RPA導入・運用でよくある失敗事例
業務の効率化など社内の課題を解決すべくRPAを導入したものの、思ったように活用できなかったり、新たな問題が発生してしまうことがあります。まずはRPAの導入や運用のよくある失敗例を1つずつ紹介します。
十分に活用できず導入効果が実感できない
RPA導入において最も多い失敗は、RPAを十分に活用しきれず無駄になってしまうケースです。例えば残業が多い部署の業務を自動化すべくRPAを導入しても、残業の原因である業務がRPAでは自動化できない臨機応変な人の判断に依存するものであれば意味がありません。また、現状特に負担になっていない業務をRPAで自動化しても、効果はあまり実感できないでしょう。
RPAは基本的に膨大な量の単純作業を効率化するツールです。したがって、そのような性質の業務が少ない企業では導入しても十分に活用しきれず無駄になってしまうことが多いようです。
依存しすぎることで業務停止のリスクが高まる
RPAは便利なツールであるため、一度自動化が上手くいくと企業全体でRPAに依存しがちになります。しかしRPAはITシステムであり、予期せぬトラブルで処理が停止してしまうことがあります。すぐにRPAを再起動し処理が再開できれば良いですが、解決できない場合は人員を割いて作業を継続しなければなりません。
またRPAで自動化した業務は、基本的に担当者がいなくても勝手に進行していきます。そのため、RPA導入当時の担当者が異動・退職してしまうと、対象業務の詳細な手順や注意点、自動化の経緯について知る人がいなくなります。
その結果、「あの業務は具体的にどのように処理されているのか分からない」という業務のブラックボックス化が起こり、業務手順の変更時やトラブル発生時に対応できる人がいないということが起こりがちです。
頻繁なメンテナンスで業務時間が増えてしまう
RPAによる業務の自動化は一度設定すればそれで終わりではなく、定期的なメンテナンスが必要です。業務手順や取引先とのルールが変更になれば、その度にRPAに対しても再設定が必要になります。
そのため、頻繁な変更が予想される業務を自動化すると、削減できた時間よりもメンテナンスにかける時間が上回ってしまい、業務時間がかえって増えることがあります。
また、最近のRPA製品のほとんどは簡単に操作できるものが多いですが、社員のITリテラシーのレベルや年齢層によっては簡単な設定変更でも時間がかかってしまう場合があるようです。
RPA導入・運用の注意点
このようにRPAの導入に失敗してしまう場合もあります。これらの失敗例を踏まえて、RPAを導入・運用する際の注意点を説明していきます。
RPAで自動化する対象業務の性質に着目する
RPAはあらゆる業務の自動化に対応できますが、場合によってはできないケースもあります。基本的にRPAを使って自動化できる業務は単純作業であることがほとんどです。
したがって、人の判断を毎回挟むような特殊な工程が必要な作業にはRPAは不向きです。どうしても自動化したい場合は、まずは現状の業務を整理しRPAに任せられるところまで簡略化する必要があります。
またRPAの開発に関する知識・技術があれば、複雑な処理もRPAが自己判断して進められるようにカスタマイズすることもできます。しかし、RPAツールの提供形態によっては自社仕様にカスタマイズすることにも限界があります。自社で開発を行うと膨大な工数がかかることにも注意しましょう。
誤作動やシステム障害の可能性を考慮する
RPAはITシステムであるため、小さなエラーや誤作動が起きる可能性もゼロではありません。また、RPAへの指示内容に誤りがあった場合でもそのまま機械的に処理が進んでしまうため、ミスが大量発生してしまう可能性もあります。
ヒューマンエラーに比べれば、RPAが起こす不具合や誤作動の割合はかなり少ないと言えます。しかし、完全にゼロにすることはできない点は考慮する必要があるでしょう。
企業にとって重要な業務を自動化している場合、システム障害が発生すると業務がストップしてしまいます。リスクと効率化のバランスを考えて自動化する業務を選びましょう。
RPAの維持管理費用を導入計画に組み込む
RPAは導入して終わりではなく、業務内容の変化に合わせて定期的なメンテナンスが必要になります。メンテナンス実施には知識と技術を持った担当者が必要です。ITリテラシーが全社的に高い企業であれば比較的容易かもしれませんが、そうでない場合は新たに人員を増やすことによるコストが発生します。
また企業としての業務内容に大きな変更があった場合は、これまで利用してきたRPAの機能だけでは不十分な場合もあります。既存のRPAをカスタマイズして自社仕様の機能をつけたり、新しい製品に買い換えれば大きな出費となるため、導入時にはなるべく追加でコストがかからないような計画を立てましょう。
RPAを上手に活用するポイント
ここからはRPAを上手く活用するためのポイントについて解説していきます。
導入成功の目安を事前に決定しておく
RPA導入の際は、必ず導入成功の目安を決めることが必要です。例えば、「残業時間を月間で◯時間削減する」「人件費を◯円カットする」など具体的な数値目標を持つことが望ましいでしょう。
RPAは近年注目されていることもあり、上層部の興味本位で導入されるケースも珍しくありません。導入にはコストや時間がかかるため、その分の費用対効果が上がらなければ企業にとって大きな損失となります。事前に成功の目安となる目標数値を決め、それを目指して全社一体となってRPAの使用を促進していくことが必要なのです。
システム障害への対応方法を具体的に決めておく
RPAが緊急停止した場合に業務を継続する手段を用意しておきましょう。例えば、業務データのバックアップ体制を整えたり、サーバを複数台構築する冗長化などの対策が必要になります。特に自動化された業務が顧客や取引先に関係するものの場合は、長時間の業務停止は企業の信用を失うことに繋がるため、これらの対策が必須です。
逆にバックアップの仕組みやサーバ構築のためのコストをかける余裕がない場合は、RPAによる自動化ではなく業務フローの改善によって効率化を目指すべきケースもあるでしょう。
どうしてもRPAで自動化したい場合は、クラウド型のRPAツール製品を導入すれば自社のコスト負担を最小限に抑えることも可能です。
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ベンダーによるサポートを活用する
ベンダーではRPAの使い方セミナーなどを開催している場合があります。社内のRPA担当者が使用方法に習熟していないと、業務手順に変更があった際のメンテナンスに時間がかかってしまいます。ベンダー主催のセミナーは無料の場合も多いため、積極的に活用しましょう。
また、操作方法が分からなかったりシステムにエラーが発生したときはベンダーに問い合わせをすることになります。製品自体の性能が良くてもサポート体制が不十分であると十分にRPAを活用することができません。運用を成功させるためにも、導入前にベンダーのサポート体制を確認しておきましょう。
失敗例から学びRPAの導入・運用を成功させよう
RPAの導入・運用の失敗事例を中心に紹介してきました。RPA導入で失敗してしまう原因のほとんどは「準備不足」と言えるでしょう。導入自体がゴールにならないように、導入後の運用体制を整えることまで視野に入れることが大切です。自社に最適なRPAを導入し、効果的に運用しましょう。
RPAの導入を本格的に検討されている場合は、以下の記事で製品比較を行っているためぜひ参考にしてください。
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