なぜなぜ分析とは
なぜなぜ分析とは、トヨタ自動車が発案した「なぜ」を使って問題の真因を把握する分析方法です。「なぜこの事象が起きたのか」という問いかけを繰り返すことで、本当の原因を探っていきます。製造業をはじめ、IT業や建設業などさまざまな業界で活用されています。
なぜなぜ分析は問題解決と再発防止を目的に生み出されました。なぜなぜ分析を行うとあらゆる事象の背景や物理的な因果関係が見えてきます。原因を見つけるだけでなく、問題を解決した後の予防策までが一連の流れとなります。
なぜなぜ分析がうまくいかない!よくある失敗事例
なぜなぜ分析を行っても解決に至るような原因にたどり着けなかったり、個人が責められてしまうような結果に導いてしまったりと、うまくいかないこともあるようです。ここからはなぜなぜ分析のよくある失敗事例や課題点を紹介します。
問題となる事象がはっきりしない
なぜなぜ分析の開始地点となる事象が曖昧だと、原因もあいまいになりがちです。例えば「自社にはよい人材が集まらない」「納期遅れが発生した」などの事象は、現場では改善のしようがない原因を導いてしまうでしょう。
問題となる事象は「営業職に経験者を採用したいが募集がうまくいかない」「2週間の納期遅れが発生した」などのように、できるだけ具体的に提示するのがおすすめです。
個人のミスとして片付けてしまう
例えば請求書の宛先を書き間違えて誤送されてしまったとします。ここでなぜなぜ分析を行い「担当者が書き間違えたから」「担当者が確認を怠ったから」のように、個人のミスとして責任追及をしてしまうケースが多いです。これでは組織の成長につながらず、なぜなぜ分析の効果が表れません。
個人のミスで発生した事象においても、作業環境やマニュアル体制、現場の仕組みなど、組織自体に問題がなかったかを考えてみましょう。前述の例であれば、「発送前にダブルチェックを行っていなかったから」「顧客リストが見づらかったから」などの要因を導き出せるかもしれません。
なぜなぜ分析のやり方
ここではなぜなぜ分析のやり方を、パート別に説明します。
1.分析の目的と課題点を明確にする
なぜなぜ分析を効果的に利用するには正しい課題を設定し、分析の目的を明確化することが大切です。正しい課題でなければなぜなぜ分析は機能しません。以下を参考にして、正しい課題を設定してください。
- 1.事象(イベント)に関する課題を洗い出す
- 2.課題を絞る
- 3.分析する課題を選定する
イベントから課題を洗い出す際、できるだけ多くの問題点をリストアップします。問題点をリストアップするときは、イベントをそのまま課題にするのは避けましょう。人や場所、職種など、具体的な表記で問題点を明らかにするのがおすすめです。
2.問題の経緯・背景を把握する
なぜなぜ分析は、問題が起こった経緯・背景を把握することから始まります。問題の経緯・背景を把握せずに真因を導きだそうとすると失敗します。全体像がわからないまま問題を解決にあたると、途中で行き詰ってしまうでしょう。
問題が起こった経緯・背景が間違っていると、分析結果も真因から遠ざかってしまいます。「問題が起こる前に、何が起こりどんな人がいたのか」を正確に把握しましょう。
3.論理的に「なぜ」を繰り返す
課題を選定し問題の経緯・背景を理解したら、「なぜ」を繰り返します。ここでは論理的に「なぜ」を繰り返す点に留意して取り組みましょう。
大切なのは「なぜ」と答えが繋がっていることです。課題に対する「なぜ」は複数出てくる可能性が高いです。この複数の「なぜ」に対し、それぞれの答えが漏れ無くしっかりと繋がっているか確認しましょう。
「なぜ」は5回ほど繰り返すのがよいとされていますが、厳密に5回繰り返す必要はありません。しかし5回くらい繰り返さないと、真因は見えてこないという認識でいましょう。 なぜなぜ分析に慣れていないうちは、意識的に繰り返した方がよいです。
4.真因への対策を立て、検証・評価する
「なぜ」で真因を把握できたら、対策を立て、検証・評価していきます。なぜなぜ分析では、真因を突き止めて問題を解決するだけでは足りません。改善後は、その問題が二度と起こらないような対策を立てる必要があります。
対策は実行可能で評価しやすいものがおすすめです。実行できないものだと、改善策にはなりません。また、対策後は本当に問題が解決しているか確認しましょう。定期的に評価することで、新たな問題の発見にもつながります。
もし効果が見られないなら、課題の設定からやり直してみてください。
なぜなぜ分析の注意点
なぜなぜ分析は正しく扱わなければ、問題を解決した気になって根本は解決できていない、といったことになりかねません。ここからはなぜなぜ分析を行う際に気をつけるべきポイントを紹介します。
事象や要因は具体的に提示する
事象は具体的に提示しなくてはなりません。どこで、どの程度、誰がなど、できるだけ詳しく表現します。
また、複数の解釈ができるような文章は避けましょう。例えば「タスクが多かったから」といった要因をあげたときに、自分の仕事が多すぎたのか、それとも他の人に頼まれた仕事やサポートが多かったのかなど、人によってさまざまな解釈ができてしまいます。「なぜ?」に対する答えはできるだけ分けて抽出しするようにしましょう。
真因と要因の違いを明確にする
真因と要因を明確に理解したうえでなぜなぜ分析を行いましょう。「要因」は物事を生じさせた要素を指し、原因と同じような意味合いで使われます。また要因はその要素が複数あるときに多く使われます。対して「真因」は、ある物事が起こった真実の原因であり、起因よりももっと根本的なそもそもの原因のことです。要因は事象の「相関関係」であり、因果関係ではありません。結果の間接的な原因ではあっても、直接的な原因にはならないのです。
例えば、「背が低いから、バスケットボール選手になれない」というのも、バスケット選手になれない要因(原因の一つ)にはなりえます。しかし、実際に背の低い人でもプロバスケットボール選手になっている以上、本当の原因ではありません。
問題の真因には、いくつもの要因が関わっています。なぜなぜ分析するときは、真因と要因の違いを意識しましょう。
根本的に解決できない原因に帰着しない
ただ「なぜ?」を繰り返すだけでは「景気が悪いから」などのように、自分たちでは解決できない原因にたどり着いてしまう可能性があります。できるだけ事実だけを表現し、感想を入れないようにするとよいです。「なぜそうなってしまったのか」よりも「何がそうさせたのか」を考えると的確な原因の究明と改善の気づきが得られるでしょう。
また人為ミスにおいては、犯人探しを目的にしないようにしましょう。「誰が問題を発生させたのか」は、なぜなぜ分析には不要です。「なぜこのようなことが起きたのか」「どのようにすれば防げたか」に焦点を当てましょう。
なぜなぜ分析を正しく行い、問題を解決しましょう
「なぜ」を繰り返す「なぜなぜ分析」は、問題の真因を突き止め、再発を防止するために行われます。ただし具体的な事象を提示するなど、正しい方法で行わなくては効果がありません。また、なぜに対し、一つひとつの答えが繋がっていることが大切です。
なぜなぜ分析は、プロジェクトの進行でミスやエラーが発生したときなどに原因を突き止め、改善策を立てるのに活かせるでしょう。
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