ガントチャートとは
ガントチャートとは、スケジュール管理や作業管理など、さまざまな業務の進捗状況を管理する表を指し、企業においてプロジェクト管理に用いられています。一目見ただけで、進捗状況を俯瞰的に把握できるのが特徴です。
一般的にガントチャートは、縦軸にタスクの内容や担当者、開始・終了日などを、横軸に時間を記載します。プロジェクトにおけるより細かな作業単位をツリー構造にして展開可能です。
WBSとの違い
WBS(Work Breakdown Structure)とは、プロジェクトを成果物や成果物を生み出すための作業に分解する手法です。WBSはプロジェクトの「何を」するかに焦点を当て、成果物の分解と整理を行います。一方、ガントチャートはプロジェクトの「いつ」何をするか、つまりスケジュール管理とタスクの進捗状況を視覚化します。ガントチャートとWBSはしばしば組み合わせて使用され、WBSで定義されたタスクがガントチャート上で時間軸に沿って配置されることが多いでしょう。
このように、ガントチャートとWBSは違うものですが、ガントチャートならではのタイムライン化した視覚的な表現により、WBSで分解されたタスクの時間的な関係や重複を明確に示せるという関係性があります。
ガントチャートが生まれた背景と目的
20世紀初頭、先進国では大量生産体制が築かれるようになりました。それに伴い、大量生産に適した進捗管理方法が求められるようになりました。
そこで生み出されたのがガントチャートです。エンジニアであり経営コンサルタントでもあった、ヘンリー・ガントが考案しました。職場の監督者が現場の作業進捗状況を一目で把握するために、ガントチャートを考案したといわれています。
そして、ガントの死後、1992年にウォーレス・クラークが「The Gantt Chart : A Working Tool of Management」という本を発売。結果として、ガントチャートは世界中に知れ渡りました。今ではタスクの可視化やメンバー間の情報共有の効率化を目的に、多くの業界で使用されています。
ガントチャートを作成するメリット・デメリット
ガントチャートを活用するメリット・デメリットはそれぞれ以下のとおりです。
ガントチャートを作成するメリット
- ●メンバーの作業状況やプロジェクトの進捗状況がひと目でわかる
- ●スケジュールやタスクの割り振りの変更時にスムーズに情報共有できる
- ●プロジェクトに遅延があった場合、どのタスクに遅れがあるのかすぐにわかる
- ●すべてのタスクを可視化できるため、業務の割り振りが最適化しやすい
- ●タスク間の依存関係を明確にし、効率的なプロジェクト運営が可能になる
ガントチャートを作成するデメリット
- ●工数が把握しづらいため、作業工程を細分化しないと遅延の原因となる
- ●タスクの順序や関係が見えないため、工程上優先すべき作業がどれかわからない
- ●ガントチャートの組み直しには相応の手間がかかる
- ●作業内容と締切しか情報がないため、時間に余裕があるものを後回しにしがち
- ●短期間で多くの変更が生じるプロジェクトでは、ガントチャートの更新が追いつかない場合もある
- ●多くのタスクやサブタスクがある場合、視覚的に煩雑になり把握が難しくなる
ガントチャートはプロジェクトにかかるタスクを可視化し、簡単にスケジュールを組み立て共有できるものの、必要な作業工程とその所要時間なども慎重に検討し予定を立てなくては進行が遅れることがあります。また、タスクと締切というシンプルでわかりやすい設計がマイナスに作用すれば、柔軟性のないスケジュールになってしまったり、優先順位がわからないまま作業を行ってしまったりするでしょう。
このように、プロジェクトの性質や管理の方法に応じて、ガントチャートを使うのが本当に適切かどうかは、慎重に検討しましょう。
ガントチャートの作り方
ガントチャートは無料のExcelテンプレートを使用すれば簡単に作成可能です。また、マイクロソフト社の「Microsoft 365」に加入していれば日付管理ガントチャートを利用できます。プロジェクト管理全体を効率化したい場合には、ガントチャート機能の搭載されたプロジェクト管理ツールやタスク管理ツールを活用するのもおすすめです。
ここでは、Excelやツールの付属機能を用いてガントチャートを自作する場合の作り方をわかりやすく解説します。
1.プロジェクトの目的と範囲の定義
まず、ガントチャートで管理するプロジェクトの目的と範囲を明確にします。この情報がガントチャートの全体像を決める基礎となります。
2.タスクの洗い出し
次に、ガントチャートの縦軸に記載するための作業項目を洗い出します。例として、製造業で機械製品を作る場合を考えてみましょう。この場合、資材の準備や部品の組み立て、梱包などさまざまな工程があります。
3.タスクの細分化と順序設定
洗い出したタスクをより具体的な作業に細分化します。資材の準備であれば、取引先との連絡や発注作業、代金の支払いなどがあるでしょう。組み立てであれば人材の手配や機械設備の整備、実際の組み立て作業などが含まれます。
こうして細分化することで、現実的な納期の設定が可能になります。洗い出した各タスクは、作業の順番どおりにガントチャートに記入しましょう。
4.作業日程の設定
次は、各タスクの開始日と終了日を決めます。横軸の単位は、日や月など、プロジェクトの規模に応じて適切なものを選びます。
このとき、タスクの期限にある程度の余裕を持たせましょう。余裕がなければトラブルが生じた際に対処が難しくなります。
5.依存関係の特定と記入
タスク間の依存関係を特定し、ガントチャートに反映させます。これにより、どの作業がほかの作業に影響を与えるかが明確になります。
