RPAとは
RPA(Robotic Process Automation)とは、ロボットによって業務を自動化するソフトウェア技術のことです。またその機能を提供するツールのことを指します。
業務手順を記したシナリオをロボットに記憶させると、ツール内で自動的に作業を行う仕組みです。RPAは、転記や情報収集、メール送信など判断力を要さない単純作業を得意としており、さまざまな業種・業態において近年導入が進んでいます。
以下の記事では、RPAの基本概要について詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
中小企業こそRPA導入が必要な理由
単純業務を自動化し、業務効率化やコスト削減効果があるRPAは、中小企業にこそ導入が必要です。なぜなら中小企業には、人材不足や生産性などの面において以下のような課題があるためです。詳しく見ていきましょう。
慢性的な人手不足
令和5年4月に中小企業庁が発表した「2023年版中小企業白書・小規模企業白書概要案」によると、中小企業は深刻な人手不足に直面していることがうかがえます。従業員過不足DI(※)の推移では、いずれの業種においてもマイナスとなっています。
中小企業では人材不足などの課題に対し、業務の見直しや設備投資以外にも、給与水準の引き上げや労働環境を改善するなどの取り組みが必要でしょう。
※従業員過不足DIとは、従業員の今期の状況について、「過剰」と答えた企業の割合(%)から、 「不足」と答えた企業の割合(%)を引いた値。
大企業に比べ労働生産性が低い
中小企業庁が発表した2022年度版「中小企業白書」によると、企業規模別に労働生産性の水準中央値を比較した場合、大企業が1,099万円であるのに対し、中小企業は540万円を示しています。
さらに大企業上位10%の水準中央値が3,886万円であり、企業規模に比例して労働生産性も高まっていることがうかがえるでしょう。中小企業は、生産性を向上させるためにプロセスの見直しによる業務効率化やITなどの設備投資を対策として掲げ、取り組む動きが見られています。RPAツールはこれらの課題解決に有効なツールとして活用できるでしょう。
参考:2022年版中小企業・白書小規模企業白書|中小企業庁
参考:2023年版中小企業白書・小規模企業白書概要案|中小企業庁
中小企業のRPA導入率とその背景
ICT市場調査コンサルティングの株式会社MM総研が発表した資料によると、2022年9月時点で年商50億円以下の中小企業におけるRPA導入率は、12%でした。年々増加傾向にあるものの、2019年以降は毎年1~2%の増加率にとどまっています。
中小企業においてRPA導入が伸び悩んでいるのは、運用コストがネックとなっているためです。初期費用などの初期負担が大きく稟議がなかなか通らないケースや、カスタマイズ・保守運用ができる有識者が在籍していないために導入が進まないケースがあげられます。
しかし近年では、パソコン1台から低コストで導入できるタイプやノーコードでの構築が可能なタイプも登場しています。さらにクラウド型のRPAツールであれば、導入・設計が簡単なだけでなく保守運用もベンダーに一任でき、企業担当者の負担が軽減されるでしょう。そのほかRPA導入には、「IT導入補助金」「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」など、中小企業を支援する複数の補助金が用意されているため、資金面で導入が進まない場合は条件を調べてみるとよいでしょう。補助金の詳細については、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
参考:RPA活用有無がビジネスプロセス自動化に格差を生む ≪ プレスリリース | 株式会社MM総研
中小企業がRPAを導入するメリット
中小企業において、人手不足や生産性の低さをカバーするのに役立つのがRPAです。RPAは24時間稼働し単純業務を自動化する特性から、コスト削減や業務効率化、生産性向上のなどのメリットがあります。詳しく見ていきましょう。
コスト削減
RPAは単純作業を自動化するITツールです。したがって、単純作業に充てていた人的コストを削減できるメリットがあります。
人材を一人確保するには、採用コストや育成費用など膨大なコストがかかります。また給与のほか、残業費や通勤費などの各種手当も必要になるでしょう。RPAは導入や初期設定、メンテナンスにコストはかかりますが、人件費と比較した場合は格安といえます。
業務効率化と生産性向上
