RPAでできること
どのような業務をRPAが実行できるのか見ていきましょう。
単純な定型業務
RPAの得意分野は、手順が決まっている単純な定型業務です。事前に指定されたルールどおりに作業することで完了する業務であれば、比較的容易にRPAに代替させられます。
例えば、請求書や経費の処理、発注・納品処理などが挙げられるでしょう。もちろんこれらすべてが無条件に代替できるわけではなく、あくまでも決められた手順に則って行う場合のみ効率化が可能です。 なお、状況に応じた臨機応変な判断を要するプロセスが入っている場合、RPAで対応するのは困難です。
電話・メール対応のサポート業務
RPAを活用すれば、電話やメール対応などのサポート業務の効率化が可能です。メール内容が定型的なものであれば、事前に設定した文章を送付することで自動化できます。
また、電話対応に関してもさまざまな面での効率化が考えられます。例えば、かかってきた番号を参照してデータベースから顧客情報を取り出し、オペレーターに提示するなどの使い方があるでしょう。 後述で詳しく説明しているように、RPAを活用して圧倒的な効率化を図ったコールセンターも存在します。
データの収集・分析業務
RPAは定型的な反復処理を得意とするため、データの収集・分析業務にも活用できます。ルーチンワークとはいえ、データの収集や分析には一定の時間がかかりますが、RPAを活用すれば自動処理によって時間の短縮が可能です。
例えば、営業先リストとして企業名を一覧リストにしておけば、電話番号などの企業概要をサイトから自動で収集したり、売上高や従業員規模のデータを付与したりできます。営業担当がすぐに活用できるデータに整える作業が可能なのです。
SNS上における口コミや投稿の収集
RPAは、新製品のリリースやキャンペーンの反応を分析する際に、X(旧Twitter)やInstagramのハッシュタグに関連する投稿を自動で収集するのに役立ちます。例えば、特定の商品に関連するユーザーの感想や評価を収集し、そのデータをもとに市場の傾向を分析したり、顧客満足度を高めるための戦略を立案したりできます。
日報・月次レポートの作成
営業部門では、RPAを使用して毎日の売上データや顧客訪問の記録を集計し、日報を自動生成できます。また、月次レポートでは、達成率や目標に対する進捗状況を自動でまとめ、管理層への報告や戦略的な意思決定に貢献するでしょう。
勤怠管理
RPAは従業員のタイムカード情報から出勤・退勤時間を抽出し、残業や休暇取得の管理を自動化するのにも活用可能です。例えば、勤怠データをもとに自動的に給与計算を行ったり、休暇申請の承認プロセスを効率化できたりします。
在庫管理
小売業では、RPAを活用して商品の在庫状況をリアルタイムで監視し、在庫が一定水準以下になった場合に自動で発注処理を行えます。これにより、在庫切れによる販売機会の損失を防ぎ、過剰な在庫リスクの軽減につながるでしょう。
メール配信のようなマーケティング業務
RPAを使えば、顧客の購買履歴や興味関心にもとづいてカスタマイズされたメールの自動送信が可能です。例えば、顧客が興味を示した商品カテゴリに関連するプロモーション情報を自動的に送ることで、より効果的なマーケティングが展開できます。
システム間連携
例えば、注文管理システムから会計システムへのデータ移行をRPAで自動化し、時間とコストを節約するとともに、入力ミスを削減するといった使い方ができます。これにより、業務プロセスが効率化され、全体的な業務フローがスムーズになるでしょう。
RPAでできないこと
このように、RPAは人間の代わりにさまざまな業務を自動化してくれます。しかしRPAにもできないことはあります。それは「イレギュラーな事象に対して自ら考えること」です。RPAは事前に設定された手順どおりに作業します。しかし、通常とは異なる事象が発生したときに、どのように処理すべきか自ら考えて行動することはできません。