6.リソースと担当者の割り当て
タスク間の関係性が明確になったら、各タスクの担当者を決定します。決めた担当者の名前は、縦軸の作業項目と並べて記載しましょう。
担当者の決定時に注意しなければならないのが、負担を偏らせないことです。1つのプロジェクトにおいてバランスよく負担を分散させるのはもちろんのこと、ほかのプロジェクトも考慮する必要があります。1つのプロジェクトが忙しくて別のところまで手を回せない担当者は、負担を少なくしましょう。
7.チャートの作成と調整
手順6までの情報をもとに、ガントチャートを作成します。必要に応じて調整を行いながら、実際のチャートを形作っていきましょう。
8.レビューと最終確認
チャートをチームメンバーや関係者と共有し、フィードバックを受けて最終的な確認を行いましょう。ここでの調整が、ガントチャートの完成度を高めます。
ガントチャートをうまく活用するコツ
ガントチャートを作成・運用する際、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
タスクを詰め込みすぎない
作業漏れの防止やより正確なスケジュール設計のためにタスクを細分化しすぎると、作業状況の更新・チェック工数が増えてしまいます。工程を細分化することは重要ですが、似たような作業や担当者が同じものなど、まとめられるものがあれば工夫しましょう。
タスクの依存関係を明確にする
ガントチャートはタスク間の関係性がわかりづらいのが難点であるため、表示方法などで工夫が必要です。例えば、製造業における部品の仕入と組み立て作業の関係性を考えてみましょう。組み立て作業には必ず部品が必要となるため、先に部品の仕入を完了しておく必要があります。一方、組み立てに要する製造設備の整備などは、部品が手元になくても問題なく実施できるでしょう。
そこで、仕入と組み立て作業を同じ色のチャートで示し、機械設備の整備は別の色で示す方法があります。また、仕入と組み立てのチャート同士を矢印で結び、タスク同士が連続したものであることを示してもよいでしょう。そのほか、縦軸にタスクを並べる際、関係性の深いタスク同士を近づけると、まとめて把握しやすくなります。
進捗状況の更新確認をメンバーやツールに依存しない
ツールの導入に失敗する事例に、「メンバーがツールを使ってくれない」という声がよく聞かれます。これは、プロジェクトマネージャーがメンバーにツールの管理を完全に任せてしまうために起こります。ガントチャートは更新しなければ意味を成しません。定期ミーティングの際にマネージャーが自らメンバーに進捗を確認するなどして、ツールのデータを最新の状態に保てるように全員で工夫しましょう。
修正や追加が簡単に行える専用ツールを活用する
進捗状況や顧客の都合など、さまざまな要因で計画を変更する必要が出てきます。その際、ガントチャート機能のあるツールなら、ドラッグ&ドロップでチャートを移動させたり、スケジュールを変えられたりと操作が簡単に行えます。Excelに比べ、作業時間の短縮と迅速な情報共有が可能になるでしょう。
無料のガントチャート作成ツールも多いため、まずは無料プランや無料トライアルではじめてみて、本格的に利用するようになったら有料プランを検討するのもよいでしょう。
柔軟性を持たせた計画立案を心がける
ガントチャートは計画通りに進行することを前提としていますが、実際のプロジェクトは予期せぬ変更が発生することも多いでしょう。そのため、計画を立てる際は柔軟性を持たせることが重要です。例えば、予備のバッファ時間を設ける、重要度が低いタスクの優先順位を変更しやすくするなど、計画の見直しが容易な構造にすることで、変更が発生したときに迅速に対応できるでしょう。
チーム全員での共有と意見交換を促進する
ガントチャートはチーム全員が見て理解できるように作成・運用することが重要です。定期的なミーティングでガントチャートを共有し、進捗状況や課題についてオープンに意見交換を行うことで、全員がプロジェクトの進行状況を共有し、課題解決に向けて協力しやすくなるでしょう。
ガントチャートを活用できるおすすめツール
ガントチャートはExcelなどで自作もできますが、プロジェクト管理ツールのひとつの機能としてガントチャートが簡単に作成できるものもあります。無料トライアルや、少人数なら低コストで使える製品もたくさんあるので、検討してみてはいかがでしょうか。
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《Backlog》のPOINT
- タスク・プロジェクト管理に必要な機能がオールインワン
- ガントチャートやカンバンボードで直感的にタスク管理
- シンプルで直感的に使えるデザインだからすぐに使いこなせる
株式会社ヌーラボが提供している「Backlog」は、案件管理がしやすいガントチャートを特徴とするタスク・プロジェクト管理ツールです。案件のフェーズごとにタスクの整理がしやすいマイルストーン機能が搭載されているため、長期プロジェクトでも活用しやすいでしょう。タスクごとのチャットでは、星マークをつけて感謝の気持ちを伝えるスター機能により、コミュニケーションが活発化します。
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ガントチャートは棒グラフを用いた図で、プロジェクトのタスクと期限を可視化し進捗状況を共有するために使われます。ガントチャートを簡単につくれる専用ツールを活用し、プロジェクト管理を成功させましょう。ぜひ資料請求を行い無料トライアル、無料プランの導入をご検討ください。
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