国内におけるRPAの市場規模と最新動向
RPAの国内における市場規模は年々拡大し続けています。ICT市場調査コンサルティングの株式会社MM総研が発表した資料によると、2022年9月時点で大・中規模企業のRPA導入率は45%と約半数を占めており、現在準備中・検討中の企業約20%を含めると今後さらに導入が加速していく見込みです。以下では、企業規模別に見たRPAの導入率や最新の市場動向について解説します。
規模別にRPA導入率に格差
企業規模別RPA導入率は、以下のような結果となっています。
※調査対象:国内企業1,530社(年商50億円以上:1,012社、同50億円未満:518社)
- 年商50億円以上の大・中規模企業→45%
- 年商50億円以下の中・小規模企業→12%
年商50億円以上の大・中規模企業では活用率アップ
年商50億円以上の大・中規模企業におけるRPA導入率は45%と、2021年1月の調査から8ポイント増となっています。現在、準備中・検討中の企業が約20%あり、今後導入率はさらに伸びる見込みです。
また大・中規模企業では、早期に導入し活用期間が長い企業ほど自動化範囲を拡大する傾向にあります。導入当初は特定の一部署においてRPAを活用していたものの、その効果を実感し、ビジネスプロセス全体におけるRPA化が進んだと見られています。
年商50億円以下の中・小規模企業では導入が停滞
一方で年商50億円以下の中・小規模企業におけるRPA導入率は、12%と前回調査から2ポイント増にとどまっています。中・小規模企業でのRPA導入率が停滞している背景には、導入コストの高さや費用対効果の低さ、専門知識を有する人員の不足といった課題があるようです。
大・中規模企業のRPA導入率と比較すると33%の開きがあり、効率性や生産性の面で今後大きな格差が生じる可能性があるでしょう。
RPA活用の最新動向
RPAを、AI-OCRとセットで活用する動きが出てきています。AI-OCRとは、画像データのテキスト部分を認識して文字に変換するツールです。同資料データ3「AI-OCRの導入状況」によると、年商50億円以上の企業全体におけるAI-OCRの導入率は23%ですが、そのうちRPA導入企業では44%にまで上ります。
OCRで画像データを文字に変換し、RPAがそのデータを転記すれば、導入効果が高まります。両者をセットで提供するベンダーも登場しており、RPA導入企業は連携させて活用するケースが多いようです。
参考:RPA活用有無がビジネスプロセス自動化に格差を生む ≪ プレスリリース | 株式会社MM総研
世界におけるRPAの市場規模
市場調査およびコンサルティング会社のGrand View Research社が2023年8月に発表した資料によると、2022年に23億米ドルと評価されたRPAの市場規模は、2030年までに308億5,000万米ドルにまで達すると予想しています。
人件費削減やコア業務へのリソース投入、生産性向上といったメリットから世界的にもRPAの需要が高まり、2030年までに39.9%のCAGR(年平均成長率)で急速に規模拡大すると見られています。
参考:Robotic Process Automation Market Worth $30.85 Billion By 2030|Grand View Research
参考:Robotic Process Automation Market Size & Share Report 2030|Grand View Research
RPAの市場規模が拡大している背景
RPAの市場は年々拡大していますが、その背景には金融業界における導入成功やハイスペックな製品の登場などがあります。また新型コロナウイルスのパンデミック以降、ワークスタイルの変化が生じ、RPAを活用する動きが広まりつつあるのも理由の一つといえるでしょう。以下で詳しく解説します。
金融業界の注目により導入が促進
RPAはロボットが作業するため、24時間365日休むことなく稼働できます。また処理スピードも早く、業務効率化や人件費削減などの効果が期待されます。
この効果に注目している業界が「金融業」です。金融機関では事務処理の量が多く、人為的なミスが発生しやすいという課題があります。しかし、ロボットは与えられた指示どおりに業務を行うためアウトプットが正確です。単純作業にかける時間を削減することで、企画立案など人間にしかできない仕事にリソースを割けるでしょう。RPAの導入効果が予想しやすい金融機関では、他業界よりも導入が進んでいるようです。
AIとの連携