例えば顧客台帳の入力業務において、半角数字しか入力できない電話番号欄に誤って全角ハイフンが入力されていたとします。人間が入力していれば、半角ハイフンに変更して保存するでしょう。しかしRPAの場合は、エラーが起こり作業がストップしてしまうのです。
これを回避するためには、「半角数字以外の文字列が入力されていた場合は、後に回して次のデータの処理に進む」「RPAの担当者に対してアラートを出す」などのイレギュラーな事象が発生した際の処理手順を、事前に設定しておく必要があります。逆にいえば、設定さえしておけばイレギュラーな事象にも対応できるといえるでしょう。
RPAの活用事例
続いてRPAの得意分野を生かした実際の活用事例について解説します。RPAの活用によって、どのような業務が効率化され生産性の向上につながったのでしょうか。
経理部門の入金消込作業を効率化
1つめの事例として、経理部門の入金消込作業の自動化が挙げられます。入金消込とは、売上が発生した時点で計上される「売掛金」を、実際の入金で消し込む作業です。この作業は従来人力で行うのが当たり前でした。
しかし入金消込作業は単純な定型ルーチン業務のため、RPAを活用すれば大きく工数を削減できます。実際の現場では、ツールを用いて自動化し工数を20日から2日に短縮した事例もあります。このような定型ルーチン業務を短縮できれば、人は柔軟な判断を必要とする業務に集中できるでしょう。
RPAで自動化できる業務は、特に経理や会計業務に多く相性がよいとされています。より多くの活用事例を参考にしたい方は以下の記事もご覧ください。
コールセンターのオペレーター業務を効率化
RPAの利用で、コールセンター業務の効率化につながる例もあります。コールセンターは顧客対応を行う部署であり、人的な判断を要する機会が多いためRPAにそぐわないと考える人も多いかもしれません。
たしかに顧客との折衝をRPAに代替させることはできません。しかし、顧客情報の照会やデータベースへの反映などの単純作業であればRPAの活躍が期待できます。例えば、顧客情報参照のための画面遷移に時間がかかっていたところ、RPAを使って数回の処理に短縮できた例が挙げられます。
ECサイトのマーケティング業務を効率化
RPAを活用し、ECサイトのマーケティング業務を効率化した事例を紹介します。自社ブランドに興味を持って訪れたユーザーを、各販売サイトに誘導するために比較サイトを作成。しかし価格や在庫といった情報はリアルタイムで更新されるため、それらをすべて人力で取得するのは大変な工数がかかると想定できます。
そこで、RPAを使って情報を自動取得し工数の削減を実現。ユーザビリティの向上からECサイトへのトラフィックが増加し、売上増という結果を得られることがあります。さらに、RPAによる情報収集を行えば時間の短縮につながり、戦略的な立案に充てる時間を増やせます。
なお、こちらから人気のRPAツールを確認できます。製品導入を前向きに検討している方は、ぜひご覧ください。
RPAのメリットとデメリット
RPAの活用で業務を効率化できるとわかりました。あらためてRPAのメリットとデメリットについて確認していきましょう。
メリット
まずRPA導入のメリットは大きく3つあります。
- ■業務効率化・生産性向上が期待できる
- RPAはルールが明確に定まっている定型業務を自動化できるツールです。 手を動かすだけの単純作業を優先的にRPAに代替させることにより、従業員は人的な判断が要求される業務に集中できるようになります。限られたリソースを必要なところに集めれば、自ずと業務効率化や生産性の向上、そして作業品質のアップが見込めます。
- ■コスト削減につながる
- 本来従業員が行っていた業務をRPAが担うため、人的コストの削減につながるでしょう。もちろんRPA導入には費用がかかりますが、新しく人を雇って教育することと比べたら、一般的にはコストが抑えられるとされています。人間と違い、RPAは24時間365日稼働できるうえ、休日出勤代や残業代が必要ない点もメリットでしょう。
- ■導入規模によっては短期間で導入可能