RPAは、設定したルールにもとづいて正確に処理するため、ヒューマンエラーを防ぎ作業時間の大幅な短縮が期待されるでしょう。
またRPAのなかには、AIと連携し高度な自動化が可能なタイプもあります。AIと組み合わせて活用すれば活用の幅を広げられるほか、人間では処理できない膨大な量の作業にも対応可能です。
さらにRPAの活用により空いたリソースを、クリエイティブな業務や戦略・企画立案などのコア業務に充てられます。現場の業務効率化だけでなく、組織としての生産性向上の効果も期待できるでしょう。
24時間稼働で人手不足をカバー
中小企業において、人手不足のなかで生産性向上を図るには、長時間労働が課せられるなど労働環境の悪化を招く恐れがあるでしょう。
RPAは24時間365日休みなく稼働するため、スケジュール短縮が見込まれるうえに人手不足をカバーします。また残業や休日出勤なども削減できるため、労働環境の是正にも有効です。
以下の記事では、RPAのメリットやデメリットについて詳しく解説しています。
中小企業のRPA導入事例
中小企業におけるRPAの導入事例から、活用イメージを膨らませてみましょう。ITトレンドで扱っているRPAのなかから、小規模スタートが可能なRPAをピックアップしました。実際の導入企業の声を紹介します。
「Power Automate Desktop」の導入事例
株式会社アシスタントが提供している「Power Automate Desktop」は、Microsoft純正のRPAです。導入企業からの口コミを一部紹介します。
エクセルの読み取りやメール送信に活用
申込書のエクセルを読み取って自動でリスト化し、受付完了メールを自動送信する単純作業に活用しています。Microsoft製品なので、エクセルやOutlookなどとの相性がよく使いやすいです。
毎月の集計処理に活用
複数のエクセルファイルから、集計用のファイルへデータやシートのコピーをしていた作業が、ボタン一つで完了しています。時間短縮の効果が大きいです。
参考:Power Automate Desktop:評判・口コミ|ITトレンド
「Robo-Pat」の導入事例
スターティアレイズ株式会社が代理店として提供する「Robo-Pat」は、ネット接続不要かつパソコン1台から導入できるRPAツールです。導入企業からの口コミを一部紹介します。
クレーム内容の登録作業に活用
顧客からのクレーム内容を自社の基幹システムへ登録する作業に活用しています。画面切り替えや入力作業を自動化することで、作業時間の大幅な削減効果が得られました。
多数のCSVファイル集計に活用
検証結果資料の作成やブラウザからの毎月の集計作業が容易になりました。RPAロボの作成サポートも助かりました。
参考:Robo-Pat:評判・口コミ|ITトレンド
このほかにも、ITトレンドではさまざまなRPAを取り扱っています。以下の記事では、最新のRPAについて特徴や価格などを比較紹介しています。あわせてご覧ください。
中小企業におけるRPA導入のリスクと対策
RPAを正しく利用すれば、コスト削減や生産性向上といったメリットを得られるでしょう。しかし新たなシステムやソフトウェア導入にはある程度のリスクはつきものです。RPAを中小企業で運用する場合、どのようなリスクが考えられるでしょうか。想定されるリスクと対策を解説します。
システム障害や誤作動のリスクと対策
故障・停電によるシステム障害や設定ミスによる誤作動も想定されるリスクです。誤作動や障害が発生した場合、RPA活用の範囲が広ければ広いほど業務停止による影響は大きくなるでしょう。
対策としては、障害発生時の方針やルールを定めたうえで運用することが重要です。また最低限のバックアップを行い、復旧できる環境を整えておきましょう。
情報漏えいのリスクと対策
RPAは実行端末のファイル内に、あらかじめID・パスワードが組み込まれています。万が一ID・パスワードが外部に漏えいすれば不正アクセスされ、システム改ざんやロボットの乗っ取りなどの危険性があるでしょう。
対策としては、厳格なアクセス権限の設定が有効です。さらに通信データや機密情報の暗号化、ログの監視、アップデートを適宜実行するなどのセキュリティ対策を取りましょう。
ITトレンドでは、セキュリティ性が高いさまざまなRPAツールを多数取り扱っています。最新の人気製品をチェックしてみたいという方は、以下のランキングもご覧ください。
中小企業がRPAを導入する際の注意ポイント
中小企業がRPAを導入する際には、スモールスタートを意識して徐々に適用範囲を拡大するのがおすすめです。また費用対効果も算出し、コスト面で無駄のないよう十分に検討する必要があります。以下で詳しく解説します。