RPA製品は、搭載された機能のスペックによってランクがあります。低ランクの製品は定義されたルールに従ってデータを処理することしかできません。しかし、高ランクでハイスペックな製品は、AI連携機能を搭載しており「判断力」と「自己学習能力」をもちあわせています。
また業務自動化のみならず、経営に必要な意思決定を行うRPAツールもあります。AIと連携したRPAは、社内に蓄積している膨大な量の情報(ビッグデータ)を分析し、業務改善や経営戦略に役立つでしょう。
ワークスタイルの変化
働き方改革や新型コロナウイルスの影響で、テレワークが促進されワークスタイルも変化しました。しかし、オフィスでしか行えない業務もあるでしょう。そこで注目されているのがRPAです。
RPAに作業を記憶させれば、決まった時間に指示した作業を行います。またクラウド型のRPAであれば、ブラウザを開くだけで利用可能なため、出社せずに自宅から操作できます。さらに保守・運用の手間がなく、オンラインでのサポートが手厚い製品もあるため、テレワークに活用しやすいでしょう。
クラウド型RPAを含むおすすめの製品を知りたい方は、以下のページをご覧ください。
国内企業でシェア率の高いRPAを紹介
国内でのシェア率が高い「UiPath Platform」「BizRobo!」「WinActor」について紹介します。特徴や価格、無料トライアルなどを比較してみましょう。
参考:
RPA国内利用動向調査2020 |株式会社MM総研
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製品名 |
対象従業員規模 |
提供形態 |
参考価格 |
無料トライアル |
レビュー評価 |
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WinActor |
すべての規模に対応 |
パッケージソフト |
フル機能版:年額908,000円/ライセンス |
ー |
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BizRobo! |
すべての規模に対応 |
オンプレミス / クラウド / パッケージソフト / SaaS / ASP |
ー |
ー |
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UiPath Platform |
すべての規模に対応 |
オンプレミス / クラウド / SaaS / ASP |
ー |
◯ |
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※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
《WinActor》のPOINT
- パソコン1台からのミニマムスタートで導入が簡単
- 時間がかかる大量の処理を行いたいときにぴったり
- RPA技術者検定保有者による勉強会を定期的に開催
スターティアレイズ株式会社が提供する純国産RPA「WinActor」は、複雑な業務処理に対応可能なRPAです。パソコン1台から導入でき、情報システム部門やエンジニア部門が主に活用する場合に役立つでしょう。あらかじめ用意されたコマンドを組み合わせてロボットを作成するため、専門知識不要で利用できます。
《BizRobo!》のPOINT
- 1ライセンスで複数のロボットを稼働できる
- 機械学習機能(ISA)を搭載
- サポートサービスが充実
RPAテクノロジーズ株式会社の「BizRobo!」は、1ライセンスに対して複数のロボットが稼働できるバックグラウンド型RPAです。10万ロボット超の開発・運用実績を誇り、ビジネスプロセスや電子取引業務、マーケティングなどさまざまな業界・ニーズに対応しています。10年分のRPA活用ノウハウを公開しているほか、構築運用ナレッジベースや構築研修用ウェブサイトなどのコンテンツを提供しています。
《UiPath Platform》のPOINT
- SaaSやIaaS/PaaS、オンプレミスといった多彩な導入形態に対応
- ISO 27001認証を取得するなど高度なセキュリティを確保
- 分析ツールでRPAの導入効果を測定可能
UiPath株式会社提供の「UiPath Platform」は、管理や実行、分析までのプロセスをAIによって自動化できるRPAです。自動化パフォーマンスの監視・測定・予測などが可能な分析ツール「Insights」も搭載しています。60日間の無料トライアルもあるため、じっくり使用感を試せます。
