOKでは、プロジェクトの開始から終結までを5段階のプロセスに分けて考えます。
- 【立ち上げ】
- プロジェクトの認可を得る段階です。目的や予算、成果などの定義やステークホルダー(利害関係者)の特定を行います。
- 【計画】
- プロジェクトの具体的な計画を立てます。スコープを洗い出し、実行すべきタスクや要員を明確化します。
- 【実行】
- 計画にもとづいて人材や資源を調達し、タスクを進める段階です。
- 【監視・コントロール】
- 計画内容と実行内容に乖離がないか確認し、あれば調整します。
- 【終結】
- プロセスが完了したことを確認します。また、プロジェクトのデータを次回活用できる形で保管します。
基本的に、これら5つのプロセスそれぞれに、10の知識エリアの考え方が適用されます。
10の知識エリア
PMBOKには、知識エリアと呼ばれる、10種類の管理分野があります。5つのプロセスに必要なものに加え、一部のプロセスに必要なものがあります。
- 【統合管理】
- ほかの9種類の知識エリアを統合管理し、プロジェクト全体を進める
- 【コスト管理】
- 原価や予算など、費用に関わることを管理
- 【調達管理】
- 仕入れ先や委託先を選定・管理し、外部業者に起因するプロジェクト遅延を防止
- 【リスク管理】
- 生じる可能性があるトラブルを予測し、対策を立てる
- 【スコープ管理】
- 作業内容と成果物の範囲を定め、プロジェクトの軌道を整える
- 【資源管理】
- 適材適所な人材配置やタスクのアサイン、物質的な資源の管理
- 【コミュニケーション管理】
- メンバー間でのコミュニケーションを円滑化し、問題が起こった場合調停
- 【スケジュール管理】
- ガントチャートなどによりスケジュールを管理し必要があれば調整
- 【品質管理】
- 成果物の品質を管理し、顧客のニーズを満たせるものへ導く
- 【ステークホルダー管理】
- 顧客、メンバーを含め、関係者間で重要な情報を管理・伝達する
3のパート
PMBOKでは、各プロセスの各知識エリアに、以下の3つのパートがあると考えます。
- 【入力】
- 設計書など
- 【ツールと技法】
- 入力パートをもとに成果物を作成
- 【出力】
- 成果物
料理に例えると、「入力」に該当するのはレシピや食材、調理器具です。実際に調理する段階は「ツールと技法」、完成した料理は「出力」のパートです。
1つのプロセスは、知識エリアの考え方によって10種類の管理分野に分けられます。そしてこの10種類すべてに、上記3パートの考え方が適用され、合計30種類に分類されます。
この10×5×3の構造は、PMBOK第7版ではなくなりますが、プロジェクト管理にはこのようなプロセスがあると理解しましょう。
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PMBOKの活用方法
PMBOKはどのように活用すればよいのでしょうか。
あくまでも「参考」として捉える
PMBOKはあくまでも参考として捉えましょう。それは、以下の3つの特徴があるためです。
大規模プロジェクトを想定している
大規模なプロジェクトを想定しているため、小規模な場合にはそのまま適用できません。また、プロジェクト内容とそぐわないこともあります。その場合は利用できそうな部分だけ使いましょう。
具体的方法は書かれていない
プロジェクト管理の具体的な方法が書かれているわけではありません。あくまで考え方や心構えが記載されているだけです。ヒントを得るには有効ですが、具体的な方法は状況を踏まえて自力で考えなければなりません。
複数のプロジェクト管理に不向き
複数プロジェクトの管理に向いていないという弱点もあります。一つのプロジェクトに焦点を当てているため、複数平行して管理するための知識は書かれていません。実際に運用する際には、ほかのプロジェクトのコストやリソースも考慮する必要があるでしょう。
プロジェクト管理ツールを使って管理する
実際のプロジェクト管理にはツールを活用しましょう。プロジェクト管理ツールとは、その名のとおりプロジェクト管理を円滑化するためのツールです。具体的には、以下のようなことが実現します。
- ■スケジュールやリソースなどの各種管理データの保存
- ■メンバー間での情報共有
- ■リアルタイムでの情報反映
さまざまなデータを保存できるだけでなく、メンバー間でタイムリーに共有しコミュニケーションがとれるため、プロジェクトが円滑化します。プロジェクトマネージャーが必要なデータを入力し、その後メンバーが進捗状況を入力するのが一般的な利用形式です。
このような管理ツールの中には、PMBOKに準拠したものも存在します。知識エリアやプロセスなどPMBOKの考え方を踏まえているため、PMBOKの知識があればスムーズに使えるでしょう。プロジェクト管理ツールについて、導入のメリットや製品比較などはこちらからご覧いただけます。
PMBOKガイド・PMI・PMPとは
PMBOKに関連する用語の意味を解説します。
PMBOKガイド:PMBOKをまとめた文書
PMBOKガイドは、PMBOKをまとめた文書のことです。プロジェクトマネジメント知識体系ガイドとも呼ばれ、全12章から構成されています。
ただし、PMBOKのすべてがPMBOKガイドに記載されているわけではありません。PMBOKガイドには、PMBOKの中でも広く知られている内容が抽出して記載されています。
単にPMBOKと呼ぶ場合は、プロジェクト管理において知っておくべき知識や手法を指します。
PMI:PMBOKガイドを発行する機関
PMIは「Project Management Institute」の略で、PMBOKを発行したアメリカの非営利団体の名称です。プロジェクト管理の研究を行う団体で、1969年にアメリカで結成されました。現在も本部はアメリカにありますが、世界中に20万人以上もの会員が存在します。
プロジェクト管理を研究する団体はPMIのほかにも存在しますが、PMIのPMBOKが世界標準として認められています。
PMP:ガイドに関する試験
PMPは、PMI本部が提供している国際資格です。
プロジェクト管理を学習した人がその技能を証明するための資格として、世界中で利用されています。この資格試験はPMP試験と呼ばれ、5つのプロセスが出題範囲です。現在のPMP試験は2017年6月に改定された第6版にもとづいて出題されています。
受験するには、以下の2つの条件を満たさなければいけません。
- ■プロジェクトマネジメントの指揮・監督する立場での経験
- ■35時間の公式なプロジェクトマネジメント研修を受講
1つ目の条件は、具体的に以下のように定められています。
- 【高校卒業あるいはそれに準ずる者の場合】
- 60か月間以上のプロジェクト管理体験、7500時間以上の指揮・監督経験
- 【大学卒業あるいはそれに準ずる者の場合】
- 36か月間以上のプロジェクト管理体験、4500時間以上の指揮・監督経験
2つ目の条件は、PIM指定の機関で指定内容の研修を受けることにより満たされます。
PMBOKをうまく活用してプロジェクト管理の効率化を!
PMBOKはプロジェクト管理の基準になる知識体系です。プロジェクトを5つのプロセスと10の知識エリア、そして3つのパートに分けて管理します。PMBOKガイドとはPMBOKをまとめた文書です。PMIよって発行され、PMPという国際資格も存在します。
あくまでも知識をまとめたものなので、参考として考えましょう。現場ではツールを使うのがおすすめです。ぜひ参考にして、プロジェクト管理を効率化してください。