スモールスタートを意識する
RPAは、大規模導入に適用できるものからパソコン1台で導入できるものまで対象規模はさまざまです。ただし最初から広範囲をRPA化すると、システムや操作上のトラブルが生じた場合に業務が停滞する可能性があります。そのため、スモールスタートを意識しましょう。
まずは、部署やチームなど小規模なグループのなかで導入をはじめます。また対象業務を全面的にRPAに任せるのではなく、そのなかの一部から適用していきましょう。小規模な導入に成功したら、そのノウハウを活かしてほかの業務へも利用を拡大するのがおすすめです。
費用対効果を算出する
中小企業がRPAを導入する際に意識しなければならないのが費用です。大企業と比べ、自動化できる作業量は少ないため、大きな効果が得られないケースがあります。したがってRPAの導入・運用コストがメリットを上回らないよう、費用対効果を算出しましょう。
RPAの導入効果を図る際に指標となるのが、「削減できた人件費」です。業務のなかで単純作業かつ人的コストがかかっているものを洗い出し、導入コストと比較してみるとよいでしょう。
以下の記事では、RPA導入時のポイントについて詳しく解説しています。
RPAの失敗しない選び方
多種多様なRPAツールから自社に最適な製品を選ぶ際は、導入形態や種類、運用のしやすさに注目しましょう。またツールのタイプによって、導入費用もさまざまなため、自社の予算に見合っているかもチェックしておきたいポイントです。
クラウド型かオンプレミス型か
RPAツールの導入形態は「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類に分けられます。それぞれの特徴は次のとおりです。
- ■クラウド型
- インターネット上のクラウド環境にソフトウェアロボットを構築し、Webブラウザ上の作業を自動化する。導入コストは抑えられるが、自動化できる範囲はクラウド上に限定される。
- ■オンプレミス型
- 自社サーバにシステムを構築する。自動化できる作業範囲が広くカスタマイズ可能だが、導入コストが高くなる。
デスクトップ型かサーバ型か
オンプレミス型のRPAツールは、さらに「デスクトップ型」「サーバ型」の2種類に分けられます。導入範囲に応じて以下のように使い分けられます。
- ■デスクトップ型
- パソコン1台単位で業務自動化が可能。スモールスタートしたい企業におすすめ。
- ■サーバ型
- 自社のサーバ内でロボットを稼働させ、業務を横断した一括管理が可能。大量のデータが管理できるため大規模に導入したい企業におすすめ。
操作・メンテナンスしやすいか
人手不足が課題となっている中小企業において、プログラミングなどの専門知識をもつ人材の確保は困難です。そのため、RPAツールは主に非エンジニアの現場社員が使用することになるでしょう。
RPAツールは、専門知識不要で利用できたり直感的に操作できたりするなど現場の社員が扱いやすいものを選ぶ必要があります。同時に、メンテナンス性に優れた製品はエラーが出た場合も自前で対処しやすいでしょう。運用がしやすいRPAツールを選定すれば、社内浸透もスムーズです
導入費用は予算に見合っているか
中小企業において、コストにおける課題はRPA導入の停滞要因となっています。RPAにはクラウド型・サーバ型・デスクトップ型とさまざまなタイプがありますが、現在初期費用は10万円~50万円、月額費用は低コストなもので5~10万円ほどが相場です。
しかしなかには、パソコン1台・1ライセンスからの自動化に対応している中小企業向けRPAもあり、コストを抑えて導入できます。補助金なども視野に入れ、予算に見合ったものを選択しましょう。
サポート体制が充実しているか
RPA導入時には、シナリオの作成作業が必要です。ベンダーによっては、シナリオ作成の支援や操作方法のセミナーを開催している場合があります。
またRPA導入後は、運用が軌道に乗るまでさまざまな課題に直面します。そのため、問い合わせ窓口やサポート体制が十分に整備されているかどうかを確認しましょう。
以下の記事では、RPAツールの選び方や手順について詳しく解説しています。導入時の参考にしてください。
中小企業においてもRPAを導入し、業務の自動化を実現しよう
中小企業において人手不足や生産性における課題を解決するためには、RPAの導入が有効です。単純作業をRPAに代行させれば、コスト削減や業務効率化、労働環境などさまざまなメリットが得られます。自社の課題を解決するためにも、さっそくRPAの資料を取り寄せ比較検討してみてはいかがでしょうか。費用の相場感などもつかめます。