このほかにもITトレンドでは、生産性向上やコスト削減に役立つさまざまなRPAを取り扱っています。おすすめのRPAをじっくり比較し検討したい方は、以下のボタンから資料請求できるので、ご利用ください。
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RPAが必要とされる理由
RPAを活用するメリットとして「生産性や顧客満足度の向上」「ミスの防止」「コストダウン」などがあります。詳しく見ていきましょう。
生産性や顧客満足度が向上する
RPAは、24時間365日稼働するため、業務の処理速度が上がり、スケジュールを短縮できます。またAIと連携可能なRPAツールであれば、人間では対応が難しい膨大な作業量を迅速に処理できるため、生産性の向上が期待されるでしょう。
さらにRPAの活用により空いたリソースを、商品開発や企画立案などの付加価値の高い業務に充てることで、自社商品やサービスそのものの質が向上します。RPAは、時間・量・質すべてにおいてメリットがあり、顧客満足度向上に寄与するでしょう。
ヒューマンエラーを防ぐ
人間が大量データを処理する場合、疲れやその時々のコンディションでミスが発生する場合も多いでしょう。締め切り間際になれば作業スピードも求められる一方で、焦ればミスも量産しがちです。
RPAは、長時間の連続稼働でも一定の処理スピードを保ちつつ、シナリオどおり正確に処理を行います。人間がパソコンに手打ちした場合に発生しやすい「見落とし」「チェック漏れ」「誤入力」などのヒューマンエラーを回避します。
人材不足・コスト問題が解消する
これまで人手不足解消や業務効率化の手段として、BPO(Business Process Outsourcing:業務プロセスの委託)の活用が大きな割合を占めていました。外部企業に委託することで時間を有効活用し、自社のキャパシティを超える業務処理ができたからです。
しかしRPAはBPOよりもトータルコストが安く済み、人材育成の時間がかかりません。最初に業務マニュアルを作成すれば、RPA担当者が変更になった後でも業務のブラックボックス化を防げます。
以下の記事では、RPAのメリットについて詳しく解説しています。
RPA導入時に確認すべきポイント
RPAを導入する際は、機能や使い方を正しく理解し自社にあった製品選択が求められます。ここからは、導入前に確認するポイントを見ていきましょう。
導入の目的や自動化する業務内容が明確化されているか
RPAを活用する目的と、自動化する業務を事前に明確化しましょう。具体的にどの業務を自動化したいのか洗い出し、RPAの対応可否を確認します。製品によって、汎用的に活用できるものもあれば、人事や経理など特定の業務フローに強みをもつものもあります。トライアルを活用し、自社の業務で活用しやすいかどうか確認してみましょう。
既存システムと連携ができるか
自動化したい業務において現在使用しているシステムとRPAが連携できるか、必ず確認しましょう。例えば、専門的な業務を効率化する特化型RPA製品は高いパフォーマンスを発揮しますが、対応できるシステムが限られます。また既存製品での対応が難しい場合は、ゼロから自社仕様に開発する必要があるでしょう。
セキュリティ対策は十分か
RPAを稼働させるにあたって、社内システムのパスワードを記憶させたり、データベースへのアクセス権限を与えたりする必要があります。セキュリティ機能が不十分なRPA製品の場合、第三者からセキュリティ攻撃を受けた際に情報漏えいのリスクがあります。製品のセキュリティ機能はもちろん、自社の社内ネットワーク環境でも強固なセキュリティ対策が必要です。
ベンダーのサポート体制は十分か
販売元であるベンダーのサポート体制を必ず確認しましょう。機能的に優れている製品でも、操作上の疑問や予期せぬトラブルが発生した際に十分なサポートが受けられなければ、業務の効率化にはつながりません。電話やメールによるサポート以外に、無料で参加できるセミナーを開催している提供企業もあるので、問い合わせてみるとよいでしょう。
RPAツールの選び方についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
業務効率化のためRPAの導入を検討しよう
RPAの市場規模を中心に紹介しました。業務効率化や生産性向上など、さまざまな導入メリットがあるRPAは、年々導入する企業が増えつつあります。導入背景や必要性などを理解したら、次は製品の資料請求をして見比べ、自社にあったRPAツールを見つけましょう。