- RPAの主な提供形態は、オンプレミス型とクラウド型の2種類があります。クラウド型は自社サーバの構築が不要なため、導入コストが抑えられ短期間での導入も可能です。またPC1台から導入できるデスクトップ型は、スモールスタートに向いています。ただし大規模に導入したい場合は、導入に半年から1年かかる場合もあるため注意が必要でしょう。RPAは多くのツール・サービスがリリースされているため、ユーザーは自社の規模に適した製品を自由に選べます。
なお製品を検討したい方には、以下の記事がおすすめです。提供形態や機能を一覧で比較できます。
デメリット
次に、RPA導入のデメリットとして考えられるのは大きく分けて2つあります。
- ■業務変更への対応が困難
- 業務変更や仕様変更があった際には、新たにルールを決め直す必要があります。これは手間が増える可能性があるという点でデメリットでしょう。例えば、情報を取得していたシステムの外観や内部構造の変更が生じた場合、RPAツールの再設定が必要になります。
- ■柔軟性の確保が重要
- RPAを活用する際には、多少の業務変更や仕様変更にも対応できるようにすることが大切です。ルーチンを組む際には、少ない箇所の変更で多くのシーンに対応できるような、柔軟性の高い設定を心掛けるべきです。これにより、後々の不便を避けられます。
作業のRPA化はどこまですべき?
RPAの導入は、多くの企業にとって効率化とコスト削減につながりますが、すべての業務を自動化することが常に最善とは限りません。作業のRPA化を検討する際、以下のポイントを深く考えることが重要です。
自動化の適切性
定型的で繰り返し行われる業務は、エラーの少ない一貫したパフォーマンスを求められるため、RPAに最適です。例えば、データ入力、ファイルの整理、標準的な報告書の作成などがこれに当たります。
一方、戦略的な意思決定、クリエイティブな企画、顧客との交渉など、人間特有の判断力や創造性を必要とする業務は人の手に委ねるべきです。これらの作業は、状況に応じた柔軟な対応や深い洞察力が求められるため、RPAでは適切に対処することが難しいからです。
コストとリターンのバランス
RPA導入のコストには、ソフトウェアの購入費用やシステムのカスタマイズ、従業員の研修費用などが含まれます。これらの初期投資は、結果としての時間節約やエラーの減少、生産性の向上など期待される効果と比較して、正当化できるものでなければなりません。
例えば、毎日数時間を要するデータ入力作業を自動化することで、1年間でどれだけの労働時間を節約できるかを計算し、それが導入コストに見合うかを評価する必要があります。短期間でのコスト回収が見込めない場合や、長期的なメンテナンス費用が過大になる場合は、自動化の範囲を再検討すべきかもしれません。
業務の複雑性
業務が複雑で、多くの例外や変更が必要な場合、RPAの導入は困難になるでしょう。単純な業務からRPA化をはじめ、徐々に自動化の範囲を拡大するアプローチが望ましいといえます。
例えば、最初は基本的なデータ入力から始め、その後プロセスが安定してきたら、より複雑なデータ分析やレポート作成にRPAを適用することを考えるとよいでしょう。
柔軟性と適応性
環境や業務内容が頻繁に変化する場合、RPAはその変更に迅速に対応できない可能性があります。そのため、定期的にプロセスが変更される業務よりも、変更が少なく安定している業務の自動化をするのが理想です。
例えば、一定のルールにもとづく毎月の報告書作成は自動化のよい候補ですが、頻繁に変更が発生する緊急の顧客対応は、RPAよりも人の判断が求められる場合が多いでしょう。
自社の業務に適したRPA製品導入で生産性向上を図ろう
RPAは単純な定型処理の自動化を得意とするツールです。仕事を行ううえでルーチンワークは欠かせませんが、RPAに代替できれば人は柔軟な判断を要する業務に集中できるでしょう。
一方で、RPAは例外的な処理や急な業務変更への対応は難しいことも覚えておく必要があります。RPAにできることとできないことを正しく把握したうえで、自社の業務に適したRPA製品を導入し、業務効率化と生産性の向上を目指しましょう。