CMMIとは
CMMIの概要を解説します。
プロジェクトマネジメント力を評価する指標
CMMIは「Capability Maturity Model Integration」の略で、プロジェクトマネジメント力を5段階評価する指標です。
もともとは、1980年に発表されたCMMというソフトウェア開発向けの指標でした。しかしその後、ほかの分野への派生が誕生し、それらを統括したものとしてCMMIが登場しました。
CMMIレベルを認定できる人物を、SCAMPIアプレイザーと呼びます。組織がCMMIレベルの認定を受けるには、このアプレイザーとそのチームに依頼して判断してもらう必要があります。
CMMIの認定を受ける目的は、客観的にプロジェクトマネジメント能力を評価し、改善意識を高めることです。
ノウハウ共有・品質の安定化が実現する
CMMIの評価を受けることで、ノウハウの共有や品質の安定化が実現します。CMMIのレベル3・4には以下のような特徴があります。
- レベル3
- 組織の標準プロセスの設定。その標準プロセスにそったプロジェクトの進行。
- レベル4
- 組織的な定量的目標管理の実現。品質の安定化。
レベル3の認定を受けるには、各プロジェクトが統合されなければなりません。つまり、一定の標準に基づいてプロジェクトが進行している必要があります。これを実現するためには、異なるプロジェクト間でノウハウを共有しましょう。
さらにレベル4の認定を受けるには、プロジェクトのプロセスを定量的に分析しなければなりません。これを達成することで、より客観的にプロセスを管理できるようになり、品質が安定化するでしょう。
このように、CMMIの高レベル認定を目指すことで、ノウハウ共有や品質の安定化が実現します。
CMMIの2つの表現方式
CMMIには2つの表現方法があり、組織のプロセス改善の目的に応じて選びます。それぞれの違いを見ていきましょう。
1:プロセスの領域が機械的に決まる「段階表現」
段階表現は、プロセス領域が機械的に決まる表現方法です。以下の5段階で組織のレベルが表現されます。
- レベル1
- 初期
- レベル2
- 管理された
- レベル3
- 定義された
- レベル4
- 定量的に管理された
- レベル5
- 最適化している
この5つのレベルでそれぞれにやるべきこと(改善すべきプロセス領域)が決まっており、それを達成することで上のレベルに上がります。やるべきことがはっきりしているため、何から始めてよいのか分からない場合は段階表現が適しています。
2:プロセス領域を自由に選択できる「連続表現」
連続表現は、プロセス領域を自由に選択できる方式です。たとえば、プロセスのうち要件管理だけを改善するという選択も可能です。それぞれのプロセスの成熟度は、以下の6段階のレベルで表現されます。
- レベル0
- 不完全な
- レベル1
- 実施された
- レベル2
- 管理された
- レベル3
- 定義された
- レベル4
- 定量的に管理された
- レべル5
- 最適化している
各プロセスごとにこれらのレベルが設定されます。下位レベルで求められる能力を満たすことで、上位のレベルに上がります。どのプロセスを改善したいのかがはっきりしている場合は、連続表現が適しているでしょう。
CMMIの5つの指標
CMMIにおけるレベル1~5の5つの指標を、詳しく見ていきましょう。
レベル1:プロセスが場当たり的である段階
レベル1はプロセスが定義されておらず、場当たり的である状態です。そのため、そのプロセスの成否は担当者の努力に依存します。
まったくプロセスが定まっていないため、担当者は手探りで方法を模索するしかありません。そのためプロセスは常に変動し、一定の安定性が確保できません。スケジュールの予想が立てづらい、成果物の品質にばらつきが生じるなどの問題が発生します。
レベル2:プロセスの基本が確立されている段階
レベル2は、プロセスの基本が確立されている状態です。基本的な手順が決まり、再現が可能な状態といえます。
新規のプロジェクトを始める際も、過去のプロジェクトのプロセスを参考にできるため、1から考える必要がありません。スケジュールの見通しも立てやすく、成果物の品質も安定するでしょう。
レベル3:プロセスが標準化されている段階
レベル3は各プロセスが標準化されている状態です。方法の文書化やスタッフの熟練が進み、効果的にプロセスを進められます。プロセスにおける技術的な側面も標準化が進み、レベル2よりもスムーズに進行できる状態です。
レベル2よりも高い精度でプロセスを管理できるため、スケジュールやリスクの管理もさらに緻密になります。発生したトラブルに対処できるだけでなく、未然に防止できる状態です。
また、標準化するためには異なるプロジェクト間での情報共有なども欠かせません。レベル3は組織内での風通しが良く、組織としての一貫性が保たれている状態といえるでしょう。
レベル4:プロセスが管理されている段階
レベル4はプロセスが定量的に管理されている状態です。
作業の手順や進捗状況、成果物の品質を数値化することで、より客観的な管理を実現します。この定量化データの収集・分析は単一のプロジェクトではなく、組織内で横断的に行われる必要があります。企業として一貫した判断基準を持つ必要があるためです。
定量的な管理が実現すれば、品質の予測が容易になります。許容可能な品質を設定し、その範囲内に収めることで、安定したプロダクトを提供し続けられるでしょう。
レベル5:プロセスが最適化されている段階
レベル5はプロセスが最適化されている段階です。具体的には、以下のようなことが実現した状態を指します。
- ■継続的なプロセス改善
- ■トラブルの予測と対策
- ■新しい提案や技術の費用対効果分析
- ■組織全体での情報共有
レベル1~4で達成すべきことを満たし、そのうえで継続的な改善を続けている状態といえます。
CMMIの注意点
CMMIには以下のような注意点があります。
- ■レベル5に上げるのを目的にすると表面しか改善しない
- ■認定の費用が高いため、あまり普及していない
CMMIの目的は、自社のプロジェクトマネジメント能力の状態を知り、改善へとつなげることです。ところが、中には高いレベルを取得し、対外向けのアピールとして考えている企業も多いといわれています。
このようなスタンスでCMMIを取得しても、あまり効果は得られないでしょう。レベル5になっても、常に改善を繰り返し、より良い状態を目指すことが大切です。
一方、CMMIはすべて手作業で認定するため費用が高いという問題点もあります。さらに、この有効期限は3年しかありません。
そのため、認定を受ける際はそれを最大限に活かして改善を図ることが大切です。あるいは、認定を受けずにCMMIの考え方だけを学んで、自主的に改善を目指すのも良いでしょう。
プロセス最適化のためにCMMIを活用しましょう
CMMIはプロジェクトマネジメント能力を客観的に評価するものです。企業内でのノウハウ共有やプロセス品質の安定化を図れます。CMMIには以下の2種類の表現方法があります。
- 段階表現
- 改善領域が自動で決まる
- 連続表現
- 改善領域を自由に選べる
CMMIには以下の5つの指標(レベル)があります。
- 1.場当たり的
- 2.基本が確立
- 3.標準化
- 4.定量管理
- 5.継続的な改善
ぜひプロセス最適化の参考にしてください。